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64.一つの事件が終わりまして
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そんなある日、ヴィクトーリア様と共にプランタ公爵に呼び出された。
「大体のことは終わったが、ローゼリンデ嬢はどこまで知っているのかな?」
「断片のみですので、ローゼの為に最初から説明をお願いします」
「……過保護だな」
「慎重だと言ってください」
公爵が呆れたような顔をした。それにヴィクトーリア様はしれっと答えた。
「はあ……まあいいか」
お茶のワゴンだけ運んでもらったのでお茶は淹れた。私がお茶の準備を整えてから公爵は口を開いた。
「王太子の侍従、王妃付きの侍女、王太子の側室の侍女が今回の要だ」
前置きもなく唐突に公爵は話し始めた。私はそれをどうにか聞き洩らさないようにする。
王太子の侍従はある子爵家の次男坊だった。だが実は現王の隠し子だったというのだ。それを聞いて私は久しぶりに小説「悪役令嬢でございますでございますのことよ!」の内容を思い出した。
確か……イフ物語で侍従ルート的なものがあった気がする。私は本編が好きだったからイフルートは流し読みをしただけなんだけど。
侍従は自分を王宮に迎えなかった王家を恨んでいた。王太子の侍従に若くして抜擢されたはいいが、側室にするしか道がないとはいえ、愛する人(かつての私)と結ばれようとしている王太子が許せなかったから、卒業記念パーティーの規則を王太子に教えなかったはず……。
あれ? これ私完全にとばっちりじゃない?
と、いけないいけない。話を先に進めよう。で、失意の王太子を更にどん底へ落としてやろうと考えた侍従。たまたまヴィクトーリア様が共同事業の解消を求めてきた書類を見つけたので、他の書類とうまく一緒にして王太子にすんなりサインをさせたらしい。(これはしっかり確認しなかった王太子が悪いと思う)
その後、ヴィクトーリア様との共同事業を解消されたと認識していなかった王太子は、解消の際の精算された金額(一度に大きな額面が入った)を見て気が大きくなり、王妃との会話でそのことをぽろりと漏らしてしまった。もちろん侍従はそれを聞いていたので王妃もどん底に突き落としてやろうと画策をした。
ところで、マリーンの侍女は実家の領地経営がうまくいかずお金に困っていた。マリーンの侍女は王妃付きの侍女と繋がっているのを知っていた為、侍従は言葉巧みにマリーンに近づき、いい儲け話があると持ちかけた。王太子の侍従は見目麗しかったので、ちょっと口説くような真似をすればすぐにマリーンの侍女は引っかかった。
「君を助けたいんだ」
とかなんとか言われ、貴人や、信頼できる侍女などに教えれば配当はさらに増えると教えた。果たしてマリーンの侍女は王妃付きの侍女にそれを話し、王妃付きの侍女は王妃に話してしまった。その侍女はとても王妃と仲がよかったらしい。
王妃自身の資産はそれほどあるわけではない。しかし王妃は王太子がヴィクトーリアとの共同事業で稼いでいるという話を聞いていた。配当があればそれぐらい賄えるだろうと王妃はその王太子たちの共同事業を担保としてお金を借り、出資してしまったのである。
私はこめかみに指を当てた。王妃ってバカなのかな? そんなうまい話があるわけないじゃない。
「……出資金はどうなったんですか?」
「王家に打撃を与えられればいいと、侍従は全て散財してしまったらしいよ」
公爵が苦笑しながらそう答えた。
「うわあ……」
あんまり王太子と王妃がバカすぎてヤケになっちゃったのかなぁと思った。
イフルートはどんな話だったっけ? 侍従の方からヴィクトーリア様に連絡してきて、王太子とヒロインを断罪して、似たようなかんじで復讐して、最後は侍従とヴィクトーリア様が結婚して王国を乗っ取る的な展開だったかな。さっきも言ったけどあんまり興味なくて流し読みしちゃったんだよね。
