墓守ドワフ

マール

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墓守ドワフ

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 巨大なコモドドラゴン、ひしゃげたゴブリンライダーが15体ずつ、真っ赤に染まってひしゃげている。

 今日も勇者様達は派手にヤッたらしい。
 俺は墓守ドワフ。勇者隊の後始末するのが仕事だ。
 異世界からいらした勇者様も神殿で愛でられた聖女様も城勤しろづとめの騎士様も魔物をほふった後の始末を知らない。知っているのは魔道士様だけだ。
 魔道士様が土魔法で掘った穴に俺が血だらけのコモドドラゴンとゴブリンライダーを放り込んで魔石取り出しと解体を行う。
 これがとんでもなく一苦労だ。少しでも動きそうなのは先祖伝来のスコップでぶっ叩いてとどめを刺す。

 ピロリン

 レベルが上がったらしい。が、確かめる暇もなく解体を続ける。魔物は時間がたつほど硬くなっていくからだ。柔らかいうちに剥ぎ取りを済ませなければならない。
 汗だくになって魔石を外せば、魔道士様がマジックバックに入れていく。

 ピロリン

 また上がった。半死半生が多すぎる。

「魔道士様、経験値はちゃんと入ってますだか?」
「多少は誤差の範囲だ。気にするな。危険手当てだと思えばいい。それに聖女の加護で経験値二倍だ。気づかまいよ」

「そんなもんですかね」
 ほうほうと穴から抜け出して魔道士様と一緒に土を被せる。
「そういうことだ。また頼むよ」





 山あり谷あり勇者一行には魔王を倒すまで休みがない。
 勇者達が魔物を退治し、魔道士様が穴を掘り墓守ドワフが魔物を屠り解体と魔石を剥ぎ取る。

 だけど、どんどん魔物が強くなり、スコップで止めを刺す割合も増えていく。

ピロリン ピロリン

 ワイバーンの首をスコップで叩き斬る。

「止め刺してってくださいよ」
「お前の腕がいいから、後始末を任されるのさ」と、魔道士様も無数の風刃を作り出して丁寧に魔物の首を斬っていく。

ピロリン ピロリン ピロリン

 その間、勇者様、聖女様、騎士様は旅を進める。勇者様が転移石をお持ちのため、解体が済んだら魔道士様がその石を目印に俺を連れて瞬間移動してくれる。ありがたい。


野を抜け、街をいくつも抜け、様相の変わった街や森を抜けた。旅はもう終わるだろう。
 大型魔物のドラゴンやキメラが増えてきた。勇者様達の止めがどんどん甘くなり、後の始末が大変だ。魔道士様の穴の中、俺はいつも通り討伐部位を剥いでいく。唸るスコップの切れ味もいい。

ピロリン ピロリン ピロリン







立派な城は瓦礫になった。
死闘の末、とうとう魔王も倒れ伏した。
勇者様は喜び、聖女様が抱きつき、騎士様が男泣きに泣く。
 次次に転移石で王城に戻っていった。

 後には魔道士様と俺、墓守ドワフだ。

 いつものように魔道士様が穴を掘り、俺が魔物を放り込む。
「……無念だ…………」
 また勇者様達は半死半生にしたらしい。
 呻く魔王にスコップを振り上げた。

 パンパカパーン

 ファンファーレが鳴った。
 俺は勇者になり、魔道士様は賢者様になり、勇者様と聖女様と騎士様は最後の経験値を取り損ねたのだった。

 それを知るのは俺と賢者様だけだ。墓守らしく墓まで持って行こう。
 
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