姉妹チート

和希

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ひかり

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(1)

 ちょっと遅くなったからと米良から狭間の間を拘束で抜けようとしたのが間違いだった。
 仕事が忙しくて子供を迎えに行くのが遅くなってしまったのが理由だった。
 その日は交通量が多く珍しく高速が混んでいて上手くは入れなかった。
 そしてこの車の前に入ってしまった。
 その車はワゴンだった。
 派手にフルエアロ装備の全部の窓にスモークを貼っている。
 下手に減速したら追突されそうなくらい、異常に車間距離をつめて煽ってくる。
 車線を変えても合わせて変えてくる。
 私は狭間インターで高速を出たかったけど、それをさせてもらえなかった。
 やがて私の前に出るとスピードを極端に落とす。
 慌ててブレーキを踏む。
 すると前方の車が車を止めると、私は路側帯に車を止める。

「降りてこい!!」

 ワゴンに乗っていた運転手が降りて来てそう言った。
 高速で車を停車させること自体が違反なのに男は何を言っているんだろう?
 私は怖くて車から降りれなかった。
 それが最後の選択ミスだったのかもしれない。
 後から来た車がワゴンをみて慌ててハンドルを切る。
 追い越し車線には車がいた為左にハンドルを切る。
 車は私の車に追突する。
 私の車は男の車と挟まれぺしゃんこになる。
 私の意識はすでになかった。
 そして二度と戻ることは無かった。

「莉子……ごめんね」

 それが最後の思考だった。

(2)

「あれ?パパさんどうしたの?」

 それにりえちゃんの腕の中には幼い女の子が眠っている。

「……とりあえず家に入って、冬夜さん呼んでくるから」

 私は3人を今に案内して冬夜さんを呼ぶ。

「今日はどうしたんですか?」

 冬夜さんが聞くとパパさんは事情を説明した。
 私と仲のいい従妹が先日交通事故で亡くなったらしい。
 従妹はシングルマザーで女の子が1人いたそうだ。
 事故の原因は追突事故。
 しかし高速道路に無理に幅寄せして停止させて従妹を運転席から降ろそうとしたらしい。
 その光景はドライブレコーダーに鮮明に残っているので立件は容易だった。
 最近ニュースになった煽り運転というものだそうだ。
 危険運転致死傷罪が適用されるだろうとのこと。
 しかし残された子供が問題になる。
 私達の他に身寄りがないという。
 だから私に育ててくれないかと尋ねてきた。
 私は育ててあげたかった。
 冬眞もいるし、今更一人増えたところで私は大丈夫。
 でもその女の子・遠坂莉子は片桐家とは関係のない人間。
 この家の決定権は冬夜さんにある。
 冬夜さんは認めてくれるだろうか?
 冬夜さんは考えていた。
 そして私に言った。

「愛莉、僕は仕事があって家庭裁判所とかにいけない。親権変更の手続きとかは任せてもいいかな?」
「はい!」
「……冬夜君いつもすまない、困ったことがあればいつでも言ってくれ。おじさんで力になれる事があったらなんでもする」
「ちょうど増築も考えていたし大丈夫です。任せてください」
「……うむ。これでこの件は良いとして問題はもう一件だな」
「まだあるんですか?」

 冬夜さんが聞いていた。

「実は刑事裁判は問題ない。問題は民事なんだ」
「どういうことですか?」
「今回は子供の養育費も賠償させるつもりだ」
「まあ、そうなりますよね」
「しかし相手が開き直ってね、そんなもの払えない、財産もない差し押さえられるものなら差し押さえて見ろって言っているんだ」
「なんだそんなことですか?」

 冬夜さんは笑っている。

「その件僕に任せてもらえませんか?ツテもあるし、すぐに解決しますよ」
「ツテって恵美の事ですか?」

 私は直感した。

「うん、早い方がいい。明日にでもその相手の家に伺うとしよう。おじさん、名前と住所を教えてください」

 冬夜さんが連絡先を聞いてる間に恵美に事情を説明していた。

「親戚の問題ならすぐに動くわよ。任せておいて」

 恵美の中では私と恵美は既に親戚関係にあるらしい。
 次の日冬眞と莉子を麻耶さんにあずけて恵美たちと合流してその男の家に訪問した。
 その男の彼女らしい人が出てきた。
 事情を説明する。

