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第2章
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(1)
冬休みに入った。
クリスマスプレゼントをもらった。
僕は腕時計、翼はイヤリングをもらっていた。
天音は音楽プレイヤーをもらったらしい。
今年のクリスマスの天音は江口家のパーティに招待された。
僕と翼は冬吾の誕生日パーティを開いていた。
食い気は父さんの血を継いだようだ。
黙々と料理を食べている。
遠坂のお爺さんたちも招いてのパーティ。
料理を食べ終わると僕達は風呂に入る。
そして部屋に戻ってテレビを見ている。
クリスマスの特番をやっていた。
ぼんやり見ながら過ごしている。
番組が終る頃天音が帰ってくる。
天音が風呂から部屋に戻る頃僕もベッドに入ると、眠りについた。
冬休みは始まったばかりだった。
(2)
江口家でクリスマスパーティが行われた。
いつものお決まりの言葉を言って大人たちは次の客の元へと足を運ぶ。
今年の標的は石崎皐子をはじめとして何人かいた。
女性が標的になるのは珍しい。
まあ、怒られるのは男性陣だけど。
「ちゃんとお嬢さんの家に挨拶は行ったのか!?」
小学校4年生や5年生に無茶を言う……。
石崎さんはうまく対応していた。
その歳にしては珍しいくらい上手に対応していた。
こっちの方が驚いたよ。
一通り挨拶をすませるとテーブル席につく。
中1の僕達に何を期待しているのだろう?
束になった名刺を見て思う。
僕が大人になった時何をしているのだろう?
家業を継ぐために酒井コーポレーションに入るのだろうか?
それとも別のことをしているのだろうか?
僕に選択肢はない。当然のように。
別の事と言うのは文字通り別の会社が作られるという事。
母さんは父さんの為に酒井コーポレーションを作ったらしい。
厳密に言うと少し違う。
渡辺班の仲間を救う為に地元銀行の株を買収するために会社を作った。
そして父さんを社長に祭り上げた。
父さんもさすがに驚いたらしい。
まあ、父さんの大学生活そのものが波乱に満ちていたけど。
渡辺班に目をつけられたのが運の尽き。
父さんはそう言っていた。
僕も同じ運命をたどるらしい。
歴史は擬える。
まさにそのとおりだろう。
しかし、翼には将来やりたい事って無いのだろうか?
以前翼に聞いていた。
「普通にお嫁さんじゃない?」
美希はそう言って笑っていた。
もう隣に立っている人も決まっているんだろうね。
「善明はないの?やりたい事」
「僕も半分決まっているからね」
多分生半可なことはやらせてもらえないだろう?
例えば飛行機のパイロットと言い出せばLCC一個買収するくらいの事は家の母さんならやるだろう。
飛行機のパイロットという些細な夢は航空会社の社長と言う文字に塗り替えられる。
両親は進路については何も言わない。
精々「大学くらいは出ておきなさい」くらいだ。
とくにどこの大学に行けとかは言わない。
何処の大学を出ようと就職先は決まっているのだから。
その事を美希に話すと美希も言った。
「じゃあ、私の進路も決まってるね」
僕達の世代は一体どれだけの仲間が地元大学に押し寄せるのだろう?
