姉妹チート

和希

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LAST IMPRESSION

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(1)

 皆で歌を歌っていた。
 別れの歌。
 保母さん達へのお礼の歌。
 一人ずつ表彰状を受け取る。
 その時に茉莉と菫が爆睡していたことに園長先生が気づく。
 本当はもう気づいていたのかもしれない。
 卒園式が始まった時から二人はいびきを立てて寝ていた。
 この二人には何を言っても通じないと思ったのだろう。
 二人のいびきの中淡々と式を進行していた。
 だけどさすがに卒園証書を渡す時には呼ぶしかない。

「石原茉莉ちゃん!」

 保母さんが大声で呼ぶとさすがにまずいと思ったのか、隣にいた朔が起こす。
 すると茉莉が立ち上がって園長に怒鳴りつける。

「うるせぇぞはげ!気安く人の名前を呼ぶんじゃねえ!ぶっ殺すぞ!!」
「目上の人に対する言葉遣いに気をつけなさい」
「そんな細かい事気にしてるからヅラなんだって天音が言ってたぞ!」

 そんなやりとりを繰り広げる2人。
 参観に来ている茉莉の両親は作り笑いをしていた。
 収拾が付きそうにない。
 こんな事に時間を割くのはもったいない。
 だから俺が茉莉に伝える。

「俺はこんなのさっさと済ませて、寿司を食べたいんだが」

 すると茉莉はさっさと前に出て証書を受け取ると席に戻る。
 無事に卒園式が終わると母さん達のとこに行く。

「お寿司行こう?」
「ちょっと待ってね。保母さんに挨拶したいから」

 そう言って保母さんと何かを話していた。
 その後お寿司屋さんに行ってお寿司を食べていた。
 お寿司屋さんなのにラーメンやうどんがある不思議な店。
 色んなメニューを茉奈と選んでいた。
 もっとも茉奈はあまり食べないけど。
 2貫ある寿司を取って、1貫俺に譲ってくれるくらい小食だった。

「茉奈も体型とか気にするのか?」
「それもあるんだけどさ、本当に食べられないの」

 それに最後にデザートを食べたいからと笑っていた。
 最後はアイスクリームで締めると家に帰る。
 服を着替えるといつも通り洗濯機に入れる。
 その後リビングでテレビを見ていた。
 他人が結婚することがそんなに重要なのかどうかわからない。
 他人が死ぬのは悲しいことだと分かるけど、殺された遺族にわざわざ気持ちを質問する記者の神経がわからない。
 悲しいとか、許せないとか子供の俺でもわかりそうなことをいちいち聞く意味がわからない。

「ねえ、今どんな気持ち?」

 そうやって人の神経を煽る気分が分からない。
 そんなに遺族を怒らせたいのだろうか?
 考えるだけ無駄な事なのだろうか?

「結おやつの時間ですよ」

 母さんがそう言うので比呂やカミル達が来るのを待つ。
 母さんも愛莉も同じテレビを見ながらお話をしている。
 あまり興味がない事だったのでただおやつの時間を待っていた。
 おやつを食べたら少し寝ようと思った。
 すると母さんが俺を止める。

「結は来月から小学生だよ」

 小学校という所は夕方まで僕達を閉じ込めてつまらない勉強をさせたり、走らせたりする酷い拷問をする場所。
 しかも宿題というノルマを与えられ、家に帰っても遊ぶことすら許されない残酷な日課が待っている。
 なんでそんなところに行かなきゃいけないのだろう?
 俺は刑務所に入れられるようなことはしたつもりはない。
 ……菫や茉莉に比べて。
 それとも気づかない間に俺は何か罪を犯していたのだろうか?
 罪は償わなければならない。
 だからその罪を知らなければならない。
 母さんに聞いてみた。
 母さんは不思議そうな表情をしていた。
 愛莉も同じ感じだった。
 
「結。そんな話誰から聞いたの?」
「天音」

 こんなの拷問だ!って。
 それを聞いた愛莉は黙ってスマホを操作している。

「天音は結に何を吹き込んだの!?」

 愛莉が怒っていた。
 一方母さんが俺に事情を聞いていた。
 確か冬休みが終わって3学期が始まった頃だった。

「結。たまには結莉の家で遊んでいかない?」
「家に帰らないとおやつが待ってるから」
「結莉の家にもおやつあるよ?茉奈も一緒でいいよ」
「私は家に帰って優翔とお掃除とかお洗濯とかあるから……」
「じゃあ、結だけ来る?変なことはしないから」
「うん」
「じゃあ、行く」

 そう言って帰りに結莉の家に寄ったことがある。
 すると母さんがスマホを操作しながら話を続けるように言った。
 するとなぜか陽葵達がいた。

「お、今日は結達もいるのか?」

 でも友達の彼氏に手を出すのは止めたほうがいいぞ?
 そんな事を天音が言っていた。
 まあ、お昼だろうしそうかも。
 で、結莉達と遊んでいる間、陽葵達は天音と話していた。

「小学校って何するの?」

 菫が言うと天音が言った。

「あそこは拷問の場所なんだ」

 それがこれから10年近く続く。
 それが子供の仕事なんだ。
 楽な仕事なんてないっていうだろ?
 陽葵達だって翼に言われてきただろ?

「お勤め頑張ってきなさい」

 そういうことだ。
 我慢しろ。
 面倒になったら「腹痛いから帰る」って言えばいい。
 翼に叱られるのが嫌ならうちに寄っていけ。

「……それを冬夜が聞いていたわけね」

 母さんがため息をついてそう言うと愛莉は翼にも電話をしている。
 そして母さんが正しい学校生活の送り方とやらを説明してくれた。

「遠足や修学旅行とか面白い行事もあるんだよ」
「遠足って歩くんだろ?」

 楽しいのそれ。
 それに毎日するわけじゃないんだろ?
 やっぱり拷問なんじゃないのか?

