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最終話

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月日は経ち、あの愛らしい双子は10歳になっていたーー




ここは、治療所の一室。



すくすくと育ち、ラナと同じ、回復魔術師として力を奮っていた。

カイトは母親譲りのサラサラとした銀髪をもち、父親譲りの端正な顔立ちだ。

そして、10歳ながら、多くの女を惹きつけていた。





ーーカイトの治療室の前には、女の行列が。


カイトが患者を呼び、入ってきたのは20代くらいの女性だ。


「お姉さん、今日はどうしたの?」


「カイト様。私、水を扱うとすぐ肌が荒れて、
切れちゃうんです。とっても痛くて。」


「そっか。綺麗な手なのに、可哀想だ。
お仕事を頑張り過ぎたのかもね。

はい、僕に手を見せて?」


そう促され、彼女は両手を出した。


カイトはにっこり笑って、彼女の手を両手で包む。

「こうやって優しく握ってあげるとね、
ほら、もう痛くなくなるんだよ。」


「まぁ、!」


「ほら、こんなに、綺麗な手なんだもの。
頑張りすぎるのもいけないよ?

でも、どうしようもない時は、いつでも僕の所に来てね?
痛いの、取ってあげる。
女の子は、痛い思いなんてしなくていいんだから。」


「あ、ありがとうございます…!
(…っ10歳の子にときめくなんてっ!
将来はどんな大人になってしまうの⁈)


彼女がときめきに胸を痛めながら治療所の外に出ると、
待っていた他の女の子達の元へ駆け寄った。


「聞いてよ!優しく手を握ってもらっちゃったわ!
そして、綺麗な手だってっ。女の子扱いまでしてくれるし、
何より私への笑顔が素敵なのよ~!」


「きゃー!羨ましい!
でも、私だってこの間抱きしめてもらったんだから!
体中がだるいって言ったら、ぎゅってして、
『…ほら、どう?もう良くなったでしょ?』って!!
っ10歳なのが惜しいわ!」


その光景を遠目に見ていた者達がいた。
カイトの両親だ。

「最近益々、カイトが優しくなってて、本当に嬉しいわ!」

「…あれは、優しさなのか?あいつルイスの悪影響じゃ…。

俺は将来が不安だ…。」





そして、中庭ではーーーー


様々な動物に囲まれたルナがいた。

ルナは、動物の言葉を理解できるため、
体調チェックの役割を買って出たのだ。また、諜報的な役割もたまにしている。


『るなー!きょうは、みんなだいじょうぶだよ!げんき!』


「そう、それは良かったわ。」


『あ、るなー!さっき、またてがみが、きてたよ!
るなはにんきものだねー!』


「またー?もう、私の何を知って申し込んでくるのかしら⁈」


そう、ルナには毎日大量の縁談話が舞い込んでくる。


ルナは父親譲りの赤い髪を長く伸ばし、母親譲りの美しい顔立ちをしている。

日に日に美しく育っていくルナを、我先にと
多くの者が申し込んでくるのだ。



それをカイルとラナはーー

「チッ!またルナへの縁談の申し込みか!
まだ嫁には出さんと散々、言っているのに!
次から次へと…!」

カイルは手紙をテーブルに投げ付けた。


「そうね。まだ早いとは思うけど、お嫁に行く時が来たら、
きっと寂しいわ。」


「…半端な者には絶対にやらんぞ。」


「ふふ、ルナも好きな人が出来たら、大変ね。」





ーーそして、忘れてはいけない、もう一つの家族。

ルイスとアンジュだ。



2人が見守るその視線の先には、小さな赤ちゃんが、
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。
 

「んふふ。っもー、俺たちの子供って、マジ天使!」


「えぇ。可愛すぎて目が蕩けそうですわ!」


「アンジュにそっくりで、可愛い顔立ちだよなぁ~。」


「いいえ。貴方にそっくりで凛とした顔立ちよ。」


「俺たち、美男美女だからなー。
そりゃ、可愛い子供が産まれるわな。当然か。」


2人は可愛い女の子を授かった。

子供の溺愛ぶりも、ルイスとアンジュのお互いの溺愛ぶりも日に日に増している。

つまりは幸せだということ。

これからも仲睦まじく、愛に生きるのだろう。







そして最後に、カイルとラナはーー



中庭のベンチへ。


「ねぇカイル。子供達が大きくなって、独り立ちしたら、
ちょっとした旅に出てみたいわ。」


「そうだな。その頃には俺も引退しているだろうしな。
それもいい。」


「楽しみだわ!貴方とまた2人きりで、
今度は色んな所にいけるのね。」


「あぁ。馬は一頭でな。」


「ふふ、えぇ。

本当に幸せだわ。…大好きよ。カイル。」


「あぁ。俺もだ、ラナ。愛している。」


2人は寄り添い、
これからのさらなる幸せと喜びを祈った。





それは、暖かな光溢れる、ある春の日。
 

フロール王国では、多くの幸せに満ちていた。


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