291 / 322
9.5章【未熟な大家のハイスペ披露です(エツ視点)】
4
しおりを挟む少々思考が寄り道しちゃいましたけど、なんとかゼロ太郎さんの点検が終了っす。
「よしっ。今回も異常ナシっすね。あとは、ちょっとクリーニングをして終わりっす」
「クリーニング?」
ジブンの作業が終わった頃に、家事に一区切りを付けたカワイさんが近付いてきました。ですが、カワイさんに返事をしたのはジブンではなくゼロ太郎さんっす。
[この部屋には、オーナーの部屋にあるデータやプログラミング情報を繋いで引っ張ってきている小型の機械があるのですよ]
「そっすそっす。埃とか溜まっていると怖いんで、こまめに掃除しないと駄目なんすよね~」
補足説明をジブンがしつつ、移動を開始。そうするとパタパタとスリッパの音を鳴らしながら、カワイさんがジブンを追いかけてきたっす。
「それって、ボクとヒトにもできる?」
「できなくはないっすけど、ちょっと色々細かくて扱いが難しい機械なんで、ジブンか……若しくは、んーちゃん以外には任せたくない部分っすね」
するとなぜか、ジブンとカワイさんの会話を聴いていた追着さんが、小首を傾げたっすね。
「んーちゃん? って、誰ですか? 大家さんのお友達さん、とか?」
言われてみれば、自分以外の部屋にある人工知能のお名前を知らないのは当然っすか。リビングの隅っこにある大事な機械を隠すカバーを外しながら、追着さんに返事をするっす。
「あぁ、申し遅れたっすね。んーちゃんはジブンの部屋の人工知能っすよ」
と言うことで、ご紹介。んーちゃんはジブンの部屋にいる愛しの人工知能ちゃんっすよ。
「なるほど──……んっ? でも、人工知能が掃除ですか? ……んんっ?」
追着さんに続いて、カワイさんも小首を傾げているっすね。こう見ると、よく似た方々っすねぇ。
でも、そうっす。追着さんとカワイさんの反応はごもっともっすよ。だって、ゼロ太郎さんは【掃除】ができないんすから。
つまり、ジブンと追着さんの部屋の人工知能は確実に違う部分があるという話になるっすよね。
「じゃあ、ちょこっと来てみますか? ジブンの部屋」
「「──えっ、いいのっ?」」
ちょっとした、思い付き。それに対して、まさかの間髪容れずのハモリっす。そこまで食いつかれると、ちょろっと緊張しちゃうっすよ~。
まぁでも、確かに軽い気持ちで提案したっすけど、見られて困ることはないっすからね。
「それじゃあ、クリーニングを終えたらジブンの部屋に行きましょっか」
「分かった。ンーチャンがすごく気になるから、ボクはエツの口に抹茶チーズケーキを突っ込むね」
「あっ、あっ、ズルい! 俺だってカワイから『あーん』されたい!」
「たぶんっすけど、そんな可愛らしい『あーん』じゃないと思うっすよ?」
ジブン、無事に帰れるんすかね? ちょっぴり、不安になってしまったっす。
[オーナー、諦めてください。彼らはそういう方々なのです]
「身に染みて痛感っすよ。これからもジャンジャン支えてあげてほしいっす」
[無論です。私はそのための存在ですから]
ちょっぴり、ゼロ太郎さんと絆なんか感じちゃったりしちゃったりっすよ。クリーニングを進めながら、ジブンは思わずジンと感動しちゃったっす。
25
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
聖獣は黒髪の青年に愛を誓う
午後野つばな
BL
稀覯本店で働くセスは、孤独な日々を送っていた。
ある日、鳥に襲われていた仔犬を助け、アシュリーと名づける。
だが、アシュリーただの犬ではなく、稀少とされる獣人の子どもだった。
全身で自分への愛情を表現するアシュリーとの日々は、灰色だったセスの日々を変える。
やがてトーマスと名乗る旅人の出現をきっかけに、アシュリーは美しい青年の姿へと変化するが……。
fall~獣のような男がぼくに歓びを教える
乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。
強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。
濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。
※エブリスタで連載していた作品です
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる