399 / 535
前途洋々
しおりを挟む
(1)
「気安く触るなくそジジイ!」
結莉が怒鳴っていた、
女の子だから芳樹以外の男の人に触られたくないらしい。
まあ、それは失礼だからしちゃいけないって言われてるから俺はしない。
「まあ、結だったら許してやるぞ」
茉莉はそう言っていたけど女の子とひとくくりにしたらいけないのだろうか?
まあ、俺も誠たちとはちょっと違うみたいだしそうなんだろうな。
で、問題はここから。
結莉の肩に触った男は僕達の十倍以上は歳を取っていそうなのに親に教えてもらわなかったのだろうか。
今日の結莉は髪の色に合わせて水色のドレスを着ていた。
肩の露出したやつだからなおさら結莉は怒っているのだろう。
菫や陽葵も晶がドレスを与えていた。
「あなた達もそろそろこういう場所に慣れていいでしょ」
酒井家の娘なのだからちゃんとした姿でと晶が用意していた。
俺はじいじが用意してくれた。
「いつも人ごみに紛れて花火だと飽きるでしょ」
恵美がそう言って江口家のパーティに招待してくれた。
恵美と望の意向で渡辺班とSHの人間が招待されていた。
ただそれだけじゃない。
この知らないお爺さんも招待されたのだろう。
やけに偉そうで手下を何人か連れていた。
秘書って言うらしい。
「お嬢ちゃんは誰なのかな?私が誰だかわかってるのかい?」
「知るかぼけ!分かったのはどうしようもないロリコンだってことくらいだ!」
ロリコンってなんだろう?
帰ったら検索してみるかな?
ぽかっ
「結にはまだ早いから」
母さんが言うからそうなんだろう。
「母さんの言う事は聞いておきなさい。片桐家の男子は女性の機嫌を損ねたらいけない」
父さんもそう言っていた。
すると天音がやってきた。
「どうしたんだ結莉?大声出して。何かあったのか?」
「このジジイが結莉に触った」
「なんだと?」
天音がそう言ってジジイを睨みつける。
「てめえ、私の娘に手を出すなんてどれだけ変態なんだ?」
天音がそう言うと大地が止める。
「天音、たまにはニュースくらい見ようって言ったろ?すいません、僕の娘はまだ世間知らずなところがあって……」
なぜか大地が謝っていた。
天音も不思議に思ったらしい。
「お前このじじいの知り合いか?」
「天音はいい加減社会情勢くらい勉強しなさい」
愛莉達がやってくる。
周りを見ると人だかりが出来ている。
「結莉は悪くない!」
「お願いだから、今回だけは我慢しようね」
愛莉がそう言って結莉を宥めようとするけど結莉の機嫌は悪くなる一方。
で、このジジイ誰だろう?
「環境大臣」
父さんが教えてくれた。
よく国営放送でつまらない話を延々と垂れ流してるおっさんか。
なぜかじいじは恵美さんに話しかけて、様子を見ている。
お手並み拝見ってやつなんだろうか。
恵美は機嫌が悪そうだったけど。
父さんが持ってる皿には美味しそうな肉があったので何の肉が聞いてみた。
「ああ、向こうでホットプレートで保温されているローストビーフがあったんだ」
父さんが教えてくれた。
寿司とかパスタに気を取られて全く気付いてなかった。
重大なミスだ。
それにしてもパスタはいいのにラーメンはダメってどういう理屈なんだろう?
「多分すする音がダメなんじゃない?」
母さんはそう言っていた。
そばやうどん、ラーメンは啜って食べる。
だけどパスタは啜ったりしない。
フォークに巻き付けて食べる。
中にはスープが飛ばないようにとスプーンを使うようになったそうだ。
だけどそれはあくまでもスープスパゲティの時だけ。
ペペロンチーノなんかでは使わないらしい。
結構細かいからどうでもいいと思ってる人もいるそうだ。
料理番組でスプーンを使っているのがお洒落に見えたから使ってる人もいるらしい。
だけど本場ではスプーンを使うのは「箸を上手に使えない日本人」くらい恥ずべき行為だとじいじが言っていた。
まあ、出されたカトラリーを使っていれば恥ずかしい行為はないだろうと父さん達も言っている。
色々マナーだけは父さん達から聞いておいた。
俺がマナーを知らないと恥をかくのは母さん達だから。
「君は一体誰だ?こんな無礼をするのがこの家のパーティなのか?」
よくわからないけどそういう威圧は恵美達には通じない。
そして当然の様に天音が怒り出す。
「お前は肩書をいちいち持ってこないと来れない情けない奴か?」
そんなださい大人には絶対になるなと娘に教えている。
それでも肩書で勝負したいのなら相手してやってもいいけど、後悔するのはお前だぞ?