「その件なら私達にはとてもじゃないけど3000万円なんて払えません!」

 彼女は払えないの一点張り。

「悪いけど彼氏さんを呼んでくれないかな?直接話がしたい」

 冬夜さんが言うと上半身に入れ墨を入れた男がやってきた。

「払えないと言ってるだろうが!しつけーんだよ!!」

 男は恫喝する。

「任意保険は入ってないの?」
「入ってねえよ」
「不動産とか財産は?」
「無いね」
「なるほどね、じゃあ。手は一つしかないね」

 金額を第3者に建て替えてもらうか、保証人になってもらって弁済期に払ってもらえない場合は保証人に支払ってもらう。

「保証人になる奴なんかいねーよ!」
「……君は全く反省もしてない様だな。せいぜい刑務所に放り込まれて俺の人生真っ暗だ。その程度にしか考えてないだろ?」
「よくわかってるじゃねーか」

 恵美も石原君も我慢の限界のようだ。
 二人が何かを言おうとした時、それより早く冬夜さんは行動に移した。
 冬夜さんは男の顎を掴むと軽々と持ち上げる。

「……お前の言い分はよくわかった。こっちも出来れば穏便に済ませてやろうと思ったが俺も気が変わった。石原君、頼む」
「いいですよ。じゃあ、最初から説明しますね。まずあなたに弁護士をつけてあげます。優秀な弁護士です。きっとあなたに危険運転致死傷罪は適用されないでしょう」

 それじゃ、意味ないんじゃないのかな?

「支払い能力が無いって言ってたわね。じゃあ私が支払い能力をあなたに与えてあげる。喜びなさい、10年間フランス旅行よ」

 恵美が言う。
 話の大筋がよめた。
 この男を単に懲役させるんじゃ意味が無いし何の得にもならない。
 それならいっその事無罪にしてフランスの外人部隊にでも叩き込んで金を稼がせた方が手っ取り早い。
 10年生き延びる事が出来る事が出来ればだけど。
 10年も働けば慰謝料も手数料も弁護費用も全て支払いできるだろう。
 費用はとりあえず恵美が立て替える。
 西松医院に行って体にGPSを埋め込んで逃げられないようにしてやる。
 本来ならSSSにでも”就職”させて激戦地に投入させたいがさすがに過酷すぎるしこの男では役に立たないだろう。 
 彼は「事故さえなければ彼女と結婚できた!」と言っていた。
「刑務所に入れられて将来が真っ暗」だと言っていた。
 本当に真っ暗になった人の気持ちも考えずに良く言ってくれた。
 ならばその通りにしてあげよう。

「逃げようなんて思うなよ?いざとなったらお前の体内から臓器が一つずつ無くなることもあり得るんだからな」
「ま、待ってください。お金は用意します!必ず支払います」

 彼女は必死だった。

「金だけの問題じゃない。あの子の母親から未来を奪った代償はどう償うつもりだ?」

 冬夜さんは怒っていた。
 子供たちの前では決して出さないもう一人の冬夜さん。

「片桐君、こんな男の為に10年も付き合うのも面倒だわ。もっといい手を思いついたのだけど」
「どういう事?」
「まずこの男は刑に服してもらう、まあ15年もあれば出てくるだろうけど」
「それで?」
「慰謝料は私が肩代わりしてあげる。それ相応の代償を支払ってもらうけど」

 恵美は言う。必ず支払うというなら支払ってもらう。
 江口家の金融機関の支払い計画に則って払ってもらう。
 当面の金は、この男と彼女の務め先の資産で補ってもらう。
 分かりやすく言うと、「この二人に関わる企業は片っ端から潰してやる」ということだ。
 それだけで十分慰謝料になるだろうけど、文字通り「一生かけて償え」ということ。
 まともな職に就けると思うな。県外に逃亡できると思うな。
 まさにお先真っ暗な絶望の未来。

「血祭りにあげて別府湾に放り込んで魚の餌ってのも考えたんだけどね」

 恵美がは冗談ぽく言ってたけど多分本気だろう。
 地元で恵美に逆らえば未来という光は消える。
 冬夜さんは男を解放する。

「15年だか20年だか知らないけどつかの間の休息を楽しめ」

 冬夜さんがそう言うと私達は家を後にした。
 その後二人は弁護士を立てて裁判で必死に反省をアピールしたが無駄だった。
 渡辺班の影響力は司法権にまで影響していた。
 危険運転致死傷罪は適用され最高刑の20年の懲役を言い渡された。
 彼女も職を失った。
 解雇されたんじゃない。
 会社が失われた。
 それから彼女は生活保護を申請したが受理されなかった。
 負債を抱えたまま生活保護は受けられない。
 そして彼女は自己破産も刑法の罰金までは適用されない。
 当然獄中から出た男もそうなる運命になるだろう。
 それでもまだましだ。
 明日を夢見れるのだから。

