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38.緊迫した展開なんてそうそう起こらないものです
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「王太子殿下!」
マリーンの声にはっとして王太子から手を取り返そうとした。その途端ゴウッ! と音がしたような気がした。その一瞬後には王太子が床に倒れていた。
「お、王太子殿下!?」
多分腕輪の効果なのだろうけど、王太子は大丈夫だろうか。怪我とかしてないよね? あ、起き上がった。
「この私を振り払うとは……」
美形が台無しですよっていうぐらいひどい顔をしている。別に振り払ったわけじゃないんだけど……結果としてそんなかんじになった。マリーンが慌てたように私と王太子の間に入った。
「王太子殿下、ローゼの本心は聞けました。どうかお下がりください!」
「……イセンテ伯爵令嬢、そこをどいてくれないか。私は直接ローゼから聞きたいのだ……」
怒りを押し殺したようなような声。近づいてくる王太子がとても怖くて逃げ出してしまいたい。でも私の目の前ではマリーンが両手を広げて私を守ってくれている。友人をひどい目に合わせることはできない。
「ヴィクトーリア様! 助けて!」
私はどうにかその場に留まって、腕輪に向かって助けを求めた。
「何を……」
その途端応接間にまばゆい光が現れ、その光と共にヴィクトーリア様が現れた。
「ヴィクトーリア!? 鍵をかけておいたはずだろう!」
王太子が驚愕の表情を浮かべる。えええ、鍵かけてたってどういうこと? マリーンも知ってるわけ? 内心どん引きです。
ヴィクトーリア様は優雅に扇子を口元に当てると、クスクスと笑った。
「鍵? そんなものがこの私の障害になると本気で思っていらっしゃるの?」
王太子ははっとしたような顔をした。
「お、王宮内には魔法の発動を封じる結界があるはずだ! なのに何故お前には使える!? もしや……結界があるなどと言っておいて実は機能していないのか!?」
「お父様よりも私の魔法の方がはるかに強いというだけの話ですわ。嘘だと思われるのでしたら魔法をどうぞご使用ください」
「……ファイア……確かに発動しないな」
王太子やヴぁいです。ツッコミどころ満載です。こんな部屋の中で火魔法を使おうとするとか何考えてるんですか。せめて掃除すれば済む水魔法を使うべきでしょう。どこまでこの王太子は残念な子なのか。
「ところで王太子様、こちらで何をしていらしたの?」
ヴィクトーリア様の詰問に王太子は目を泳がせた。
「いや、その……イセンテ伯爵令嬢とローゼとお茶を……」
「まぁ、でしたらどうしてローゼは私に助けを求めたのかしら?」
「それは……」
うまくごまかすこともできないらしい。
「私言いましたよね? 私が子を身籠るまではローゼに指一本触れないようにって」
「だが……最近は私を拒んでいるではないか」
拗ねたように王太子が言う。女心がわからない御仁だなぁ。ヴィクトーリア様は女性じゃないけどさ。
ヴィクトーリア様は眉を寄せた。
「あら? たった一月も我慢ができないのですか? そのような堪え性のない方にローゼを任せるなんてとてもとても……」
王太子がぐっと詰まる。
「王太子妃殿下、私が全て悪いのです! 王太子殿下にローゼの本心を聞きたいと言われた時、私も知りたいと思ってしまったのですから……」
「まぁ……そうだったの」
「イセンテ伯爵令嬢……」
王太子はマリーンの肩をそっと支えた。王太子、マリーンの好意を理解しててそうやってますよね。あー、もうなんか腹立つわー。マリーンは私の友人なのにー!
「では、この応接間の鍵をかけたのも貴女の独断だというの?」
「はい! 私の独断ですわ!」
「イセンテ伯爵令嬢、それは違う! 鍵をかけたのは私だ!」
「王太子殿下!」
なんかマリーンと王太子が私が、私がとやっている。割って入ったところでお邪魔だろうしとヴィクトーリア様と収まるまで眺めていることにした。
「と、とにかく王太子殿下には関係のないことです!」
「鍵をかけたのは私だ!」
ですが全然収まりそうもありません。ちら、とヴィクトーリア様を窺うと、ヴィクトーリア様もまたため息をついた。
「ねぇ、マリーン。どうして貴女はローゼの、王太子様への気持ちを聞き出そうとしたのかしら?」
ヴィクトーリア様に声をかけられて、マリーンははっとしたような顔をした。
「そ、それは……」
マリーンが王太子の顔を見て頬を染めた。
「イセンテ伯爵令嬢?」
王太子が先を促すように声をかける。なんかムカつく。
「そ、それは私がっ、王太子殿下をお慕いしているからです! 失礼します!」
そう言うと、マリーンはスカートを少し持ち上げて応接間から出て行ってしまった。王太子がそれを呆然として見送る。
「……側室でしたら、よろしくってよ?」
ヴィクトーリア様がそう呟いた途端、王太子は「すまぬ!」とだけ言って応接間を出て行った。
……いったいなんだったんだろう。
「……なんだったんですかね?」
「……王太子に対しては、マリーン嬢の方が一枚上手だったというだけのことだ」
