未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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8.5章【未熟な悪魔と甘い時間です(カワイ視点)】

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 ヒトに喜んでもらえると、すごく嬉しい。ヒトに褒めてもらえるのも嬉しいけど、ボクはヤッパリ、ヒトが喜んでいるところを見るのが一番嬉しいみたい。

 ……だから、少し調子に乗っちゃったんだと思う。

 チーズケーキを焼くと、ヒトは喜んでくれた。ボクは大好きな甘い物を大好きなヒトと毎日共有できて、すごく浮かれちゃっていたと思う。

 毎日、すっごく幸せ。ヒトも同じ気持ちなんだって思っちゃうくらい、幸せいっぱいだった。

 それから、数日間。ボクは色々なチーズケーキの作り方をゼロタローに教わった。試行錯誤を繰り返して、毎日毎日チーズケーキを作り続けたんだ。

 それが、結果的に……。


「──あー、のね、カワイ。毎日チーズケーキを焼いてくれるのは、すっごく贅沢で本当に本当に嬉しいんだけど……さすがに申し訳ない、かな」


 ヒトの表情を曇らせちゃうなんて、気付かないまま。

 ガガンと、ショックを受けてしまう。まさか飽きちゃったのかな、なんて。そんな的外れなことを考えながら。


「毎日本当にすっごくおいしかったよ! 本当に、これからも毎日食べ続けたいくらいだよ!」


 だけどすぐに、ヒトはボクが抱いた不安を払拭してくれた。ヒトはこういうところで気遣い所以のウソを吐かない。だから、これは本心の本音。

 じゃあ、なにがいけなかったんだろう。ボクはヒトの気持ちになって、真剣に考える。

 ……ヒトは、優しい男。だからもしかして、ボクとゼロタローの手間を考えてくれている……の、かな。そんな予測を立てて、ボクはすぐにヒトの気遣いと心配を払拭しようとした。


「ボクのことは気にしなくて大丈夫だよ。作るの、楽しい」
「それはなにより、なんだけど……。あと、えーっとね……」


 どうやら、違ったみたい。それじゃあいったい、ヒトはなにを気にしているんだろう。

 材料費は、大丈夫。ボクがゼロタローに教わりながらパソコンでしている仕事の収入を使っているから、ヒトにメーワクはかかっていないはず。だけど考えてみると、ヒトはそれを知らないかも。

 ヒトが恐縮している理由に目星をつけて、再度ボクは口を開こうとする。
 だけどその前に、ヒトが【ホントの理由】を打ち明けてくれた。


「──太っちゃう、かな」
「──っ!」


 それは、困る。すごくすごく、困っちゃう。
 人間は太りすぎると、病気になる。ヒトは悪魔と人間の混血だけど、それでも【人間】であることに間違いはない。だから、太るとヒトの体が心配。

 確か、人間界で体重の話はとってもデリケート。だからヒトは、ボクに打ち明けられなかったんだ。

 こんな簡単なことにも気付けないなんて、ボクはヒトのつがい失格かもしれない。自分が悪いと分かっていながらも、ボクはシュンと落ち込んでしまった。


「ごめんね、ヒト。毎日ヒトに褒められて嬉しかったけど、ヒトの健康はすごく大切。だから、これからは控えるね……」
「あっ、や、落ち込まないでっ! 嫌だったわけじゃないからっ! ねっ?」


 ヒト、優しい。ダメなボクに、今も気を遣ってくれた。

 人間の体は、脆弱──じゃなくて、えっと。……そう、デリケート。繊細だから、気を付けなくちゃ。ボクはしっかりとそう認識して、決意を固めた。

 ……ちなみに、その後。


[ごめんなさい、カワイ君。分かってはいたのですが、お二人の幸せそうな顔を見てしまうと……私には、とても]


 ゼロタローにも気を遣わせてしまっていたのだと、ボクは気付いたのだった。

 ヒトもゼロタローも、すごく優しい。ボクは『ゼロタローに実体があったら抱き締めたい』って衝動に駆られながら、だけど縮こまって「気付けなくてごめんね」と謝った。

 教訓。甘い物は、甘くない。……なんだか、すごく深いことに気付けた気がする。




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