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魔女の呪いでした
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そのあとわらわらと家族や使用人が集まり、なんとかオレはアルバート本人であり、連れ込んだ女の子ではないことを説明した。
もちろんすぐには信用してもらえなかったが、親父が可愛い女の子のいる飲み屋に行ったこと(おふくろに禁止されているが、たまたまオレが出歩いた先で出くわして金貨を握らされて口留めされた)、セシルの初恋が宿屋の息子だということなどなどオレ以外は知りえないことをいくつか言ってなんとか認めてもらえた。
そのあと親父がおふくろに別室に引きずられていったり、赤面したセシルが部屋を飛び出していったりしたがそれは知らん。
もちろん美少女がアルバート本人であると判明した後は大騒ぎになり、医者を呼ばれた。産まれる前からうちのかかりつけの医者だ。結構なじーちゃん先生だけど、診察の腕は確かだ。
簡単に問診され口を開けたりした後、医者が「ううーん」と唸る。
そりゃ性別が変わるなんて、そうそうないから唸りもするよな。
現世に産まれて18年たつけど聞いたことねーもん。
「……確かに魔法で性別が変わってしまう、というのは聞いたことがあります」
「え?あるの?」
だったらもとに戻す方法もあるってことか。
隣で診察の様子を見ていたおふくろも、ほっとした顔をしている。
オレはワクワクしながら医者の次の言葉を待った。まだ女の子とキャッキャウフフなことをするという、前世からの野望を果たしていないからな。
だが医者の顔はなぜか渋いままで、重々しく次の言葉を発した。
「ですが、数百年は前のことでその魔法はほとんどすたれていますし、今では聞いたことがありません」
すたれてるはずが、現にオレこんな状態になってるんですけど。
疑問が顔に出ていたのか医者が続けて口を開く。
「アルバート様からはかすかに魔力を感じます。とても強い……四大魔女と同等、あるいは四大魔女の魔力。
四大魔女ならば性別を変える魔法くらい容易でしょうね」
「四大魔女……?おとぎ話じゃないの?」
四大魔女とは、歓喜の魔女、激高の魔女、悲哀の魔女、愉楽の魔女のことだ。人間でも魔力を持つ者は魔法を使えるが、四大魔女は人間の比ではない。気分次第で国を一つ滅ぼすことなど容易にできると言われている。
人の感情を表す喜怒哀楽がその名前の由来だが、歓喜の魔女はいい魔女だとか激高の魔女が怒りっぽいだとかその性格を冠したわけではない。
本当の名前は誰にも分からず、あだ名のような通り名である。人間ならばさほど関係がないが、妖魔や魔女レベルになると本当の名前というのを敵に知られるとなんだかやばいことになるらしい。もちろん幸いにして今まで会ったことがないので詳しくは知らないが。
子供のころからよく聞かされているおとぎ話にたびたび登場しており、小さい頃はよく「早く寝ないと四大魔女が来るよ」「悪いことをすると四大魔女に連れていかれるよ」などと脅されたものだった。
「そうそう人間の前に姿を見せませんからね。昨日何か変わったことをしませんでした?もし四大魔女にあったとすれば生きているだけでかなりの幸運ですが」
「昨日?うーん」
昨日もごく普通の一日だったけどな。
朝食を食べたら二度寝して、昼食食べて散歩して……。
あ、花屋のフレーベルが「深い森にある花は珍しいから高く売れるだろうなー。そしたら新しいドレスが買えるし助かるなー(チラッチラ)」と言ってきたので、町はずれにある深い森に行ったんだった。
深い森は「魔物が出るから行くな」と小さい頃からよく言われていたのだ。小さい男の子なんかは度胸試しでこっそり行ったりしている。あとで大人たちにバレてこっぴどく叱られるまでがワンセットだが。
オレはビビりだから入り口らへんでささっと花をつんで戻ったけど。
フレーベル喜んでたなー。頼めばデートくらいしてくれそうだが、いかんせんこの体では無理だ。
そういえば花を摘むとき赤い髪に赤い目をした女の子にものすごい凝視されたな。美人だったけど怖いくらいに迫力ある美人で、
「ちょっとだけもらうね!」
と言いながら逃げるように森を後にしたんだった。
森で人、さらに言えば女の子に会うのはものすごく珍しいのでよく覚えている。
その話を医者にすると、世界中のありとあらゆる苦い薬草を煎じて煮詰めたものを飲んだような渋面になった。
おふくろも「ばか息子……」と頭をかかえている。
「それが四大魔女ですね。どの魔女かは分かりませんが」
「え?四大魔女がいたとして今生きてたらかなりの年じゃないの?セシルくらいの子だったよ?」
「魔女は人間と年の取り方が違いますから。年齢や見た目も自由に変えられるでしょうし」
そういうもんなのか。
見た目変えられるってうらやましい。
モテ放題じゃん。
「てかそれが四大魔女の一人だったとして、なんでオレ魔法かけられなきゃいけないの?花つんだだけだよ?」
