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白拍子、人の恋路の終わりを知る
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「まつり、凄かったね! 今まで見たことなかったよ、あの舞は!」
「……ああ、凄かった」
まつりの舞を見ていた興江とこと。二人は興奮冷めやらぬまま感想を言い合っていた。
特にことは涙を流すほどだった。髪結いで少しでもまつりの助けになれたことを誇りに思った。
一方、興江はまるで極楽に行ったような心地よさを味わっていた。
あの舞を披露するために籠っていたと考えると納得ができた。
あれこそが芸事に全てを懸けた者の気迫だと感じた。
「……ねえ興江。話があるんだけど」
「話? 今だって話をしていただろう」
「そうじゃなくて! 大事な話だよ!」
夏祭りも終盤となり、ちらほらと帰り支度をする者もいた。二人は人気のない神社の裏に森近くで夜空を眺めながら話していた。数えきれないほどの星が瞬く中、ことは意を決して――
「あのさ、興江――」
「悪いが駄目だ。俺はそういうの無理なんだ」
告白も聞かずにばっさりと拒絶する興江。
まさかの展開に絶句してしまったこと。しかし気持ちを落ち着かせて「……理由を聞いてもいいかい?」と訊ねる。
「あたしのこと、嫌いなのかい?」
「そうじゃない、そうじゃないんだ。俺は誰かと祝言を挙げられるほど立派な人間じゃない。甲斐性もないしな。きっとお前を不幸にする」
頑なな気持ちで理由を述べる興江の顔は、苦痛に満ちていた。
まるで人を愛する資格なんてないと言わんばかりに。
申し訳ない気持ちで一杯な様子だった。
ことは告白したときよりも、そんな風にさせてしまったのを後悔していた。
「興江、その、ごめん……」
「謝らないでいい。悪いのは俺なんだ。俺が原因なんだよ」
ことは興江を支えたいと思っていた。
だから想いを告げて夫婦になりたかった。
しかし彼には所帯を持つつもりはなかった。
「俺には血が流れているんだ。呪われた刀鍛冶の血が……」
「……呪われた血?」
「お前と所帯を持てば、子を成すだろう。普通に暮らせればいい。だけどその子はいずれ刀鍛冶となり多くの刀を産み出す。そしてその刀は多くの人を斬り、多くの血が流れることになる」
興江の言っていることがよく分からないこと。目に涙が溜まる。
彼の抱えている大きくて重たくて悲しい因縁が不憫でならなかった。同情するのはお門違いだけど、それでもせざるを得なかった――ことは興江を愛していたから。
「それでもあたしは……興江と夫婦になりたいよ……」
そっと興江に寄り添うこと。
その好意から目を逸らす興江。
「子を成せなくてもいい。あんたと一緒にいたいんだよ」
「…………」
「あんたのことを、心から――」
「やめろ! それ以上言うな!」
「きゃあ!?」
ことの手が興江の頬に触れようとしたとき、その手を払いのけた――勢いでことは尻餅をついた。
ことは信じられないという顔で興江を見る。
彼もまた、己がやったことに呆然としていた。
「こ、こと。すまない、そんなつもりじゃあ……」
「…………」
ことは黙って立ち上がって、悲しそうなで悔しそうな顔で興江を見て――去ってしまった。
残された興江はやるせない気持ちになる。地べたの石を蹴っ飛ばして「くそ!」と悪態をついた。
転がった石はやがてゆっくりと速度を緩め――まつりの足元で止まる。
「まつり……なんで……」
興江がまず疑問に思ったのは、何故ここにまつりがいるのかだった。てっきり子供たちと夏祭りを楽しんでいると思ったからだ。
「……追いかけなくていいんですか?」
全てを聞いたとは言わずに、訊きたいことだけを率直に言ったまつり。
興江は「できねえよ、そんなこと」と淋しげに答えた。
