夏の夜話 短編集

のーまじん

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貧乏神と私

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 物がないのも貧乏だと言ったが、

 物がありすぎるのもまた、貧乏への道になる。

 なぜなら、過去にとらわれて、現在、必要なものを見失ったり、全力を傾けることが出来なくなるからだ。

 私もまた、過去にとらわれて生きてきた。
 物を置けるからこそ、母の思い出に囚われ、

 そして、500円も稼げない小説を…
 完結しようと5年を費やした。


 貧乏とは…今、考えるに、物にとらわれて、未来が見えないことである。

 フリマなんてものは、他人の過去まで背負い込む…
 貧乏神の前世利益の賜物なのかもしれない。

 そのせいなのか、なんなのか、
 はじめのフリマに遊びに来た剛はフリマでは、なくてはならない不用品を、知らないうちに手にした。

 そして、儲かった我々に連れられて、初めて食べたハンバーガーに、フリマをする意義を見いだした。

 私の奢ったワンコインのバーガーは、剛を食のパラダイスへと…連れていったようだった。


 何においても、面倒くさがりだった剛は、熱に浮かされたようにハンバーガーと店について語り、
 そして、彼を『フリマ人』に変えたのだった。



 その夏、私達、女性3人と、カバのようなオッサン1人は、毎週、フリマを目指して地方イベントを練り歩く事になった。



 荷物の少ない私と剛は、ガソリン代を浮かせるために一緒の車で移動をし、

 海に山にと不用品を売る週末を楽しんだ。

 剛は、家族や友人と遠出をした事がなく、地域にこんなに遊び場があったことに驚いていた。

 が、私もまた、同じようなものだった。
 高卒で、集団就職で都会へと行ったので、地方の遊び場には思い出がなかったのだ。


 その夏は、だから、とにかく、我々は遊んだ。

 海でバーベキューをしたり、山やら、美術館やら、いろんな所へと皆で出掛けた。


 まるで、子供の頃の夢を片っ端から叶えるように。

 そして、夏がきらやかに過ぎ去り、秋を味わい、山が色あせて、冬を知らせる雷が聞こえる頃…

 遺跡のバイトは終わり、納会を終え、
 そうして、我々は、別々の道へと歩むことになった。




 一週間後に職安で会うまでは。
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