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ステラ編

神であるぼくの話。君はぼくのもの!

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 ぼくの名前はステラ。所謂、神だ。
 
 神と言っても、ぼくらの世界にも他の世界にも神はいっぱいいるんだけどね~~。別にぼくはこの世界を作ったわけじゃないし……。
 
 だからって、ぼくをそこら辺の神と一緒にしないでよね!
 なんてったって、ぼくはすっごく優秀な神なんだから!

「わぁ~~君、魂めちゃくちゃ穢れちゃってるね? 何やらかしたの、この子。あー……他の生命体をいっぱい殺しちゃったのかぁ。この子がいた場所って争いが絶えないんだっけ? あーあ、守護の神がちゃんと仕事しないから~~。まあいいや。殺したくて殺したわけじゃないみたいだし、とりあえず転生させてあげる~~! でも来世で悪いことしたら今度は転生なしだからねぇ? 覚えておいてね! どうせ忘れるだろうけど! わははっ!」

「はぁ~~い! 君、転生な~~~し!! ……いや何そのとぼけ顔。笑えるんだけど。めちゃくちゃアホ面~~。君さぁ~~魂穢れまくりなんだよ~~もはや真っ黒じゃない? ははは、バッカだなぁ。君はやりすぎたんだよ。他の生命体を殺し尽くすだけじゃ飽き足らず、自分以外の魂まで穢しまくってるし? 懺悔するべき罪多すぎでしょ。あのねー君がいたら世界が混沌になっちゃうの。転生した後もそういうのされたら面倒なんだよね。だからもういいよ~~ご愁傷様! ばいばーい!!」

「んふふ。君、ぼくらのこと嫌いでしょ? 神のこと大嫌いでしょ~~? 何でもかんでも神であるぼくらのせいにして今まで生きてきたよねぇ?? 自分のせいじゃなくて、ぜーんぶぼくらが悪いって散々恨んで、憎んで、呪ってきたよねぇ?? あははっ! 今更狼狽えてる~! ぼくにバレないと思ってたの~? おもしろーい! ねーねー、どうする? 大っ嫌いな神相手に命乞いするー?『転生させてください! お願いします!』って泣きついてみる~~? それともここで無になっちゃう? 選んで! 選んでよ~~!! 君がどうなるかは、君の答え次第だよ!」

「あれー? 君、魂すっごく弱っちゃってる。しおしおだ~~。穢れてもいるね~~生きることによっぽど疲れちゃったのかなぁ? 転生することも望まずに死んだみたいだね~~そんなに楽になりたかった? どうする? 転生する? それともここで何もかも、終わりにする?

……ふーん。やっぱりまだ生きたいんだ? 人間って変わってるよね。こんなに絶望してたのにまだ足掻くんだぁ。いいよ~~。その目は嫌いじゃないし。瞳の奥に生きたいって意思がある。ほーら天使、お仕事だよ~~。この子の魂、誰か浄化して綺麗にしてあげて~~。

安心しなよ。君は今まで精一杯生きてきた。罪もそんなに犯していない。いい子だったからね、ご褒美あげるの。ぼくらは純粋な子が好きだからね! 来世では幸せになれたらいいね~~! まあ、それは君次第だけど!!」
 
 ぼくは生き物の魂を裁く仕事をしているんだ!
 その者が転生するに値する魂か決めるんだよ!
 
 すごいでしょ! えらいでしょ! えっへん!
 
