眠そうな令嬢は最強です。

あさり

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「だから言ったでしょ? 娘はちゃんとやるって」

そう言って笑ったのは、マティルダ。
今日も変わらず紅のドレスに、艶やかな髪を風になびかせ、優雅にティーカップを傾けている。

対して、クラウスは腕を組み、真面目な顔のまま頷いた。

「だが“魔王の片鱗”相手に……まさか君の魔力特性まで再現しているとは思わなかった」

「ふふーん、すごいでしょ? 私の娘よ?」

「私の娘でもある。……だが最近、王太子とやらとの距離が近すぎるのが気になるな」

「え、やきもち? 可愛い~~~♪」

「やきもちではない。断じてない」

アルディネ家の屋敷。広々とした庭園のテラスで繰り広げられる、
それはもう優雅(に見せかけたカオス)な家族のお茶会。

レティシアはというと、紅茶を口にしながらため息をついていた。

「……なんでこう、家でゆっくりするだけなのに疲れるのかな」

「うふふ、家族サービスってそういうものよ、レティ。
あ、ねぇ、最近アレクシスくんとはどう? 進展あった?」

「娘の恋愛に過剰な関心は控えるように」

「うっさい、クラウス。娘の将来の楽しみくらいなきゃ、私がつまんないのよ~」

レティシアはそっと立ち上がり、庭の隅に向かおうとする。

「ちょっと頭冷やしてくる。なんかこう、家族に監視されながらの恋愛とか普通に無理」

「ふふ、でも、そういう逃げるところも可愛いわよ? レティ、意外と純情だし」

「純情じゃない。冷静に距離感を保とうとしてるだけ」

「はいはい、強がり強がり~」

「ああ、やめて、追いかけてこないで」

クラウスは少し離れた場所でそれを見て、微かに笑みをこぼす。

「……やれやれ。
だが、こうして平和な日々が戻るのなら――娘が照れて逃げる姿も悪くはないな」

「え、親バカ?」

「うるさい。君が“親バカの神”みたいな存在だろう」

そんな掛け合いを背に、
レティシアは庭の奥の木陰で、こっそりとため息をつく。

「……はぁ。あれでよく国をまとめてたな、うちの両親」

でもその声には、どこかあたたかい響きがあった。
あの2人が私が成長するまで、守ってきてくれたおかげで、今がある。

そして彼女の手元には、アレクシスから届いた小さな手紙。
そこには一言だけ――

『君が笑う世界が、僕の理想だ』

レティシアは口元をゆるめ、ポケットに手紙をしまう。

「……ま、悪くないかもね、こういう日々も」
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