「朝から夕方まで一日中学校にいる。でも美味しい給食が出てくる。何よりも幼稚園よりも色んな体験を茉奈と出来る所だよ」

 なるほど。
 それに僕は世の中の仕組みはもちろん基礎的な学問が全く出来ない。
 だからそう言うのを教わる大事な期間だ。
 子供のうちに教えてもらわないといけない事はたくさんある。
 親は子供にそれをさせてやらなければならない。
 それを義務教育という。
 だけどそんなに世の中甘くない。
 中学校を卒業した程度で夢を叶えられることはまずない。
 だから必死に勉強して高校や大学に進学する。
 だけど中学から先は無理強いはしない。
 したくないならしなければいい。
 しかしそんなに早く社会に出てもいい事なんてそんなにない。
 職業選択の自由というものがある。
 誰でもどんな職業になれる。
 それはRPGなんかとそんなに仕組みが変わらない。
 そう、そんなに違わない。
 職業によっては資格というものが必要になる。
 資格を取るために試験を受けなければならない。
 その中には受験する為の条件がある。
 高校卒業とか理系の大学卒業とか様々だ。
 僕が将来何をしたいのかはこれからゆっくり探していけばいい。
 冬吾や冬莉は才能があったから高卒で社会に出ている。
 僕にもきっと何かしら才能はあるだろう。
 でもそれをするためには場合によっては大学まで出ておかないといけない事もある。
 それが最低条件だというだけの話。
 そこからまた試験というふるいにかけられる。
 だから小学校中学校は初歩中の初歩。
 それを受けさせる義務があるから母さん達にはあるから役目を果たす。
 学校には行かせるけど学校で何をしようと自由だ。
 だけどこの先もう競争は始まっている。
 何をしようと自由だけどそのツケを将来背負うのは僕だ。
 勉強が嫌だと投げだすのは構わないけど人生において先輩である母さんが断言する。

「そんなことしてたら絶対に後悔する」

 この世界の神様は面倒なことは嫌いだ。
 だけどそんな悪い子の為に自ら余計なエピソードを増やすこともあることを忘れてはいけない。
 
「大丈夫。すぐにお友達が増えたりして楽しめるから」

 母さんがそう言って話を終える頃、愛莉も電話を終えていた。
 そして二人が料理を始めると僕もテレビを見ていた。
 あまり面白くないテレビ番組。
 ロボットにいやいや乗ってる主人公のアニメ。
 羨ましいんだけどな。
 パパ達が帰ってくると夕食をしながら今日の事を話していた。
 パパ達は笑っていた。

「小学生じゃ難しいかもしれないけど、中学に入ったら帰りにコンビニよっておにぎり食べたり楽しいよ」
「空!自分の息子に何を言ってるのですか!?」
「まあ、愛莉さん。楽しみだって必要だと思うし」
「美希も空も結に何か部活をさせるとか考えないのですか?」
「やっていてもやっぱり寄り道くらいするよ。それにパパも言ってたじゃない」

 結がスポーツを始めたら絶対に死人が出る。

「うぅ……」
「結は何かやりたい事ないのかい?」

 愛莉が唸っているとじいじが聞いてきた。

「あるよ」
「え?何になりたいの?」
「ロボットのパイロット」

 僕が答えると皆悩んでいた。
 しばらくしてじいじが手をポンと叩いた。

「何が案があるのですか?」
「結の見たアニメのロボットの武器は何を使うか知ってる?」

 僕の見たアニメのロボットのエネルギーは何で動いてる?
 そんな質問を僕にしていた。
 
「特殊な金属粒子と小型の核融合炉」
「結はちゃんと調べてるんだね……でもね、一つ残念なことがあるんだ」
「何か間違ってた?」
「いや、そうじゃなくてね。どちらもまだ現代には存在しないんだ」

 だからロボットが存在しない。
 この前テレビで実寸大のロボットが動いたとニュースになっていたけど、まだビームサーベルは持っていなかったろ?

「いつできるの?」
「それは結が知ってるんじゃないのか?」

 宇宙世紀。
 そんな時代まで生きていられるだろうか?
 いつになったら宇宙世紀になるのか。

「そっかぁ」

 なんか残念だな。

「だからこれから勉強するんだよ」

 じいじがそう言った。
 僕が将来何をしたいのかを判断するのは早い。
 だって何があるのか手がかりすらないのだから。
 それを知っていく大事な時間が小学生だよ。

「それは比呂やカミルやカミラだって一緒だ」

 日の当たらない人生を送っていた3人がこれから何をしたいのか探す終わりのない旅。
 いいことばかりじゃないだろう。
 それでも次のステージに進んでいくしかないんだ。
 胸に抱え込んだ迷いをプラスの力に変えて進む。 
 嫌な事ばかりでもないから。
 しっかり一歩ずつ進みなさい。
 そうじいじが話すと皆夕食を食べ終えていた。
 パパとお風呂に入ると寝室に向かう。
 比呂が話しかけてきた。

「楽しみだな。小学校」
「比呂は何かやりたいことあるのか?」
「給食とかあるって」
「ふーん」
「そっか、結には分からないかな」

 気づくとカミルやカミラがいた。

「日本では当たり前に食べられるけど食事が出来るって結構貴重な事なんだよ」

 カミルは冷たい乾パンや汚れた水を啜ったりして生きていた時期があったらしい。
 日本の給食は世界でも高水準の物が食べられる。
 箸の使い方を教わって感謝してるとカミルが言う。

「それに遠足やらも楽しそうだしね」

 カミラが言う。
 一体どんなことが待ち受けているだろう?
 それは怒涛の6年間になる前触れだった。
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