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第二章 ブラッド・レーベル
第16話 ブラッド・レーベル①
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時は少し遡る。
「……見え猿、状況は?」
『異常なしだな。全て予想通りだ』
「了解」
地上300メートルを超える超高層ビルの屋上に、黒いコートに身を包む謎の集団がいた。
ブラッド・レーベル。街の掃除屋と呼ばれる彼らが、眼下に広がる闇夜を不気味に覗き込んでいる。
『言え猿、聞こえ猿達も大丈夫だな?……ん、オッケー。いつでもいけるぞ!死猿!』
「ああ、始めようか」
その場を仕切るのは、死猿と呼ばれるブラッド・レーベルのリーダー。死を連想させる不気味な猿の面をつけ、真っ黒なスーツに身を包んでいる。両手には、鮮血のように赤い手袋がはめられている。
その声は機械のような無機質なもので、生気を一切感じない。面に仕込まれたボイスチェンジャーにより、本来の声質を隠している。
そして、死猿と呼ばれた人物の周りには、同じく黒いコートに身を包む人影が10数人。
その中でも異彩を放つ2つの影。
1人は言え猿。口元を手で隠している猿の面をつけ、退屈そうにあくびをこぼしている。
もう1人は聞こえ猿。手で耳を塞いでいる猿の面をつけ、耳元から聞こえてくる通信を確認している。
それから、この場には姿がないがもう1人。見え猿と呼ばれる仲間がいる。死猿と通信をしていた人物だが、見え猿はブラッド・レーベルに所属する凄腕のハッカー。小宮山の通信を妨害していたのも、彼女の仕業である。
死猿をリーダーに据え、見え猿、言え猿、聞こえ猿の3人が幹部としてブラッド・レーベルを組織していた。
さらに今宵はもう1人、苦しみに顔を歪めた猿の面をつけた人物がいた。
「捕らえ猿、君の活躍にも期待してるよ」
「…………最低限の仕事はこなすわ」
「……それじゃあ、行こうか」
『よっし! それじゃあいくぞ!』
見え猿の合図と共に、ビル内施設全てのスプリンクラーが起動した。
それに合わせるように、ブラッド・レーベルの面々は屋上から降下を開始した。
一見自殺行為に見える行動だが、彼らは自身の腰元に巻き付けたワイヤーの先にあるアンカーを屋上に固定していることで、安全を確保している。
ブラッド・レーベルの目的は、このビルで行われているパーティーに参加している「ある人物」を確保すること。この街で幅を利かしつつある指定暴力団の組長。
トップを攫うことで、組織そのものを壊滅させるというのが彼らのやり方だった。とはいえ、相手は裏社会のプロ。特にこの街では、襲撃や抗争は日常茶飯事でその対策は当然万全である。
そんな警戒網の中、ブラッド・レーベルはいかにして掻い潜っていくのか。そのための1つが、施設内のスプリンクラーの起動である。
これはもちろん、ハッカーである見え猿が細工をしていたのだった。
ビル内は突然のことに大混乱。その隙を狙って、降下していたブラッド・レーベル達が外からビルの窓ガラスを割り、一斉に侵入した。
「おい! 早く止めろ!」
警備の連中が今さらになって慌てふためている。ガラスの割れる音や、僕らが侵入した音にも気づかないほどに。
だがもう遅い。既に作戦は完了したも同然なのだから。
「捕らえ猿、仕事だ」
「……分かってるってば」
彼女は足音一つ立てず、警備員達に近づいていく。まあ、この騒音の中では足音を立てたとしても気付かれないだろうが。
相手は4人。体格はそれなりにいい男共。普通に戦えば苦戦を強いられるだろう。さて、お手並み拝見だ。
「……?」
一人が、彼女の存在に気付く。気付くが、彼らは彼女に警戒心を抱いている様子はなかった。今の捕らえ猿は、僕と同様黒いコートに身を包み、その素顔は仮面で隠している。誰がどう見ても警戒するべき対象だ。
にもかかわらず、4人の警備員は全く警戒している様子がない。これこそ、彼女の能力なのか。相手に殺気を悟らせない、自身の気配・纏う空気を自在に操ることができる力。真正面から向かっても相手に警戒されない力。暗殺者にとって最も必要な能力。
と、一人の警備員がようやく彼女の異様な姿に気が付き、腰元の警棒に手をかけようとしていた。しかしもう遅い。素早い動きで、その警備員との距離を詰め、相手の急所を捕らえた。残り三人もそこでようやく彼女という脅威に気付くが、続けざまに三人の男の喉を掻き切った。
言え猿から借り受けたバタフライナイフ。扱いが難しい獲物だが、彼女はそれを自由自在に操っていた。
「……よし、次だ」
とりあえず、彼女の力量は分かった。申し分ない。あとは、作戦を完遂するだけ。
ターゲットがいるのは、この階の一番大きな式典会場。警備は多いだろうけど、問題ない。
あとは、見え猿が手筈通りガスを……。
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時は少し遡る。
「……見え猿、状況は?」
『異常なしだな。全て予想通りだ』
「了解」
地上300メートルを超える超高層ビルの屋上に、黒いコートに身を包む謎の集団がいた。
ブラッド・レーベル。街の掃除屋と呼ばれる彼らが、眼下に広がる闇夜を不気味に覗き込んでいる。
『言え猿、聞こえ猿達も大丈夫だな?……ん、オッケー。いつでもいけるぞ!死猿!』
「ああ、始めようか」
その場を仕切るのは、死猿と呼ばれるブラッド・レーベルのリーダー。死を連想させる不気味な猿の面をつけ、真っ黒なスーツに身を包んでいる。両手には、鮮血のように赤い手袋がはめられている。
その声は機械のような無機質なもので、生気を一切感じない。面に仕込まれたボイスチェンジャーにより、本来の声質を隠している。
そして、死猿と呼ばれた人物の周りには、同じく黒いコートに身を包む人影が10数人。
その中でも異彩を放つ2つの影。
1人は言え猿。口元を手で隠している猿の面をつけ、退屈そうにあくびをこぼしている。
もう1人は聞こえ猿。手で耳を塞いでいる猿の面をつけ、耳元から聞こえてくる通信を確認している。
それから、この場には姿がないがもう1人。見え猿と呼ばれる仲間がいる。死猿と通信をしていた人物だが、見え猿はブラッド・レーベルに所属する凄腕のハッカー。小宮山の通信を妨害していたのも、彼女の仕業である。
死猿をリーダーに据え、見え猿、言え猿、聞こえ猿の3人が幹部としてブラッド・レーベルを組織していた。
さらに今宵はもう1人、苦しみに顔を歪めた猿の面をつけた人物がいた。
「捕らえ猿、君の活躍にも期待してるよ」
「…………最低限の仕事はこなすわ」
「……それじゃあ、行こうか」
『よっし! それじゃあいくぞ!』
見え猿の合図と共に、ビル内施設全てのスプリンクラーが起動した。
それに合わせるように、ブラッド・レーベルの面々は屋上から降下を開始した。
一見自殺行為に見える行動だが、彼らは自身の腰元に巻き付けたワイヤーの先にあるアンカーを屋上に固定していることで、安全を確保している。
ブラッド・レーベルの目的は、このビルで行われているパーティーに参加している「ある人物」を確保すること。この街で幅を利かしつつある指定暴力団の組長。
トップを攫うことで、組織そのものを壊滅させるというのが彼らのやり方だった。とはいえ、相手は裏社会のプロ。特にこの街では、襲撃や抗争は日常茶飯事でその対策は当然万全である。
そんな警戒網の中、ブラッド・レーベルはいかにして掻い潜っていくのか。そのための1つが、施設内のスプリンクラーの起動である。
これはもちろん、ハッカーである見え猿が細工をしていたのだった。
ビル内は突然のことに大混乱。その隙を狙って、降下していたブラッド・レーベル達が外からビルの窓ガラスを割り、一斉に侵入した。
「おい! 早く止めろ!」
警備の連中が今さらになって慌てふためている。ガラスの割れる音や、僕らが侵入した音にも気づかないほどに。
だがもう遅い。既に作戦は完了したも同然なのだから。
「捕らえ猿、仕事だ」
「……分かってるってば」
彼女は足音一つ立てず、警備員達に近づいていく。まあ、この騒音の中では足音を立てたとしても気付かれないだろうが。
相手は4人。体格はそれなりにいい男共。普通に戦えば苦戦を強いられるだろう。さて、お手並み拝見だ。
「……?」
一人が、彼女の存在に気付く。気付くが、彼らは彼女に警戒心を抱いている様子はなかった。今の捕らえ猿は、僕と同様黒いコートに身を包み、その素顔は仮面で隠している。誰がどう見ても警戒するべき対象だ。
にもかかわらず、4人の警備員は全く警戒している様子がない。これこそ、彼女の能力なのか。相手に殺気を悟らせない、自身の気配・纏う空気を自在に操ることができる力。真正面から向かっても相手に警戒されない力。暗殺者にとって最も必要な能力。
と、一人の警備員がようやく彼女の異様な姿に気が付き、腰元の警棒に手をかけようとしていた。しかしもう遅い。素早い動きで、その警備員との距離を詰め、相手の急所を捕らえた。残り三人もそこでようやく彼女という脅威に気付くが、続けざまに三人の男の喉を掻き切った。
言え猿から借り受けたバタフライナイフ。扱いが難しい獲物だが、彼女はそれを自由自在に操っていた。
「……よし、次だ」
とりあえず、彼女の力量は分かった。申し分ない。あとは、作戦を完遂するだけ。
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