雪女と雪男

橘一

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雪女と雪男

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「おや、くまかと思ったら雪男じゃないか」

「どこの迷い子が山にいるんだと、よくよく見たらおばさん雪女だな」

「お前さんの噂が広まって、山から若い男がいなくなったわ」

「雪女目当てにくるマニアみたいな男は増えたな。夜に聞こえてくるお主の金切り声はどうにかならんか、うるさくて眠れやしない」

雪女の眼は暗く淀み、妖しく光る。雪男は筋肉が隆起し、全身の毛が逆立つ。
お互いがにらみ合っている。
雪男が一歩、雪女に近づこうとした時、雲がのき空との隙間から太陽光が
二人に注ぎ込んだ。
雪女の眼はやさしくなり、着物に入れていた日傘を差した。

「おほほっ、ちょっとお花摘みにいってこようかしら」

「儂は腹が減ったところだ。昼食とするか」

雪男は体が縮こまり、血色のいい肌が露になる。

「話し相手がいるから、こんな所でも生きていけるわ」

雪女は微笑を交えて言う。

「お前さんより長生きしないと、しんでもしにきれんぞ」

2人は背を向け、家に帰っていった。
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