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第二章

全能祭編

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 ~8日目~

 GWも終わってしまった。つまり、これから学校が始まるということ。

 「早苗は、学校行ってるのか?」

 「行ってないわよ。風制委員会に入った時点で退学になるから。」

 そうなのか!!あの専属コーチ。何も言ってくれないから分からないじゃないか。まあ、学校は行かなくてもいいや。でも、ここに入った人にはどんな選択肢があるんだろう?

 「風制委員会に入った人には、能力警察になるかまた学生をやり直すかの2択よ。」

 心が読めていることは、放っておいて能力警察か・・・。まあ、警察になる気は無いし高校生いっぱいは風制委員をしてもいいと思っている自分がここにいる。どちらでもいいんだがな。

 「それにしても、小春ちゃん。大丈夫?あんなことがあってすぐだから。」

 「大丈夫ですよ。あれこれ使われる前にみんなが来てくれたから。」

 今回は、即座に配下の居場所を特定した風制委員のみんなには感謝しないとな。でも、黒闇闇は何を考えているのか分からないな。分からない。分からない。分からないことばっかり。もう頭がパンクしそうだけど。

 「そうだ!一緒に買い物行かない?」

 「買い物?」
 
 今買い物かよ。まあ、最近忙しかったし。たまに休日も必要かもしれないけど・・・。

 「こら!そこ。今買い物かよとか思はない。今は、たまの休日を他の合間なきゃ!」

 なんで心読めてんだよ!

 「じゃあ、13時に集合ね。」

  ~13時~

 「みんな集まった?」

 「はーい。」

 買い物・・・。今さらすることじゃ無いな。俺はここで待っているk・・・

 「ねぇ、何みる?」

 「あれとか、いいんじゃないですか?」

 もう行ってた。まあ、そっちの方が都合がいい。俺は、椅子に腰をかけ今までの振り返りをした。

 「黒闇闇は、小春を狙ってた。もしかすると、また攻撃してくるかもしれない。」

 そうなったときは、今度こそ俺が守るんだ。他の人に頼っていられない。でも、四元操作を使って何かをしようってんなら配下を使えばいいと思うが・・・。何が目的なんだ?

 その時、警報が鳴り響いた。

 「お前ら、動くんじゃねえぞ!動くと、この建物に仕掛けられた爆弾が爆破するぞ!」

 まあ、早苗がいるから大丈夫?では無いな。見えてる範囲では、2人。1人止めた時点で爆破落ちだ。さてどうしたもんか。見えてない範囲にも、いるとしたら厄介だし。

 「あなたたち何やってるの!ここは、公共の場よ!こんなところで爆破なんてしたら・・・。」

 「うるせぇ!お前らは、黙ってろ!」

 早苗のやつ、馬鹿が出たか?でも待てよ。今俺は、ばれてない。動くとしたら俺か・・・。本来なら、警察が取り締まるべきだが今は仕方ない。手を貸すとするか。

 しかし、どうやって場所を探ろう?俺の能力は、散策できるものでもないし・・・。そうだ!天眼の加護を使おう。天眼の加護は、人の心情が見れる。これは、見えている範囲ではなく自分を中心とした縁の中にいるものならなんでも読める。その分、体力を持っていかれるが仕方ない。

 なるほど。2人だけか。ふぅ、いつもより疲れるな。でも待てよ。爆弾が見当たらない点を考えると、能力か。2人は早苗が相手してるけど、早苗の能力じゃあ1人が限界か。

 「だれかは分からないけど、私を舐めて貰っちゃ困るのよ。時一停止。」

 2人とも固まった。ていうか、早苗以外みんな固まった。能力が進化したのか?でも、俺が固まってない点を見ると範囲効果なのか。でも、無駄に突っ込んで俺も止まると嫌だからここで待っているか。

 事件は、解決・・・とはいかなかった。相手の能力ランクが早苗より高かったのか、動き出してしまった。

 「お前、よくもやってくれたな。今からこいつらが爆破するのを見ているんだな!」

 まずい!かと言って突っ込むのもアレだし。あ~もどうすれば。

 「何!なぜ爆破できない。」

 「彼らとこの空間の時間は、止まっているからね。」

 「俺が動けてるって事は、お前ランクB中だな。」

 !!

 そうか。俺は、ランクB上。今突っ込んでも問題ない。逆に背後をとれるかも。早苗頼む。その間、能力を使い続けてくれ。

 まずいわね。能力の性能が戻ったとはいえ、使い続けるにはそれ相応の力がいる。前の能力より、よっぽど扱いづらい。頼んだわよ。昴!

 「どうした?何もできないのか?なら仕方ない。お前からいくか。」

 「そうは、させねえぞ。」

 俺は、完全に背後を取った状態で肩を掴み能力を消した。

 「何!なぜ能力が使えない。」

 「企業秘密だ。は~!」

 急所を見破り相手を気絶させる。危なかった~。後少し遅れてたらここが消し飛ぶところだったぜ~。

 「大丈夫か?」

 「もう、遅すぎるわよ。もう少し早くきてくれないかな。少し怖かったんだぞ。」

 「ごめんって。」

 その後、警察に引き渡し事は終わった。

 「こういうのが、増えると大変になりそうだな~。」

 「ねぇ、何があったの?」

 「お前は、呑気でいいよな~。」

 こいつには、あまり事件に関わって欲しくないから今回はOKという事で。

 「帰りますか。」

 「うん。」

 今日は、呼び出しをくらって風紀制定会議ビルに来ていた。

 「なんですか?用って。」

 「全能祭のことよ。」

 全能祭。それは、能力検査調査街にある全高校が競い合う場。その名も、全高能力体育祭だ。この街には、高校が10存在している。俺は、高校を退学したから関係ないと思っていたのだが・・・。

 「俺たちは、何をするだ?」

 「全能祭の警備だよ。」

 風制委員は、警備を担当しているのか。競技には、直接関わらない。マシな役職だな。

 「警備と言っても何から守るんだ?」

 「毎年、嫌な事件が起きてるのよ。毎回、被害は最小限に押さえてるんだけど。」

 変な事をする奴らもいたもんだ。能力者が合計でも3000以上はいるんだぞ。でも、何が目的でこんな事をするのかは今はどうでもいいからな。こんな連中が出てきたら、取っ捕まえて反省させるのが一番だと思っているからな。

 「まっ、気にしなくていいよ。それより、優勝校はどこだと思う?」

 「そうだな。前年度優勝が、伊律次高校。準優勝が、札律次高校だったからな。どちらも取れないって、なんで駆け引きみたいになってんの?」

 「それは、あなたが自分でそこまで運んだからじゃないの。」

 確かにそうだな。でも、今年は何かある気がするな。最近の話題だと、伊律次に加護を持つものが現れたとか。まあ、加護は神から承るもの。この街には、10の神社があるし俺を除くと札律次以外はいそうだけど。そうなると、札律次が不利だな。まあ、加護がとてつもなく強いというわけでもないしどっちでもいいか。

 全能祭には、全部で11の競技がある。なぜ11なのか。それは、各校の得意分野を1つずつ競技に出し最終種目に全高から代表者が100人出て戦い合う『ブレイク・ストライカーズ』という名の競技を入れる。こうすることで、はっきりとした順位をつけようと考えたらしい。全く、馬鹿馬鹿しいにも程があると思うがまあいい。逆にいうと、得意分野は絶対に落とせないということにもなる。落とした時点で、ほぼ負けと思ってもいいだろう。だから皆、得意分野を徹底的に進化させ続けているんだ。落とさないためにも。

 「全能祭は、いつあるんだ?」

 「5月15日から21日までの計6日だよ。」

 6日間の間、何も起こらないといいのだが。そん時はそん時だ。警備まで体を整えるとするか。
  
 ~全能祭当日1日目~

 「さぁ、全能祭も開幕だー!お前ら盛り上がってけよ~!」

 「おー!」

 騒がしいな。全能祭は、そこまで盛り上がる行事なのか?あの実況者も、有名みたいだし。それはともかく、あいつらに顔を出してこないとな。

 「礼央。久しぶり。」

 「昴か、久しぶりだな。」

 五十川礼央(いそがわれお)。俺の元同級生だ。退学のことも伝えたし、事情も伝えた。彼は、俺のことに何も言わなかった。俺の事情を考えての行動だろう。ありがたい。札律次のみんなにも、説明はされているだろうし。俺は、その行動に感謝しておこう。さて、再会も終わったところだし警備に戻るか。

 「出場校の、紹介だ!まずは、
  昨年度の優勝校 伊律次高校いりつじこうこう
  惜しくも準優勝 札律次高校ふりつじこうこう
  今年の期待   風律次高校うりつじこうこう
  火炎の使いて  炎律次高校えりつじこうこう
  山岳の強者   土律次高校どりつじこうこう
  隠密の信者   隠律次高校かりつじこうこう
  仲良し必見   仲律次高校なりつじこうこう
  応援主張者   声律次高校せりつじこうこう
  持久性万全   持律次高校じりつじこうこう
  そして最後   投律次高校とりつじこうこう
  これで、全部だ!」

 それぞれの高校には、有利な種目がある。投律次高校は、遠隔投球戦。持律次高校は、持久走。声律次高校は、応援合戦。仲律次高校は、棒倒し。隠津次高校は、騎馬戦。土律次高校は、障害物競走。炎律次高校は、リレー10000m。風律次高校は、100m走。札律次高校は、最速走。伊律次高校は、綱引き。そして、最後の種目は団体能戦だ。この11種目で競技を行う。

