違いのわかる人

豆腐屋

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    僕には、妹が二人いる。長女で僕より二歳下のアリサ、アリサより三歳下で次女のリナ。

    この夏、母方の祖父が亡くなった。悲しいことではあるが、急な入院の後苦しむ間もなく逝ってしまったのは、長く闘病するより良かったとは思う。

    ただ、秋にアリサの結婚式がきまっていたので祖父本人もそれは心残りだろうと思っていた。祖父は妹二人を、それはそれは可愛がっていて、二人も大層なおじいちゃん子だったのだ。

    僕が中学二年の時、父の浮気が発覚し家庭崩壊しかかったことがあった。家の中の空気は最悪で、父と母、双方の両親を交え何度も話し合っていた。
    僕は正直、離婚しても構わないと思っていたし、当時九歳だったリナでさえ、どこか父を軽蔑しているように見えた。

    母と父は時間が経つにつれて夫婦として戻ったようだったが、妹二人が父を許すことはなかった。表面上、父と呼び笑顔で会話をしていても、修復する気のない溝があるままだった。

    祖父のお葬式の時、二人は意外にも涙を見せず、落ち着いていた。似たような喪服とまとめ髪をした妹達を、父がたびたび間違えていたが、どうよばれようが平然と返事をする妹二人をみて、僕は少し怖かった。
    僕が家を出て一人暮らしを初めてから五年になるが、確かに大人になった妹二人はよく似ている。背格好や服装の趣味、髪型や化粧までも。
   後ろ姿や遠目で父が間違えるのも仕方がないと思う反面、一度も間違えたことのない祖父を思い出し、偉大だったと思いをはせた。
    結婚式の段取り中、アリサはバージンロードを父ではなく祖父と歩きたいなんて言ったことがあったっけ・・・父はその場にいなかったが、リナまで、それがいいなんて援護するから慌ててしまった。
     まぁ、これもそのうち笑い話になれば良いと思う。

 「もう少し、頑張ってくれたら良かったのにな、おじいちゃん。」
 
49日の集まりで、僕はアリサに言った。アリサの結婚式はもう2週間後にせまっていた。

「ちょうど良かったと思う。間に合って良かったもん!」

リナが横から口を挟んだ。
ちょうど良いとは?意味が分からない。

「お兄ちゃん、気付いてた?」
「何を?」

見た目はそっくりでも、話し方はアリサの方が落ち着いていてる。

「お父さん、また浮気してたんだよ。お母さんは諦めて、気づいてないふりしてしてるけど。」
「嘘だろ!?」
「ほんとだよ。そんな人がお姉ちゃんと一緒にバージンロード歩いていいわけないじゃん。」

妹二人から言われてショックをうけた。いつからだ?僕が家を出てからなのか? 
父は、まったく反省していなかったのか?死んだ祖父は知っていたのだろうか・・・

「だから、おじいちゃんにお願いしたの。やっぱり私、バージンロードはおじいちゃんと歩きたいなって。」
「お兄ちゃん、ほんとに何にも気付かないの?」

    そういえば、妹二人は今日も似たような喪服と髪型をしているのに、父は一度も間違えない。



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