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別れのワルツ
やっぱり、君が
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「別れのワルツ?」
メアリーは、ショパンの曲の名前に悲しい響きを感じて、不安そうにアダムを見ました。
アダムは、不安そうに小さな眉を寄せるメアリーを愛しそうに微笑んで見つめ、
それから、クリスマスのミサの時の司教様のような難しい顔で、メアリーに言いました。
「そう、このワルツは、ショパンが、悲恋に終わった、恋人のマリアに贈った曲なんだ。」
「ひれん…('∇')」
アダムの言葉を聞きながら、メアリーは、切なくもロマンチックな予感に目を輝かせました。
「ああ、ショパンはね、ドレスデンで暮らしたことがあるんだよ。
その時知り合ったのが、ポーランド人の貴族の娘、マリアと運命的な再会をするんだ。」
アダムは、目を輝かせて興味深く見つめてくるメアリーを見て、楽しくなってきました。
「ポーランド人の貴族…。マリアって、どんな人かしら?」
メアリーは、膨らんだ夢を吐き出すように、とても甘い、少し大人びたため息を一つつきました。
ピアノの前で座って様子を見ていた叔母のディアナは、ため息をつくその様子が、メアリーのお母さんにそっくりなので、思わず忍び笑いを漏らしてしまいました。
「とても綺麗な人だよ。」
アダムはそう微笑みながら、心のなかで(多分…)と、呟きました。
「ショパンはね、ちょうどメアリーと同じような年のマリアとあっていたんだけど、16才になって、可憐なパンジーのように良い娘に成長したマリアを見て、恋に落ちたんだ。」
多分…
アダムは、真剣に自分の話を聞くメアリーを見て、少し、罪悪感が沸いてきました。
なぜなら、アダムは、マリアの絵姿なんて見たことが無かったからです。
ポーランド人の友達が、パンジーが好きなので、適当に話しただけなのです。
パンジーは、現在のポーランドの国の花とされています。
「じゃあ、お兄ちゃんも、メアリーが16才になったら、メアリーに恋をする?」
メアリーは、無邪気にアダムに聞いてまわりを驚かせました。
フランクは、思わず本を落とし、
叔母のディアナは、おませな台詞に呆れました。
アダムは、目を万丸くして…
それから、かがんでメアリーと目を合わせると、
「プリンセス。貴女は、フランクより、僕を選んでくれるのかな?」
と、真剣な顔でメアリーを見つめました。
フランクは、アダムの言葉に、思わず前のめりに姿勢をただし、立ち上がろうか迷いました。
ベルヌも兄のアダムも大好きですが、メアリーをとられるわけにはいきません。
叔母のディアナは、真面目な顔を作っていても、アダムの背中が、面白そうに震えて笑っているのを見逃しませんでした。
ディアナが、アダムをたしなめようと声をかける前に、アダムが悲しそうな顔でこう言いました。
「でも…、ショパンは、マリアと結ばれなかった。
マリアが若かった事と、ショパンが病弱だったから。
ドレスデンを去るときに、ショパンが残したのが、この『ワルツ9番』なんだ。」
アダムはそう言って、ディアナを見ると、ディアナは、肩をすくめて呆れながらもピアノを弾き始めました。
それは、クリスタルの小さなビー玉のような、
透明で、少し物悲しく部屋に流れて行きます。
「一曲お願いできますか?」
アダムが恭しくお辞儀をすると、
メアリーも、お姫様のように両手を差し出しました。
二人は、軽く手をとると、ホールドと言う正式な踊りかたではなく、
波のように揺れながら曲を楽しみました。
フランクは、その様子をしばらく見ていましたが、落ちた本を拾うと、また、続きを読み始めました。
「でも…私、やっぱり、この曲を聞くと、小さな頃、フランクと一緒に寝たときの事を思い出すの。
寒い晩で、眠れなかった私が、フランクのベッドにはいったの。
屋根を伝う水の音を聞きながら、フランクは、私を抱き締めて暖めてくれたわ。
そうして、お話をしてくれたの。
この曲を聞くと、私、その時の事を、思い出して、なんだか懐かしくなるの。」
メアリーは、ダンスが終わったあとに、アダムにそう言いました。
「メアリー、僕と踊ってくれる?」
いつの間にか、メアリーの後ろにいたフランクが、少し、恥ずかしそうにメアリーに言いました。
「いいわよ。」
メアリーの嬉しそうな声を聞きながら、アダムは静かに部屋を出て行きました。
穏やかな時が、屋敷を流れて行きました。
メアリーは、ショパンの曲の名前に悲しい響きを感じて、不安そうにアダムを見ました。
アダムは、不安そうに小さな眉を寄せるメアリーを愛しそうに微笑んで見つめ、
それから、クリスマスのミサの時の司教様のような難しい顔で、メアリーに言いました。
「そう、このワルツは、ショパンが、悲恋に終わった、恋人のマリアに贈った曲なんだ。」
「ひれん…('∇')」
アダムの言葉を聞きながら、メアリーは、切なくもロマンチックな予感に目を輝かせました。
「ああ、ショパンはね、ドレスデンで暮らしたことがあるんだよ。
その時知り合ったのが、ポーランド人の貴族の娘、マリアと運命的な再会をするんだ。」
アダムは、目を輝かせて興味深く見つめてくるメアリーを見て、楽しくなってきました。
「ポーランド人の貴族…。マリアって、どんな人かしら?」
メアリーは、膨らんだ夢を吐き出すように、とても甘い、少し大人びたため息を一つつきました。
ピアノの前で座って様子を見ていた叔母のディアナは、ため息をつくその様子が、メアリーのお母さんにそっくりなので、思わず忍び笑いを漏らしてしまいました。
「とても綺麗な人だよ。」
アダムはそう微笑みながら、心のなかで(多分…)と、呟きました。
「ショパンはね、ちょうどメアリーと同じような年のマリアとあっていたんだけど、16才になって、可憐なパンジーのように良い娘に成長したマリアを見て、恋に落ちたんだ。」
多分…
アダムは、真剣に自分の話を聞くメアリーを見て、少し、罪悪感が沸いてきました。
なぜなら、アダムは、マリアの絵姿なんて見たことが無かったからです。
ポーランド人の友達が、パンジーが好きなので、適当に話しただけなのです。
パンジーは、現在のポーランドの国の花とされています。
「じゃあ、お兄ちゃんも、メアリーが16才になったら、メアリーに恋をする?」
メアリーは、無邪気にアダムに聞いてまわりを驚かせました。
フランクは、思わず本を落とし、
叔母のディアナは、おませな台詞に呆れました。
アダムは、目を万丸くして…
それから、かがんでメアリーと目を合わせると、
「プリンセス。貴女は、フランクより、僕を選んでくれるのかな?」
と、真剣な顔でメアリーを見つめました。
フランクは、アダムの言葉に、思わず前のめりに姿勢をただし、立ち上がろうか迷いました。
ベルヌも兄のアダムも大好きですが、メアリーをとられるわけにはいきません。
叔母のディアナは、真面目な顔を作っていても、アダムの背中が、面白そうに震えて笑っているのを見逃しませんでした。
ディアナが、アダムをたしなめようと声をかける前に、アダムが悲しそうな顔でこう言いました。
「でも…、ショパンは、マリアと結ばれなかった。
マリアが若かった事と、ショパンが病弱だったから。
ドレスデンを去るときに、ショパンが残したのが、この『ワルツ9番』なんだ。」
アダムはそう言って、ディアナを見ると、ディアナは、肩をすくめて呆れながらもピアノを弾き始めました。
それは、クリスタルの小さなビー玉のような、
透明で、少し物悲しく部屋に流れて行きます。
「一曲お願いできますか?」
アダムが恭しくお辞儀をすると、
メアリーも、お姫様のように両手を差し出しました。
二人は、軽く手をとると、ホールドと言う正式な踊りかたではなく、
波のように揺れながら曲を楽しみました。
フランクは、その様子をしばらく見ていましたが、落ちた本を拾うと、また、続きを読み始めました。
「でも…私、やっぱり、この曲を聞くと、小さな頃、フランクと一緒に寝たときの事を思い出すの。
寒い晩で、眠れなかった私が、フランクのベッドにはいったの。
屋根を伝う水の音を聞きながら、フランクは、私を抱き締めて暖めてくれたわ。
そうして、お話をしてくれたの。
この曲を聞くと、私、その時の事を、思い出して、なんだか懐かしくなるの。」
メアリーは、ダンスが終わったあとに、アダムにそう言いました。
「メアリー、僕と踊ってくれる?」
いつの間にか、メアリーの後ろにいたフランクが、少し、恥ずかしそうにメアリーに言いました。
「いいわよ。」
メアリーの嬉しそうな声を聞きながら、アダムは静かに部屋を出て行きました。
穏やかな時が、屋敷を流れて行きました。
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何を貰ったんだろ??とても先が気になったのでお気に入り登録させてもらいました(^^)
後文章とか参考になりました。他の作品も書かれているようなのでこれから見ます(^o^)良かったら私の作品も観てくださいね(^^)@