 「本日は、開会式と100m走だ!」

 その頃、大会場周辺では、

 「やはり、警備は手薄だな。」

 「そうだな、侵入するにはうってつけだな。」

 一方昴は、

 「ふ~、やっぱ大勢のところにいると疲れるな。ん?あれは・・・。」

 あいつらは、侵入者か?確かに、今は絶好のチャンスだが・・・。馬鹿だな。なぜだって?あとで、早苗に言いつけてやるからな。

 「お前ら、待て!」

 「クッソ、逃げるぞ!」

 脚力強化5、蹴りで気絶。完璧だな。こいつらは、早苗に引き渡して・・・と。でも、こいつらが所属している組織も調べておかないと。

 「この人たちは?」

 「侵入者ですよ。でも、何の組織に所属しているのかは分からなかったけど。警戒しといたほうがいいぞ。気を付けろよ。」

 「はいはい。わかったわよ。」

 やはり、この大会は何かあるな。いつも以上に気をつけておかないと。これだけじゃ終わらないかもしれないな。そうならないことを祈るしかないか。

 「選手入場」

 うわー、やっぱ多いな。あの人数で、競技をするのか。長くなりそうだ。

 「選手宣誓。代表の飯田光弘いいだみつひろさん。」

 長くなりそうだ。周辺の警備にでも行ってくるか。

 「昴君。」

 「早苗、どうしたんだ?」

 「あいつらの正体がわかったの。」

 あいつら?ああ、俺が捕らえた侵入者のことか。どこの組織の奴らかは、知らないが警戒しといたほうがいいな。

 「黒闇闇。」

 何!あいつら、まだ諦めて無かったのか?いや、今回小春は選手として出ていないし。別の何かか?

 「ねぇ、昴君。なんで黒闇闇が狙ってくると思う?」

 そうか、早苗達は記憶を失っているんだった。どうせ、説明しても無駄か。でも、何を狙ってるんだ?加護を持っているという選手か?それとも・・・。

 「早苗、あいつらがなんで侵入したかわかるか?」

 「それが、頑なに喋らなくて。」

 黒闇闇のことは喋ったのにか?まあ、天眼の加護を使えば心情がわかるしまあいいか。

 「大変です!侵入者が消えました。」

 「なんで?目の前にいたんじゃないの?」

 「それが、侵入者の体から霧が発せられて気づいた時には」

 幻影か!まだ潜んでいるかもしれないし、見回りに行ってくるか。ほんとに何が狙いなんだ?

 「早苗、見回りを強化しろ。見つけたら蹴りを何発か食らわせておけ。」

 「さ~、一回戦の種目は100m走だ!」

 「それでは、行きます。よーいドン!」

 「風律次高校が、トップ独断だぜ!」
 
 会場は、熱気に包まれ5月とは思えない暑さだった。100m走は、一位の数が1番多かった高校にポイントが入る。今のところは、風律次が全てのレースを1位通過している。これは、皆が予想できることだ。でも、勝負はここからだ。

 「お~と、なんと持律次高校が1位だ。本当の勝負はここからだぜ!」

 会場は、熱気で盛り上がっているな。こっちも頑張らなきゃ。しかし、何を狙っている?ここには、そんな貴重なものは・・・ある。1つだけあった。奴らは、これを狙っている。絶対に。ん?あいつらは、また侵入者か。ここの警備体制は、どうなっているんだ?あいつの、洗脳が効いているのか。しかも、幻影なら天眼も効かない。これは、厄介だぞ。少し無理をしてでも、幻影を消さないとな。これだけじゃ、絶対終わらない。奴らの狙いが、あれならなおさらな。

 100m走は、風律次高校が有利だったが後半につれ他校にも1位通過の人が現れ始めた。結果は、風律次高校が勝った。例年通りだ。でも、例年では侵入者はいなかった。高価なものは、ないからだ。もしかすると、加護を持つものを狙っていたのかもしれない。でも、一体何をするんだろう?加護なんて神に認められるように努力すればいいのに。俺が、加護を持っているのは黒闇闇のボスしかしら・・・。黒闇闇!?待てよ、ここに潜入してきたのが黒闇闇だとすると狙いは俺!?あいつら、俺に一体何する気だ?何が狙いだ?もしかすると、無能の加護かもしれないな。なんとしても、この事態を止めないと。

 「今日の競技ここまでだぜ!明日までは時間があるから、観光などを楽しんでいくんだぜ!」

 見た感じ、幻影はいなかったな。明日からも気を引き締めないとな。ホテルに戻るか。ん?なんで札律次なのにホテルに泊まるかって?ここは、札律次と言っても県の端。山奥だから、戻るのは時間がかかる。だから、ホテルに泊まるんだ。ホテルはダブルベットなのに1人で使うって悲しいな。まぁ、風制委員にも一緒に寝れる友達いないしな。仕方ないか。そういえば今日、開会晩餐会があるって言ってたな。まぁ、俺は行かないんだがな。

 「今日の開会晩餐会では、他校の選手と交流するのが目的です。ぜひお楽しみください。」

 「昴、きてないわね。今日は、警備にも参加しなくてもいいのに。なんでだろう?」

 今回の犯行の目的が俺以外にあるとしたら。もしかして・・・聞いてみるか。

 やっぱ、そうか。今回の事件は、これだけだは終わらないな。絶対に。終わって欲しいんだが、無理だな。

 ~2日目~

 「今日は、持久走と最速走だぜ!」

 最速走。札律次高校、頑張れよ!俺は、参加できないのが残念だけど。せて、警備に戻るか。今日は、何もないといいんだが。あるな。こう思うときは、絶対ある。そう確信づけることができる。もしかしたら、もう侵入してるかも。

 案の定、そこに幻影がいた。もちろん消したが、今日も気は抜けないな。何しでかすか分からないし。もし、目的があれだとしたらなおさらだ。絶対守りきってやる。待ってろよ、黒闇闇。お前らの思い通りには、させないぜ。

  最速走は、全員参加だが持久走は違う。代表選手が10人1チームで構成されているからだ。それなのに、競技の中では1番かかる時間が長い。みんなが思っているのは、1500mとかそこらへんだろう。しかしそれでは、能力を使えば10秒で終わってしまう。それを計算して、最低でも1分はこえるように設定した場合は10000mはこさないといけない。疲労も考慮されるし、何よりも身体能力も計算に入っている。この種目の採点方法は、代表選手10名の合計タイムと設定タイムがどれだけ近いかで決まる。設定タイムも長い時もあれば、短い時もある。設定タイムは公開されていないから、予測が大事になってくる。過去の事例を見ても、タイムは最下位のチームが優勝したということもある。では、なぜこの競技に有利高があるか。その理由は、予言能力等を持っている能力者がたくさんいる。なんと、100%的中するとかで向かうところ的なしと言われている。まさに恐ろしい。

 最速走は、100m走とは違って走りきるのにかかった時間ではなく走っている最中にどれだけの時速が出せるかで勝敗が決まる。100mの中で最高速を出せばいいから、能力を使った後ゆっくりと歩いてゴールテープを切っても勝ちは勝ちになる。ただし、時間以内にゴールしないと無効になるのが注意点。そこも考慮して競技に挑まないと負けてしまう。

 「さぁ、最速走の始まりだぜ!1レース目は、こいつらだよ!」

 札律次高校が有利だな。ん?伊律次高校の選手が倒れたな。能力を使いすぎたのか?こんなトラブルも、毎年起きてんのかなぁ。なんか、嫌な予感するな。気をつけておかないとな。

 「最速走!現在暫定1位のタイムは、0.07秒をマークしてるぜ!ひぁっは~!」

 やっぱ、リーダーは速いな。札律次高校だけじゃなく県で1番だと、俺は思っている。あの速さ、見えるやついるのかな?そんな奴いたら、リーダー絶対ワクワクするな。まぁ、最速走は能力の力をどれだけ持続させるかじゃなくて極限まで磨き上げるのかが重要になってくるからな。それを踏まえれば、リーダーに程はいないはずだ。こっちの一位は決まったな。さて、問題は持久走だ。札律次高校には、預言者なんていないし俺が力を貸すのもルール違反。これだけは、運任せって感じでなんか嫌だなぁ。

 最速走は札律次が、持久走は持律次が優勝。例年どうりだ。今日の競技は、終わったし選手もみんなホテルに戻った。会場ももう閉まるから、警備も終わり。今日の仕事もここまでか。まだ、2日目・・・。選手よりきつい気がしてきたのは、俺の気のせいかな?

 「俺もホテルに戻ろうかな?でも、もう少しだけ見回っておこうかな。」

 そういえば、奴らの狙い。黒闇闇の狙い。それについても、調べておかないと。勲章。名前はないけど、名誉ある勲章と言っても過言ではないと言われている。その勲章を与えられたものは、石碑に名を刻まれる。石碑に名を刻まれたものは、能力の性能が上がったと言われている。黒闇闇のボスの名が刻まれた時、一体どうなるのか検討がつかない。それを阻止しなければ。

 「それが現在の問題、か。」

 今日の見回りも終わったし、ホテルに帰るとするか。奴らが、絡んでくるとすれば最終日か。俺も秘策を使うかもしれないな。

 ~3日目~

 「今日の競技は、綱引きと障害物競走だぜ!」

 伊律次高校には、パワー系の能力者が多い。綱引きの縄を断ち切ると噂されている。やはり優勝校だけあって恐ろしい。また、パワー系なら最終種目の団体戦も有利になる。団体戦は、殴り合いが許可されている。骨折しない程度までだけど・・・。まぁ、今回の競技は綱引きだけじゃないし別の競技もあるからな。障害物競走。それは、いろんな環境の中を走り抜けてゴールを目指す競技。土律次高校は、万能性が高い能力者が多くいる。団体競走でも、かなりの強豪だが伊律次高校にパワー負けしてしまう。そういうことを考えると、伊律次高校は器用さに欠けるってことか。全員がそうではないと思うけど。

 「お~と、縄が断ち切れた!これは、伊律次の勝利か~?」

 やっぱすごいな。あんな怪力どこから出てきてるんだ?多分、飯田だ。『力の加護』の持ち主。俺の、身体強化をも超えるパワーを発揮するらしい。加護って恐ろしいな。やっぱり、伊律次神社の神様に認められたのか?加護はそんな簡単に手に入らないし実力は確かだな。でも、能力は一体なんなんだ?やっぱり、パワー系かな?それとも、俺と同じ身体強化系?分からないことばっかりだな。他の選手の能力もわからないし。てか、俺がそれを知っててなんの得があるんだっけ?情報漏洩は禁止されてるし、なんで情報を求めてるんだろう?何かおかしいな。まぁ、いっか。俺は、疑うということを知らないからな。

 綱引きは、伊律次高校が全勝。さすが、パワー系の能力者が多い高校だ。そう考えると、団体戦も伊律次高校が少し有利かもしれない。だから、毎年優勝しているのか。それを阻止するためには、他の高校の有利種目を勝ち取るしかない。でも、そう考えていると足元を救われ自分の有利競技に勝てなくなってしまう。だから、みんな自分の有利競技だけを練習している。こう考えてみたら、伊律次高校は運がいいとしか言わざるを得ない。さらに加護持ちもいるとか、神様が無駄に肩入れしてるみたいだな。

