未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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10章【未熟な社畜は知りませんでした】

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 カワイの指示を受けて、俺は冷蔵庫や冷凍庫に備蓄されていた作り置きの料理を夕ご飯として温め始めた。


「昨日の残りの肉じゃがと、作り置きの筑前煮。それと、ほうれん草のおひたし……。これでいい?」
「うん、大丈夫」

「オッケー。それじゃあ、テーブルに並べるね?」
[はい。よろしくお願いいたします]


 カワイとゼロ太郎に確認をしつつ、身長に……。そうすることで、夕食の準備が完了だ。

 ただ電子レンジで温めるだけの作業だったけど、ご飯の準備は大変だなって思った。ヤッパリ、日頃から二人は本当にすごくすごい。


「ヒト、電子レンジ使えるんだね。ビックリ」
[おっかなびっくり、といったご様子でしたけどね]
「そんなところもカワイイよ、ヒト」
「あ、うん、ありがとう……」


 居た堪れないし、申し訳ない。もう少し、日頃から家事に触れよう。

 と言うことで、本日もカワイとゼロ太郎お手製の料理だ。いつの間に我が家の冷蔵庫と冷凍庫に作り置きおかずが潤沢状態となっていたのか疑問だが、ただただありがたい。


「カワイは座っていてね。食器は俺が用意するから」
「できる?」
「できるよ!」


 カワイの中で俺のポテンシャルが低すぎる! 日頃の行いを省みると当然の判断だけども!

 それにしても、カワイはすごい。俺は【不調】の時、相手の心配なんて全然できなかった。
 だけど、カワイはしてくれている。俺のことを、こんなにも想ってくれているのだ。

 だからこそ、カワイは【不調】を隠そうとして……。


[主様]
「っ。な、なにっ、ゼロ太郎っ?」


 しまった。もしかして、食器の運び方がお気に召さなかったのかな。俺はビクビクしつつ、天井を見上げた。

 だけど、ゼロ太郎が続ける言葉は俺の想像と違う。


[カワイ君は、主様のそのようなお顔を望んでいませんよ]


 ……分かっている。カワイは、俺がこんなことを考えたって喜ばない。むしろ、悲しむに決まっている。


「うん。……ごめん」
[お気持ちは分かります。そして、主様がそのように顔を歪めてしまう原因に私も関与している以上、強く注意はできません。ですが……]
「うん、分かるよ。だからこそ、ごめんね」


 気持ちを切り替えなくちゃ。カワイだけじゃなくて、ゼロ太郎のことも落ち込ませてしまう。

 俺はしっかりと前を向き、食器を持って歩き始めた。


「お待たせ、カワイ。さぁさぁ、ご飯にしよっか!」
「ありがとう、ヒト。ヒトが温めてくれたご飯、楽しみ」
「うぅっ、ハードルが低い……! 無垢な言葉ほど刺さるものはないよぉ~」


 そもそも今日の献立だって、カワイとゼロ太郎が作ってくれたもの。それなのに、俺が電子レンジでチンと温めただけでカワイが喜んでいる。


「もっと頑張ろう、俺。マジで本当に、頑張れよ、俺……」
[いえ、あまり頑張らないでください。食材が無駄になってしまいますので]
「いやだから結論が飛躍しすぎだって!」


 ゼロ太郎の心無い発言に、俺はビシッとツッコミを入れた。そんな俺たちを見て、カワイは笑っている。

 良かった。まだ、笑えるんだ。……心の奥底でそんなことを思ったなんて、カワイには言えないけれど。




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