「じゃあ、王太子の侍従はどうなったんですか?」
「王の隠し子だからねえ。幽閉措置を取られたよ」
そんな甘い措置でいいのか? と思ったけど、直接的な被害は侍女たちと王妃の財産だけだったから王が恩情を示して幽閉になったらしい。ってことは、王は王妃を見限ったのかなとも思う。
「……マリーンに被害はなかったんですよね?」
「ああ、マリーン嬢も一応その話を聞いたらしいが、気が乗らないといって話に乗らなかったらしい。詐欺を働くのは悪いが、騙される方にも全く非がなかったわけでもないという判断なのだろうな。いわゆる勉強代のようなものだ」
「侍女たちはどうなったんです?」
「実家へ帰されたよ。もう二度と王宮に出仕することはないだろう」
「うわあああ……」
まぁ騙されただけじゃなくてそそのかしちゃったんだから、それについてはまだ恩情ある措置といえるかもしれない。
「騙された王妃は……」
「財産で借金を返して、謹慎中だそうだ。王も自分の隠し子が原因だったから王妃にそれほどつらく当たることもできなかっただろうが、王太子の財産を担保にしたことは許せなかったようだ」
あーあ。自業自得ではあるけどなんだか気の毒だなと思った。
「じゃあ、王太子には特に何かあるわけじゃないんですね」
「知らぬ間に被害者になっていたというところだな。だが共同事業が解消されていたことを気づかなかったというのは王太子の怠慢だ。教育は更に厳しくなるだろう。それに加えて夜の務めもある。ヴィクトーリア、がんばってくれよ」
公爵のからかうような声に、ヴィクトーリア様はあからさまに嫌そうな顔をした。
「……幻術をかけて代わっていただいてもいいのですよ?」
「ははははは! 面白そうだが私に男色の気は一切ないのだ。ここは遠慮させていただこう」
「……もうそろそろ限界かと思います。新年が明けましたら手続きを進めてください」
「わかった」
なんかいろいろ複雑で頭がこんがらがりそうだった。
えーと、王太子の侍従は王家を恨んでいた。王太子が幸せを手にしないように画策し、王妃の財産を目減りさせるということもやってのけた。私へのとばっちりはいただけないけど、この世界ではヴィクトーリア様に助けられたからそれほど被害は受けていない。きっと一生幽閉されて表へ出てくることはないのだろうからもう忘れることにした。
侍女っていうのはね、忘れるのも仕事のうちなんです。
「大体のことは終わったが、ローゼリンデ嬢はどこまで知っているのかな?」
「断片のみですので、ローゼの為に最初から説明をお願いします」
「……過保護だな」
「慎重だと言ってください」
公爵が呆れたような顔をした。それにヴィクトーリア様はしれっと答えた。
「はあ……まあいいか」
お茶のワゴンだけ運んでもらったのでお茶は淹れた。私がお茶の準備を整えてから公爵は口を開いた。
「王太子の侍従、王妃付きの侍女、王太子の側室の侍女が今回の要だ」
前置きもなく唐突に公爵は話し始めた。私はそれをどうにか聞き洩らさないようにする。
王太子の侍従はある子爵家の次男坊だった。だが実は現王の隠し子だったというのだ。それを聞いて私は久しぶりに小説「悪役令嬢でございますでございますのことよ!」の内容を思い出した。
確か……イフ物語で侍従ルート的なものがあった気がする。私は本編が好きだったからイフルートは流し読みをしただけなんだけど。
侍従は自分を王宮に迎えなかった王家を恨んでいた。王太子の侍従に若くして抜擢されたはいいが、側室にするしか道がないとはいえ、愛する人(かつての私)と結ばれようとしている王太子が許せなかったから、卒業記念パーティーの規則を王太子に教えなかったはず……。
あれ? これ私完全にとばっちりじゃない?