大地も加わっていた。
「僕達が名乗ったら大変な事になる。このくらいで引き下がってもらえませんか?」
「最近の若造は礼儀もしないのか?」
こんなことに時間をとられてローストビーフがなくなってしまうのはもったいない。
「母さん、これもってて」
「結?」
母さんに取り皿を預けると結莉達とジジイの間に入る。
「なんだね君は?」
「……お前は結莉の肩に触った。だけど結莉の親は名乗るとまずいみたい」
その理由はなんとなくわかっていた。
その証拠に恵美が今にも介入しようとしているのを望が止めていたから。
「それがどうしたんだい?子供は口出ししないでくれないか?この方はとても偉い人なんだよ?」
父さんより弱そうなのにそうは思わなかった。
母さんが言ってた。
「冬夜の強さは番外。比べられる子が可哀そうなくらい。だから弱い者いじめはダメ。でも自分の大事な人を守るためなら加減することはない」
まだ子供なんだから遠慮せず思いっきりやれ。
こういう時何て言うんだっけ?
「結莉に気安く触るな」
そう言うと同時にジジイを殴り飛ばしておいた。
本気でやると頭部を粉砕するからダメって言われてる。
思った以上にちょろい奴だったみたいだ。
想像以上に派手に吹っ飛んでいた。
「君!何をやっているんだ?」
秘書とかいう人間が僕を掴む。
「結莉に許可なく触る変態だから殴り飛ばしただけだけど?」
女性の許可なく体に触るのは失礼だって事くらいは小学生でも知ってるよ?
「この家の礼儀はどうなっているんだ!?これが江口家のやり方なのか!?」
殴り飛ばしたジジイが何か喚いている。
「そうだけど、それがどうかしたの?」
恵美が出てきた。
僕を見てにこりと笑う。
「随分と頼もしい男の子に育ってるじゃない。これならばあばも安心だわ」
「お前は何者だ?」
「たかだか閣僚如きに名乗る名前なんてない」
「……江口家の跡取りの孫娘に無礼を働いた。そう説明したらご理解いただけますか?」
恵美と望が言う。
「あんた確か環境大臣だったわね?ごみを増やすのと日本の環境を最悪レベルにするのとどっちがお望み?」
死体を増やすか日本を核の冬にするか選べって意味だそうだ。
恵美は笑顔を崩さずに言う。
「貴方がしがみついてる肩書を奪うなんて面倒な真似しないけど、これ以上面倒を増やすなら僕は構いませんよ」
望がそう言うとジジイ達が去って行った。
「天音!あなた仮にも石原家の嫁だと自覚してるなら社会情勢の事くらいテレビで見ておきなさい!」
愛莉がそう叱っている。
ゲームばかりしてないで偶にはワイドショーでもいいから観ておきなさい。
しかし天音はどうでもいいと思っているみたいだ。
「まあ、肩書が分かったところであのジジイがロリコンだったって事だろ?」
そういう情報を茜とかに垂れ流してやればあのジジイはただのジジイじゃないか?
「それにしても結は頼もしいわね」
恵美はご機嫌のようだ。
あのジジイの事なんてどうでもいいのだろう。
きっと小学校でも同じなんだろう。
小学校では結莉に触った瞬間茉莉や希美も加わって病院送りになるだけだ。
「お前みたいな変態が大人になってもろくなことないからこの場で人生終わりにしてやる!」
そう言って袋叩きになるだろう。
しかし不思議だな。
男の人は触ってもいいのに女性はどうしてだめなんだろう?
でも今はそんな問題はどうでもいい。
今一番大事なのはローストビーフだ。
「結莉。あっちにローストビーフあるって言ってた」
「じゃあ、行こうか」
そう言ってその場から離れてローストビーフを食べに行った。
ママの言ったとおり暖かくておいしかった。
見るとその場で調理している人がいる。
僕はじっと見ていた。
「とーや。まだ足りないなら食べたらいいんじゃない?」
だけどずっとその場で食べ続けるのはどうなんだろう?