「ことさん、泣いていましたよ。ほっといていいんですか?」
「強い女だ。直に泣き止むさ。長い付き合いだから分かる」
「それでも――傷は残ります」
「だろうな。俺の刀傷と一緒だ」
「興江殿が何を背負っているのか分かりません。でも――」
まつりは一呼吸置いた。彼女自身、落ち着く必要があった。
それから、告げる。
「女性を悲しませていい道理なんて、この世には存在しません」
夏祭りの賑やかな音が遠ざかっていくのが興江には分かった。
今、自分がことにしてしまった現実。過去に自分がしでかした過ち。
それらが頭の中を巡っていく。
全て消え去ることなく、澱んで溜まっている――
◆◇◆◇
ことは興江の言ったとおり、既に泣き止んでいた。
だけどこれからどんな顔をして興江に会えばいいのか、彼女には分からなかった。
でも明日から切り替えようと思っている。
今まで通り、興江の店で益体のないことを話したりして過ごしたい。
自分の髪結い道具を興江が手入れしているところを眺めたい。
ただ、傍にいたい。
それくらいなら、彼も許して――
「――あの白拍子の連れの女だな」
すっと前から人斬り――乃村征士郎が現れる。
ことは驚きのあまり、声が出せなかった。
「あの娘、俺と戦ったときは本気ではなかった。何か足りない気がした。おそらく俺と戦う目的が無かったせいだろう。勝とうとする気概が無かった。必死さが無かった。だとすれば――」
鞘からするりと刀を抜いた征士郎。
「お前を殺せば……あの娘も俺を殺そうと思い、戦ってくれるのだろうか」
ことは小さな声で「興江……」と言った。
刀が光る。数珠のような模様だと彼女はぼんやり思った。
◆◇◆◇
「まつりの言うとおりだ。女を泣かせていい道理なんざあるわけねえ。でもな――情けなくたって、縋らねえといけないもんが、男にはあるんだよ!」
興江の叫びはまつりに十分届いていた。
彼の背負っているものの大きさや重さは分からなかったけど、その心からの叫びは十分響いていた。
彼女もまた、白拍子という伝統を背負う者だから。
「それでも、ことさんには説明するべきじゃないですか?」
「説明したところで納得するとは思えない」
「それこそ男の人の理屈です。ことさんは求めているはずですから」
まつりのやけに冷静な言い方がすうっと興江の頭を冷やさせた。
言っていることも正しかった。
興江はふうっとため息をついて「ああ、お前の言うとおりだよ」と認めた。
「腹を割って話してみる。明日、あいつの家を訪ねてみるよ」
「そうしてください。きっと、ことさんも分かってくれます」
◆◇◆◇
夢を見ている。
興江にはそれが分かっていた。
『いいか興江。火は鉄を試すのだ。そして技術は人を試すのだ』
今は遠い昔のこと。
頬に刀傷が無かった頃の話。
『技術があっても奢ってはならん。最後に試されるのは職人の心だ』
かつて師と仰いだ者の言葉。
『冷静に冷徹に。そして――冷血に。刀のことを考えられる心だけが、傑作を生みだせるのだ』
その男の作りし刀は、天下において傑作と呼ばれた。
興江は憧れていた。同時に畏れていた。
ああいう風になりたい。
そしてああいう風になりたくない。
吐き気を覚えながら、相反する思いを胸に、興江は刀を――
目が覚めた。
頭が酷く痛む。まるで金づちで殴られたようだった。
あの人が出てくる夢を見るたびに痛む。
どんどんと音が鳴って――
「興江さん! 興江さんってば!」
現実でも鳴っている――誰かが戸を叩いている。
聞き覚えのある声だ。確か……近所の子供だ。名前は覚えていない。
寝巻姿のまま、興江は店の入り口を開けた。
「どうした? 朝からそんなに騒いで……」
「ああ! 興江さん! 大変だよ!」
子供は一人だけではなく、五人もいた。
全員泣いていて取り乱している。
そういえばことの奴によく叱られている悪ガキ連中だと興江は気づいた。
「……何があった?」
