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夫が浮気した。
相手は同じ会社の女性社員だ。夫とは一回りも歳が離れている。
気持ちが悪い。
私は咄嗟に、そう思ってしまった。そんな若い子と、体の関係を持った夫と、私はベッドを共にし行為もしている、そのことに吐き気がした。
私達夫婦は、共に36歳で結婚して8年になるが子供がいない。自然の流れに任せているが、浮気されるとどうしても、それを気にしてしまう。
それに日頃、何度注意しても無駄遣いが直らなかったのも、このせいかと思うと腹が立つ。
私達夫婦も、職場恋愛で結婚した。私は、結婚して会社を辞めたが、夫は同じ会社で働き続けてる。
家を出よう。とりあえず、今はあの人と同じ空間にいるのは、無理だ。
私は、結婚当初から住み続けた一軒家を出て、独身の妹が住むマンションへ移ることにした。
幸い、私の今の仕事は在宅ワークで、パソコンがあれば困らない。
私はリビングのテーブルに、家を出ることを伝える書き置きを残した。
妹と2人の生活は楽しい。
ここに来た時、私は、これからのことに悩み暗く沈んでいたし、妹も私に気を使って、おかしな距離があったが、それも次第になくなり昔に戻ったように自然になった。
妹の仕事も在宅だが、パートの私とは忙しさが段違いで、家に住まわせてもらっている代わりに家事全般を引き受けている。
不思議と苦痛がない。申し訳なさがあるからとかそういうのではなく、自発的にもっと良い環境を与えたいと思ってくるのだ。自分の妹だからだろうか・・・。
なにより妹は、いちいち喜んでくれる。洗濯を終わらせておいた時、掃除をした時、ご飯を用意した時、お風呂の準備を済ませた時、出かける時に着る服とハンカチにアイロンをかけておいた時、大袈裟なぐらい喜んで感謝して、私がいて幸せだと言ってくれる。
家を出て、あっという間に2ヶ月たった。
まったく連絡のなかった夫から電話がかかってきた。
浮気相手とは別れたから帰ってきてほしいという。
随分、虫のいい話だ。あんな裏切りの後でも、私が変わらず自分を愛していると信じているのだろうか?なんて幸せな人だろう・・・。
「もう一度、やり直すチャンスがほしい。彼女とは別れたし、もう浮気はしないと約束する。」
話し合いのために、とりあえず自宅に戻ると夫は、決まり文句のような謝罪をした。
それしにても、この家の荒れようはなに?まるで、空き巣にでも入られたかとように散らかっている。
タンスやクローゼットから引き摺りだされた服や季節感無視のスーツやネクタイがクリーニングのカバーを外され放り出されている。
シンクには洗い物が溜まっているし、コンロ周りは汚れが酷い。
その中に知らない調味料が転がっている。
「どうせ、浮気相手の女の子を家によびこんだけど、上手くいかなかったんでしょう?」
アイロンを使った形跡はないし、お弁当箱も食器の中に埋もれている。
この人は本当に子供なのだ。朝は自分で起きられないし、食べ物の好き嫌いも多い、洗濯も掃除もしたことがないし、自分の着る服の準備も後片付けもしない。でも、自分ではその気になれば全て自分でできると思っている。
なにより一番の問題は、この人の給料では本人の望む好き勝手な生活はできないというところだ。
必死のやりくりと私のパート代をプラスすることで、夫の浪費を埋めて成り立っている生活だったのだ。
「確かに彼女に頼った時もあったけど、だからこそ、どれだけ君が僕に尽くしてくれていたか分かったんだ!!どうか離婚なんて考えないで、戻ってきてほしい!!」
「気分が悪いことをいい事ぽく言わないでくれる?」
必死に何やかんやと弁解する夫をぼんやり見つめながら考える。
浮気相手の女性社員は、既に会社を辞めたようだが弁護士を通して慰謝料請求をすすめている。
