37 / 51
37.どうしてこうなったのか教えてほしい
しおりを挟む
いくら思いっきりとはいえ、頬を張られただけで失神するとかどうなんだ?
頭はぐらぐらしたが一応十分程度で復帰したらしい。生きててよかった。
目が覚めた時、猫紙と美鈴が俺の顔をとても心配そうな顔で覗き込んでいた。とりあえず猫紙は邪魔だったので顔を押しやり、美鈴にキスをした。
で、両頬を思いっきり引っ張られた。
「みへいっ! ひはひっ、ひはひっへっ!」
「この大馬鹿者ぉっ! なんでアンタまで死んじゃうのよぉおっ!」
そう叫んだ美鈴の目にぶわっと涙が浮かんだ。そしてそれが、滂沱という表現よろしく流れ落ちてきた。俺の顔中に落ちてきた涙の雨が、美鈴の心情を表しているようでひどく胸が痛んだ。
そういえば、美鈴は間違って死んでこちらの世界に来て、俺のことをずっと案じていたって聞いた。
「みへひっ! みへひっ!」
俺は両手を伸ばして美鈴を力いっぱい抱きしめた。
俺には美鈴しかいなかった。だから異世界に飛ばされなくたってどちらにせよどっかで事故って死んでいたはずだ。
「ばかばかばかばかっ! なんでよぉおっ、ひぃいーーんっ、わぁあーーーんっ、あぁーーっ!」
美鈴が子どもみたいに泣く。俺はろくでもない男だったけど、美鈴が俺の前でこんな風に泣くのを今まで見たことはなかった。
「みへひっ、みへひっ、ほへんっ! へほっ……!」(ごめんっ! でもっ)
いいかげん頬を引っ張るのを止めてほしい。
美鈴は泣くだけ泣くと、ぐすぐすと鼻を啜った。そうしてやっと俺の頬を解放してくれた。すごく痛いし熱い気がするから、きっと俺の頬は真っ赤になっているに違いない。でもそんなことはどうでもいいのだ。大切なのは美鈴が今俺の腕の中にいることだった。
「みれい……」
「鼻水、かみたい……」
本当に締まらねえなと思った。とりあえず美鈴を離して、鼻をぢーん! とかんでもらった。
「この世界の紙固い。鼻痛い……」
美鈴が機嫌悪そうに呟いた。確かに鼻が赤くなっていた。柔らかいティッシュがあるといいよな。
猫紙がトンッと俺が寝かされている床の上に上がった。
「落ち着いたかのぅ……。あやつらが随分困っている様子じゃが」
「え?」
「ええ?」
猫紙が頭を動かした方向を見ると、衛士たちがバツの悪そうな顔で部屋の外からこちらを覗いていた。
「あー……ええと……場所を移しましょうか? って、今竜樹はどちらでお世話になっているの?」
「あ、今はヨウシュウ商会に……」
「とりあえずここを出ましょ? 竜樹、立てる?」
「うん……」
美鈴が床を下りる。俺も彼女のように下りようとしたのだが、さっき頬を張られて脳が揺れたせいなのかくらりとした。
「竜樹っ!?」
美鈴がすぐに気づいて俺を支えた。そして俺を一度床に座らせたかと思うと、それから抱き上げた。
「はぁっ!?」
「危ないから動かないでっ! さぁ、行くわよっ!」
どゆこと? なんで俺美鈴に抱き上げられてるワケ? 俺実はヒーローじゃなくてヒロインだったのかっ?
混乱した頭のまま俺は美鈴に抱かれて移動することになった。さすがにあの狭い階段では下ろしてくれるかと思ったのに、美鈴は当たり前のように二階から一階に跳んだ。そして堂々と王子の宮の扉から表へ出た。
「み、美鈴……あの、そろそろ……」
「なぁに?」
下ろしてほしいなーと思ったけど、にーっこり笑んで聞き返され、俺は黙った。だって目が笑ってないいいい。美鈴さん怖すぎです。猫紙様どうにかしてっ!
〈……無理じゃの〉
〈そんなああああ!〉
足元にいた猫紙に拒否られたああああ!