(3)

 宇佐美有作と山田肇子。
 2人の転校生が来た。
 家は近所らしい。
 二人は先生の紹介を受けると席につく。
 そして手厚い歓迎を受けた。
 有作は背中を思い切り蹴飛ばされてこける。
 教室中に笑い声が響き渡る。
 蹴飛ばした奴も満足しただろう。
 じゃあ、不愉快になった私を満足させろ。
 お前が私の前の席だったのが不運だけだ。
 このクラスに転向したのが不運だったように。
 私は前の奴の椅子を思い切り蹴飛ばした。

「何すんだよ!」

 そいつは立ち上がる。
 阿吽の呼吸とはまさにこの事だ。
 隣にいた粋がその瞬間椅子を横に引っ張る。

「座りなさい!」

 担任が言うと男は腰を下ろす。
 だけど椅子がない。
 派手に転ぶ。
 この程度で許されると思うなよ。

「そんな低い目線でスカートの中味を覗くなんて飛んだ変態だな」

 そう言って私はそいつの腹部を踏みつける。
 急所じゃないだけありがたく思え。

「片桐さん止めなさい!」

 担任が止めに入るまで蹴り続けた。
 休み時間当然のようにFGの連中に絡まれる転校生二人。
 最近我が物顔でのさばって気に入らなかったんだ。
 口実が出来たら動く。
 誰かが言ってた

「誰かを殺すのに理由がいるかい?」

 私は平然とFGのマーク、黒いリストバンドをした生徒の肩を叩く。

「なんだよ?」

 そいつが振り返って言う。

「その転校生二人貸してくれない?」
「FGとSHは不干渉ってルールがあるのを忘れた?」
「だからお前に用はない。その転校生にようがあるだけ。邪魔するってのなら相手になるけど?」
「……ほらいけ!」

 転校生二人は私達の下に来た。

「助かったよ、ありがとう」
「いいよ、こっちも半分暇つぶしみたいなもんだし」
「暇つぶし?」
「お前ら二人付き合え」

 私の言葉に皆が驚いていた。

「さすがに無茶振りだろ!?」

 遊が言う。
 だが、私は続ける。

「私はこう見えて人を見る目はあるつもりだ。2人とも悪い奴じゃないのは私が保証する。どうせほとんどの奴が恋人いるんだ。ぼっちの方が目立つぞ?」

 何もいきなりキスしろとか言ってるんじゃない。
 お友達として話をしませんか?からでもいいんだから。
 私が言うと二人は付き合うことになった。
 運命の気まぐれというものは本当にあるもので、2人とも家が近いらしい。
 学校が終ると一緒に帰る。
 家に帰ると着替えて宿題を済ませる。

「最低限の事はやりなさい」

 我が家のルール。
 それさえやれば後は何やってもいい。
 ゲームしてるだけってのも飽きたから冬眞や莉子の相手をする。
 そうしていると皆帰ってきて夕食の時間になる。
 夕食の時間に父さんから話があった。
 来年になったら増築するらしい。
 3階を作るって案もあったけど2歳児を上層に置くのは危険だと判断して1階部分を拡張する事で話はまとまった。
 土地がどうなっているのか見てみたいもんだが。
 河岸に支えを立てて無理矢理川の上に家を建ててるのを見たことがある。
 台風とか来たらどうするんだろうと思ったけど。
 夕食が終ったら風呂に入って部屋で時間を潰す。

「ねえ、お姉ちゃん」
「どうした茜?」
「私もお姉ちゃんだよね?」
「今さらじゃね?冬吾や冬莉がいたし」
「あ、そっか」

 そういや私も茜が来たときそんなんだったな。

「それで?」
「心構えとかあるのかなって」
「気にしなくていいんじゃね。気づいたら助けてやったらいい」
「わかった」

 そう言って茜は寝た。
 私も特にする事無いし茜の邪魔しちゃ悪いと思って電気を消す。
 それから遅くまで大地とチャットをしてから寝た。
 温かい布団に包まって寝る。
 そんな当たり前の事が出来ない子がまだいることを私は知らなかった。
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