目の前の男は、書類上、変わらず私の夫のままだ。
「貴方が、私に戻ってこいと言うなら戻ってもいいわ。その代わり、誓約書にサインして。同じような問題を起こされたくないの。」
この男は子供だ。長い文章はろくに読まない。まともに読んでないのが、まるわかりな速さで誓約書にサインしていた。
私としては、内容に納得いかないとつっぱねられても、受け入れられてもどちらでも良かった。
「じゃあ、私、妹のところに戻るから。」
「はぁっ?何言ってるんだ!?」
「誓約書に書いてあったでしょ。妹の仕事が忙しい時は、手伝いに行くし向こうに泊まることもあるって。妹が漫画家なのは知ってるわよね?今、締め切り前で大変なの。」
誓約書にはしっかり書いてあった。わざと小難しい文章にしておいたが。
「私が家を空けるからって浮気したら慰謝料一千万よ。浮気相手にも同額払ってもらうわ。相手が払えないなら貴方が二千万払ってね。サイン後に内容が不服で離婚する時も二千万だから。」
「勝手なことを言うなっ。」
「誓約書に書いてあったでしょ?了承したからサインしたんじゃないの?」
夫の悔しそうな顔は予想通りだ。私が戻ってきて、今まで通り身の回りの世話をすれば満足だったんだろう。いつまでも自分が上に立って有利な立場にいるとでも思っていたのは想像がつく。
「よく、自分の夫にそんな詐欺まがいのことができるな!」
「勘違いしないで。私は貴方を愛していて許したから戻るんじゃないの。」
「なっ!」
「貴方が離婚なんて考えずに戻ってきてくれって頼んできたからでしょ。私はお願いを聞いてあげたのよ。」
これは、世間からは復讐だと言われるだろう。私の人生はこれからも続くのに、この男の浮気を許すだとか、許せない気持ちのまま風化するのを待つのだとか、そういったことを考えるだけで腹が立つのだ。
どう言われようが、私は少しでもスッキリしたい。
だから、私の目の前で夫はできるだけ哀れであってほしい。
相手は同じ会社の女性社員だ。夫とは一回りも歳が離れている。
気持ちが悪い。
私は咄嗟に、そう思ってしまった。そんな若い子と、体の関係を持った夫と、私はベッドを共にし行為もしている、そのことに吐き気がした。
私達夫婦は、共に36歳で結婚して8年になるが子供がいない。自然の流れに任せているが、浮気されるとどうしても、それを気にしてしまう。
それに日頃、何度注意しても無駄遣いが直らなかったのも、このせいかと思うと腹が立つ。
私達夫婦も、職場恋愛で結婚した。私は、結婚して会社を辞めたが、夫は同じ会社で働き続けてる。
家を出よう。とりあえず、今はあの人と同じ空間にいるのは、無理だ。
私は、結婚当初から住み続けた一軒家を出て、独身の妹が住むマンションへ移ることにした。
幸い、私の今の仕事は在宅ワークで、パソコンがあれば困らない。
私はリビングのテーブルに、家を出ることを伝える書き置きを残した。
妹と2人の生活は楽しい。
ここに来た時、私は、これからのことに悩み暗く沈んでいたし、妹も私に気を使って、おかしな距離があったが、それも次第になくなり昔に戻ったように自然になった。
妹の仕事も在宅だが、パートの私とは忙しさが段違いで、家に住まわせてもらっている代わりに家事全般を引き受けている。
不思議と苦痛がない。申し訳なさがあるからとかそういうのではなく、自発的にもっと良い環境を与えたいと思ってくるのだ。自分の妹だからだろうか・・・。
なにより妹は、いちいち喜んでくれる。洗濯を終わらせておいた時、掃除をした時、ご飯を用意した時、お風呂の準備を済ませた時、出かける時に着る服とハンカチにアイロンをかけておいた時、大袈裟なぐらい喜んで感謝して、私がいて幸せだと言ってくれる。
家を出て、あっという間に2ヶ月たった。
まったく連絡のなかった夫から電話がかかってきた。
浮気相手とは別れたから帰ってきてほしいという。