約束された将来。
ただ親の決めたレールの上をなぞるだけ。
気楽に聞こえるけど、それを実践するためにどれだけの心労を伴う事か。
一歩でも踏み外せば地元経済を不況のどん底に落としかねないレール。
一歩ずつ慎重に進んでいく。
地獄を見るのは僕じゃない。関わった人達だ。
齢13にして彼女だけじゃない大勢の人間の命運を背負っている。
パーティも終わろうとしていた。
江口家の総裁。美希のお爺さんが締めの挨拶をする。
僕達はここで家に帰る。
風呂に入ると部屋に戻り。やっと落ち着く。
今日が終りまた明日が訪れる。
ただ翼といるだけの今日を繰り返していく。
(3)
「本当にすまない!」
彼、江口亘は帰りの車の中で私に頭を下げていた。
「気にしないで、ちょっとびっくりしたけどね」
今日は私が江口家本家のクリスマスパーティに呼ばれた。
亘君は父親が江口グループの重要な部門江口重工の社長、母親もやはり江口グループの一つ江口銀行の社長だった。
亘君は江口重工を、弟の亨君が江口銀行を継ぐ。三男の陸君も江口銀行の事業の一部門を任せらえるらしい。
陸君の彼女は酒井祈。酒井コーポレーションの社長令嬢。
当然酒井家の事業の一つを任せられるだろう。
酒井家は祈の母さん酒井晶の実家志水家によって興された新進企業。次々と新分野に進出している。
その事業のうちの一つだろう。
とにかく巨大な企業グループが地元に出来つつあった。
そんな跡取り息子の彼女。
それだけで今日来た来賓の注目を集める。
「親御さんは何をされておられてるのかな?」
「ただのサラリーマンです」
「それは失礼しました。ではまた」
「待ってください。あなたの名前を聞いてない」
亘君が何倍も年上の人を呼び止めた。
「そ、それは……」
「あなたの名前と顔をよく覚えておきたい。母に言われてるんです。もし無礼な真似をされたら顔と名前をしっかり憶えておきなさいと」
亘君がそう言うとその人は何も言わず逃げるように去っていった。
「ごめんね、気分を悪くしたでしょう」
「気にしてないから大丈夫」
そんなやりとりが今日だけで何回あったことか。
「亘。ちょっといらっしゃい」
亘君のお母さんが呼んでいる。
「何かあったの?」
「ずっと待っていたのになかなか紹介してくれないから呼んだだけ」
亘君のお母さんの隣にはお父さんも立っていた。
「最近交際をしている石崎皐子さんです」
亘君が言うと私は会釈する。
「初めまして、可愛らしいお嬢さんじゃない。こういう場にも慣れてるみたいだし」
生まれて初めてなんだけどな。
「蒼さん、どう?私は別に問題ないように見えるけど」
「そうだね」
亘君の両親が話をしている。
何の話だろう?
「亘は相手の親には挨拶してあるの?」
「え?」
「え?じゃないでしょ!他人様のお嬢様を何だと思ってるの!?」
「あ、あのここに来るとき紹介くらいはさせていただいたので」
私が助け舟を出した。
「そうなの?ならいいわ。今度おばさんも主人と挨拶に伺うから」
「そうだな……。大事な娘さんを預かるんだし」
へ?
「ま、まだ付き合って一月ちょいしか経ってないし、そういう話はまだ早いよ。僕達小学5年生だよ」
「陸は去年ちゃんと婚約の挨拶をしたわよ」
婚約!?
さすがに私も動揺した。
「まさか亘はまだプロポーズもしてないとか言うんじゃないでしょうね!?」
亘君のお母さんが言う。
お金持ちの思考ってこういうものなんだろうか?
「突然言われても出来るわけないだろ?」
「他人様の娘さんを弄ぶだけ弄ぶなんて行動は母さん認めませんよ」
言ってる事はまともに聞こえるんだけど、実際は無茶言ってるよね。
「口約束だけでもいいからしておきなさい」
「紀子、皐子さんの意向も聞いておかないと駄目じゃないか」
亘君のお父さんが言った。
割と常識を持ってるように聞こえるようだけど小学校6年生相手に言う言葉じゃない気がする。
「そうね、皐子さんはどう思ってるのかな?」
亘君のお母さんが聞いてきた。
冷静に考えよう、ここで決めてしまえば将来は安泰だ。
亘君の性格からして浮気は考えられない。
そんなことしたらまず親が黙っていないだろう?
破局も多分あり得ない。
彼がこの縁談を反故にしたらやはり彼の身の安全は保障できない。
「そうですね。良い人だとおもいます」
亘君。ごめんなさい。もう一度だけあなたの勇気を見せてください。
「らしいわよ亘。ちゃんと気持ちを伝えなさい!」
「デートもまだしてないし、早いと思ったんだけど……指輪もまだ準備してないけど、僕で良ければ結婚を約束してもらえませんか?」
いきなりプロポーズとは思ってもみなかった。
しかし私にも選択肢が無かった。
亘君の気持ちを無駄には出来ない。ここで断れば立場をまずくするのは亘君だ。
「こんな私を選んでくれてありがとう」
嬉しいという気持ちに嘘はない。
その回答に亘君の両親も納得したようだ。
「これであとは亨ね……お見合いでもさせようかしら」
「まだ小学生だ。子供の自由にさせてあげよう」
亘君のお父さんが言う事は正しいと思う。私達の結果がなければ。
「蒼、お久しぶり。仕事の方は順調?」
亘君の親戚にあたる石原恵美が来た。
江口家の総帥の娘。
それだけで彼女の江口家の地位は全く違う。
「恵美、聞いて。うちの息子に婚約者が出来たわ」
「あら?良かったじゃない紀子」
恵美さんは私を見る。
「まあ、亘が選んだのなら間違いないわね。あと残ってるのは亨?」
「そうなのよ。亨もそんなに悪くないと思うんだけどね」
こうして、私と亘君の関係は2人によって既成事実と化していた。
パーティが終ると私達は家に帰る。
「本当にすまない!」
亘君は車の中で私に詫びていた。
「気にしないで、ちょっとびっくりしたけどね」
でも、そんなに悪い気はしなかった。
「これで私は進路に困る必要も無いみたいだし」
「どうして?」
「亘君と同じ道を行けば良いんでしょ?」
「なるほどね」
車は私の家に着く。
車を降りようとする私に亘君は声をかけた。
「石崎さんは本当に後悔してない?」
「何を?」
「僕と付き合ってしまったこと」
付き合ってると言ってもメッセージをやりとりしてるだけなんだけどな。
「してないよ。私の未来に光を射してくれた。将来に希望がもてた。嬉しいと思ってる」
「わかった。おやすみ」
「おやすみなさい」
そして私は家に入る。
風呂に入って部屋でくつろいでいるとメッセージが届く。
「メリークリスマス」
今日はクリスマス。
大切な記念日になったようだ。
年明けに初詣という名の初めてのデートを楽しんだ。
(4)
「じゃあ、今日は今年最後の宴だ。楽しんでくれ」
渡辺さんが言うとパーティは始まった。
父さん達のグループ渡辺班のパーティ。
沢山の人が詰めかける。
如月天の父の如月翔太が運営する如月グループリゾート部門の一つ。如月観光ホテルの一つのパーティホールで行われた。
翼と僕も色んな人に挨拶される。
父さんの息子と娘と言うのは凄い力を持っているらしい。
この日だけは酒井君達も落ち着けるらしい。
クリスマスパーティは大変だったそうだから。
今日は渡辺班だけのパーティ。
だから酒井君達に挨拶するような来賓は来ていない。
だから僕達の所に来た。
「片桐君も大変そうだね」
酒井君が言う。
「ああ、ここまでなるとはね」
僕は疲れていた。
天音は今日はクリスマスに食えなかった分を食う!と大地と一緒に料理を食べてる。
翼も食べていた。
父さんと母さん達からは離れていた方が良さそうなので離れていた。
しかし今日一番大変なのは水奈のお父さんだろう。
今日は水奈のお父さん多田誠の引退パーティも兼ねていた。
多田誠は地元チームにリーグ3連覇という偉業を成し遂げただけでなくMVPに輝きそしてとうとうアジア勢初のクラブワールドカップ優勝という栄光を掴んだ。
テレビでも散々取り上げられた。