「ことねえちゃんが、ことねえちゃんが――」
子供の一人がしゃくりあげながら、大粒の涙と共に喚いた。
「ことねえちゃんが、殺されちゃった! 頭のおかしい人斬りに殺されちゃったんだよぉ!」
「……ああ、凄かった」
まつりの舞を見ていた興江とこと。二人は興奮冷めやらぬまま感想を言い合っていた。
特にことは涙を流すほどだった。髪結いで少しでもまつりの助けになれたことを誇りに思った。
一方、興江はまるで極楽に行ったような心地よさを味わっていた。
あの舞を披露するために籠っていたと考えると納得ができた。
あれこそが芸事に全てを懸けた者の気迫だと感じた。
「……ねえ興江。話があるんだけど」
「話? 今だって話をしていただろう」
「そうじゃなくて! 大事な話だよ!」
夏祭りも終盤となり、ちらほらと帰り支度をする者もいた。二人は人気のない神社の裏に森近くで夜空を眺めながら話していた。数えきれないほどの星が瞬く中、ことは意を決して――
「あのさ、興江――」
「悪いが駄目だ。俺はそういうの無理なんだ」
告白も聞かずにばっさりと拒絶する興江。
まさかの展開に絶句してしまったこと。しかし気持ちを落ち着かせて「……理由を聞いてもいいかい?」と訊ねる。
「あたしのこと、嫌いなのかい?」
「そうじゃない、そうじゃないんだ。俺は誰かと祝言を挙げられるほど立派な人間じゃない。甲斐性もないしな。きっとお前を不幸にする」
頑なな気持ちで理由を述べる興江の顔は、苦痛に満ちていた。
まるで人を愛する資格なんてないと言わんばかりに。
申し訳ない気持ちで一杯な様子だった。
ことは告白したときよりも、そんな風にさせてしまったのを後悔していた。
「興江、その、ごめん……」
「謝らないでいい。悪いのは俺なんだ。俺が原因なんだよ」
ことは興江を支えたいと思っていた。
だから想いを告げて夫婦になりたかった。
しかし彼には所帯を持つつもりはなかった。
「俺には血が流れているんだ。呪われた刀鍛冶の血が……」
「……呪われた血?」
「お前と所帯を持てば、子を成すだろう。普通に暮らせればいい。だけどその子はいずれ刀鍛冶となり多くの刀を産み出す。そしてその刀は多くの人を斬り、多くの血が流れることになる」
興江の言っていることがよく分からないこと。目に涙が溜まる。
彼の抱えている大きくて重たくて悲しい因縁が不憫でならなかった。同情するのはお門違いだけど、それでもせざるを得なかった――ことは興江を愛していたから。
「それでもあたしは……興江と夫婦になりたいよ……」
そっと興江に寄り添うこと。
その好意から目を逸らす興江。
「子を成せなくてもいい。あんたと一緒にいたいんだよ」
「…………」
「あんたのことを、心から――」
「やめろ! それ以上言うな!」
「きゃあ!?」
ことの手が興江の頬に触れようとしたとき、その手を払いのけた――勢いでことは尻餅をついた。
ことは信じられないという顔で興江を見る。
彼もまた、己がやったことに呆然としていた。
「こ、こと。すまない、そんなつもりじゃあ……」
「…………」
ことは黙って立ち上がって、悲しそうなで悔しそうな顔で興江を見て――去ってしまった。
残された興江はやるせない気持ちになる。地べたの石を蹴っ飛ばして「くそ!」と悪態をついた。
転がった石はやがてゆっくりと速度を緩め――まつりの足元で止まる。
「まつり……なんで……」
興江がまず疑問に思ったのは、何故ここにまつりがいるのかだった。てっきり子供たちと夏祭りを楽しんでいると思ったからだ。
「……追いかけなくていいんですか?」
全てを聞いたとは言わずに、訊きたいことだけを率直に言ったまつり。
興江は「できねえよ、そんなこと」と淋しげに答えた。
「ことさん、泣いていましたよ。ほっといていいんですか?」
「強い女だ。直に泣き止むさ。長い付き合いだから分かる」