随分、虫のいい話だ。あんな裏切りの後でも、私が変わらず自分を愛していると信じているのだろうか?なんて幸せな人だろう・・・。
「もう一度、やり直すチャンスがほしい。彼女とは別れたし、もう浮気はしないと約束する。」
話し合いのために、とりあえず自宅に戻ると夫は、決まり文句のような謝罪をした。
それしにても、この家の荒れようはなに?まるで、空き巣にでも入られたかとように散らかっている。
タンスやクローゼットから引き摺りだされた服や季節感無視のスーツやネクタイがクリーニングのカバーを外され放り出されている。
シンクには洗い物が溜まっているし、コンロ周りは汚れが酷い。
その中に知らない調味料が転がっている。
「どうせ、浮気相手の女の子を家によびこんだけど、上手くいかなかったんでしょう?」
アイロンを使った形跡はないし、お弁当箱も食器の中に埋もれている。
この人は本当に子供なのだ。朝は自分で起きられないし、食べ物の好き嫌いも多い、洗濯も掃除もしたことがないし、自分の着る服の準備も後片付けもしない。でも、自分ではその気になれば全て自分でできると思っている。
なにより一番の問題は、この人の給料では本人の望む好き勝手な生活はできないというところだ。
必死のやりくりと私のパート代をプラスすることで、夫の浪費を埋めて成り立っている生活だったのだ。
「確かに彼女に頼った時もあったけど、だからこそ、どれだけ君が僕に尽くしてくれていたか分かったんだ!!どうか離婚なんて考えないで、戻ってきてほしい!!」
「気分が悪いことをいい事ぽく言わないでくれる?」
必死に何やかんやと弁解する夫をぼんやり見つめながら考える。
浮気相手の女性社員は、既に会社を辞めたようだが弁護士を通して慰謝料請求をすすめている。
目の前の男は、書類上、変わらず私の夫のままだ。
「貴方が、私に戻ってこいと言うなら戻ってもいいわ。その代わり、誓約書にサインして。同じような問題を起こされたくないの。」
この男は子供だ。長い文章はろくに読まない。まともに読んでないのが、まるわかりな速さで誓約書にサインしていた。
私としては、内容に納得いかないとつっぱねられても、受け入れられてもどちらでも良かった。
「じゃあ、私、妹のところに戻るから。」
「はぁっ?何言ってるんだ!?」
「誓約書に書いてあったでしょ。妹の仕事が忙しい時は、手伝いに行くし向こうに泊まることもあるって。妹が漫画家なのは知ってるわよね?今、締め切り前で大変なの。」
誓約書にはしっかり書いてあった。わざと小難しい文章にしておいたが。
「私が家を空けるからって浮気したら慰謝料一千万よ。浮気相手にも同額払ってもらうわ。相手が払えないなら貴方が二千万払ってね。サイン後に内容が不服で離婚する時も二千万だから。」
「勝手なことを言うなっ。」
「誓約書に書いてあったでしょ?了承したからサインしたんじゃないの?」
夫の悔しそうな顔は予想通りだ。私が戻ってきて、今まで通り身の回りの世話をすれば満足だったんだろう。いつまでも自分が上に立って有利な立場にいるとでも思っていたのは想像がつく。
「よく、自分の夫にそんな詐欺まがいのことができるな!」
「勘違いしないで。私は貴方を愛していて許したから戻るんじゃないの。」
「なっ!」
「貴方が離婚なんて考えずに戻ってきてくれって頼んできたからでしょ。私はお願いを聞いてあげたのよ。」
これは、世間からは復讐だと言われるだろう。私の人生はこれからも続くのに、この男の浮気を許すだとか、許せない気持ちのまま風化するのを待つのだとか、そういったことを考えるだけで腹が立つのだ。
どう言われようが、私は少しでもスッキリしたい。
だから、私の目の前で夫はできるだけ哀れであってほしい。
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