もう多田誠はただのJリーグ選手じゃない。
海外勢のフォワードを天才だと賞賛していたが彼はそれを上回る活躍をしてみせた。
もし彼がW杯にでていたら……なんて話もでるほどだ。
実際クラブワールドカップが終わった後、スペインのクラブチームから声がかかったらしい。
あの一番年棒が高いと言われるチームから。
でも多田誠の意思は固かった。
今季で引退するという決意は変わることは無かった。
そんな彼に皆が賞賛していた。
そして彼の息子多田誠司に期待がかかる。
サッカーと言えば水島みなみ選手も大活躍していた。
日本代表に招待されそして実績を作っていた。
3年後のオリンピックに出場するだろうと期待されている。
そんな水島さんにも彼氏ができたそうだ。
バレーボール部の沢木与留。
クラスメートだ。
アスリート同士通じるものがあったらしい。
バレーボール部も今年飛躍的な成果をあげた。
全国大会優勝。
僕達の世代はキセキの世代と呼ばれるんだろうな。
みんな知ってる者同士大人も子供も盛り上がって終わった。
「冬夜、2次会付き合えよ。誠も。誠が主賓だろ?」
学の父さんが言う。
「子供が大きくなるまですまん」
父さんと水奈の父さんは断った。
バスで家に帰る。
そして風呂に入って部屋に戻ると時間は24時前。
さすがにこれから何かしようって気にはならなかった。
素直に美希におやすみと送って眠りについた。
(5)
家に着くと、まず水奈が風呂に入る。
そしてその後神奈と誠司が風呂に入る。
最後に入るのが俺。
その間ビールを飲みながらテレビを見ている。
神奈と誠司が風呂から出て来て神奈が誠司を寝かしつけてる間に俺は風呂に入る。
誠司も疲れていたのだろう。
俺が風呂から出て来る頃には眠っていた。
風呂から出るとテレビを見る。
この時間でもやってるお笑い番組を見ていた。
神奈が隣に座る。
「お疲れ様」
神奈は一言そう言った。
色々な意味が込められているのだろう。
「ありがとう、ここまでこれたのも神奈のお蔭だ」
神奈に礼を言う。
「どんな気分だ?トーヤの時は達成感の3文字で片づけたが……」
「俺も同じかな。充実感の3文字で片付けてしまったよ」
「充実か……それを聞いて安心したよ。後悔の2文字は無いんだな」
「あるとすれば、神奈や水奈に構ってやる時間が無かったことくらいかな」
「十分構ってもらえてるよ。構い過ぎなくらいに」
神奈はそう言って笑う。
「これからは誠司に精一杯構うよ。父親らしいことをしてやりたい」
俺に教えられること全てを伝えよう。
「頼むから妙な癖はつけてくれるなよ?ここまで真っ直ぐに育っているんだ」
「わかった」
「あ、そうだ。水奈から誠にクリスマスプレゼント預かってたんだ」
神奈がそう言って寝室に行く。
袋をもってやってきた。
さっそく中身を見てみる。
靴下だった。
娘からのプレゼントか。
メッセージが入っていた。
「お疲れ様。最後の試合見てた。カッコよかったよ」
サッカーをやってきてよかった。
心からそう思った。
ここまでいろいろあったけど、きっとこれからも色々あるだろうけど。
俺たちが結んできた朱い糸は切れることは無いだろう。
妻に、娘に、息子に、そして友に。
俺達は世代を超えて繋がっている。
次の世代に残す為にやれることをやろう。
皆より少し早いけど第二の人生を歩むことにするよ。
「そろそろ寝ないか?」
神奈が言う。
「そうだな」
こうして俺の人生第一章は幕を閉じた。
それは同時に第二章の幕開けだった。
年が明ければすでに始まる。
(6)
僕達中学生組は西寒田神社に初詣に来ていた。
みんなで話しながら列を並んでお参りする。
出店のラーメン?