 でも誰もぼくを褒めてくれないんだ~~しかもぼくの元に送られてくる魂って、穢れてるか、弱ってるかのどっちかだし。元気で綺麗な魂は裁く必要すらないからね。
 
 ぼくに対して反抗的な子も多いし、転生させてあげるって言っても感謝すらしないんだよ!?
 もう! ひねくれすぎ~~。そんな子達を裁くのがぼくの仕事だし、楽しんでもいるんだけどさぁ~~。
 
 誰かひとりぐらい、ぼくのこと好きになってくれてもいいじゃん。ぼくのこと褒めてよ。こんなに頑張ってるのにさ。
 
 
 ***

 
「か、神……だ……。す、ステラ……」
 
 真っ白な部屋の中、目の前には人間の女の子がいた。
 
 この子、魔力が全く無い。少なくとも、ぼくの世界の住人じゃないや。それなのにぼくらの事について詳しい。なんで? 怪しいなぁ……。怪しすぎるから、裁かなくちゃいけないんだけど……。
 
 すごく真っ直ぐな瞳で、ぼくを見つめるんだ。誰かにこんな風に見られるのなんて初めてで。なんだか落ち着かない。ぼくに殺されてもいいなんて言うし……。
 
 なに? 何なの? 何なんだよ。
 ひょっとして……ぼくのこと……好き、なの?
 
 ……この子は何なんだろう? なんて名前なんだろう? 気になる。 気になっちゃうから見ちゃおう!
 
 神の力で女の子の名前を見た。この世界では珍しい名前だ! でも、ぼくは好き!!
 
 
 ――あ、ぼくの魂と君の魂が……ちょっとだけ、繋がっちゃった。
 
 
 魂。ぼくらの生きる証。生きとし生けるもの皆にある、存在の証明。
 心とは別物だけど、心に影響されて弱っちゃうこともあるし、ぼくら神や天使が定めたルールに背く行為、つまり『悪いコト』をすると穢れちゃったりもするんだ。すっごく繊細なモノなんだよ?
 
 あとね、魂は他の生命と惹かれ合って『繋がる』ことがあるんだよ。強く想われると繋がっちゃうことがあるの。離したくない、一緒にいたいってね。

 時と場合によっては、その想いは世界をも超えちゃうんだ。一方的な愛じゃダメだよ? それだと魂が繋がりまくっちゃう。相手にも少なからず、想われてないとね。一部、例外もあるけど。魂を繋げる方法は他にもいくつかあるんだよ~~。面白いでしょ!

 生まれ変わっても一緒にいる為に『魂のつがい』っていう愛の誓いを交わすことも出来るんだよ? これは高位種族の中でも優れたものにしか出来ないけどね! 例えば、ぼくとか!
 
 君となら、番の契約を交わしても良いかも……! 魂がこうして繋がっちゃうってことは君はやっぱり、ぼくのことが好きなんだ! そうだったんだ!!
 
 えへ……へへへ………えへへへへへへへ!
 嬉しい、うれしい、嬉しい、うれしい!!
 
 ぼくも君が好きだよ!!
 ぼくとずっと一緒にいてよ!!
 
 神であるぼくは自然に消滅することはない。他の神や悪魔辺りと争っちゃったりしたら危ないけど、ぼくは君以外に興味ないしね。もし絡まれても返り討ちにするけど。
 
 神の仕事や終わらない生に嫌気が差して自ら消滅を望んで消えちゃう神はいるし、ぼくも生きるのに飽きたらそうしよっかな~~って思ったけど……。
 
 やっぱり、やーめた! 君と一緒に生きたいから!
 あ、人間はすぐに死んじゃうんだった。寿命をいじって、不老不死にしないとね! 任せて! ぼくならそれぐらい簡単に出来ちゃうから!
 
 ぼくって強い! 賢い! えらい!
 
 魂の番の契約を交わして、敢えてふたりで死んで、転生しちゃうのもアリだね? 君はなりたい種族とかあるのかな? 生まれ変わってやりたいことってあるのかな? あるのなら、ぼくがぜーんぶ叶えてあげるよ! ぼくに頼って! ぼくに縋って!
 
 これからは、ぼくのそばにいて? ぼくの為に生きてよ!
 
 ずっ~~と、ぼくと一緒にいて!!
 永遠に、永久にね!!
 
 君だってぼくに好かれて嬉しいでしょ? このぼくの寵愛を受けられるんだよ? 光栄だよね! ぼくに感謝してよね! 褒めて! 褒めてよ~~!!

