ラブラブ・コロン

れなれな

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しあわせのロンロン

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 そのひは、ゆきのひでした。

 ロンロンは、ちいさなふわふわのシッポをもった、ようせいのコロンを、せなかにのせて、したをむいて、あるいていました。

 コロンは、みずいろのちいさなカサをだきしめて、ロンロンにかざして、こういいました。

『ロンロン、なにをおもいだしているのでしゅか?』

 コロンのしつもんは、こんきょのないものではありませんでした。

 ロンロンはむかしのことをかんがえるとき、どうやらしたをむくくせが、あるらしいのです。

「なんでもないな。ああ、たいしたことじゃない」

 ロンロンはせっかく仲良くなったコロンのことを、あまりしんぱいさせたくありませんでした。

 だから、なんにもいわず、トボトボとあるきつづけていました。

『ロンロン、愛がこぼれていくでしゅよ』

 ハッとして、ロンロンは、かおをあげました。

(もう、すぎたことでなやむのはやめよう。コロンについてゆけば、はくりゅうのさとへつくんだから)

 そしてぷるぷるっと、つよくからだをふりました。

 ぽいーん! カサをだきしめたままのコロンがころげおちました。

『あ! ロンロン、まって……』

 コロンが、うでをさしのばします。

 けれどそのとき、ロンロンのよくきくはなに、おはなのかおりが、とどきました。

「あれは、ひょっとして、星花ちゃんのにおい!」

 ロンロンはわれをわすれて、はしりだしました。


 くんくん、くんくん。

「あっちからだ!」

 けれど、それはおはなやさんの、みせさきのにおいでした。

「たしかに、このにおいのはずなのに」

 ロンロンは、とほうにくれてしまいました。

 きづくと、コロンのすがたが、みあたりません。

 どうやら、みちばたに、おっことしてきてしまったようです。

「たいへんだ! わし、コロンをおきざりにしてきてしもうた!」

 もときたみちを、かけもどりますが、それでもコロンはみつかりません。

「ああ、ああ! あんなちいさな、かわいいようせいが、たったひとりでどこへゆけるだろう。こまったぞ、こまったぞ」

 しきりとにおいをかいで、コロンをさがします。

「コロン、コローン!?」


 そうしているうち、よるがやってきました。

(あのよるも、こんなゆきだったのお……)

 ロンロンは星花ちゃんをおもいだします。

 そのきおくでは、まずしいアパートのいっしつで、おおきなものおとが、していました。

『でていけ――! おやのいうことをきけないこどもは、うちにはいらん!!!』

 たいへんけわしい、どなりごえとともに、とびらがなるおとがして、はだしのままの星花ちゃんがでてきました。

 ロンロンがみあげると、星花ちゃんはひびわれためをして、ロンロンのつながれたはしらのまえを、とおりすぎていきます。

(どこへいくの? 星花ちゃん!)

 ロンロンはわけもわからずシッポをふりましたが、星花ちゃんは、たったひとりでいってしまいました。

「わんわん、わんわん!」
『うるさいぞ! きんじょめいわくだ、だまれ!!』

 いえのなかからは、どなりごえがするばかり。

 星花ちゃんがゆくえふめいになったことも、ながいこときづかれませんでした。


 ゆきが、星花ちゃんのにおいを、おおいかくしてゆきました。

 きろくによれば、かんとうではさんじゅっセンチの、おおゆきがつもり、ちょっとした、いじょうきしょうでした。

(星花ちゃん! 星花ちゃん!)

 がるる! とロンロンは、つないであったヒモをくいちぎると、ゆきのなかへとびだしてゆきました。

(星花ちゃん、どこだい!?)

 ロンロンは、おかへのぼって、ゆきのうえをはねました。

 うれしかったわけでは、ありません。

 そこは、いつか星花ちゃんときた、さんぽみちでした。

 きっと星花ちゃんはここにいる! そうしんじたから、ちからづよくはねたのでした。

「わうー! わんわん!!」

 けれど、なかなか星花ちゃんは、みつかりません。

 おかのこうえんにたどりついたとき、ちいさなあかりが、チカチカとひかっていました。

(星花ちゃん!)

 星花ちゃんは、がいとうのあかりのしたの、タイヤのうえに、ぽつんとひとり、うずくまっていました。

「わんわん、わんわん!」
「……ロンロン」

 星花ちゃんは、はじめてロンロンのことにきがついて、こちらをみました。

 でも、たちあがりません。

 ゆきのなかをあるいてきて、すっかりかじかんでしまったのでした。

 ロンロンは、ゆきやまのきゅうじょけんのように、星花ちゃんのからだをあたためました。

「ロンロン……おとうさんは、星花のこといらないんだって。だから、もうここでねむるんだ……」

(だめ! 星花ちゃん、それはだめだよ。こおっちゃうよ!)

「あさになったら、がっこうへいくんだ……」
「ううーっ、わううわう!」
「ロンロンはあったかいね」

 そういうと、星花ちゃんは、いしきをうしなってしまいした。

 そのうち、そうさくたいがきて、星花ちゃんはたすかりました。

 まわりのおとなは、だまって星花ちゃんから、ロンロンをひきはなそうとします。

「ううーっ。がるがるっ」

 きばをむくと、そうさくたいの人たちは、よしよしといって、ロンロンにくちわをつけました。

 ロンロンはあばれようとして、つかまってしまいました。

『星花、もういいだろう。わがままはそれくらいにして、うちへはいりなさい』

 おとうさんが、いいました。

(星花ちゃんをおいだしたのは、おとうさんなのに! 星花ちゃんがわるいものか!)

 とんださわぎになってしまって、すこししゅんとしたようすのおとうさんは、ロンロンにあたらしいくさりを、かってきてつけると、またいつものにちじょうにかえっていきました。


(あのときとはちがう……? いいや! なにもちがってはいない!!)

 ロンロンは、いかりとくやしさになきます。

 あのときの星花ちゃんを、すくえなかったじぶんのきもちをも、とおぼえにしてはいいろのそらへ、おしあげるのです。

『ロンロン……』

 そのとき、ききおぼえのあるこえが、しました。

 みると、みずいろのカサのほねが、どうろのざっそうにひっかかっており、そこから、コロンがでてきました。

「コロン! ここにいたのだね」
『ああ、かえってきてくれたのでしゅね。よかった……はくりゅうのさとは、まだまだとおいでしゅ。もう、ひとりで、どこかへいっちゃわないでくだしゃい』
「いくものか!」
『ロンロンはあったかいでしゅね……』

 コロンはぎゅっとロンロンにしがみつきました。
 
 ふたりきりのよるが、ふけてゆきます……。
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