求婚はスイーツで

浅葱

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1.キュート

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 都会の親戚の葬式に出て、帰ってきたある家族はどういうわけか一人増えていた。
 田舎の村ではついぞ見たことのないあかぬけた少女に、村の男たちは興奮した。
 聞けばその少女は都会の親戚の養女だったらしい。亡くなったのは一家のあるじで、娘を引き取ると決めたのは主だったというからどうやら追い出される寸前だったようだ。なので娘がいなかったその家族が引き取ることにし、連れ帰ってきたのだという。

「追い出すなんてひどいこと考えるものだなぁ」
「人族の娘だっていうじゃねぇか。嫌な奴は嫌だろう」
「てめえは嫌なのか?」
「ばーか! 俺らにそんなこだわりあるかよ!」
「違えねぇ!!」

 がははは! と笑い合う村人たちは亜人族だ。みな頭の上にふさふさの耳があり、先祖の血が濃い者たちは頬に何本も長いひげが生えている。そしてみな総じて尻尾もある。それらは毛が長くふさふさのものもあれば、短毛で尻尾の形がわかりやすいものとさまざまだ。
 この国は亜人族が多く、人族は少ない。国によっては数が逆転しているところもあるようだが、亜人族と人族はそれなりに共存していた。というのも亜人族は総じて女性が少なく、人族の妻を迎えることが多い。しかし中には亜人族の血を尊ぶ家もあり、娘が引き取られたのはそういった家だったのではないかというのがみなの見解だった。

「それにしてもかわいかったな。ありゃあまだ10歳前後ってとこか」
「人族は見た目が幼いっつー話だ。もしかしてもう成人してたりして、な?」
「ロリコンかよ!」
「た、例えばの話だろ!!」

 こんなことを言い合っているのはもちろん村の男共である。酒場のおばさんはまだ見ぬ人族の娘にこっそり同情した。


 *  *
 

 育ちは孤児院。
 なんか親切そうな亜人のおじさんに引き取られたと思ったら、1年も経たずにそのおじさんが亡くなった。そうしたら今まで親切にしてくれてた養母と義兄に出ていけと言われた。まだ未成年の私はまた孤児院に戻るしかないのかと沈んでいたら、親戚だという家族に引き取られることになった。
 で、都会を離れて馬車に揺られて3日。小麦畑が広がる、いかにもな田舎の村に辿り着いた。

(田舎って排他的じゃないのかな……)

 心配になったが、すぐにそんな思いは吹っ飛んでしまった。
 
 だって。
 
「うわあ可愛いな! 俺の嫁にならないか!」

 村に着いた途端、何人もの大きな男の人たちがそんな風に声をかけてきたから。
 私は目を丸くすることしかできなかった。
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