「それでも――傷は残ります」
「だろうな。俺の刀傷と一緒だ」
「興江殿が何を背負っているのか分かりません。でも――」
まつりは一呼吸置いた。彼女自身、落ち着く必要があった。
それから、告げる。
「女性を悲しませていい道理なんて、この世には存在しません」
夏祭りの賑やかな音が遠ざかっていくのが興江には分かった。
今、自分がことにしてしまった現実。過去に自分がしでかした過ち。
それらが頭の中を巡っていく。
全て消え去ることなく、澱んで溜まっている――
◆◇◆◇
ことは興江の言ったとおり、既に泣き止んでいた。
だけどこれからどんな顔をして興江に会えばいいのか、彼女には分からなかった。
でも明日から切り替えようと思っている。
今まで通り、興江の店で益体のないことを話したりして過ごしたい。
自分の髪結い道具を興江が手入れしているところを眺めたい。
ただ、傍にいたい。
それくらいなら、彼も許して――
「――あの白拍子の連れの女だな」
すっと前から人斬り――乃村征士郎が現れる。
ことは驚きのあまり、声が出せなかった。
「あの娘、俺と戦ったときは本気ではなかった。何か足りない気がした。おそらく俺と戦う目的が無かったせいだろう。勝とうとする気概が無かった。必死さが無かった。だとすれば――」
鞘からするりと刀を抜いた征士郎。
「お前を殺せば……あの娘も俺を殺そうと思い、戦ってくれるのだろうか」
ことは小さな声で「興江……」と言った。
刀が光る。数珠のような模様だと彼女はぼんやり思った。
◆◇◆◇
「まつりの言うとおりだ。女を泣かせていい道理なんざあるわけねえ。でもな――情けなくたって、縋らねえといけないもんが、男にはあるんだよ!」
興江の叫びはまつりに十分届いていた。
彼の背負っているものの大きさや重さは分からなかったけど、その心からの叫びは十分響いていた。
彼女もまた、白拍子という伝統を背負う者だから。
「それでも、ことさんには説明するべきじゃないですか?」
「説明したところで納得するとは思えない」
「それこそ男の人の理屈です。ことさんは求めているはずですから」
まつりのやけに冷静な言い方がすうっと興江の頭を冷やさせた。
言っていることも正しかった。
興江はふうっとため息をついて「ああ、お前の言うとおりだよ」と認めた。
「腹を割って話してみる。明日、あいつの家を訪ねてみるよ」
「そうしてください。きっと、ことさんも分かってくれます」
◆◇◆◇
夢を見ている。
興江にはそれが分かっていた。
『いいか興江。火は鉄を試すのだ。そして技術は人を試すのだ』
今は遠い昔のこと。
頬に刀傷が無かった頃の話。
『技術があっても奢ってはならん。最後に試されるのは職人の心だ』
かつて師と仰いだ者の言葉。
『冷静に冷徹に。そして――冷血に。刀のことを考えられる心だけが、傑作を生みだせるのだ』
その男の作りし刀は、天下において傑作と呼ばれた。
興江は憧れていた。同時に畏れていた。
ああいう風になりたい。
そしてああいう風になりたくない。
吐き気を覚えながら、相反する思いを胸に、興江は刀を――
目が覚めた。
頭が酷く痛む。まるで金づちで殴られたようだった。
あの人が出てくる夢を見るたびに痛む。
どんどんと音が鳴って――
「興江さん! 興江さんってば!」
現実でも鳴っている――誰かが戸を叩いている。
聞き覚えのある声だ。確か……近所の子供だ。名前は覚えていない。
寝巻姿のまま、興江は店の入り口を開けた。
「どうした? 朝からそんなに騒いで……」
「ああ! 興江さん! 大変だよ!」
子供は一人だけではなく、五人もいた。
全員泣いていて取り乱している。
そういえばことの奴によく叱られている悪ガキ連中だと興江は気づいた。
「……何があった?」
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