あとで落ち着いて食べたらいいじゃないか。
お参りがすむとすぐに出店に向かう僕と翼。
皆はおみくじを引いていた。
僕は引かない。
だってどうせ大吉だって決まってるから。
それにどんな結果が出たって関係ない。
力づくで大吉に変えてやる。
運命は残酷だけどそれを恐れてはいけない。運命に立ち向かわない者に女神は決して微笑まない。
父さんが言ってた。
「よっしゃ!恋愛運ばっちりだったぞ!」
光太がそう言って喜んでる。
それからみんなで話をしていた。
去年を振り返っていた。
暫くして、自然と解散していった。
「空」
美希が呼び止める。
振り返ると美希はにこりと笑って言った。
「明けましておめでとう」
「おめでとう。今年もよろしく」
家に帰ると皆眠っていた。
そっと部屋に戻る。
ベッドに入って眠りにつく。
そして夜が明ける。
「空、朝だよ」
美希のモーニングコールで目が覚める。
「おはよう美希」
そして新しい一年がはじまる。
冬休みに入った。
クリスマスプレゼントをもらった。
僕は腕時計、翼はイヤリングをもらっていた。
天音は音楽プレイヤーをもらったらしい。
今年のクリスマスの天音は江口家のパーティに招待された。
僕と翼は冬吾の誕生日パーティを開いていた。
食い気は父さんの血を継いだようだ。
黙々と料理を食べている。
遠坂のお爺さんたちも招いてのパーティ。
料理を食べ終わると僕達は風呂に入る。
そして部屋に戻ってテレビを見ている。
クリスマスの特番をやっていた。
ぼんやり見ながら過ごしている。
番組が終る頃天音が帰ってくる。
天音が風呂から部屋に戻る頃僕もベッドに入ると、眠りについた。
冬休みは始まったばかりだった。
(2)
江口家でクリスマスパーティが行われた。
いつものお決まりの言葉を言って大人たちは次の客の元へと足を運ぶ。
今年の標的は石崎皐子をはじめとして何人かいた。
女性が標的になるのは珍しい。
まあ、怒られるのは男性陣だけど。
「ちゃんとお嬢さんの家に挨拶は行ったのか!?」
小学校4年生や5年生に無茶を言う……。
石崎さんはうまく対応していた。
その歳にしては珍しいくらい上手に対応していた。
こっちの方が驚いたよ。
一通り挨拶をすませるとテーブル席につく。
中1の僕達に何を期待しているのだろう?
束になった名刺を見て思う。
僕が大人になった時何をしているのだろう?
家業を継ぐために酒井コーポレーションに入るのだろうか?
それとも別のことをしているのだろうか?
僕に選択肢はない。当然のように。
別の事と言うのは文字通り別の会社が作られるという事。
母さんは父さんの為に酒井コーポレーションを作ったらしい。
厳密に言うと少し違う。
渡辺班の仲間を救う為に地元銀行の株を買収するために会社を作った。
そして父さんを社長に祭り上げた。
父さんもさすがに驚いたらしい。
まあ、父さんの大学生活そのものが波乱に満ちていたけど。
渡辺班に目をつけられたのが運の尽き。
父さんはそう言っていた。
僕も同じ運命をたどるらしい。
歴史は擬える。
まさにそのとおりだろう。
しかし、翼には将来やりたい事って無いのだろうか?
以前翼に聞いていた。
「普通にお嫁さんじゃない?」
美希はそう言って笑っていた。
もう隣に立っている人も決まっているんだろうね。
「善明はないの?やりたい事」
「僕も半分決まっているからね」
多分生半可なことはやらせてもらえないだろう?
例えば飛行機のパイロットと言い出せばLCC一個買収するくらいの事は家の母さんならやるだろう。
飛行機のパイロットという些細な夢は航空会社の社長と言う文字に塗り替えられる。
両親は進路については何も言わない。
精々「大学くらいは出ておきなさい」くらいだ。
とくにどこの大学に行けとかは言わない。
何処の大学を出ようと就職先は決まっているのだから。
その事を美希に話すと美希も言った。
「じゃあ、私の進路も決まってるね」
僕達の世代は一体どれだけの仲間が地元大学に押し寄せるのだろう?
