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11章【喉元過ぎれば熱さを忘れる】
16 *
しおりを挟む胸を弄られながら、山吹も負けじと桃枝を悦ばせようとした。
手を動かし、硬くなった桃枝の逸物を扱く。にゅちにゅちといやらしい音が鳴り、それにすら山吹は興奮してしまった。
だが、気持ちを切り替えた桃枝は強い。山吹が手を動かせば、桃枝も桃枝で負けじと胸への愛撫を強めるのだ。
「んんっ、ん、ふ……あ、っ!」
胸を弄ばれると、山吹には為す術がない。この展開をなぜ想定していなかったのか不思議になるほど、山吹は胸が弱かった。
「白菊さん、やぁ、どうしよう……っ」
「ん、なんだよ」
「白菊さんのペニス、お尻に挿れてほしくなっちゃいました。手で触るだけじゃ、足りないぃ……っ」
「ッ!」
ビクビクと体を震わせながら、山吹は求めるように桃枝の逸物を握る。
山吹の乳首を舌で弾いた後、桃枝は震える山吹を見上げた。
「やめろ、煽るな。そもそも、手でし始めたのはお前だろ」
「でもぉ……っ」
パチッ、と。山吹はわざと、桃枝と視線を合わせる。
「乳首、周りから先っぽまで……全部、丁寧に愛撫されて──んっ、あ、ッ」
乳首をつまむ桃枝の指に、山吹は自分から胸を押し付けた。そうして擦れた指の感触に、山吹はまたしても体を震わせる。
「はぁ……白菊さん、すごい……っ。お上手、です。乳首いじめられて、ボク、お腹の奥が疼いちゃいます、ん……」
つまり、抱いてくれ。山吹が言いたいのは、そういうことだ。
ならば桃枝が取る行動は、ひとつ。山吹の要求を──。
「──授乳手コキってやつをしてくれるんだろ。なら、続けろよ」
……呑まないパターンも、あるらしい。
桃枝は山吹の乳首に歯を立て、軽く噛む。すると山吹は、ビクッと体を震わせた。
「んあ、ッ! やだ、白菊さんっ。ナカっ、ボクのナカに──」
「それとも、なんだ? 手で俺をイカせる自信がないのか? これで、俺を癒す自信がないってことか? それは意外だな、緋花」
「は、んぁ、っ!」
乳首をつねられ、山吹は喘ぐ。
桃枝としては、気乗りしない姿勢で行為を始めたことに対するちょっとした意地悪だった。
だが、山吹はと言うと……。
「エッチしたいのに、ナカに挿れてほしいのに、どうしよぉ……」
視線を下げて、胸に愛撫を施す桃枝を見つめて、それから──。
「──焦らされて、白菊さんに『ダメ』って言われて、コーフンしちゃいます……っ」
へにゃりと、柔らかくて情けない笑みを浮かべた。……つまり、存外満更でもない様子だ。ということらしい。
「……お前は、あれだな。エロイことが好きなくせにウブで、だけど淫乱だからやっぱり快感に弱くて、だからつまり、チョロイ」
「えっ? あ、あのっ、いきなりなにをっ?」
「乳首を優しく弄っても悦ぶし、少し強くしても悦ぶ。舐めても噛んでも悦んで、なのに口では『嫌だ』っつぅよな。それでも胸を手やら顔やらに押し付けてくるんだから、まぁ分かり易い奴だが」
「やだ、白菊さんっ。そんなに言われると、恥ずかしい……っ」
「なんだよ。行為の感想を語り始めたのはそっちだろ」
「うっ、あっ」
桃枝に妙なスイッチが入った理由も分からないまま、山吹は戸惑い始める。
「い、言わないで、ください……。恥ずかしくて、ボク……っ」
事実をわざわざ言葉にして、指摘されて。山吹の顔は、みるみるうちに赤くなっていった。
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