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「オスカー様と婚約を取り付けるなんて、よくやったリオナ。なぜかオスカー様はお前にひかれておいでだったが、お前もようやく受け入れてくれるとはな!」
屋敷に戻って婚約を報告してから、伯爵が上機嫌すぎてうっとおしい。
「あー。ですからお試し期間というか、結婚するかまでは分かりませんよ」
「なあに、婚約までしてしまえば、大抵は結婚するからな」
釘を刺したものの、伯爵はまったく動じていない。鼻歌まじりに早くも式に誰を呼ぶかと思案し始めた。
訂正するのも面倒くさいので、もうリオナは、放っておくことにした。
「さーて、今日はどの子にしようかしら。味見するとオスカー様がうるさいかもしれないけれど、お話するくらいならいいわよね」
夜会に赴いたリオナはワインを飲みながら、いつも通り好みの令嬢を物色し始めた。
(なんだか様子がおかしいわね)
普段から悪目立ちはしているものの、今日は一段とちらちら目線を向けられる気がする。それに、いつもならリオナが会場に入ったら、すぐさま令嬢たちに取り囲まれるのだが。
怪訝に感じていると、一人の令嬢がいきおいよくリオナに抱き着いてきた。
「リオナお姉さま!」
「きゃ! ど、どうしたの?」
いきおいよく抱き着かれたが、幸いワインをこぼすことはなかった。以前関係を持っていた令嬢だ。
リオナは優しく、
「とりあえずここでは人目に付くから、外に出ましょうか? ね?」
「はい、お姉さま」
涙ぐみながら、令嬢はこくりとうなづいた。
庭のベンチに座らせると、リオナはハンカチをにぎらせて優しく背中をさすった。
「どうしたの? 話してくれる? 泣き顔も美しいけれど、あなたは笑顔のほうが素敵だわ」
令嬢はくすんくすんと鼻をすすり上げながら、リオナにしがみついた。じっとリオナを見上げて、
「お姉さま、婚約なさったって本当ですか?」
「う……! どうしてそれを……」
婚約したのはつい最近のことなのだが、もう広まっているのだろうか。
「オスカー様が嬉しそうにお話されていましたわ。今夜はいらしておられませんけど」
(余計なことを……)
リオナは内心舌打ちした。
「リオナ様はみんなのリオナ様だったのに! 私一人のものにならなくても、誰かのものにならないから我慢していたのに、あんまりですわ!」
「ごめんなさいね。私もしょせん、貴族の娘なの。面倒なしがらみがあるのよ。本当は、あなたたち皆と結婚したかったけれど……。どうせオスカー様も毛色の違う娘に興味を持たれただけよ。破断されるかもしれないわ。ね? あなたは賢い子だから、分かってくれるわね」
リオナが悲し気な表情で伝えると、令嬢はこくこくとうなづいた。
「はい。可哀そうなお姉さま……。私、今度もしまた生まれ変わることがあれば、男に生まれてきますわ。そのときは、結婚してください」
「この子が男に生まれてきたのだとしたら、今のようにかわいがることはできないかもしれない」と思ったが、さすがに口にするほど野暮ではない。
リオナは優しく、令嬢の手を両手で握った。
「ええ。前のようにかわいがってあげることはできないけれど、たまにはこうやってお話しましょう?」
「はい。お姉さま」
屋敷に戻って婚約を報告してから、伯爵が上機嫌すぎてうっとおしい。
「あー。ですからお試し期間というか、結婚するかまでは分かりませんよ」
「なあに、婚約までしてしまえば、大抵は結婚するからな」
釘を刺したものの、伯爵はまったく動じていない。鼻歌まじりに早くも式に誰を呼ぶかと思案し始めた。
訂正するのも面倒くさいので、もうリオナは、放っておくことにした。
「さーて、今日はどの子にしようかしら。味見するとオスカー様がうるさいかもしれないけれど、お話するくらいならいいわよね」
夜会に赴いたリオナはワインを飲みながら、いつも通り好みの令嬢を物色し始めた。
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普段から悪目立ちはしているものの、今日は一段とちらちら目線を向けられる気がする。それに、いつもならリオナが会場に入ったら、すぐさま令嬢たちに取り囲まれるのだが。
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「リオナお姉さま!」
「きゃ! ど、どうしたの?」
いきおいよく抱き着かれたが、幸いワインをこぼすことはなかった。以前関係を持っていた令嬢だ。
リオナは優しく、
「とりあえずここでは人目に付くから、外に出ましょうか? ね?」
「はい、お姉さま」
涙ぐみながら、令嬢はこくりとうなづいた。
庭のベンチに座らせると、リオナはハンカチをにぎらせて優しく背中をさすった。
「どうしたの? 話してくれる? 泣き顔も美しいけれど、あなたは笑顔のほうが素敵だわ」
令嬢はくすんくすんと鼻をすすり上げながら、リオナにしがみついた。じっとリオナを見上げて、
「お姉さま、婚約なさったって本当ですか?」
「う……! どうしてそれを……」
婚約したのはつい最近のことなのだが、もう広まっているのだろうか。
「オスカー様が嬉しそうにお話されていましたわ。今夜はいらしておられませんけど」
(余計なことを……)
リオナは内心舌打ちした。
「リオナ様はみんなのリオナ様だったのに! 私一人のものにならなくても、誰かのものにならないから我慢していたのに、あんまりですわ!」
「ごめんなさいね。私もしょせん、貴族の娘なの。面倒なしがらみがあるのよ。本当は、あなたたち皆と結婚したかったけれど……。どうせオスカー様も毛色の違う娘に興味を持たれただけよ。破断されるかもしれないわ。ね? あなたは賢い子だから、分かってくれるわね」
リオナが悲し気な表情で伝えると、令嬢はこくこくとうなづいた。
「はい。可哀そうなお姉さま……。私、今度もしまた生まれ変わることがあれば、男に生まれてきますわ。そのときは、結婚してください」
「この子が男に生まれてきたのだとしたら、今のようにかわいがることはできないかもしれない」と思ったが、さすがに口にするほど野暮ではない。
リオナは優しく、令嬢の手を両手で握った。
「ええ。前のようにかわいがってあげることはできないけれど、たまにはこうやってお話しましょう?」
「はい。お姉さま」
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