それにしても色々食べ物がいっぱいあるな。
これなら父さんやじいじがいても大丈夫だな。
一皿につき一種類がマナーだそうだ。
適当に色々食べて回ると父さん達の所に戻った。
「たくさん食べた?」
母さんがそう言って笑っている。
だけど俺は天音を見ていた。
「天音はコックさんになれるって聞いたけど?」
「ああ、一応免許は取ったからな」
「どうしてならなかったの?」
「多分なってたら過労死するだろうな」
天音はそう言って笑っていた。
結莉と茉莉の育児をしながら働きに行くのはさすがに天音もマズいと思ったらしい。
それに……。
「私の旦那が大地だから仕事の時間が不安定な調理師は厳しいと思ったんだ」
なるほど……
「結が調理師になりたいなら店くらい用意してあげるわよ?」
恵美がそう言っていた。
でも俺には夢がある。
戦闘ロボットを作りたい。
それはこの前海に行った時に決めた夢。
「なるほどな」
天音はそう言って笑っていた。
「と、なると工場を作ればいいのかしら?」
「まだ早いよ。結が大学生くらいの時にまた考えるだろう」
恵美が言うとじいじがそう言っていた。
「そうだとしても不安です」
愛莉は何か悩みがあるらしい。
片桐家の男は女性に頭が上がらない代わりに決めた事は意地でもやる。
だから問題だと言っていた。
何が問題なんだろう。
(2)
「まさかあの歳で女の子を守るとはね」
石原君が言っていた。
「大地も似たような物だったじゃない。あの子は3年生の時だっけ」
天音を守ったそうだ。
「聞こえはいいですけど校内で暴行ですよ。少しは注意してください」
桜子が悲鳴を上げている。
「あと6年あるんだぜ桜子、そんなに悩むと本気で禿げるぞ?」
「そうそう。なるようになるっていつも言ってるだろ」
結莉の母親の天音と水奈がそう言って桜子を慰めている。
「先輩……しっかりしてください。相談ならいつでも乗りますから」
千歳さんがそう言っているけど桜子は千歳に言う。
「千歳!あなた他人事と思ってるでしょうけどきっと水奈と天音の子供の担任は貴方よ」
結がある程度制御してるけど優奈達にはそれが無い。
きっと大変だと桜子が言うと水奈と天音は抗議する。
「だ、大丈夫だ。海翔は大地に似て大人しいんだ!」
「優奈と愛菜はああ見えて優翔が制御してるから大人しいぞ」
しかし学とカンナはそう思わなかったらしい。
「そうだな。悠翔はしっかりしてる。母親の水奈よりしっかりしてるのはどうしてだ?」
「……桜子。一つアドバイスさせてくれ。こいつに呼び出しは通用しない」
カンナが言うと学も桜子もカンナを見ていた。
理由は簡単だ。
「水奈は幼稚園から呼び出しを受けても、どうせ説教だろ?と行かないんだ」
「……どういう事だ?俺は一言も聞いてないぞ」
学が言う。
理由は簡単だった。
説教だから面倒だと水奈は行かない。
学に知らせると自分が怒られるから言わない。
しかしそれだと優奈達が帰れない。
そういう時にどうすればいいか優菜たちは水奈から聞いていた。
だからカンナに連絡してくれと連絡先を教えたらしい。
「優菜ダメだろ!そんな事母さんにバレたら私が怒られる」
「お前は何を言ってるんだ!?孫の世話まで私にさせるつもりか!このバカ娘!」
「ああ、その手があったか。通りで水奈がいつまでたっても来なかったわけだ」
天音は自分もその手を使おうと思ったのだろう。
水奈と違うのは天音は愛莉に怒られても何とも思わないところ。
恵美さんと愛莉は天音にしっかり説教していた。
「そういえば琴音たちはどうなの?」
亜依さんが聞いていた。
「私達は呼び出されたりはしてないかな」
「なずなと同じで私も呼び出されたりはしてない」
それだけでもちゃんと育ってるんだなと思うのはなぜだろう?
ただ一つだけ気になっていることがあるらしい。
琴音と快はいつも2人でいるんだそうだ。
それはなずなと花がいつも一緒だからと思っていたけど、幼稚園でもいつも一緒にいるらしい。
それを冷かした子供が優奈と愛菜の餌食になってるそうだ。
海翔もそれは止めたりしない。
職員が来ないか見張ってやってきたら止めている。
それで二人が止めるはずが無いから水奈が呼び出されるんだけど。
「優翔と茉奈はそんなに大人しいの?」
僕が聞いてみると学は頷いた。
「大人しいというか面倒見がいいというか」
優菜と愛菜より年上だからか兄と姉の役割を果たしているそうだ。
それを聞いた亜依さんが首をかしげる。
「学の時もそうだったけどどうして私の子供はみんな立派なんだ?」
「そう言われてみたら遊も父親としては問題ないですね」
なずなも不思議に思ったそうだ。
遊なら大丈夫だと進と朱鳥を産んだらしい。
「やっぱり父親の俺が立派だからだろ!」
桐谷君が言うと「それはない」と亜依さんとなずなが言っていた。
「でも不思議だな。父さんと瑛大さんの血が入ってるのになんでだろう?」
「水奈の性格はしっかり優奈達が引き継いでるけどな」
カンナがそう言って水奈を睨む。
しかし水奈にも反論があった。
「その理屈で言うと私だって母さんの性格を継いでるだけじゃないのか?」
「それは違うよ」
僕がカンナに手助けしてやった。
カンナの子供の時の話をしてやった。
愛莉がいなかったら僕とカンナが付き合っていてもおかしくない。
それくらいカンナは綺麗で優しくてまじめだった。
ただ、東京での色に染まって見た目で誤解されがちだけどカンナは純情だった。
ぽかっ
「そういう事を妻の私の前で言うんですか?」
愛莉に睨まれた。
これ以上はやめておこう。
「やっぱりあの時転校したのが失敗だったのか?しかも理由はあのくそジジイだし……」
「そ、そういうなよ神奈。だから俺と一緒になれたんだろ?」
Jリーグの名選手と結婚できたんだからいいんじゃないのか?
しかし亜依さんも同じ気分だったそうだ。
「神奈、あとで飲もう。私もつきあってあげるから」
「そう言う話なら私も行く!なずなは二人目を産んだのに学は相手してくれないんだ!」
「それはこれ以上子供を増やしたらお前が絶対面倒見ないからだろ!このバカ娘」
揉めてるカンナ達と必死に桜子を慰める教師陣をただ眺めていた。
「色々あるみたいだけど冬夜。うちの孫の事で相談したいんだが」
渡辺君がやってきた。
渡辺君と美嘉さんの腕には波留ちゃんと正文君がいる。
両手で料理を食べていた。
ああ、そういう事か。
「それが話の理由?」
僕は二人を指して言うと美嘉さんが言った。
「二人とも正志に似て一日中食ってるんだ!」
「それだけじゃないだろ、この二人の暴れっぷりは美嘉だろ」
すごい孫が生まれたみたいだな。
人の事言えないけど。
あれ?
「正俊君は?」
僕が聞くと渡辺君が指差す。
その先にはひたすら食べてる正俊君がいた。
「場所を考えて少しは控えて!みっともないよ」
夏希さんが困っているようだ。
多分愛莉にはわかることがあったんだろう。
「美嘉……食い意地だけは諦めた方がいい」
絶対に最後まで直らないから。
その代わり妙な事は絶対に考えない。
そんな暇あったらとにかく食べる事を考えている。
注意するのは親しい女子がいるかどうかだけ。
まだ子供なのに性行為に至るとかそういう心配はしなくていい。
逆に彼女が誘ってるのにまったく気づかない鈍さを指摘してやった方がいい。
どう考えても僕や空の事だろうな。
その証拠に僕を横目に見ながら愛莉は話をしていた。
しかし渡辺君はそれだけじゃないらしい。
2人は食べ物がなくなると暴れ出す。
結莉と茉莉の様に暴れ出す。
部屋のふすまなどに平気で穴をあけるらしい。
夜にちゃんと寝ないで、昼間寝てる。
幸い一軒家だからよかった。
あの2人に恋人なんて到底想像つかない。
夏希さんも困っているそうだ。
その代わり父親とは仲がいい。
公園に連れて行ったりすると一緒に遊んでるらしい。
「パパいっちゃいやだ」
正俊君の出勤時に波留がそう言いだして困らせるくらい。
「まだ、渡辺君達の出る時期じゃないよ」
もう少し大きくなって問題を起こすなら何か手を打てばいい。
あまり小さい時から祖父が手を出すべきじゃない。
子供たちが自分で教育方法などを考えなくなってしまう。
夫婦で悩ませてやればいい。
そしたら渡辺君達がどれだけ苦労したかわかる時が来るだろう。
そうなったら一緒に飲みながら話をきいてやればいいさ。
「トーヤ。じゃあ、私達はどうすればいいんだ?」
「そうよ!片桐君や恵美達はそれでいいかもしれないけど私達はどう説明するの!?」
カンナと亜依さんが言う。
「確かに主婦だけで集まってランチなんてのんきな事出来なくなったわね」
石原君も「夫が働いてる時にランチとは羨ましいな」なんて言わない。
むしろそうやって主婦だけで集まっていて欲しいようだった。
そうすれば少なくとも会社は倒産しないから。
それは酒井君も同じだろう。
「確かに晶ちゃんも毎日悩んでいるようで、何かアドバイスしてあげたいと思うのだけどね」
酒井君はそう言って苦笑いしている。
そんな話をしていると結達が戻って来たのでそろそろしめようかと石原君が言っていた。
家に帰ると結達を先に風呂に入れて部屋に戻らせる。
あの子達も空や翼と同じらしい。
「夏休みの宿題なんてのは7月中に終わらせて8月は思いっきり遊ぶ」
それを実践している孫たちが凄いと思った。
風呂に入って湯上りのビールを空と飲んでいると美希が加わってきた。
「冬夜さんもやっぱり子供達の事で苦労したの?」
美希も気になる時期になったのか。
愛莉とは何度も話してるけど僕とはまだ話してないから気になったらしい。
「うーん、僕よりも空の方が苦労してそうだけどね」
「結や比呂の事?」
「いや、翼や天音の事」
突然姉妹に告白されて押し倒されて唇を奪われて。
僕は直接聞いてないけどやっぱり悩んだんじゃないか?
「それに片桐家の男性にはそのくらいアピールしないと気付いてもらえないんですよ!」
瞳子の気持ちに気づいた冬吾が不思議なくらいだと愛莉が言う。
そう言えば冬夜も最初は結莉のアピールに気づいてなかったな。
先の見えない未来というけど、あの子達の未来はちゃんと明るい物なのだろうと思った。
「気安く触るなくそジジイ!」
結莉が怒鳴っていた、
女の子だから芳樹以外の男の人に触られたくないらしい。
まあ、それは失礼だからしちゃいけないって言われてるから俺はしない。
「まあ、結だったら許してやるぞ」
茉莉はそう言っていたけど女の子とひとくくりにしたらいけないのだろうか?
まあ、俺も誠たちとはちょっと違うみたいだしそうなんだろうな。
で、問題はここから。
結莉の肩に触った男は僕達の十倍以上は歳を取っていそうなのに親に教えてもらわなかったのだろうか。
今日の結莉は髪の色に合わせて水色のドレスを着ていた。
肩の露出したやつだからなおさら結莉は怒っているのだろう。
菫や陽葵も晶がドレスを与えていた。
「あなた達もそろそろこういう場所に慣れていいでしょ」
酒井家の娘なのだからちゃんとした姿でと晶が用意していた。
俺はじいじが用意してくれた。
「いつも人ごみに紛れて花火だと飽きるでしょ」
恵美がそう言って江口家のパーティに招待してくれた。
恵美と望の意向で渡辺班とSHの人間が招待されていた。
ただそれだけじゃない。
この知らないお爺さんも招待されたのだろう。
やけに偉そうで手下を何人か連れていた。
秘書って言うらしい。
「お嬢ちゃんは誰なのかな?私が誰だかわかってるのかい?」
「知るかぼけ!分かったのはどうしようもないロリコンだってことくらいだ!」
ロリコンってなんだろう?
帰ったら検索してみるかな?
ぽかっ
「結にはまだ早いから」
母さんが言うからそうなんだろう。
「母さんの言う事は聞いておきなさい。片桐家の男子は女性の機嫌を損ねたらいけない」
父さんもそう言っていた。
すると天音がやってきた。
「どうしたんだ結莉?大声出して。何かあったのか?」
「このジジイが結莉に触った」
「なんだと?」
天音がそう言ってジジイを睨みつける。
「てめえ、私の娘に手を出すなんてどれだけ変態なんだ?」
天音がそう言うと大地が止める。
「天音、たまにはニュースくらい見ようって言ったろ?すいません、僕の娘はまだ世間知らずなところがあって……」
なぜか大地が謝っていた。
天音も不思議に思ったらしい。
「お前このじじいの知り合いか?」
「天音はいい加減社会情勢くらい勉強しなさい」
愛莉達がやってくる。
周りを見ると人だかりが出来ている。
「結莉は悪くない!」
「お願いだから、今回だけは我慢しようね」
愛莉がそう言って結莉を宥めようとするけど結莉の機嫌は悪くなる一方。
で、このジジイ誰だろう?
「環境大臣」
父さんが教えてくれた。
よく国営放送でつまらない話を延々と垂れ流してるおっさんか。
なぜかじいじは恵美さんに話しかけて、様子を見ている。
お手並み拝見ってやつなんだろうか。
恵美は機嫌が悪そうだったけど。
父さんが持ってる皿には美味しそうな肉があったので何の肉が聞いてみた。
「ああ、向こうでホットプレートで保温されているローストビーフがあったんだ」
父さんが教えてくれた。
寿司とかパスタに気を取られて全く気付いてなかった。
重大なミスだ。
それにしてもパスタはいいのにラーメンはダメってどういう理屈なんだろう?
「多分すする音がダメなんじゃない?」
母さんはそう言っていた。
そばやうどん、ラーメンは啜って食べる。
だけどパスタは啜ったりしない。
フォークに巻き付けて食べる。
中にはスープが飛ばないようにとスプーンを使うようになったそうだ。
だけどそれはあくまでもスープスパゲティの時だけ。
ペペロンチーノなんかでは使わないらしい。
結構細かいからどうでもいいと思ってる人もいるそうだ。
料理番組でスプーンを使っているのがお洒落に見えたから使ってる人もいるらしい。
だけど本場ではスプーンを使うのは「箸を上手に使えない日本人」くらい恥ずべき行為だとじいじが言っていた。
まあ、出されたカトラリーを使っていれば恥ずかしい行為はないだろうと父さん達も言っている。
色々マナーだけは父さん達から聞いておいた。
俺がマナーを知らないと恥をかくのは母さん達だから。
「君は一体誰だ?こんな無礼をするのがこの家のパーティなのか?」
よくわからないけどそういう威圧は恵美達には通じない。
そして当然の様に天音が怒り出す。
「お前は肩書をいちいち持ってこないと来れない情けない奴か?」
そんなださい大人には絶対になるなと娘に教えている。
それでも肩書で勝負したいのなら相手してやってもいいけど、後悔するのはお前だぞ?
