未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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2章【未熟な社畜をギャップ証明しました】

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 明日までと言われていた作業を、なんとか日付が変わる前に撃退。俺は安全運転を心掛けながら、二十三時過ぎにマンションへと帰ってきた。


「ギリギリセーフッ!」
[いえ別にタイムアタック的なことはしておりませんでしたけどね]


 俺の頑張りを文字通りそばで見ていたくせに、なんという奴だ! 相変わらずなツッコミ気質に、むしろホッとしてしまうではないか!

 と言うわけで、帰宅だ。俺は飛び込むような速度で玄関からリビングへ直行。そして、椅子に座るカワイが俺を認識すると同時に、そのプリティーな体を抱き締めた。


「あっ、ヒト。おか──」
「ただいまカワイ! 今日も可愛いね! ありがとうっ!」
「うぐっ、苦しい……」


 あぁっ、今日もスベスベで細っこくて可愛い! どうしてカワイはこんなに可愛いんだい? カワイだからさ! Q.E.D.だ!


「同じシャンプーとボディーソープを使っているはずなのに、どうしてこんなに違うんだろう? 石鹸? 石鹸の妖精さんなのかな? いい匂いがするよ、カワイ~っ!」

「それはたぶん、気になって食べちゃった缶詰めの匂いだと思う」
「だから桃の匂いがするんだね! カワイとマッチしすぎて気付かなかったよ!」


 昼休憩の時は俺と一緒じゃないとご飯を食べない~くらいのことを言っていた気がするけど、そんな自由すぎるところも推せるよ! 任せて!

 ほっぺ、すりすり。カワイは嫌がらずに、俺の奇行を受け止めてくれた。ほらね、ヤッパリカワイは天使なんだよ。す~りすりっ。


「ヒト、くすぐったい。イヤじゃないけど、くすぐったい」
「さり気なく俺を喜ばせる天才だね、カワイは。ありがとう」
「よく分からないけど、こちらこそ?」


 頭をフル回転させた後に摂取するカワイ、最高です。

 カワイを抱擁から解放し、俺は上目遣いで俺を見てくれるカワイを見つめた。あっ、すごい。存在がマイナスイオン。

 カワイは椅子に座ったまま、チラリと視線を移す。テーブルの上にある缶詰めを見ているようだ。


「でも、ゴミをどうしていいのか分からない。だから、重ねたりまとめたりしちゃった」


 そっかそっかぁ、ゴミかぁ。俺は胸いっぱい肺いっぱいにカワイを吸ったこともあり、一種のハイな状態に陥っていた。

 ──だから俺は、うっかりしてしまったのだ。


「あぁ、ゴミね。それなら、こっちこっち」


 カワイを手招きし、俺はとある一室を案内する。

 ……そう。カワイを、案内してしまったのだ。


「えっ? ヒト、その部屋は指切り──」


 ──ガチャッ。

 カワイが驚いたのと、ほぼ同時。俺は【ゴミの置き場】という情報だけで、脊髄反射のようにとある部屋の扉を開いた。
 ……そう。カワイと指切りをしてまで、隠していた部屋。

 ──またの名を【ゴミ集積所と化した一室】を。


「え? 俺と指切り?」
「えっ。この部屋……」


 扉を開けて、最初に驚いたのはカワイだった。
 それから、カワイが発した『指切り』という単語が妙に引っ掛かった俺が、一時停止。

 そして……。


「──うわぁあッ! みッ、見られたぁあッ!」


 ゴミがビッシリと詰められた部屋を、自らの手で開放してしまったのだと。
 そう気付いた俺は、静かに驚くカワイ以上に驚いてしまったのだった。




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