155 / 535
変わっていく僕
しおりを挟む毎晩フルコースのディナーを楽しみながらシアターでのショーを楽しむ。
船で移動するので疲れはない。
夜の間に移動して朝には違う街についている。
船自体がリゾートホテルのような豪華客船。
海を移動しているのにプールで泳ぐという贅沢仕様。
そんな毎日を過ごしていた。
僕達は新婚旅行の最中。
地中海を移動する豪華クルーズのツアーの最中。
唯一不満があるとすれば明らかに時期を間違えているという事。
まあ、翼が喜んでいるからいいけどね。
僕が心配なのは僕達の何の恨みがあるのか知らない策者の事だから、またとんでもない事を企んでいるのではないかと思った事。
例えば氷山にぶつかって沈没するとか平気でやりかねない策者。
質が悪いのはそれを面白がってやっている事。
当事者の僕達としてはいい迷惑だよ。
何日かするとやはり飽きてくるようだ。
食事を終えると翼とデッキに出ていた。
地中海の夜空も綺麗だ。
少し寒いけど。
この空を渡って僕達は日本からやって来たんだね。
あまり長居はできそうにないので翼と船内に戻ろうとした。
すると声が聞こえた。
英語だ。
ちょっと物騒な話。
放っておけなかったのか単なる興味があったのか知らないけど翼は声がする方に向かった。
すると船から海に飛び込もうとする女性とそれを止める男性。
名前は聞くときっと後悔するから止めとく。
「私の人生なんて終わったも同然。だから放っておいて」
「君を放って飛び込ませたら僕が罪に問われる。たとえ問われなくても僕は自分を許せない。だから僕も同行させてほしい」
そう言って男性は靴を脱いで飛び込もうとすると女性は観念してデッキに戻る。
話を聞いてみた。
女性は資産家のご子息と無理矢理結婚を決められて、そして将来を悲観して飛び降りようとした。
それをたまたま見つけた男性が止めた。
本当にこの船氷山に突っ込むんじゃないだろうか?
ここは地中海だと分かっているのだろうか?
やがてその資産家のご子息とやらが現れる。
2人の関係を疑われるが僕達が証人を買って出る。
「ありがとう。じゃあこれ」
そう言ってユーロの紙幣を男に渡す。
「私の命はそれっぽっちの価値しかないの?」
女性が言うと男は次の言葉が出ない。
「良かったら明日のディナーにでもお誘いしたらどう?」
翼が言う。
ご子息はそれを受け入れざるを得なかった。
2人が行った後男に翼が言う。
「ディナーに出席する服にお困りじゃないの?明日の昼過ぎに私達と落ち合いましょう。善明と背丈は一緒みたいだし」
翼は僕に「いいよね?」と聞いてきたので「いいよ」と答えた。
僕は男よりもあのご子息の将来が気になったね。
どう見ても死神が待ち構えていそうだ。
そう言えば僕の父さんの別名も「死神」だったそうだ。
大地の父さん「ヘッジホッグ」と2人で先陣切って戦っていたらしい。
それでも翼の父さんの戦闘能力が圧倒していたそうだけど。
片桐家は皆チートなんじゃないのかい?
タイトルを「片桐家がチートな件」に変更することを提案するよ。
で翌日のディナーに彼は現れた。
僕の服が見事にあったようだ。
クルーズの途中で知り合った夫人と会場に現れる。
そしてディナーを楽しんだ。
フルコースの最後はコーヒー。
酒を飲んだ後にコーヒーってどうなんだろうとか考えていると、ご子息たちは株の話や経済の話を始める。
そういう話の流れはいよいよもってやばいよ。
僕は今すぐ下船したい思いだね。
ご子息は男に向かって「ごめん、君には難しい話だったね」と嘲笑う。
それが美希の逆鱗に触れたらしい。
「ええ、とても退屈な話。楽しいディナーの時間まで仕事の話をしないといけない雑魚と夕食なんてつまらない」
明らかに翼は男を挑発していた。
「お嬢さんはどこの家のものだい?」
翼にそういう話の持っていきかたは自殺願望の塊だよ?
「ただの大学生です。貴方に名乗るほどの名前はない」
酒井家は黒いノートを持っているんじゃないかと思うくらい人生を追い込むのが好きなんだよ。
ハネムーンで死人は見たくないから名乗るのは止めておくれ。
そんな願いは虚しく男は名乗ってしまった。
終わった。
「よく覚えておきます。私日本人だからヨーロッパの事情には疎いので」
「東洋のサルには難しいかもしれないな」
「自分達を中心でしか見れない、グローバルな視野の無い方の物いいですね、やっぱり程度が知れてる。私達から見たらあなたこそ陽が沈む方角の隅っこの雑魚じゃない」
「礼儀と言うのを習わないのか?日本のサルは」
「無礼な雑魚にはそれなりのあしらい方があると教わるの」
完全に挑発してる翼。
江口家は世界に喧嘩を売る気だよ。
翌朝事件が起こった。
僕達は無神論者だったのだけど何故か朝の賛美歌に出席していた。
そして男が来るとご子息の執事らしい男がはした金で追い払おうとしていた。
運が悪い事にそれを翼が見つけてしまった。
「あなたの家は高貴だと聞いたけど、やっぱり大したこと無いようね。主人の嫁の命の恩人にそれっぽっちですませるの?」
「昨日の件で礼は十分したはずだ。これ以上はただの揺すりではないか」
執事が言うと翼はやれやれと首を振った。
そして女性を呼び出す。
「あなたはあの雑魚とこの人どっちを選ぶの?身分なんて関係ない。愛に地位も名誉もお金も関係ない。貴方の意志で決めるべき」
「でも私はあの男と一緒にならないと母さんに迷惑がかかる」
「だったらなおの事この男を選んでおいた方がいいよ。あの男の未来は破滅しかないのだから」
やっぱり翼はやる気だった。
SHはついに大陸を飛び越えていた。
大陸間弾道弾と言ったところか。
女性は少し考えて、そして泣き出す。
「私はこの人が良い……」
男は女性を抱きしめる。
「じゃあ、行きなさい。ここは私達に任せて」
翼が言うと2人は立ち去る。
追いかけようとする執事とご子息の前に立ちふさがるのが僕の役目。
「同じ立場の人間として言わせてもらうとあなたのやり方には品がない。思いやりもない。あれじゃいくら金持ちでも女性の心は買えない」
「サルが引っ込んでろ!」
ご子息がそう言うと執事が前に出る。
普通に投げつける。
「暴力に訴えるなら構いませんよ。ここは日本じゃない。それなりの物は準備してありますから」
「お前達も絶対後悔させてやる。覚えておけ」
心配しなくても翼が覚えてるよ。
売られた喧嘩は喜んで飛びつくのが酒井家。
2人は無事に結婚してアメリカで幸せに暮らしているらしい。
その一方で、ハネムーンから帰国して数日たった後ヨーロッパの貴族の一人が破産したらしい。
ご子息は多大な負債を抱えて、拳銃をこめかみにあてて自殺したそうだ。
きっと友愛されたんだね
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる