お願い乱歩さま

のーまじん

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活動開始

部活

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  穏やかな秋の日差しの中、学校の図書館に葵は向かう。
  中学時代はテニス部に所属していたが、高校では郷土資料部に所属した。
  高校の部活は任意で、帰宅部でも問題は無かったが、部活に所属すると学校のパソコンが扱えるのが利点だった。そして、貸し出し禁止の資料が閲覧自由なのも。

  図書館の引き戸を開けると、まだ、誰もいなかった。
  毎週、月曜日は部活のために図書館の一般利用は禁止になる。
  この日、図書館が利用出来るのは文芸部と郷土資料部の2つである。

  流感やら熱中症で休部が増えるなか無言で作業をする、この2つの部の活動は安定していた。
  葵は窓を開け、テーブルを消毒液をかけて軽く拭くと遠く広がる空を見つめた。

  高2になったのに…どこにも行けないなんて。

  葵は、ため息をついた。高校生になったら、富山市まで行って映画を見たり、コンサートに行っても良いと言われていた。
  そして、コミケ…コミックマーケットに連れていってくれると奈穂子は約束してくれた。
  商店街の片隅で、雑貨屋をしている奈穂子からは思いもよらないが、彼女はあれで知る人ぞ知る絵師なのだ。     
  中学時代、祖母の薫と倉庫を掃除した時、穂子の作品を見て、胸がトキメいたのを思い出す。
  それは、古代文明の美しいお姫様の絵だった。
  それなのに、皆んな嘘つきなんだから。
  葵は不景気を理由に遠出をさせてくれない大人達に腹をたてる。

  
  そうこうしていると引き戸が開いた。葵は戸の方角をみた。

  「木曽さん、早いね。」
2年生の郷土資料部、大川 遥希である。
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