約束された将来。
ただ親の決めたレールの上をなぞるだけ。
気楽に聞こえるけど、それを実践するためにどれだけの心労を伴う事か。
一歩でも踏み外せば地元経済を不況のどん底に落としかねないレール。
一歩ずつ慎重に進んでいく。
地獄を見るのは僕じゃない。関わった人達だ。
齢13にして彼女だけじゃない大勢の人間の命運を背負っている。
パーティも終わろうとしていた。
江口家の総裁。美希のお爺さんが締めの挨拶をする。
僕達はここで家に帰る。
風呂に入ると部屋に戻り。やっと落ち着く。
今日が終りまた明日が訪れる。
ただ翼といるだけの今日を繰り返していく。
(3)
「本当にすまない!」
彼、江口亘は帰りの車の中で私に頭を下げていた。
「気にしないで、ちょっとびっくりしたけどね」
今日は私が江口家本家のクリスマスパーティに呼ばれた。
亘君は父親が江口グループの重要な部門江口重工の社長、母親もやはり江口グループの一つ江口銀行の社長だった。
亘君は江口重工を、弟の亨君が江口銀行を継ぐ。三男の陸君も江口銀行の事業の一部門を任せらえるらしい。
陸君の彼女は酒井祈。酒井コーポレーションの社長令嬢。
当然酒井家の事業の一つを任せられるだろう。
酒井家は祈の母さん酒井晶の実家志水家によって興された新進企業。次々と新分野に進出している。
その事業のうちの一つだろう。
とにかく巨大な企業グループが地元に出来つつあった。
そんな跡取り息子の彼女。
それだけで今日来た来賓の注目を集める。
「親御さんは何をされておられてるのかな?」
「ただのサラリーマンです」
「それは失礼しました。ではまた」
「待ってください。あなたの名前を聞いてない」
亘君が何倍も年上の人を呼び止めた。
「そ、それは……」
「あなたの名前と顔をよく覚えておきたい。母に言われてるんです。もし無礼な真似をされたら顔と名前をしっかり憶えておきなさいと」
亘君がそう言うとその人は何も言わず逃げるように去っていった。
「ごめんね、気分を悪くしたでしょう」
「気にしてないから大丈夫」
そんなやりとりが今日だけで何回あったことか。
「亘。ちょっといらっしゃい」
亘君のお母さんが呼んでいる。
「何かあったの?」
「ずっと待っていたのになかなか紹介してくれないから呼んだだけ」
亘君のお母さんの隣にはお父さんも立っていた。
「最近交際をしている石崎皐子さんです」
亘君が言うと私は会釈する。
「初めまして、可愛らしいお嬢さんじゃない。こういう場にも慣れてるみたいだし」
生まれて初めてなんだけどな。
「蒼さん、どう?私は別に問題ないように見えるけど」
「そうだね」
亘君の両親が話をしている。
何の話だろう?
「亘は相手の親には挨拶してあるの?」
「え?」
「え?じゃないでしょ!他人様のお嬢様を何だと思ってるの!?」
「あ、あのここに来るとき紹介くらいはさせていただいたので」
私が助け舟を出した。
「そうなの?ならいいわ。今度おばさんも主人と挨拶に伺うから」
「そうだな……。大事な娘さんを預かるんだし」
へ?
「ま、まだ付き合って一月ちょいしか経ってないし、そういう話はまだ早いよ。僕達小学5年生だよ」
「陸は去年ちゃんと婚約の挨拶をしたわよ」
婚約!?
さすがに私も動揺した。
「まさか亘はまだプロポーズもしてないとか言うんじゃないでしょうね!?」
亘君のお母さんが言う。
お金持ちの思考ってこういうものなんだろうか?
「突然言われても出来るわけないだろ?」
「他人様の娘さんを弄ぶだけ弄ぶなんて行動は母さん認めませんよ」
言ってる事はまともに聞こえるんだけど、実際は無茶言ってるよね。
「口約束だけでもいいからしておきなさい」
「紀子、皐子さんの意向も聞いておかないと駄目じゃないか」
亘君のお父さんが言った。
割と常識を持ってるように聞こえるようだけど小学校6年生相手に言う言葉じゃない気がする。
「そうね、皐子さんはどう思ってるのかな?」
亘君のお母さんが聞いてきた。
冷静に考えよう、ここで決めてしまえば将来は安泰だ。
亘君の性格からして浮気は考えられない。
そんなことしたらまず親が黙っていないだろう?