 「障害物競走が始まるぜ!」

 障害物競走。俺は出たくないな。障害物競走は、実質長距離走。しかも、障害物というおまけ付き。嫌どっちかというと、こっちが本命か。よくこんなものに出ようとしたよな。俺。ん?出ようと、した?なんで?俺は、選手じゃないのに。なんでだろう?最近、へんなことを思ってしまう時があるな。俺、おかしくなっていく気がする。もしかしたら、黒闇闇が関係してるかもしれない。警備を強化するか。

 「障害物競走、1位は只木野萃香選手だぜ!」

 只木野萃香ただきやすいか選手。能力は、見た感じ空気を圧縮する系の能力者だな。空気を圧縮して、雨を避けたり足場にしたり色々活用していたな。確かに万能だ。でも、たぶん1度に圧縮できるのは最高でも2つか。そして、圧縮して作れる面の最高直径は5mくらいが限度だろう。それでも、俺の能力と比べればとても使いやすいはずだ。俺もこんな能力使えたらいいな。やってみようかな。あれ?なんでそう思ったんだ?やっぱり、俺おかしくなっていく気がする。何かありそうだな。

『伝令!伝令!至急緊急会議室に集まりなさい。』

 通信機が鳴り響いた。早苗からの命令だ。何かあったのか?急いで向かわないと。

 「皆んな、集まってくれたありがとう。障害物競走で、何者かの妨害行為があった痕跡が残っている。外部から、能素が吸い取られたと思われている。能力感知レーダーに反応していないことを考えると、道具を使った可能性が高い。」

 能素。それは、能力者が空気中から取り込み能力を使うエネルギーに変える。そういう、物だ。能素が薄いと、能力が使えないことだってある。まぁ、今回は萃香選手が能素をため込んでたから何もなかったけど。おっと、失礼。能素は、体に溜め込むことができる。ランクによって、溜め込めるかずは決まってくる。でもこれは、異常事態だ。絶対そいつを捕まえて見せないと。

 「本日の競技は終了だぜ!今日で、競技の半分が終了だぜ!でもまだまだこれからだぜ!楽しみにだぜ!」

 今日で、もう半分か。早いな。競技に参加していなくてもそう感じるのか。まぁ、今はそんな悠長にしてる場合じゃないんだけど。さて、能素減らしの犯人は一体誰なのか。しかも、能力ではなく道具を使っているという点が謎だ。そういう道具があると聞いたことはあるけど、実物は見たことがいない。もし、それを持っている者が混じっているとすればわかりやすいはずだ。一体誰が?

 それ以外に能素の供給を断ち切る方法は・・・。そういう系の能力を使うか、加護を使うかのの2択だ。俺の持っている無能の加護は、自分の体に1部に発動させてその部分が触れているものは能素を取り込めなくなる。そんな感じだ。でも、全身に使うと自分にも能素が入ってこなくなるから意味がなくなる。でも、こういう系の能力は触れてないとダメだ。でも道具なら、周りの能素を吸収するから競技場に仕掛けられてたのかもしれない。ちょっと聞いてみるか。

 「早苗。競技場は調べたか?」

 「ええ、調べてみたわ。あったそうよ。これがその実物。」

 やっぱりそうだったか。もしかすると、全能祭の運営の中に工作員がいる確率が高いな。少し調べてみるか。今日は、忙しくなりそうだ。

 「いたんですか!黒闇闇の奴が。」

 「はい。1名、いました。全能祭運営委員は、直前で構成されるからこういうこともあるっちゃある。」

 1名だけだけど、いたことには変わりない。まぁいいか。いやよくないだろ!!なんで俺は、1人で漫才してるんだ?最近なんか俺おかしくね?やっぱ疲れてんのかな?今日はもう休もうかな?まぁ、奴らの手口はわかったことだし今日はもういいか。でも、ちゃんと警戒しておかないと。いざという時、能力を本調子で出せなきゃ意味ないからな。

 そういえば、今の俺の能力ランクはどんくらいになったのかな?全能祭が終わったら、調べてみるか。ランクB中以上には、なってて欲しいけど・・・。

 もし、今回の敵が全部黒闇闇のボスの分身なのだとしたらこれは相当厄介だぞ。尋問もできなければ、心を読むこともできない。まさしく俺の天敵だな。この大会中は、こんな奴らが沢山出てくると思う・・と?分身って、いくつまでつくれるのかな?それを知った方が、戦況が有利になりそうだ。

 運営委員を俺は見ていた。全員心が見える・・・。この中に、もう分身はいないってことか。ついに、選手に手を出し始めやがったな。これは許されることじゃない。ん?でもなんで、皆んな記憶を保っているんだ?こういうのは、すぐに消しておいた方がいいんじゃないのか?分身を作り出しているときは、記憶を書き換えられないのか?まぁ、どっちでもいい。いまは、警戒していなきゃ。