と、いけないいけない。話を先に進めよう。で、失意の王太子を更にどん底へ落としてやろうと考えた侍従。たまたまヴィクトーリア様が共同事業の解消を求めてきた書類を見つけたので、他の書類とうまく一緒にして王太子にすんなりサインをさせたらしい。(これはしっかり確認しなかった王太子が悪いと思う)
その後、ヴィクトーリア様との共同事業を解消されたと認識していなかった王太子は、解消の際の精算された金額(一度に大きな額面が入った)を見て気が大きくなり、王妃との会話でそのことをぽろりと漏らしてしまった。もちろん侍従はそれを聞いていたので王妃もどん底に突き落としてやろうと画策をした。
ところで、マリーンの侍女は実家の領地経営がうまくいかずお金に困っていた。マリーンの侍女は王妃付きの侍女と繋がっているのを知っていた為、侍従は言葉巧みにマリーンに近づき、いい儲け話があると持ちかけた。王太子の侍従は見目麗しかったので、ちょっと口説くような真似をすればすぐにマリーンの侍女は引っかかった。
「君を助けたいんだ」
とかなんとか言われ、貴人や、信頼できる侍女などに教えれば配当はさらに増えると教えた。果たしてマリーンの侍女は王妃付きの侍女にそれを話し、王妃付きの侍女は王妃に話してしまった。その侍女はとても王妃と仲がよかったらしい。
王妃自身の資産はそれほどあるわけではない。しかし王妃は王太子がヴィクトーリアとの共同事業で稼いでいるという話を聞いていた。配当があればそれぐらい賄えるだろうと王妃はその王太子たちの共同事業を担保としてお金を借り、出資してしまったのである。
私はこめかみに指を当てた。王妃ってバカなのかな? そんなうまい話があるわけないじゃない。
「……出資金はどうなったんですか?」
「王家に打撃を与えられればいいと、侍従は全て散財してしまったらしいよ」
公爵が苦笑しながらそう答えた。
「うわあ……」
あんまり王太子と王妃がバカすぎてヤケになっちゃったのかなぁと思った。
イフルートはどんな話だったっけ? 侍従の方からヴィクトーリア様に連絡してきて、王太子とヒロインを断罪して、似たようなかんじで復讐して、最後は侍従とヴィクトーリア様が結婚して王国を乗っ取る的な展開だったかな。さっきも言ったけどあんまり興味なくて流し読みしちゃったんだよね。
「じゃあ、王太子の侍従はどうなったんですか?」
「王の隠し子だからねえ。幽閉措置を取られたよ」
そんな甘い措置でいいのか? と思ったけど、直接的な被害は侍女たちと王妃の財産だけだったから王が恩情を示して幽閉になったらしい。ってことは、王は王妃を見限ったのかなとも思う。
「……マリーンに被害はなかったんですよね?」
「ああ、マリーン嬢も一応その話を聞いたらしいが、気が乗らないといって話に乗らなかったらしい。詐欺を働くのは悪いが、騙される方にも全く非がなかったわけでもないという判断なのだろうな。いわゆる勉強代のようなものだ」
「侍女たちはどうなったんです?」
「実家へ帰されたよ。もう二度と王宮に出仕することはないだろう」
「うわあああ……」
まぁ騙されただけじゃなくてそそのかしちゃったんだから、それについてはまだ恩情ある措置といえるかもしれない。
「騙された王妃は……」
「財産で借金を返して、謹慎中だそうだ。王も自分の隠し子が原因だったから王妃にそれほどつらく当たることもできなかっただろうが、王太子の財産を担保にしたことは許せなかったようだ」
あーあ。自業自得ではあるけどなんだか気の毒だなと思った。
「じゃあ、王太子には特に何かあるわけじゃないんですね」
「知らぬ間に被害者になっていたというところだな。だが共同事業が解消されていたことを気づかなかったというのは王太子の怠慢だ。教育は更に厳しくなるだろう。それに加えて夜の務めもある。ヴィクトーリア、がんばってくれよ」
公爵のからかうような声に、ヴィクトーリア様はあからさまに嫌そうな顔をした。
「……幻術をかけて代わっていただいてもいいのですよ?」
「ははははは! 面白そうだが私に男色の気は一切ないのだ。ここは遠慮させていただこう」
「……もうそろそろ限界かと思います。新年が明けましたら手続きを進めてください」
「わかった」
なんかいろいろ複雑で頭がこんがらがりそうだった。
えーと、王太子の侍従は王家を恨んでいた。王太子が幸せを手にしないように画策し、王妃の財産を目減りさせるということもやってのけた。私へのとばっちりはいただけないけど、この世界ではヴィクトーリア様に助けられたからそれほど被害は受けていない。きっと一生幽閉されて表へ出てくることはないのだろうからもう忘れることにした。
侍女っていうのはね、忘れるのも仕事のうちなんです。
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