破局も多分あり得ない。
彼がこの縁談を反故にしたらやはり彼の身の安全は保障できない。
「そうですね。良い人だとおもいます」
亘君。ごめんなさい。もう一度だけあなたの勇気を見せてください。
「らしいわよ亘。ちゃんと気持ちを伝えなさい!」
「デートもまだしてないし、早いと思ったんだけど……指輪もまだ準備してないけど、僕で良ければ結婚を約束してもらえませんか?」
いきなりプロポーズとは思ってもみなかった。
しかし私にも選択肢が無かった。
亘君の気持ちを無駄には出来ない。ここで断れば立場をまずくするのは亘君だ。
「こんな私を選んでくれてありがとう」
嬉しいという気持ちに嘘はない。
その回答に亘君の両親も納得したようだ。
「これであとは亨ね……お見合いでもさせようかしら」
「まだ小学生だ。子供の自由にさせてあげよう」
亘君のお父さんが言う事は正しいと思う。私達の結果がなければ。
「蒼、お久しぶり。仕事の方は順調?」
亘君の親戚にあたる石原恵美が来た。
江口家の総帥の娘。
それだけで彼女の江口家の地位は全く違う。
「恵美、聞いて。うちの息子に婚約者が出来たわ」
「あら?良かったじゃない紀子」
恵美さんは私を見る。
「まあ、亘が選んだのなら間違いないわね。あと残ってるのは亨?」
「そうなのよ。亨もそんなに悪くないと思うんだけどね」
こうして、私と亘君の関係は2人によって既成事実と化していた。
パーティが終ると私達は家に帰る。
「本当にすまない!」
亘君は車の中で私に詫びていた。
「気にしないで、ちょっとびっくりしたけどね」
でも、そんなに悪い気はしなかった。
「これで私は進路に困る必要も無いみたいだし」
「どうして?」
「亘君と同じ道を行けば良いんでしょ?」
「なるほどね」
車は私の家に着く。
車を降りようとする私に亘君は声をかけた。
「石崎さんは本当に後悔してない?」
「何を?」
「僕と付き合ってしまったこと」
付き合ってると言ってもメッセージをやりとりしてるだけなんだけどな。
「してないよ。私の未来に光を射してくれた。将来に希望がもてた。嬉しいと思ってる」
「わかった。おやすみ」
「おやすみなさい」
そして私は家に入る。
風呂に入って部屋でくつろいでいるとメッセージが届く。
「メリークリスマス」
今日はクリスマス。
大切な記念日になったようだ。
年明けに初詣という名の初めてのデートを楽しんだ。
(4)
「じゃあ、今日は今年最後の宴だ。楽しんでくれ」
渡辺さんが言うとパーティは始まった。
父さん達のグループ渡辺班のパーティ。
沢山の人が詰めかける。
如月天の父の如月翔太が運営する如月グループリゾート部門の一つ。如月観光ホテルの一つのパーティホールで行われた。
翼と僕も色んな人に挨拶される。
父さんの息子と娘と言うのは凄い力を持っているらしい。
この日だけは酒井君達も落ち着けるらしい。
クリスマスパーティは大変だったそうだから。
今日は渡辺班だけのパーティ。
だから酒井君達に挨拶するような来賓は来ていない。
だから僕達の所に来た。
「片桐君も大変そうだね」
酒井君が言う。
「ああ、ここまでなるとはね」
僕は疲れていた。
天音は今日はクリスマスに食えなかった分を食う!と大地と一緒に料理を食べてる。
翼も食べていた。
父さんと母さん達からは離れていた方が良さそうなので離れていた。
しかし今日一番大変なのは水奈のお父さんだろう。
今日は水奈のお父さん多田誠の引退パーティも兼ねていた。
多田誠は地元チームにリーグ3連覇という偉業を成し遂げただけでなくMVPに輝きそしてとうとうアジア勢初のクラブワールドカップ優勝という栄光を掴んだ。
テレビでも散々取り上げられた。
もう多田誠はただのJリーグ選手じゃない。
海外勢のフォワードを天才だと賞賛していたが彼はそれを上回る活躍をしてみせた。
もし彼がW杯にでていたら……なんて話もでるほどだ。
実際クラブワールドカップが終わった後、スペインのクラブチームから声がかかったらしい。
あの一番年棒が高いと言われるチームから。
でも多田誠の意思は固かった。
今季で引退するという決意は変わることは無かった。
そんな彼に皆が賞賛していた。
そして彼の息子多田誠司に期待がかかる。