「み、美鈴っ! 私はそなたをっ……!」
ん? 誰だ? と思ったら、衛士たちに身柄を拘束されているらしい王子がいた。うお、まだここにいたのか。ってここが王子の宮だっけ。
「フン王子、私の伴侶が迎えにきてくれたのでこれで失礼します。お世話になりました」
美鈴は目が笑っていない笑顔を王子に向けると、俺を抱いたまま王子の横を通り過ぎた。
「美鈴っ、伴侶だとっ!? わ、私は認めんぞっ! そんなっ、そなたに抱かれているような弱き者などっ!」
だよなぁと俺自身も自分の情けなさに涙がちょちょ切れそうだ。でも俺泣かないっ! だって男の子だもんっ!
美鈴が門を出る手前で足を止めた。そしてゆっくりと振り返る。
「私の伴侶は私が決めます。私の伴侶は竜樹しかいない。王子、貴方は違うのです」
「いいやっ、私は運命に抗ってみせるっ!」
「さようなら」
「美鈴っ!」
王子の叫びを背にして、美鈴は俺を抱いたまま宮の門を出た。
「美鈴様、王子ともあろう者が貴方を監禁したことをお詫びいたします」
厳つい人が膝を付き、頭を石畳に付けた。え? これってもしかして叩頭ってやつ?
「……お詫びっていったい何がいただけるのかしら? そんなことよりも早く王城を出たいわ。竜樹、ヨウシュウ商会の人はどこにいるの?」
「……え? さっきは……謁見の間みたいなところにいたけど……」
「失礼ながら、パンズ殿はすでに王城を出る準備をしていらっしゃいます」
衛士の一人が膝をついて教えてくれた。
「ならそちらへ案内してくれる?」
「はっ!」
ところで、俺はいつまでこの状態でいればいいんでしょうか。なんでそれなりの重さがあるはずの俺を、美鈴は軽々と抱き上げているんだとかいろいろツッコミどころはあるのだが、頼むからいいかげん下ろしてほしかった。
「み、美鈴、そろそろさ……俺……」
「なぁに?」
「な、なんでもない、デス……」
美鈴が怖いよー。
俺はそのままパンズと合流するまで抱き上げられて王城内を移動した。もうなんつーか、SAN値がごりごり削られるかんじだった。
美鈴さん、いいかげん下ろしてえっ!
ーーーーー
SAN値 正気度を表すパラメーター(あるゲームで使われいたパラメーターである。竜樹もやってた)
頭はぐらぐらしたが一応十分程度で復帰したらしい。生きててよかった。
目が覚めた時、猫紙と美鈴が俺の顔をとても心配そうな顔で覗き込んでいた。とりあえず猫紙は邪魔だったので顔を押しやり、美鈴にキスをした。
で、両頬を思いっきり引っ張られた。
「みへいっ! ひはひっ、ひはひっへっ!」
「この大馬鹿者ぉっ! なんでアンタまで死んじゃうのよぉおっ!」
そう叫んだ美鈴の目にぶわっと涙が浮かんだ。そしてそれが、滂沱という表現よろしく流れ落ちてきた。俺の顔中に落ちてきた涙の雨が、美鈴の心情を表しているようでひどく胸が痛んだ。
そういえば、美鈴は間違って死んでこちらの世界に来て、俺のことをずっと案じていたって聞いた。
「みへひっ! みへひっ!」
俺は両手を伸ばして美鈴を力いっぱい抱きしめた。
俺には美鈴しかいなかった。だから異世界に飛ばされなくたってどちらにせよどっかで事故って死んでいたはずだ。
「ばかばかばかばかっ! なんでよぉおっ、ひぃいーーんっ、わぁあーーーんっ、あぁーーっ!」
美鈴が子どもみたいに泣く。俺はろくでもない男だったけど、美鈴が俺の前でこんな風に泣くのを今まで見たことはなかった。
「みへひっ、みへひっ、ほへんっ! へほっ……!」(ごめんっ! でもっ)
いいかげん頬を引っ張るのを止めてほしい。
美鈴は泣くだけ泣くと、ぐすぐすと鼻を啜った。そうしてやっと俺の頬を解放してくれた。すごく痛いし熱い気がするから、きっと俺の頬は真っ赤になっているに違いない。でもそんなことはどうでもいいのだ。大切なのは美鈴が今俺の腕の中にいることだった。
「みれい……」
「鼻水、かみたい……」
本当に締まらねえなと思った。とりあえず美鈴を離して、鼻をぢーん! とかんでもらった。
「この世界の紙固い。鼻痛い……」
美鈴が機嫌悪そうに呟いた。確かに鼻が赤くなっていた。柔らかいティッシュがあるといいよな。
猫紙がトンッと俺が寝かされている床の上に上がった。
「落ち着いたかのぅ……。あやつらが随分困っている様子じゃが」
「え?」
「ええ?」
猫紙が頭を動かした方向を見ると、衛士たちがバツの悪そうな顔で部屋の外からこちらを覗いていた。
「あー……ええと……場所を移しましょうか? って、今竜樹はどちらでお世話になっているの?」
「あ、今はヨウシュウ商会に……」
「とりあえずここを出ましょ? 竜樹、立てる?」
「うん……」
美鈴が床を下りる。俺も彼女のように下りようとしたのだが、さっき頬を張られて脳が揺れたせいなのかくらりとした。
「竜樹っ!?」
美鈴がすぐに気づいて俺を支えた。そして俺を一度床に座らせたかと思うと、それから抱き上げた。
「はぁっ!?」
「危ないから動かないでっ! さぁ、行くわよっ!」
どゆこと? なんで俺美鈴に抱き上げられてるワケ? 俺実はヒーローじゃなくてヒロインだったのかっ?