大地も加わっていた。
「僕達が名乗ったら大変な事になる。このくらいで引き下がってもらえませんか?」
「最近の若造は礼儀もしないのか?」
こんなことに時間をとられてローストビーフがなくなってしまうのはもったいない。
「母さん、これもってて」
「結?」
母さんに取り皿を預けると結莉達とジジイの間に入る。
「なんだね君は?」
「……お前は結莉の肩に触った。だけど結莉の親は名乗るとまずいみたい」
その理由はなんとなくわかっていた。
その証拠に恵美が今にも介入しようとしているのを望が止めていたから。
「それがどうしたんだい?子供は口出ししないでくれないか?この方はとても偉い人なんだよ?」
父さんより弱そうなのにそうは思わなかった。
母さんが言ってた。
「冬夜の強さは番外。比べられる子が可哀そうなくらい。だから弱い者いじめはダメ。でも自分の大事な人を守るためなら加減することはない」
まだ子供なんだから遠慮せず思いっきりやれ。
こういう時何て言うんだっけ?
「結莉に気安く触るな」
そう言うと同時にジジイを殴り飛ばしておいた。
本気でやると頭部を粉砕するからダメって言われてる。
思った以上にちょろい奴だったみたいだ。
想像以上に派手に吹っ飛んでいた。
「君!何をやっているんだ?」
秘書とかいう人間が僕を掴む。
「結莉に許可なく触る変態だから殴り飛ばしただけだけど?」
女性の許可なく体に触るのは失礼だって事くらいは小学生でも知ってるよ?
「この家の礼儀はどうなっているんだ!?これが江口家のやり方なのか!?」
殴り飛ばしたジジイが何か喚いている。
「そうだけど、それがどうかしたの?」
恵美が出てきた。
僕を見てにこりと笑う。
「随分と頼もしい男の子に育ってるじゃない。これならばあばも安心だわ」
「お前は何者だ?」
「たかだか閣僚如きに名乗る名前なんてない」
「……江口家の跡取りの孫娘に無礼を働いた。そう説明したらご理解いただけますか?」
恵美と望が言う。
「あんた確か環境大臣だったわね?ごみを増やすのと日本の環境を最悪レベルにするのとどっちがお望み?」
死体を増やすか日本を核の冬にするか選べって意味だそうだ。
恵美は笑顔を崩さずに言う。
「貴方がしがみついてる肩書を奪うなんて面倒な真似しないけど、これ以上面倒を増やすなら僕は構いませんよ」
望がそう言うとジジイ達が去って行った。
「天音!あなた仮にも石原家の嫁だと自覚してるなら社会情勢の事くらいテレビで見ておきなさい!」
愛莉がそう叱っている。
ゲームばかりしてないで偶にはワイドショーでもいいから観ておきなさい。
しかし天音はどうでもいいと思っているみたいだ。
「まあ、肩書が分かったところであのジジイがロリコンだったって事だろ?」
そういう情報を茜とかに垂れ流してやればあのジジイはただのジジイじゃないか?
「それにしても結は頼もしいわね」
恵美はご機嫌のようだ。
あのジジイの事なんてどうでもいいのだろう。
きっと小学校でも同じなんだろう。
小学校では結莉に触った瞬間茉莉や希美も加わって病院送りになるだけだ。
「お前みたいな変態が大人になってもろくなことないからこの場で人生終わりにしてやる!」
そう言って袋叩きになるだろう。
しかし不思議だな。
男の人は触ってもいいのに女性はどうしてだめなんだろう?
でも今はそんな問題はどうでもいい。
今一番大事なのはローストビーフだ。
「結莉。あっちにローストビーフあるって言ってた」
「じゃあ、行こうか」
そう言ってその場から離れてローストビーフを食べに行った。
ママの言ったとおり暖かくておいしかった。
見るとその場で調理している人がいる。
僕はじっと見ていた。
「とーや。まだ足りないなら食べたらいいんじゃない?」
だけどずっとその場で食べ続けるのはどうなんだろう?
