オレの心の扉を開かせたのはあなたです。

星龍

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⑤ー翔真Sideー

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俺たちは他人に助けを求める事を今までしてこなかったし、しようと考えなかった。

なぜなら、誰も俺たちを助けてくれやしないから。

警察に通報しようにも警察署の偉いさんの親父にこの事は握りつぶされてしまうだろうから。

だから俺は今まであの女と体を繋げる翔斗や今回も親父に襲われている翔斗を見ている事しか出来なかった。

でも、あの人なら…久野光樹さんなら、俺たちを救い出してくれる。
そんな気がして、俺は近くに転がっていた俺のスマホの電源を入れ、電話を掛けた。

《…もしもし?
翔真くん?》

久野さんはすぐに電話に出てくれた。

《ん~、ん~!》

《? 
翔真くん?
どうしたの?》

《ん~ん~ん~ん~》

《……もしかして、今、喋れない?》

《ん~ん~。》

《……今すぐ家に行くっ!》

久野さんは電話を切った。

「満足した。
これからもよろしくな。
俺の可愛い人形。」

「……うっうっ…。」

親父は乱れた服を整え、翔斗はうつ伏せで泣いていた。

(何があっても涙を流さない翔斗が泣いている…。)

「じゃあ、金、借りるな。」

親父は俺たちの財布からお金を取り家を出て行った。

「…………」

翔斗は乱れた服のまま、リビングを出て行った。

(なんか……やな予感がする。
あの目、全てを諦めたような……。)

俺は縛られているから翔斗を追いかける事が出来ずただその場でじたばたするしか出来ない。

「ん~ん~ん~!!」

その時、

「翔真くん、翔真くん!」

ドアをドンドンと叩く音と久野さんの声が聞こえた。

「ん~ん~!」

ガチャと勢いよくドアが開いて久野さんが顔を覗かせた。

「「翔真くん!?」」

幸い、玄関からリビングには一直線でリビングのドアが開いていたため、すぐに久野さんとマネージャーの青ちゃんが駆けつけてくれて、口のガムテープを剥がしてくれた。

「ぷはぁ!
翔斗、翔斗が!」

青ちゃんが縄を解いてくれた。

「翔斗くんがどうしたの!?」

「アイツ、風呂場に行った!
もしかしたら…」

「「!?」」

俺のその言葉で何が言いたいのか分かったのか2人の表情はみるみると青くなった。

「風呂場はどこ?」

「リビングを出て左側のドアです。」

「翔斗くんっ!」

久野さんはすぐに風呂場に行った。

「……しょ、翔斗くん!?」

俺は久野さんの声に急いで風呂場に行った。

「……しょ、と。」

行くと、翔斗は手首から血を流して久野さんがタオルで翔斗の手首を押さえていた。
俺は頭が真っ白になり、その場に座り込んだ。 

「青山さんっ!
すぐに救急車を呼んで…、
いや、直接病院に連れて行くか。」

「翔真くん、行きましょう。」

「う、うん。」

俺たちは青ちゃんの車で翔斗を病院に連れて行った。
幸い、発見が早く止血も早かったから命に別状が無かった。 

今は、家に向かう途中の青ちゃんの車の中。

「……翔真くん。
話してくれる?」

「…………」

「さすがに、この状態をみて『話せたら話して。』とは言えない。
今すぐ、話して欲しい。」

(そうだ。
久野さんに電話した時点でこうなることは予想していた。
もう、隠しきれない…。)

「……わかりました。
全て話します。」

俺たちは家に着き、リビングに集まった。

(話して久野さんに軽蔑され、青ちゃんに『マネージャーを辞める』なんて言われたら翔斗に怒られるな。
いや、話した時点で怒られるか。)

「…久野さん、青ちゃん。
俺らの過去を聞いて俺を、俺たちを軽蔑したら言ってください。
二度と久野さんに近づきませんし青ちゃん、俺は仕事を辞める覚悟をしている。」

「「!?」」

「……フゥ~。
話します。
俺たちの過去を。」

俺は話はじめた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺たち双子は物心着いた頃から父親は昼間は仕事で、母親は男と遊びに行くことが多く、夜は父親からの暴力、母親は仕事。
そんな家庭で育った。

飯も1日1回、2人で半分こだった。
その生活を異常と感じず暮らしていた。
小学校、中学校には行ったことがなく15歳になるまでまともに外に出た事が無かった。
まぁ、俺は父親から暴力を受けるだけの生活だったけど、翔斗は違った。

翔斗は…12歳くらいかな。 
母親に無理矢理肉体関係を持たされたんだ。
可愛いお人形として……。
だから、翔斗は『可愛い』って言われる事を嫌う。
昼間はほとんど母親の人形として体を繋げ、俺はそれを見てるだけの日々。

だからなのか、翔斗はセックスでしか自分の存在価値がないと思っていて性行為に溺れ依存するようになった。
16歳の頃、俺たちは声優になる事を夢見ていた。
幼い頃から心の支えだったアニメに関わりたかったから。
そして、早く家を出たかった。
だから、夜間の高校に通いながら独自で勉強もしていた。
19歳の頃、やっと高校を卒業し大学に行き、こうして声優になり家を出た。
 
でも、声優になってからは俺は自分の存在価値を仕事でしか見いだせなくなり、仕事に依存するようになり、父親は金をねだりに家に来るようになった。
そして、未だに暴力を受けている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さっきも親父が来て翔斗を、無理矢理犯した。
人形として……。」

「「!?」」

「だから、翔斗くんは自殺しようとしたの?」

「はい。 
アイツは俺を守ってくれた。
本当なら、 俺が親父の人形になるはずだったのに…。」

俺は服を脱ぎ始めた。

「俺の、俺たちの身体には痣がたくさん残っている。
子どもの頃の痣は治ったんですけどね。
痣が治りかけてきた頃に親父が来てまた新しい痣を作る。
それの繰り返しです。」 

俺は服を着た。

「慎くん。
なんで、警察に言わなかったんですか?
これは虐待です。
虐待は立派な犯罪です。」

「信じれないから。
大人なんて、周りの人間なんか信じれない。
それに、親父は警察署のお偉いさんだからこの事は握りつぶされてしまうだろう。」

「……だから、警察には通報しなかったんだね。」

「はい。」

「……翔真くん。
俺、キミたちを守りたい。
力になれないかな?」

「自分も力になりたいです!」

「軽蔑、しないんですか?
俺たちを嫌わないんですか?」

「軽蔑なんかしない。
勿論、翔斗くんに対してもね?」

久野さんは笑顔でそう言った。

俺はその言葉を聞いて、体が、心が軽くなった気がして涙が出てきた。

「翔真くん。
自分も、久野さんも貴方の、貴方たちの味方です。」

「……ありがとう、ございます…。
久野さん…、青ちゃん…。」

「うん。」

久野さんは俺の頭を撫でた。 

(久野さん、 
翔斗になら抱きしめるんだろうな…。)

「青ちゃん、こんな俺だけどこれからも石橋翔真と翔斗のマネージャーで居てくれる?
俺、少しずつ青ちゃんと、久野さんを信じようと思う。」

「はい!
もちろん。
自分は、石橋兄弟のマネージャーですから。」

「ありがとう。
青ちゃん。 
それじゃ、夜ご飯、食べに行きましょう?」

俺たちは夜ご飯を食べに行った。
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