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3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】
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しおりを挟むとりあえず目についたエプロンを注文すると、時間がかなり経っていたようだ。俺は慌てて、身支度を始める。
諸々を終えてからスーツに着替え、出勤準備が完了。俺はタッパーを鞄に詰め、さて出勤だと意気込む。
だがふと、疑問が湧いた。俺は、後ろをついて歩くカワイをクルッと振り返る。
「ところで、今さらだけどこのお米はどこから?」
って、わざわざ訊くまでもないか。いつも通り、ゼロ太郎が報連相抜きにネットを使って注文を──。
[──カワイ君が近所のスーパーまで買いに行ったのですが、なにか問題でも?]
「──えぇぇッ! カワイ、ついに外出まで習得したのッ?」
まさかの調達方法! 俺はガガンと衝撃を受けてしまった。
しかし、答えたゼロ太郎からすると驚く俺の方が衝撃的らしい。顔があればきっと、眉間に皺を刻みながら瞳を細めていることだろう。
[なにを仰っているのですか。外に出ずして、どうゴミをゴミ捨て場まで持って行くのです]
「いやそれはそうなんだけど! えっ、えぇッ?」
初耳だよ! いや普通に考えたらそうなんだけど、でもでも、えぇっ?
マンションの敷地内にあるゴミ捨て場に行くのは百歩譲って気に留めないとしても、スーパーは話が違うでしょ! だって、スーパーだよ? 絶対に誰かと関わらなくちゃいけないプレイスじゃん!
俺の困惑と心配と動揺が伝わったのか、打って変わってゼロ太郎は胸を張っているかのように自信に満ち溢れた声を返す。
[ご安心ください、主様。私のナビとサポートを持ってすれば、近所のスーパーへ向かうことなど造作もないことです]
「うん。ゼロタローの指示は的確で間違いがない。安心と信頼のゼロタローだよ」
「なんだろう、この疎外感……」
ゼロ太郎とカワイが絆を深めてくれているのは嬉しいけど、ちょっぴり寂しい。確かに俺が会社に行っている間、ゼロ太郎とカワイは二人きりだけども……。
「でも、そっかぁ。カワイ、お外に出て買い物できるようになったんだ」
「うん。ヒトの役に立ちたいから、一生懸命覚えたよ」
後ろにいるカワイが、身長差として必然とは言え、俺を上目遣いで見つめる。
「だから、褒めてほしい。ご褒美ちょうだい」
……。
…………!
「──疎外感とか思ってごめんねっ! ありがとうっ、ありがとうカワイ~っ!」
「──ヒト、さすがにちょっと苦しい」
なんていい子なんだ! 俺の嫁最強すぎ!
……おっと、忘れてはいけない。俺はカワイをムギュッと抱き締めたまま、顔を上げた。
「ゼロ太郎にも後で電子マネーをチャージしてあげよう! 好きな電子書籍を購入するが良い!」
[幸甚の至りに存じます]
それにしても、二人は一緒に外出をできるくらいの関係性を築いていたのか。家族が仲良しになってくれるのは嬉しいものだな、ふっふっふ。
……そう言えば、カワイと一緒に過ごすようになって二週間後くらいの頃だっけ。俺たちが【あんなやり取り】をしたのは。
そんなわけで唐突に始まる、あの日の回想。もわん、もわん、もわぁ~んっ。
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