 いっぱい好きって言って!! 大好きって言って!!
 
 君がぼくのこと、好きって言ってくれないなら……ぼくの気持ち、受け入れてくれないなら……。
 
 
 
 魂ごと、ぐちゃぐちゃに壊しちゃおうかなぁ?
 

 
 君がどうなるかは、ぼく次第!!
 ぼくが君の生命を握ってるんだよ!!
 
 魂壊されたくないなら、ぼくのご機嫌取ってよね! だいじょーぶ!! ぼく、すっごく優しいから!
 
 
 君がそばにいてくれたら、ぼくを受け入れてくれたら、それでいいんだよ。ぼくから離れちゃだめだよ。ちゃんといい子にできるよね?
 
 君は純粋で綺麗な魂をしてるから、ぼくの言うことが聞けるよね?
 

 ぼく、君のことだぁいすきだよ~~!
 君はぼくのものだ!!


 ***

 
「やっほ~~来ちゃった! てへっ!」
 
「ぎゃあああああああ!!! ……って神! いや、ステラ! 急に画面から出てこないでください! びっくりしちゃうので!!」
 
「なーに? 神であるぼくに指図する気なの? いつからそんな偉い存在になったの~~?」
 
「そ、そんなつもりでは……」
 
 ぼくが不機嫌そうにムスッとすると、君は慌ててぼくの機嫌を取ろうとする。

 んふふ。素直で純粋でかわいい。 ほんとはそんなに怒ってないよ! でもちょっとだけ傷ついちゃった~! 慰めてよね!
 
「ねーねーいい子いい子して~~」
 
「あ、はい……! よしよし。いい子いい子、ステラ。ステラはとってもえらい子ですよ~~」

「えへへ。そうでしょ! そうでしょ! ぼくはすごいんだ!」

「はい。ステラは本当にすごいですよ。まさか次元の壁すら超えてくるとは……」

「ぼくなら簡単だよ! 舐めないでよね!」

「舐めてはいませんよ。感心しているだけです。さすがステラです」

「……!!! えへ、へへへっ……」
 
 君に頭を撫でてもらう。ぼくはこの優しくて温かい手が好きだ。
 このぼくに触れられる存在なんて、君だけなんだよ? 君はぼくのものだから、特別にぼくに触れる許可をあげてるんだからね!
 
「ぼく、君のことだいすき~~!」
 
 そう言って君の身体にぎゅっと抱きつく。あったかい。好き。すきすきすき。
 
「か、かわいっ……。推しが可愛すぎる……!!」
 
 オシとかよく分からないけど、君はやっぱり、ぼくのことが大好きみたい!!
 
「ねぇ……君はずっ~と、ぼくといっしょにいてくれるよね……?? おねがぁい……ぼくから、はなれないで……そばにいてぇ……??」
 
「はい!! もちろんです!!……合法ショタっ子の破壊力やば……尊い……」
 
 わざと小さい子どもみたいに甘えてみると、君はすぐにぼくの望む答えを言ってくれる。
 
 かわいい。かわいい人間の女の子。お嬢ちゃん。
 ぼくは君が思ってるほど、子どもじゃないよ。大人にもなりたくはないけどね!
 
 君はぼくの本心なんて、何も知らなくていいよ。
 そのままずっと、ぼくの手のひらの上で転がされていてね! 愛してるよ~~!!


 ***


■あなた(ヒロイン)
・ステラに捕まった人。ステラの本性には気付いていない
・推しの神相手につい敬語で話してしまう
・「神」って呼んでたけど、ステラに名前で呼んでって言われたから今はそうしてる、たまに神って言っちゃう

■ステラ(神)
・中性的な合法ショタっ子
・他の神も皆気まぐれだけど、その中でも気まぐれなほう
・魂を裁く仕事をしている。生命を司る神
・無邪気に腹黒い。自己肯定感高め。かなり気分屋
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