どうやらマリーンにいいように利用されたらしい。でも王太子を引き取ってくれるというのならそれはそれでいいのではないかと思った。
マリーンの声にはっとして王太子から手を取り返そうとした。その途端ゴウッ! と音がしたような気がした。その一瞬後には王太子が床に倒れていた。
「お、王太子殿下!?」
多分腕輪の効果なのだろうけど、王太子は大丈夫だろうか。怪我とかしてないよね? あ、起き上がった。
「この私を振り払うとは……」
美形が台無しですよっていうぐらいひどい顔をしている。別に振り払ったわけじゃないんだけど……結果としてそんなかんじになった。マリーンが慌てたように私と王太子の間に入った。
「王太子殿下、ローゼの本心は聞けました。どうかお下がりください!」
「……イセンテ伯爵令嬢、そこをどいてくれないか。私は直接ローゼから聞きたいのだ……」
怒りを押し殺したようなような声。近づいてくる王太子がとても怖くて逃げ出してしまいたい。でも私の目の前ではマリーンが両手を広げて私を守ってくれている。友人をひどい目に合わせることはできない。
「ヴィクトーリア様! 助けて!」
私はどうにかその場に留まって、腕輪に向かって助けを求めた。
「何を……」
その途端応接間にまばゆい光が現れ、その光と共にヴィクトーリア様が現れた。
「ヴィクトーリア!? 鍵をかけておいたはずだろう!」
王太子が驚愕の表情を浮かべる。えええ、鍵かけてたってどういうこと? マリーンも知ってるわけ? 内心どん引きです。
ヴィクトーリア様は優雅に扇子を口元に当てると、クスクスと笑った。
「鍵? そんなものがこの私の障害になると本気で思っていらっしゃるの?」
王太子ははっとしたような顔をした。
「お、王宮内には魔法の発動を封じる結界があるはずだ! なのに何故お前には使える!? もしや……結界があるなどと言っておいて実は機能していないのか!?」
「お父様よりも私の魔法の方がはるかに強いというだけの話ですわ。嘘だと思われるのでしたら魔法をどうぞご使用ください」
「……ファイア……確かに発動しないな」
王太子やヴぁいです。ツッコミどころ満載です。こんな部屋の中で火魔法を使おうとするとか何考えてるんですか。せめて掃除すれば済む水魔法を使うべきでしょう。どこまでこの王太子は残念な子なのか。
「ところで王太子様、こちらで何をしていらしたの?」
ヴィクトーリア様の詰問に王太子は目を泳がせた。
「いや、その……イセンテ伯爵令嬢とローゼとお茶を……」
「まぁ、でしたらどうしてローゼは私に助けを求めたのかしら?」
「それは……」
うまくごまかすこともできないらしい。
「私言いましたよね? 私が子を身籠るまではローゼに指一本触れないようにって」
「だが……最近は私を拒んでいるではないか」
拗ねたように王太子が言う。女心がわからない御仁だなぁ。ヴィクトーリア様は女性じゃないけどさ。
ヴィクトーリア様は眉を寄せた。
「あら? たった一月も我慢ができないのですか? そのような堪え性のない方にローゼを任せるなんてとてもとても……」
王太子がぐっと詰まる。
「王太子妃殿下、私が全て悪いのです! 王太子殿下にローゼの本心を聞きたいと言われた時、私も知りたいと思ってしまったのですから……」
「まぁ……そうだったの」
「イセンテ伯爵令嬢……」
王太子はマリーンの肩をそっと支えた。王太子、マリーンの好意を理解しててそうやってますよね。あー、もうなんか腹立つわー。マリーンは私の友人なのにー!
「では、この応接間の鍵をかけたのも貴女の独断だというの?」
「はい! 私の独断ですわ!」
「イセンテ伯爵令嬢、それは違う! 鍵をかけたのは私だ!」
「王太子殿下!」
なんかマリーンと王太子が私が、私がとやっている。割って入ったところでお邪魔だろうしとヴィクトーリア様と収まるまで眺めていることにした。
「と、とにかく王太子殿下には関係のないことです!」
「鍵をかけたのは私だ!」
ですが全然収まりそうもありません。ちら、とヴィクトーリア様を窺うと、ヴィクトーリア様もまたため息をついた。
「ねぇ、マリーン。どうして貴女はローゼの、王太子様への気持ちを聞き出そうとしたのかしら?」
ヴィクトーリア様に声をかけられて、マリーンははっとしたような顔をした。
「そ、それは……」
マリーンが王太子の顔を見て頬を染めた。
「イセンテ伯爵令嬢?」
王太子が先を促すように声をかける。なんかムカつく。
「そ、それは私がっ、王太子殿下をお慕いしているからです! 失礼します!」
そう言うと、マリーンはスカートを少し持ち上げて応接間から出て行ってしまった。王太子がそれを呆然として見送る。
「……側室でしたら、よろしくってよ?」
ヴィクトーリア様がそう呟いた途端、王太子は「すまぬ!」とだけ言って応接間を出て行った。
……いったいなんだったんだろう。
「……なんだったんですかね?」
「……王太子に対しては、マリーン嬢の方が一枚上手だったというだけのことだ」
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