それにしても色々食べ物がいっぱいあるな。
これなら父さんやじいじがいても大丈夫だな。
一皿につき一種類がマナーだそうだ。
適当に色々食べて回ると父さん達の所に戻った。
「たくさん食べた?」
母さんがそう言って笑っている。
だけど俺は天音を見ていた。
「天音はコックさんになれるって聞いたけど?」
「ああ、一応免許は取ったからな」
「どうしてならなかったの?」
「多分なってたら過労死するだろうな」
天音はそう言って笑っていた。
結莉と茉莉の育児をしながら働きに行くのはさすがに天音もマズいと思ったらしい。
それに……。
「私の旦那が大地だから仕事の時間が不安定な調理師は厳しいと思ったんだ」
なるほど……
「結が調理師になりたいなら店くらい用意してあげるわよ?」
恵美がそう言っていた。
でも俺には夢がある。
戦闘ロボットを作りたい。
それはこの前海に行った時に決めた夢。
「なるほどな」
天音はそう言って笑っていた。
「と、なると工場を作ればいいのかしら?」
「まだ早いよ。結が大学生くらいの時にまた考えるだろう」
恵美が言うとじいじがそう言っていた。
「そうだとしても不安です」
愛莉は何か悩みがあるらしい。
片桐家の男は女性に頭が上がらない代わりに決めた事は意地でもやる。
だから問題だと言っていた。
何が問題なんだろう。
(2)
「まさかあの歳で女の子を守るとはね」
石原君が言っていた。
「大地も似たような物だったじゃない。あの子は3年生の時だっけ」
天音を守ったそうだ。
「聞こえはいいですけど校内で暴行ですよ。少しは注意してください」
桜子が悲鳴を上げている。
「あと6年あるんだぜ桜子、そんなに悩むと本気で禿げるぞ?」
「そうそう。なるようになるっていつも言ってるだろ」
結莉の母親の天音と水奈がそう言って桜子を慰めている。
「先輩……しっかりしてください。相談ならいつでも乗りますから」
千歳さんがそう言っているけど桜子は千歳に言う。
「千歳!あなた他人事と思ってるでしょうけどきっと水奈と天音の子供の担任は貴方よ」
結がある程度制御してるけど優奈達にはそれが無い。
きっと大変だと桜子が言うと水奈と天音は抗議する。
「だ、大丈夫だ。海翔は大地に似て大人しいんだ!」
「優奈と愛菜はああ見えて優翔が制御してるから大人しいぞ」
しかし学とカンナはそう思わなかったらしい。
「そうだな。悠翔はしっかりしてる。母親の水奈よりしっかりしてるのはどうしてだ?」
「……桜子。一つアドバイスさせてくれ。こいつに呼び出しは通用しない」
カンナが言うと学も桜子もカンナを見ていた。
理由は簡単だ。
「水奈は幼稚園から呼び出しを受けても、どうせ説教だろ?と行かないんだ」
「……どういう事だ?俺は一言も聞いてないぞ」
学が言う。
理由は簡単だった。
説教だから面倒だと水奈は行かない。
学に知らせると自分が怒られるから言わない。
しかしそれだと優奈達が帰れない。
そういう時にどうすればいいか優菜たちは水奈から聞いていた。
だからカンナに連絡してくれと連絡先を教えたらしい。
「優菜ダメだろ!そんな事母さんにバレたら私が怒られる」
「お前は何を言ってるんだ!?孫の世話まで私にさせるつもりか!このバカ娘!」
「ああ、その手があったか。通りで水奈がいつまでたっても来なかったわけだ」
天音は自分もその手を使おうと思ったのだろう。
水奈と違うのは天音は愛莉に怒られても何とも思わないところ。
恵美さんと愛莉は天音にしっかり説教していた。
「そういえば琴音たちはどうなの?」
亜依さんが聞いていた。
「私達は呼び出されたりはしてないかな」
「なずなと同じで私も呼び出されたりはしてない」
それだけでもちゃんと育ってるんだなと思うのはなぜだろう?
ただ一つだけ気になっていることがあるらしい。
琴音と快はいつも2人でいるんだそうだ。
それはなずなと花がいつも一緒だからと思っていたけど、幼稚園でもいつも一緒にいるらしい。
それを冷かした子供が優奈と愛菜の餌食になってるそうだ。
海翔もそれは止めたりしない。
職員が来ないか見張ってやってきたら止めている。
それで二人が止めるはずが無いから水奈が呼び出されるんだけど。
「優翔と茉奈はそんなに大人しいの?」
僕が聞いてみると学は頷いた。
「大人しいというか面倒見がいいというか」
優菜と愛菜より年上だからか兄と姉の役割を果たしているそうだ。
それを聞いた亜依さんが首をかしげる。
「学の時もそうだったけどどうして私の子供はみんな立派なんだ?」
「そう言われてみたら遊も父親としては問題ないですね」
なずなも不思議に思ったそうだ。
遊なら大丈夫だと進と朱鳥を産んだらしい。
「やっぱり父親の俺が立派だからだろ!」
桐谷君が言うと「それはない」と亜依さんとなずなが言っていた。
「でも不思議だな。父さんと瑛大さんの血が入ってるのになんでだろう?」
「水奈の性格はしっかり優奈達が引き継いでるけどな」
カンナがそう言って水奈を睨む。
しかし水奈にも反論があった。
「その理屈で言うと私だって母さんの性格を継いでるだけじゃないのか?」
「それは違うよ」
僕がカンナに手助けしてやった。
カンナの子供の時の話をしてやった。
愛莉がいなかったら僕とカンナが付き合っていてもおかしくない。
それくらいカンナは綺麗で優しくてまじめだった。
ただ、東京での色に染まって見た目で誤解されがちだけどカンナは純情だった。
ぽかっ
「そういう事を妻の私の前で言うんですか?」
愛莉に睨まれた。
これ以上はやめておこう。
「やっぱりあの時転校したのが失敗だったのか?しかも理由はあのくそジジイだし……」
「そ、そういうなよ神奈。だから俺と一緒になれたんだろ?」
Jリーグの名選手と結婚できたんだからいいんじゃないのか?
