悪魔と盲目天使

蕾阿(ライア)

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中編

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カタルシスは、天使だ。

光り輝く白い翼に美しいシルクの髪。

宝石を嵌め込んだかのような空色の瞳の持ち主だった。




今のカタルシスは、白い翼がくすんで汚れ、髪は艶を失い、目は見えない。



天使は天界に住む。

人間界に降りることもあるが、基本的には人間界に留まらない。



カタルシスは人間界に堕ちた天使だった。



天使は優しい。

優しいが、ルールを破った者には厳しい。容赦しない。



かつて、カタルシスは人間に力を分け与えた。
それは問題ない。ただ、規定以上の力を与えてしまったのだ。


人に望まれ、願いを叶えたかっただけ。 


真摯な祈りに心を揺さぶられ、還したいと思っただけ。


人間を愛しているから、大事にしたいから、望まれるままに力を与えただけ。


親が子どもにオモチャを買ってあげるのと同じなのに、何がいけないのか。


分からない。



分からなかったカタルシスは天界を追放された。  


ルールを破ったカタルシスに天使たちは容赦なく攻撃をした。


羽を毟り取られたし、目は見えなくなった。痛みが走り、生暖かいものが流れる感覚。



カタルシスは下へ落ちていった。









どれほどの時間が経っただろうか。

もう痛みは感じないが、身を守るために丸くなっていたからか、地上でも蹲っていた。





翼をはためかせる音がして、声をかけられた。


目が見えないから、姿形がわからない。


人間界に堕とされた自分に声をかけてくれる、優しい人。


自分と同じように翼を持つ優しい人はピラズィと名乗った。
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