混乱した頭のまま俺は美鈴に抱かれて移動することになった。さすがにあの狭い階段では下ろしてくれるかと思ったのに、美鈴は当たり前のように二階から一階に跳んだ。そして堂々と王子の宮の扉から表へ出た。
「み、美鈴……あの、そろそろ……」
「なぁに?」
下ろしてほしいなーと思ったけど、にーっこり笑んで聞き返され、俺は黙った。だって目が笑ってないいいい。美鈴さん怖すぎです。猫紙様どうにかしてっ!
〈……無理じゃの〉
〈そんなああああ!〉
足元にいた猫紙に拒否られたああああ!
「み、美鈴っ! 私はそなたをっ……!」
ん? 誰だ? と思ったら、衛士たちに身柄を拘束されているらしい王子がいた。うお、まだここにいたのか。ってここが王子の宮だっけ。
「フン王子、私の伴侶が迎えにきてくれたのでこれで失礼します。お世話になりました」
美鈴は目が笑っていない笑顔を王子に向けると、俺を抱いたまま王子の横を通り過ぎた。
「美鈴っ、伴侶だとっ!? わ、私は認めんぞっ! そんなっ、そなたに抱かれているような弱き者などっ!」
だよなぁと俺自身も自分の情けなさに涙がちょちょ切れそうだ。でも俺泣かないっ! だって男の子だもんっ!
美鈴が門を出る手前で足を止めた。そしてゆっくりと振り返る。
「私の伴侶は私が決めます。私の伴侶は竜樹しかいない。王子、貴方は違うのです」
「いいやっ、私は運命に抗ってみせるっ!」
「さようなら」
「美鈴っ!」
王子の叫びを背にして、美鈴は俺を抱いたまま宮の門を出た。
「美鈴様、王子ともあろう者が貴方を監禁したことをお詫びいたします」
厳つい人が膝を付き、頭を石畳に付けた。え? これってもしかして叩頭ってやつ?
「……お詫びっていったい何がいただけるのかしら? そんなことよりも早く王城を出たいわ。竜樹、ヨウシュウ商会の人はどこにいるの?」
「……え? さっきは……謁見の間みたいなところにいたけど……」
「失礼ながら、パンズ殿はすでに王城を出る準備をしていらっしゃいます」
衛士の一人が膝をついて教えてくれた。
「ならそちらへ案内してくれる?」
「はっ!」
ところで、俺はいつまでこの状態でいればいいんでしょうか。なんでそれなりの重さがあるはずの俺を、美鈴は軽々と抱き上げているんだとかいろいろツッコミどころはあるのだが、頼むからいいかげん下ろしてほしかった。
「み、美鈴、そろそろさ……俺……」
「なぁに?」
「な、なんでもない、デス……」
美鈴が怖いよー。
俺はそのままパンズと合流するまで抱き上げられて王城内を移動した。もうなんつーか、SAN値がごりごり削られるかんじだった。
美鈴さん、いいかげん下ろしてえっ!
ーーーーー
SAN値 正気度を表すパラメーター(あるゲームで使われいたパラメーターである。竜樹もやってた)
0
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる