ロマンチックな恋ならば

水無瀬雨音

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 温かい春の昼下がり。
 郊外の広い庭を、黒ウサギの子どもが二匹、ボールを追い回して跳ねまわっている。まだ幼いので、半獣化できないのだ。その様子を、エディとダニエルは少し離れたところでガーデンチェアに座って見ている。
 エディが立ち上がろうとするのを、ダニエルが制する。

「何が欲しいんだ? お茶のお代わり? ケーキ?」

 もともと優しかったが、番になってから、ダニエルは磨きがかかって優しい。というか、過保護だ。
エディは苦笑いしながら、

「お茶が欲しかったんだけど。あのね。少しくらいは動かないとむしろだめなんだよ?」
「運動するなら安全なところですればいい。
お茶が手にかかってやけどしたらどうするんだ? 皿を落として破片で怪我したら? 施設でも他の人がこういうことしてたんだろ。だったら今俺がするのは当然だ」

 甲斐甲斐しくティーカップにお茶を注ぎ、エディ好みにミルクと砂糖を入れて、スプーンでかき混ぜてくれる。自分はそんなにドジではないのに、と苦笑してしまう。
 ついでに空になっていた皿に、フルーツのたっぷり入ったパウンドケーキを載せてくれる。

「体調は変化ないか?」
「うん。大丈夫だよ。心配しすぎじゃない?」

 隣に座ったダニエルが、大きいおなかを撫でる。もうすぐ、次の子が産まれるのだ。医者からは恐らくエディに似て人間だろうと言われている。
 
 婚約解消を申し出ると、アンジブースト伯爵はあっさり了承してくれた。
 もっとも婚約を申し込まれた時点で、エディは『好きな人がいる』と言っていたのだ。『婚約すればダニエルがなびくのではないか』と提案したのは伯爵のほうだった。まんまと策にはまったようで、ダニエルは複雑な心境になったという。
 返そうとした指輪は、「結婚祝いに」とそのままくれた。


「心配するだろ、そりゃ。大事な番なんだから」

 そう優しく言って、ダニエルは唇を落としてきた。

 二人はアルファとオメガではない。だから運命の番ではない。
 それでもずっと慕ってきたダニエルが、エディを受け入れてくれた。彼のためにすべてを手放す覚悟を見せてくれた。その時、本当に嬉しくて夢を見ているのではないか、と思った。今でもたまに自分は長い幸せな夢を見ているのではと不安に思う。
 ベータとオメガだが、ダニエルとエディは結ばれた。それは運命だった、そう思いたいのだ。

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