「運悪く出くわしてしまったから、でしょう。
四大魔女に出くわして生きている方が稀ですよ」
「対処方を調べてみるが期待はしないでください」と言いおいて医者は帰ってしまった。
もちろんすぐには信用してもらえなかったが、親父が可愛い女の子のいる飲み屋に行ったこと(おふくろに禁止されているが、たまたまオレが出歩いた先で出くわして金貨を握らされて口留めされた)、セシルの初恋が宿屋の息子だということなどなどオレ以外は知りえないことをいくつか言ってなんとか認めてもらえた。
そのあと親父がおふくろに別室に引きずられていったり、赤面したセシルが部屋を飛び出していったりしたがそれは知らん。
もちろん美少女がアルバート本人であると判明した後は大騒ぎになり、医者を呼ばれた。産まれる前からうちのかかりつけの医者だ。結構なじーちゃん先生だけど、診察の腕は確かだ。
簡単に問診され口を開けたりした後、医者が「ううーん」と唸る。
そりゃ性別が変わるなんて、そうそうないから唸りもするよな。
現世に産まれて18年たつけど聞いたことねーもん。
「……確かに魔法で性別が変わってしまう、というのは聞いたことがあります」
「え?あるの?」
だったらもとに戻す方法もあるってことか。
隣で診察の様子を見ていたおふくろも、ほっとした顔をしている。
オレはワクワクしながら医者の次の言葉を待った。まだ女の子とキャッキャウフフなことをするという、前世からの野望を果たしていないからな。
だが医者の顔はなぜか渋いままで、重々しく次の言葉を発した。
「ですが、数百年は前のことでその魔法はほとんどすたれていますし、今では聞いたことがありません」
すたれてるはずが、現にオレこんな状態になってるんですけど。
疑問が顔に出ていたのか医者が続けて口を開く。
「アルバート様からはかすかに魔力を感じます。とても強い……四大魔女と同等、あるいは四大魔女の魔力。
四大魔女ならば性別を変える魔法くらい容易でしょうね」
「四大魔女……?おとぎ話じゃないの?」
四大魔女とは、歓喜の魔女、激高の魔女、悲哀の魔女、愉楽の魔女のことだ。人間でも魔力を持つ者は魔法を使えるが、四大魔女は人間の比ではない。気分次第で国を一つ滅ぼすことなど容易にできると言われている。
人の感情を表す喜怒哀楽がその名前の由来だが、歓喜の魔女はいい魔女だとか激高の魔女が怒りっぽいだとかその性格を冠したわけではない。
本当の名前は誰にも分からず、あだ名のような通り名である。人間ならばさほど関係がないが、妖魔や魔女レベルになると本当の名前というのを敵に知られるとなんだかやばいことになるらしい。もちろん幸いにして今まで会ったことがないので詳しくは知らないが。
子供のころからよく聞かされているおとぎ話にたびたび登場しており、小さい頃はよく「早く寝ないと四大魔女が来るよ」「悪いことをすると四大魔女に連れていかれるよ」などと脅されたものだった。
「そうそう人間の前に姿を見せませんからね。昨日何か変わったことをしませんでした?もし四大魔女にあったとすれば生きているだけでかなりの幸運ですが」
「昨日?うーん」
昨日もごく普通の一日だったけどな。
朝食を食べたら二度寝して、昼食食べて散歩して……。
あ、花屋のフレーベルが「深い森にある花は珍しいから高く売れるだろうなー。そしたら新しいドレスが買えるし助かるなー(チラッチラ)」と言ってきたので、町はずれにある深い森に行ったんだった。
深い森は「魔物が出るから行くな」と小さい頃からよく言われていたのだ。小さい男の子なんかは度胸試しでこっそり行ったりしている。あとで大人たちにバレてこっぴどく叱られるまでがワンセットだが。
オレはビビりだから入り口らへんでささっと花をつんで戻ったけど。
フレーベル喜んでたなー。頼めばデートくらいしてくれそうだが、いかんせんこの体では無理だ。
そういえば花を摘むとき赤い髪に赤い目をした女の子にものすごい凝視されたな。美人だったけど怖いくらいに迫力ある美人で、
「ちょっとだけもらうね!」
と言いながら逃げるように森を後にしたんだった。
森で人、さらに言えば女の子に会うのはものすごく珍しいのでよく覚えている。
その話を医者にすると、世界中のありとあらゆる苦い薬草を煎じて煮詰めたものを飲んだような渋面になった。
おふくろも「ばか息子……」と頭をかかえている。
「それが四大魔女ですね。どの魔女かは分かりませんが」
「え?四大魔女がいたとして今生きてたらかなりの年じゃないの?セシルくらいの子だったよ?」
「魔女は人間と年の取り方が違いますから。年齢や見た目も自由に変えられるでしょうし」
そういうもんなのか。
見た目変えられるってうらやましい。
モテ放題じゃん。
「てかそれが四大魔女の一人だったとして、なんでオレ魔法かけられなきゃいけないの?花つんだだけだよ?」
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