オーデション〜リリース前

のーまじん

文字の大きさ
157 / 208
パラサイト

しおりを挟む
  死にそうになる私と真逆に溶生は私に気がつくと、安心したように立ち上がる。

  「君は…見たんだね?」
若葉溶生は、憂いのある綺麗な声でそう聞いた。
「えっ…(°∇°;)」

  見られてしまったの間違いじゃ…

  私はパニクっていた。
  ライトを床に向け、ぼんやりとした世界の中で、私は自分の心臓の音を聞いていた。
「雅苗を…見たのだろ?」
「え…あの…。どういうことでしょうか?」
私は、後ろに一歩下がり、軽くペンライトで辺りを照らした。

  あれは…私の幻覚だ。

  溶生の言葉の意味が理解できなかった。
「隠さなくても良いんだ。私も、彼女を感じた。」
溶生の声が、甘さを含んで部屋に充満する。
「百物語が成功したんだ。だから、彼女の霊が屋敷に来たんだよ。」

  やめてくれ。

  私は、薄暗い闇の中で、嬉しそうに不気味な話をする溶生の声に恐怖を感じた。

  とりあえず、明かりをつけよう。

  ペンライトを壁に向け、スイッチを探す。

「さあ、教えてくれないか?彼女が何を伝えに来たか?」
壁に進む私に、溶生が近づく。
  彼の右腕が体にあたり、彼は幻覚ではない事が理解できた。

  「幻覚を見ました。彼女は…何か、北宮家の因縁について話していました。」
  因縁…そんな言葉が飛び出た事に驚いた。まるで、本当に怪談のようだ。

「ここは暗い。とりあえず、外に出ないか?」
溶生の手が、私の腕にかかる。反射的にそれを払って部屋のスイッチを入れようとした。が、溶生にそれを止められる。
「ダメだよ…灯りは…良くないものを呼んでしまうから。」

  溶生の声と次の静寂に、蛙の鳴き声が耳に戻るのを感じた。

  雅苗の言葉を思い出す。  
「ダメですよ。侵入されたら困りますから。」

  雅苗は、それを池の妖怪だとそう言った。

  「い、池の妖怪が来るから、ですか?」
私は、率直にこう聞いた。
  夜行虫は、光や熱に反応し集まってくる。
  気絶する前にはついていた灯りが消されていた…と、いう事は、雅苗がそれを心配して消したと言うことだろうか?

「ああ、あの竜神池の話だね。」
「竜神池?」
「ああ、この辺りで、昔からある伝説のようだよ。7年に一度、池が現れそうだ。」
溶生の話に、秋吉と昼に話した事を思い出した。

  ロプノールの様に消える池………

   7年に一度。

  心臓がドキドキした。
  ここで、ある伝説が頭をよぎる。
  胸ポケットの尊行さんの手帳に手を当てた。

  池の平……

  静岡県の水窪町の幻の池…亀ノ甲山に現れるという幻の池…

  あの付箋には意味があったのだ。
  尊行さんは…何かをそこで見つけたのだ…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/25:『がんじつのおおあめ』の章を追加。2026/1/1の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/24:『おおみそか』の章を追加。2025/12/31の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/23:『みこし』の章を追加。2025/12/30の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/22:『かれんだー』の章を追加。2025/12/29の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/21:『おつきさまがみている』の章を追加。2025/12/28の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/20:『にんぎょう』の章を追加。2025/12/27の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...