サッカーと言えば水島みなみ選手も大活躍していた。
日本代表に招待されそして実績を作っていた。
3年後のオリンピックに出場するだろうと期待されている。
そんな水島さんにも彼氏ができたそうだ。
バレーボール部の沢木与留。
クラスメートだ。
アスリート同士通じるものがあったらしい。
バレーボール部も今年飛躍的な成果をあげた。
全国大会優勝。
僕達の世代はキセキの世代と呼ばれるんだろうな。
みんな知ってる者同士大人も子供も盛り上がって終わった。
「冬夜、2次会付き合えよ。誠も。誠が主賓だろ?」
学の父さんが言う。
「子供が大きくなるまですまん」
父さんと水奈の父さんは断った。
バスで家に帰る。
そして風呂に入って部屋に戻ると時間は24時前。
さすがにこれから何かしようって気にはならなかった。
素直に美希におやすみと送って眠りについた。
(5)
家に着くと、まず水奈が風呂に入る。
そしてその後神奈と誠司が風呂に入る。
最後に入るのが俺。
その間ビールを飲みながらテレビを見ている。
神奈と誠司が風呂から出て来て神奈が誠司を寝かしつけてる間に俺は風呂に入る。
誠司も疲れていたのだろう。
俺が風呂から出て来る頃には眠っていた。
風呂から出るとテレビを見る。
この時間でもやってるお笑い番組を見ていた。
神奈が隣に座る。
「お疲れ様」
神奈は一言そう言った。
色々な意味が込められているのだろう。
「ありがとう、ここまでこれたのも神奈のお蔭だ」
神奈に礼を言う。
「どんな気分だ?トーヤの時は達成感の3文字で片づけたが……」
「俺も同じかな。充実感の3文字で片付けてしまったよ」
「充実か……それを聞いて安心したよ。後悔の2文字は無いんだな」
「あるとすれば、神奈や水奈に構ってやる時間が無かったことくらいかな」
「十分構ってもらえてるよ。構い過ぎなくらいに」
神奈はそう言って笑う。
「これからは誠司に精一杯構うよ。父親らしいことをしてやりたい」
俺に教えられること全てを伝えよう。
「頼むから妙な癖はつけてくれるなよ?ここまで真っ直ぐに育っているんだ」
「わかった」
「あ、そうだ。水奈から誠にクリスマスプレゼント預かってたんだ」
神奈がそう言って寝室に行く。
袋をもってやってきた。
さっそく中身を見てみる。
靴下だった。
娘からのプレゼントか。
メッセージが入っていた。
「お疲れ様。最後の試合見てた。カッコよかったよ」
サッカーをやってきてよかった。
心からそう思った。
ここまでいろいろあったけど、きっとこれからも色々あるだろうけど。
俺たちが結んできた朱い糸は切れることは無いだろう。
妻に、娘に、息子に、そして友に。
俺達は世代を超えて繋がっている。
次の世代に残す為にやれることをやろう。
皆より少し早いけど第二の人生を歩むことにするよ。
「そろそろ寝ないか?」
神奈が言う。
「そうだな」
こうして俺の人生第一章は幕を閉じた。
それは同時に第二章の幕開けだった。
年が明ければすでに始まる。
(6)
僕達中学生組は西寒田神社に初詣に来ていた。
みんなで話しながら列を並んでお参りする。
出店のラーメン?
あとで落ち着いて食べたらいいじゃないか。
お参りがすむとすぐに出店に向かう僕と翼。
皆はおみくじを引いていた。
僕は引かない。
だってどうせ大吉だって決まってるから。
それにどんな結果が出たって関係ない。
力づくで大吉に変えてやる。
運命は残酷だけどそれを恐れてはいけない。運命に立ち向かわない者に女神は決して微笑まない。
父さんが言ってた。
「よっしゃ!恋愛運ばっちりだったぞ!」
光太がそう言って喜んでる。
それからみんなで話をしていた。
去年を振り返っていた。
暫くして、自然と解散していった。
「空」
美希が呼び止める。
振り返ると美希はにこりと笑って言った。
「明けましておめでとう」
「おめでとう。今年もよろしく」
家に帰ると皆眠っていた。
そっと部屋に戻る。
ベッドに入って眠りにつく。
そして夜が明ける。
「空、朝だよ」
美希のモーニングコールで目が覚める。
「おはよう美希」
そして新しい一年がはじまる。
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