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終章【恋模様シーイング】

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 秋在の入浴が終わるまで、母親とお茶をすること十数分。


「あら、アキちゃん~」


 リビングに、秋在が現れた。

 肩にタオルをかけた秋在は、冬総へ近寄る。


「行こう」


 そして、ティーカップに触れようとしていた冬総の手を、秋在は引いた。


「あ、秋在……。ちょっと待って、先に片付け――」


 せめて、ティーカップをキッチンに下げよう。

 そう思った冬総は、正面に座っていた母親へ視線を投げた。

 すると。


「んふふ~」


 母親が、親指をグッ! と立てて、二人を見送ろうとしている。

 その意味はよく分からなかったが、冬総は小さく会釈をした。





 秋在の部屋に辿り着くと。

 すぐさま秋在は、冬総に抱き着いた。

 目に見えて甘えられることに慣れていない冬総は、当然驚く。

 が、すぐにその驚きは別の感情で塗りつぶされた。


「……ン? もしかして……シャンプー、変えたのか……?」


 日頃から秋在にゾッコンな冬総は、些細な変化にも過敏に反応する。


「今までのも好きだけど、コレも結構いいな。……甘い感じで、可愛い」


 感想を述べながら、冬総は秋在の髪を一束だけ掬い、香りを堪能し始めた。

 変化に気付いてもらえたことが嬉しいのか、それとも恥ずかしいのか……。

 秋在は冬総の胸へ、頭をスリスリと寄せる。

 だが、秋在の髪はまだ乾かされていない。


「秋在、秋在……! 俺の服が濡れる……!」


 至極当然な指摘に、秋在は顔を上げた。


「――脱げば?」


 秋在はそれだけ答え、冬総が着ている上着のジッパーを口で下げ始める。


「いや、それはそうなんだけど……ッ。…………ン? もしかして俺、誘われてるのか……ッ!」
「遅いよ」


 冬総の首筋に鼻先をこすりつけて、秋在は囁く。


「お風呂で、後ろ……キレイにしたよ……っ?」
「……ッ!」


 それは、あまりにも蠱惑的な囁きだ。

 だが、一階のリビングには、秋在の母親がいる。

 そのまま襲いかかりたい衝動と、欠片ばかりの理性が戦いを始めた。

 ――しかし、その戦いはすぐに終戦を迎える。


「――お母さん、これからママ友とお茶会」
「――秋在、愛してる」


 ――淫らな欲望が、圧勝した。

 すぐさま気持ちを切り替え、冬総は秋在の唇にキスを落とす。


「ん……っ」


 秋在が吐息を漏らすと、冬総はそのまま秋在の体を抱き上げた。


「秋在、マジで可愛い……美味しそう」


 ベッドへ秋在を下ろしながら、冬総は囁く。

 秋在はキョトンとした後、自分の髪を一束掬い、匂いを嗅ぐ。


「生臭い?」
「いや。……シャンプーの匂いってのもあるけど、秋在の匂いがする」


 冬総と秋在は、平日……秋在が学校を休んでも、ほぼ毎日会っている。

 そのせいか……ほんの数日、会えないだけで。


「最後にシたの、一週間くらい前だっけ……? できるだけ、ちゃんと優しくするけど……我慢できなくなったら、ごめんな……?」


 会えた日の反動は、凄まじかった。




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