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天使の恩恵を受けた三人の国王達の戦争の始まり

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500年も均衡状態を保った三国を重くみた
天使が王様が眠った枕元に舞い降りました。
一つだけ願いを叶えます。何が欲しいのです。

アルファイド国の王は
「屈強な軍隊がほしい。他国に侵略できる強いものだ!」

よろしい。
では力がつく不思議な食べ物を与えましょう。

天使は次にデルタ国の王の元へ行きました。
天使が問いかけると、自国の財政状況、食料難をぶつぶつと語り始めました。

「この国の気温では、果物が育ちにくいのに、あの二人の王が足元みてふっかけてくるんだよ。どうにかしてくれ」

では、果物や食料のなる木や苗を国中に植えましょう。

最後に、トラン国へと天使は向かいます。
こうなると、何らかの欲を満たす物に違いないと天使は考えていた。

トラン国の王は話しかけても、目をつぶり座っているままだった。
耳が聞こえない?いや、そんなはずはないと、
天使は色々とアピールしたが、諦めて帰ろうとしたところ。

「・・・・・・何者だ」

王は目を開けて言った。
自分は神の使いだと告げ、困っていることや願いはないか聞いた。

「さて、どうでしょう」

「今、瞑想中である」

トラン王はそれだけ言って何も話さなくなった。

何もしないで帰るわけにいかない天使はトラン王に合った特性を
本人に授けて天へ昇って行った。

天使がいなくなっても瞑想を続けるトラン王。
誰に頼るでもなく国のことは自分自身で決めていくのが信条だったのだ。
今やることを決めた。

「大臣。不審者だ警備をあつくしろと伝えてくれー!」


軍事力が強まったアルファイド国は、デルタ国との貿易赤字が募っていくことに苛立ちを覚えていた。
デルタ国から輸入している食料品が軒並み値上げされているのだ。
噂では、デルタ国は食べ物で溢れ、食料にかけるういたお金で、国内の別の事業に企てられ、
他国へ売り飛ばしたお金で国が豊かになっているという話だ。

アルファイド国は軍事力が上がったのに、国の財政は圧迫され、意味がなく苦しくなっていた。

「たしかデルタ国には留学している皇太子がいたな」

アルファイド王は側近に話しかけた。

「ははぁッ!」

「やれ」

「ははぁッー!」

アルファイド王は、デルタ国の皇太子を人質に取り、無茶な安値の貿易を持ち掛けた。
これを不服として互いに声明をだした。

両国の戦争のはじまりである。

その頃、トラン国、玉座。

トラン王は自身の身に起きた変化を感じ取っていた。

「・・・・・・!」

夜流星の構え!蝶斬り!

ピコン、ピコン。

陣形、新技、次から次へとアイデアが浮かんでくるのだ。
それも瞑想をしている時に限って。

他国の戦争は知っている。
一国の主として、何かしらの策を打ちたい所だが、出した答えは瞑想。
戦況を打開するアイデアは降ってこなかった。

戦争が始まって、一月が経った。
両国の情報がまるで入ってこない。
大臣に聞いても、知りません、調査しろって言わなかったじゃないですかと、逆ギレされた。

トラン王は静観することに飽きた。
王として民衆、配下に威厳を示したい。

兵士を引き連れ頭になり、戦場に出向くことに決めた。
国境を越え、進軍すると、他国が衝突し、小競り合いをしている場面に遭遇。

倒れている兵士達の間を縫うように歩く。

「うっ・・・・・・誰か・・・・・・」

ちょうど目があったトラン王。

「どうした?」

「私はもう動けません。あなたは中立のトラン国の人でしょう。これを」

若い少年のような兵士は、小さい箱のようなものを手渡し、気絶した。

「医務班、手当てしてやれ」

そそくさと、医務班が少年の元へと駆け寄る。
箱を開いてみようとしても、硬く閉ざされていて開かない。
どうしたものか。

戦場へ出向いて、抑えられない好奇心を解き放つ。

「ここはいい。私がやる」

地雷斬ッ!!

トラン王は、剣を地面に突き刺して、力を込めた。
震動は辺り一面に伝わり、力の波が地面を破壊しながら音を立て、交戦中の他国兵へと襲い掛かる。
異変に気付いた他国の兵士は騒ぎはじめる。

「地面がゆれた!?」

「何かくるぞ!」

地雷斬は音をたて地面を破壊していったが、兵士の下を傷ひとつつけることなく通り過ぎた。
トラン王達は囲まれた。

「この顔はどこかで見たことがある」

「まさかこいつはトラン王!?」

追い込まれたトラン王はおもむろに、胡坐をかき、目を瞑った。
何をしている、おかしくなったのか。
そんな敵兵のやじが聞こえてくる。
トラン王の頭に閃きが降り立つ。

箱を開け、中から白い煙がもくもくと辺りを覆う。
全員の視界が遮られた、何も見えない。

「ロンギヌスの構え!」

トラン王は叫び、兵士達は動く、何度も反復練習して体に染みつかせた。
王を信じ、己を信じ、仲間を信じる。
誰か一人でも疑問をもてば破綻する。
三角の様な尖った陣形で中央の王を守る。
完全護衛。

「突撃!」

先頭から、敵の輪に向かって突っ込み、敵兵は吹き飛ばされ、王達は脱出した。
陣形を崩さず走り抜けたが、途中、後ろから阿鼻叫喚の声が聞こえてきた。
王は自国に戻り停戦を持ち掛けた。

あの時、箱を手渡してきた者は、デルタ国の留学中の逃げ出した皇太子で、偶然にもトラン王が助けた形になる。
トラン国とデルタ国は同盟を結び、孤立したアルファイド国は
休戦を吞むことで手を打った。
トラン王の不思議な瞑想の特技は時が経つにつれ消えたそうだ。
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