 ~4日目~

 「さぁ、今日は応援合戦と棒倒しだぜ!」

 応援合戦では、能力の仕様が禁止されている。声律次高校は、能力者育成というよりは一般人の育成に力を入れている。唯一の、無能力者の希望だ。まぁ、能力者の割合が5:5に倒して学校が9:1というのは何かとおかしいと思うが。一応、無能力者でも入れないことはないが・・・。無理だ。大半の授業が、能力に関してだし実技も劣る。こういう理由があってなのか知らないが、声律次高校は生徒総数100000を超えているらしい。ぶっちぎりでトップじゃないか。無能力者の集まりってところか。でも、莉愛は炎律次高校に通っている。まさに、無能力者の鏡ってところか。まぁ、この競技では能力は使われないし大丈夫か。問題は、棒倒し。棒倒しのルール上、相手の骨を折らなければいいのだが・・・。道具の中には、能素を強制的に送り込むものもあると聞いた。これで、優勝校にエースを潰すきか?事前に止めれるようがんばろう。

 応援合戦が終わり、棒倒しが始まった。さすが、仲律次高校。チームワークが凄すぎる。これは優勝が決まったな。

 「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 !?

 仲律次高校の選手が叫んでいる。どうやら、相手がルール違反のオーバーアタックをしてしまったらしい。一体どうやって?確かに点検したはずだが・・・。そうか!道具は棒の中に仕込まれていたんだ。そうと分かったら、早く調べないと。

 案の定、予測は当たった。ていうか、天眼の加護を使えばよかった気もするが・・・。まぁ、いまはそれよりこっちの件だ。やはりこの道具は、能素を供給するものだった。前に倒した黒闇闇のボスの分身が仕込んだんだろう。これは、厄介だぞ。競技道具全て見なくちゃいけないなんて。明日までに確認しておかないと。

 結果、炎律次高校は失格。仲律次高校は、控えの選手を出して見事優勝。でも、奴らは一体何がしたかったんだ。どうあがいても、控えの選手がいる限り結果に変わりはない。なぜ、炎律次高校を失格にさせたのか。いや誰でもよかったんだろう。あいつだからな。

 今日は、とても大変だった。結局、棒倒しの棒の中にしか道具は仕込まれてなかった。でもこれで、もう何もできまい。会場も調べた。競技道具も調べた。明日のリレーは、バトンだけ使うし、遠隔投球戦はボールだけ使う。これさえ測っていれば、対処は簡単。明日は何も怒らないといいのだが・・・。もう今日は寝るか。

~5日目~

 「さぁ、今日も張り切って行こうぜ!今日の競技は、リレーと遠隔投球戦だぜ!」

 始まった。さぁ、どう来る?どうきても、こっちは全部対策済みだ。

 結局、黒闇闇が仕掛けてくることはなかった。昨日は、あんなことをしておいて一体なんのつもりだ?分からない。奴らが何を考えているのか、まっっったく分からない。まぁ、今日は何ものくてよかった。警戒しすぎたか。少し疲れてしまった。ちょっと休むか。全能祭もいよいよ、明日が最終日。残す競技は、騎馬戦と団体戦。例年通りに進むなら、隠律次高校が騎馬戦を勝ち、団体戦は同率で戦い合うことになる。そうなった場合、毎年伊律次高校が勝ってしまう。今年はどうなるか、楽しみだな。

 「頼む!明日の団体戦、出てくれないか。」

 「ちょっと待て、なんで俺に?てか、俺はもう札律次高校は退学してるし。控えの選手だっているだろ?」

 「それなんだが、控えの選手がいなくて・・・。でも大丈夫。退学して1年以内ならまだ、札律次高校にいるってことになってるから。」

 「控えの選手がいない!?そんでもって俺にか・・・。分かった。その変わり絶対勝つからな。」

 「おう!」

 どうしよう。どうしよう。流れでつい、分かったなんて言っちゃたけど。俺にできるのかそんなこと。とりあえず早苗に連絡してっと。さて、どうしたものか。とりあえず、ルールの確認はしておかないと。

 ルール

[1]相手を骨折以上の状態にした場合その選手は失格とする

[2]最後まで残っていた選手のチームの勝利とする

[3]不正行為が発覚した場合その選手は失格とする

 この3つが主なルールだ。骨折以上にしてはならない。つまり、本気はダメってことか。いいぜ。加護をフル活用して、失った体力は能力でカバーする。完璧な作戦だ。最後の競技は特別で、優勝とは別に最後まで残っていた選手にある贈り物がある。それは、石碑に名を刻まれることだ。石碑に名を刻まれることで、能素が供給されやすくなる。能力の性能はアップするってことだ。俺の読みでは、奴らはこれを狙ってる。だとしたら、明日の競技は絶対に奴らが出てくるはずだ。なんとしても阻止せねば。

 ~6日目~

 「今日で、全能祭も終わりだぜ!今日の競技は、騎馬戦と団体戦だぜ!楽しんでけよな!イエーア!」

 団体戦に出るのはいいものの。どうしよう。うちの高校は作戦の1つもありゃしない。つまり・・・詰だ。作戦なしに伊律次高校に勝てるとは思わないし、ここはどうすれば。

 「なあ、昴。お前には、最後まで体力を温存しておいてもらいたい。そうだな・・・、残り10人程度になったら出てきてや。それまで、俺たちがガンバっからさ。」

 それが1番いい手・・・か。確かにそうだ。俺が、優勝すれば結果的には札律次高校の優勝となる。つまりこれが作戦ってことか。

  「いいぜ。乗ってやるよこの作戦。ただし、期待はするな。相手も相手だ。あいつが出てくるだろう。」

 騎馬戦は、隠律次高校の勝利。そして、団体戦が始まった。1000人で行われるこの競技。序盤から脱落者は、数え切れないほど出た。幸いにも、札律次高校は20人程度が脱落してだけだった。

 中盤、残り500人を切ったところですでに勝敗はわかり切っていた。伊律次高校は、まだ80人も残っている。札律次高校は30人程度。これが昨年優勝校の実力・・・恐ろしい。こんなのに勝てるのか?でもやるっきゃないよな!

 終盤、残り100人を切った。その内訳は、伊律次高校が70人。札律次高校が、20人と言ったところだ。このままでは、ほとんど負けが見えている。でもまだ、希望はある。

 「いまだ!突撃!!」

 札律次高校と伊律次高校が真正面からぶつかり合った。結果は、札律次高校俺を除いた全員が失格。伊律次高校は、30人程度。残り40。1:40てわけだ。どうしたものか。これじゃあ、10人まで・・・は。あれ?毎年こんなんなら、誰の名前が刻まれるんだ。リーダー?先輩。違う。内乱が起きる。

 予想通り、内乱が起きた。結果、伊律次高校はリーダー以外が失格。リーダーはこちらを向いて、

 「そろそろ出てきたらどうです?もうとっくに勝者は決まったことですし。」

 飯田光弘!あいつが、今回伊律次高校に現れたという加護持ちの選手。1体なんの加護なんだ?

 「何を物物と。もう勝敗は決まってるんですから。」

 後ろから声が聞こえた瞬間、体に猛烈な痛みが迸った。能力を使い、最小限のダメージで済ませたがこれはまずい。1体どんな加護を・・・。待てよ、もしかして。これなら、あいつが強いのにも合点がいく。

 「なるほどな。お前の加護は、『凌駕の加護』だ!!」

  「それが分かった所で、どうするんです?もう、あなたには手はないでしょう。」

 「いいや、ある。加護にはデメリットがあるからな。俺が負けるのが先か、貴様が倒れるのが先か。」

 この戦いは、俺が若干不利だ。何故なら相手の能力を知らない。相手も同じ境遇だと思うが、『凌駕の加護』は、俺と相性が悪すぎる。

 凌駕の加護りょうがのかご

 相手が強ければ、自分はそれ以上に強くなる

 つまり、俺が身体強化をすればするほど不利になっていく。だからといって、加護もあまり使えない。一か八か・・・か。

 「私は、前者です。なんせ、私の能力は加護と相性の良いものですから。体力回復。それが私の能力です。」

 「なに!?」

 体力回復。この能力は、確かに加護との相性抜群だ。これはまずい凝った。体力切れも狙えない。かと言って、強くもなれない。詰みだ。この曲面。どうやっても、勝て・・・いや待て。行ける。この理論が正しいのなら。

 「1つ訂正だ。貴様が倒れるを、貴様を倒すにな。」

 「言ってくれますね。では、勝負といきましょうか。ん?貴方、能力を解きましたね。」
 
 「お前の加護は、強ければ強く弱ければ弱くなる。そうだよな。」

 そう、これが一か八か。当たっていてくれ!

 「正解ですよ。確かに私の加護は、そういうデメリットもある。でも貴方は、一つ見落としをしました。我々は内乱を起こしたのではなく、皆私に力をくれたんですよ。」
 
 「まさかお前、あいつらは今も能力を使っているのか?」

 「そのとうりですよ。盲点でしたね。それでは、全能祭も終わりとしましょう。さようなら。」

 飯田は、俺に向かって手を振り下ろした。その直後。

 「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

 叫び声が聞こえたと同時に、ものすごい力を感じた。

 「なんだ、これ?」

 「能力の暴走さ。人々は、この現象を[能暴人]と呼ぶ。」

 !?

 「お前は、黒闇闇のボス!!なんでここに。」

 「今はこんなこと言ってる場合ではないだろう?いいかよく聴け。暴走を止める手段は3つ。
 その1  暴走した本人を殺す
 その2 暴走した本人に能素を取り込ませない
 その3 暴走した本人に君が無能の加護を使う
 君から見たら、1は現実的じゃない。2は、道具を使えばできる。3は、1番可能性がある。そもそも、暴走というのは取り込みすぎた能素を排出し切れなくて無理にでも外に出そうとした時に起きる現象。つまり、能素の供給を溜まっている分以上に止めるしかない。さて、何がいいかな?」

 なんで、無能の加護を知っているのかは置いといて、

 「もちろん3だ。援護、頼んだぞ!」

 「いいとも。」

 絶対に救ってみせる。あいつのためにも。

 俺は、タイミングを見計らった。3にした場合、俺があいつに5秒触れなければいけないからだ。さらにその間、無能の加護を使い続けなければいけないしもちろん攻撃も避けなければならない。黒闇闇のボスと協力しているが、さすがに難しい。分身を出せば出すほど、相手が強くなっていくからだ。一体どうせすば・・・。

 「私も協力するわ。」

 「早苗!?」

 「私は風制委員長よ?委員長抜きで、活躍はさせないわ。」

 これは、心強い。でも、相手のランクがわからない今どの程度能力が聞くのか・・・。

 「暴走中のランクは、A下に固定される。つまり、彼女の能力はもって5秒だろう。」

 「5秒もあれば、十分だ!早苗、頼んだぞ。3・2・1今だ!」

 飯田が止まった。無の加護を使っている。5・4・3・2・1

 「うわっ!?あぶね~。でもこれで・・・。」

 暴走は、止まらなかった。

 「何故だ?」

 「そうか!見落としていた。僕が計算したのは、取り込んだ分の能素が消えるまでの時間。もともとあった分は、計算に入っていない。」

 「おい!それじゃあ、また回復されるだろ。早苗は、もう能力は使えないし。俺も、もうきついぞ。」

 この場にいるのは、俺・黒闇闇のボス・早苗の3人だ。みんな、もう限界をとっくに超えている。だが、もちろん相手も同じ。能素がほぼない状態だから、回復まではかなり時間がかかるはずだ。その間に誰かが・・・。いや、誰もできない。能素を吸い取る道具は、今ここにはない。無の加護ももう使えない。かろうじて、能力が使えるくらい。だが、この状況で俺が強くなれば。あいつが加護に耐えられなくなり、精神崩壊するかもしれない。それだけはなんとしても防がなければ。でも一体どうすれば・・・。もう無理だ。手段がない。そうだ!あいつを洗脳できれば。

 「おい!お前の術であいつを洗脳できるか?」

 「答えは、無理だ。僕の術は、僕が術によって発した能素を相手が一定量取り込むことで洗脳できる。つまり、ほとんど能素を取り込んでいない飯田には取り込ませることはできない。できたとしても、時間がかかりすぎる。」

 「俺がするよ。」

 !?

 「誰だお前は?」

 「まさか君が、手助けしてくれるなんてね。」

 「隼・・・零二。」

 隼零二?早苗の知り合いか?

 その時、隼零二は飯田にむかって歩みを進めた。飯田は、攻撃をするが全て隼零二の前で避けている。
 
 隼零二が、飯田に触れた。その瞬間。飯田は、倒れてしまった。暴走はしていないようだった。

 「一体何をした?」

 「簡単さ。眠らせたんだよ。彼を。早くしないと、起きてまた暴れ出しちゃうよ?」

 そう言って、彼はここから消えてしまった。

 「さぁ、昴。無能の加護で、暴走を止めるんだ。」

 「分かった。」

 俺は、残っていた体力を精一杯に使って無能の加護を使った。

 全能祭団体戦は、俺の優勝。そして全能祭は、札律次高校の優勝で幕を閉じた。

 俺は、石碑に名を刻んでもらった。少し、強くなった気がする。さすがは、団体戦を勝ち抜いたものに与えられるもの。でも本当に俺でよかったのか?隼零二や黒闇闇のボス、早苗がいたからこその優勝だが。選手じゃなかったからな。仕方ない。

 気づいた時には、黒闇闇のボスは消えていた。分身を生贄にしてきていたから、本来の力は使えなかったかもしれないのによく手伝ってくれたな。それが、あいつの良心なのかな。

 「ねえ、昴君。零二君は、なんで、助けてくれたと思う?」

 「さぁ、俺は早苗と隼零二の関係はまったくもって知らないから。だけど、早苗を救いたかったんじゃないか?」

 全能祭が終わると、次にはどんな行事が来るんだろう?体育祭みたいなもんだし、学園祭とかかな。でも、能力を使った学園祭はなんかやばそうだな。早苗に確認しておくか。

 それにしても、なんで黒闇闇のボスは助けてくれたんだ?一度組織に、攻撃したのに・・・。何か目的があるのか?俺と仲良くなるとか。あはは。そんな訳、ないか。考えすぎだな。「お前を倒すのは俺だけだ」みたいな感じかな。あいつに、そんな一面があったと考えると恐ろしいな。そういえば、隼零二はどうやって眠らせたんだろう?能力かな?加護かな?どちらにせよ、敵には回したくないな。触れられただけで眠らされるとか。おっそろしー。早苗に聞いておこうかな。世の中には、まだまだ知らない能力がたくさんあるな。どんな能力があるのかな?ワクワクしてきたー!

 こうして、誰にも知られない。1人の努力は、全能祭終了と同時に幕を閉じた。
 
 「昴。何故僕が君を助けるのか・・・か。簡単さ。君に死なれたら困るからだよ。」

 この後、大会の運営委員から感謝のお言葉をいただいた。運営委員長の風雷 信和ふうらい のぶかずさんとも、握手を交わした。

 「ありがとう。君のおかげで、助かった。」

 「いえ、今回の原因は俺ですし、そんな・・・。」

 「遠慮はいらん。君は将来、強い能力者になる。私はそれを、知っている。不思議なものだ。能力というのは、科学的に作り出せる時代になってしまったのに、君のような能力は作ることができない。大切にするんだよ。それじゃぁ。」

 そう言った、風雷さんの目は光り輝いていた。

 赤い、朱色のように。

 ~第二章~ 全能祭編 完
 

 
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