しかし亜依さんも同じ気分だったそうだ。
「神奈、あとで飲もう。私もつきあってあげるから」
「そう言う話なら私も行く!なずなは二人目を産んだのに学は相手してくれないんだ!」
「それはこれ以上子供を増やしたらお前が絶対面倒見ないからだろ!このバカ娘」
揉めてるカンナ達と必死に桜子を慰める教師陣をただ眺めていた。
「色々あるみたいだけど冬夜。うちの孫の事で相談したいんだが」
渡辺君がやってきた。
渡辺君と美嘉さんの腕には波留ちゃんと正文君がいる。
両手で料理を食べていた。
ああ、そういう事か。
「それが話の理由?」
僕は二人を指して言うと美嘉さんが言った。
「二人とも正志に似て一日中食ってるんだ!」
「それだけじゃないだろ、この二人の暴れっぷりは美嘉だろ」
すごい孫が生まれたみたいだな。
人の事言えないけど。
あれ?
「正俊君は?」
僕が聞くと渡辺君が指差す。
その先にはひたすら食べてる正俊君がいた。
「場所を考えて少しは控えて!みっともないよ」
夏希さんが困っているようだ。
多分愛莉にはわかることがあったんだろう。
「美嘉……食い意地だけは諦めた方がいい」
絶対に最後まで直らないから。
その代わり妙な事は絶対に考えない。
そんな暇あったらとにかく食べる事を考えている。
注意するのは親しい女子がいるかどうかだけ。
まだ子供なのに性行為に至るとかそういう心配はしなくていい。
逆に彼女が誘ってるのにまったく気づかない鈍さを指摘してやった方がいい。
どう考えても僕や空の事だろうな。
その証拠に僕を横目に見ながら愛莉は話をしていた。
しかし渡辺君はそれだけじゃないらしい。
2人は食べ物がなくなると暴れ出す。
結莉と茉莉の様に暴れ出す。
部屋のふすまなどに平気で穴をあけるらしい。
夜にちゃんと寝ないで、昼間寝てる。
幸い一軒家だからよかった。
あの2人に恋人なんて到底想像つかない。
夏希さんも困っているそうだ。
その代わり父親とは仲がいい。
公園に連れて行ったりすると一緒に遊んでるらしい。
「パパいっちゃいやだ」
正俊君の出勤時に波留がそう言いだして困らせるくらい。
「まだ、渡辺君達の出る時期じゃないよ」
もう少し大きくなって問題を起こすなら何か手を打てばいい。
あまり小さい時から祖父が手を出すべきじゃない。
子供たちが自分で教育方法などを考えなくなってしまう。
夫婦で悩ませてやればいい。
そしたら渡辺君達がどれだけ苦労したかわかる時が来るだろう。
そうなったら一緒に飲みながら話をきいてやればいいさ。
「トーヤ。じゃあ、私達はどうすればいいんだ?」
「そうよ!片桐君や恵美達はそれでいいかもしれないけど私達はどう説明するの!?」
カンナと亜依さんが言う。
「確かに主婦だけで集まってランチなんてのんきな事出来なくなったわね」
石原君も「夫が働いてる時にランチとは羨ましいな」なんて言わない。
むしろそうやって主婦だけで集まっていて欲しいようだった。
そうすれば少なくとも会社は倒産しないから。
それは酒井君も同じだろう。
「確かに晶ちゃんも毎日悩んでいるようで、何かアドバイスしてあげたいと思うのだけどね」
酒井君はそう言って苦笑いしている。
そんな話をしていると結達が戻って来たのでそろそろしめようかと石原君が言っていた。
家に帰ると結達を先に風呂に入れて部屋に戻らせる。
あの子達も空や翼と同じらしい。
「夏休みの宿題なんてのは7月中に終わらせて8月は思いっきり遊ぶ」
それを実践している孫たちが凄いと思った。
風呂に入って湯上りのビールを空と飲んでいると美希が加わってきた。
「冬夜さんもやっぱり子供達の事で苦労したの?」
美希も気になる時期になったのか。
愛莉とは何度も話してるけど僕とはまだ話してないから気になったらしい。
「うーん、僕よりも空の方が苦労してそうだけどね」
「結や比呂の事?」
「いや、翼や天音の事」
突然姉妹に告白されて押し倒されて唇を奪われて。
僕は直接聞いてないけどやっぱり悩んだんじゃないか?
「それに片桐家の男性にはそのくらいアピールしないと気付いてもらえないんですよ!」
瞳子の気持ちに気づいた冬吾が不思議なくらいだと愛莉が言う。
そう言えば冬夜も最初は結莉のアピールに気づいてなかったな。
先の見えない未来というけど、あの子達の未来はちゃんと明るい物なのだろうと思った。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる