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第四章 伝説のはじまり
12 軍勢再編(1)
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この日、ネアンの大広間には多くの武官の姿があった。
大広間は先日レオポルドが謁見の間として使用していた場所だ。
その時にあった王族用の豪華な椅子は撤去されており代わりに執務机が二台設置され、上座に向けて整然と五〇脚ほどの椅子が並べられていた。広間を飾り立てていた装飾や敷物も普段の物へと取り替えられていたが、騎士たちは緊張感を浮かべた表情でそれぞれ腰を下ろしていた。
最後方には先日トゥーレに仕える事が決定したデモルバの姿も見える。彼は先日まで生やしていた無精髭を剃り、頭髪もきちんと整えてスッキリした表情で、会議の開会を今か今かと待っていた。
『領主トゥーレ様、ウンダル亡命政府代表リーディア様が入室されます!』
広間の前方右手にある大きな扉を守っていた衛兵が声を張り上げた。
直後、扉が音もなくゆっくりと開きトゥーレとリーディアの二人が順番に入場して来る。
向かって左側の執務机にトゥーレが、右側にリーディアが腰を下ろした。
「では、先日のレオポルド殿下との会談の報告と軍団再編についての通達をおこなう!」
二人が席に着いたことを確認するとクラウスが立ち上がり、会議の開会を宣言した。
「まずはレオポルド殿下との会談の報告からだ。
既に聞いた者もいるだろうが、トゥーレ様の婚約者であるリーディア様が代表を務めるウンダル亡命政府が王朝より正式に認められる事となった。それにより現在ウンダルを実効支配しているエリアスは逆賊となり、トゥーレ様にアルテミラ王朝よりエリアス討伐の勅命が下った!
この命によって我々はエリアス討伐へと動く事になった!」
そのクラウスの言葉は既に広く知れ渡っているためか、特に目立った反応はなかったが、高揚する気持ちがあるのだろう。広間の気温が数度跳ね上がったように感じる。
その言葉を引き継ぐようにリーディアが立ち上がり言葉を続けた。
「わたくしからも改めてお願い申し上げます!
本来であれば我々のみで逆賊エリアスを打ち倒さなければいけない所ではございますが、わたくしどもの力が足りないばかりに、こうして皆様のお手をお借りする事になり申し訳なく存じます。
それでもここは恥を忍んで頼らせていただきたい!
我が祖国奪還のため皆々様のお力が必要です。どうかお力をお貸し下さいませ!」
『おう!』
言葉は短かったがリーディアの願いは十分伝わったのだろう、すぐに了承を示す叫び声が広間を埋め尽くした。
「ありがとう・・・・存じます」
彼女はその熱量に感極まったかのように瞳に涙を浮かべながら、口元を抑えて腰を下ろす。
エリアスはウンダル亡命政府だけでなく、カモフにとってもザオラルを討たれた怨敵となる相手だ。
ザオラルの死から四年が経ち、ドーグラスに荒らされた領内も漸く落ち着きを取り戻してきた。ネアンはまだ復興の途中だったが、領内をギルド支配から解放できた事によって以前よりも国力は高まっている。
勅命が下った事はただのきっかけに過ぎず、何もせずとも遅かれ早かれエリアス討伐の機運は醸成されていたに違いない。
居並ぶ騎士たちの声が静まるのを待って、再びクラウスが口を開いた。
「勅命が下ったとはいえ、敵はウンダル全体を実効支配しており我々よりも強大だ。言葉は乱暴だがこのまま何の対策も立てずに向かえば勝ち目など到底望むことなどできないだろう!
そこでだ、この一年をかけて兵の増強を図っていくと同時に、今後を見据えた軍団の再編をおこなう事となった!
来る戦いに向けてこの一年はそれぞれの練度を上げていく大事な一年になるだろう。皆心して訓練に励んで欲しい」
ドーグラスとの戦いの時のように国力が絶望的に開いている訳ではないが、それでも大領地であるウンダルと辺境の小領地でしかないカモフでは、比べる事も烏滸がましい程の大きな差があるのも事実だ。彼が言うまでもなく、無策で臨めば返り討ちに遭う事になるだろう。
クラウスが腰を下ろすと今度はヘルベルトが立ち上がり、鼓舞するように身振りを交えて熱弁を振るう。
「先の戦いでは我々には全軍合わせても僅か六〇〇〇の将兵しかいなかった。
しかしネアンの解放から三年が経ちカモフへの移民が増えている事と相まって、今では一〇〇〇〇名近くの兵力を動員できるようになっている!
だが兵力が多くなるという事は、それだけ多くの命を預かるという事だ。諸卿らはその命の重さを努々忘れる事なく戦いに臨んで欲しい!
次の戦いは今までと違い野戦や遭遇戦が主になる。
また守りに徹し待ち構えていれば良かった今までの戦いと異なり、今度は我々が初めて敵地へと侵攻する立場へと変わる。
良いか、これからの戦いは我らにとって地の利のない場所での戦いとなる!
そのためこれまで以上に迅速な状況判断と行軍速度、刻々と変わる戦況への柔軟な対応が必要となるだろう。これまでの固定観念を捨て去るつもりで訓練に取り組んで貰いたい」
ヘルベルトの言葉に騎士たちから高揚感が消え、張り詰めたような緊張感が高まった。
衣擦れや咳ひとつ聞こえず、広間に痛い程の静けさが広がる。
「それでは今後の編成について発表する!」
トゥーレが立ち上がり諸将をゆっくりと見渡す。
誰もが一言一句聞き漏らすまいと真剣な表情でトゥーレを見つめていた。
「皆も知っての通りこのカモフは小領地であり、岩塩以外に目立った特産もない土地だ!
先年のストール軍との戦いには生き残る事ができたが、戦力で圧倒した訳ではなく紙一重の勝利だった事は皆も承知している事だと思う。今のままでは今後再び他領からの侵攻があるかも知れず、次もまた我々が勝利を収めるという事が楽観的だという考えは理解してくれているだろう。
先年の戦いから四年。
ネアンの復興はまだまだ半ばであるものの、人口が増え活気もかつてないほど高まっている。王家から逆賊エリアス討伐を命じられた今、二度とこのカモフを踏みにじられないためにも戦力の再編をおこなうことに決めた。今後我が軍勢はこれより読み上げる軍団を基本として敵に当たる事になる。心して聴いてくれ。
では発表する!」
そう前置きをしてからトゥーレは羊皮紙を広げ、大きく息を吸った。
「まずは右翼大隊。
この大隊は機動力と統制された行軍により相手を打ち破る我が軍の主力部隊だ。現時点で編成する部隊は五つになる。
それぞれの部隊長は、
一番隊隊長 クラウス・ミルド
二番隊隊長 ヘルベルト・ニグス
三番隊隊長 ケビ・バーレク
四番隊隊長 アダルベルト・オウン
五番隊隊長 デモルバ・オグビス
以上の五名だ!」
トゥーレが最後にデモルバの名を呼んだ瞬間、広間にざわめきが広がった。
トゥーレは気にした様子を見せずにざわめきが収まるのを待って言葉を続ける。
「五名は軍勢を率いる部隊長として、我が軍を勝利に導く者たちだ。なおクラウスは全軍の総司令を兼任、ヘルベルトは副司令を兼任とする」
クラウスやヘルベルトについては今更説明の必要がないくらいだ。ザオラルの時代から重用されていて実績も飛び抜けている。部隊長はともかく総司令を賜る事にも異論など出る筈もなかった。
ケビやアダルベルトは二人とも実績や実力ではクラウスらには劣るものの、機を読んだ進退をおこなう事で知られて、部隊を率いた際の用兵については誰もが一目置くような人物だった。
デモルバは先のカントの戦いで捕虜となり、サザンの旧領主邸にある離れで長い間療養生活を送っていた。
そのデモルバが傘下に加わったのはつい先日の事だ。その直後におこなわれた合同訓練から参加し、目を見張る動きを見せていたのを覚えている者も多かった。
一隊を率いる能力に問題ない事を見せつけたデモルバだったが、その直後の大抜擢にどよめきが起こったのだった。
「続いて左翼大隊を発表する。
こちらは鉄砲の火力による打撃力が売りとなる部隊だ。主に遊撃や支援を担当する事になるが敵拠点への攻撃などこれからの活躍を見込んでいる。
また今後は相手もおそらく鉄砲など火力を装備してくる事が増えてくる筈だ。それらに対しても優位性を維持する事を目的とした実験的な部隊でもある。
それでは部隊長を発表する。
一番隊隊長 ユーリ・ロウダ
二番隊隊長 ルーベルト・ミルド
三番隊隊長 ピエタリ・ドルスン
以上の三名となる。
なおユーリはヘルベルトと共に全軍の副司令を兼任する。
現在のところ部隊長は三名と右翼よりも少ないが定員は三名という訳ではない。またそれは右翼大隊についても同様だ。活躍次第でどんどん末席に加えていくつもりだ。
この左右両翼の部隊が今後カモフを外敵から守り、逆賊エリアスを討つための部隊となる。
では、今名を呼んだ者は前へ出てくれ!」
名を呼ばれた八名が席を立ち、前方に出てトゥーレの前に整列していく。
トゥーレは任命書を読み上げると、ひとり一人に言葉を添えて手渡していった。
「クラウスが言ったようにこの一年は兵力の増強も随時おこなっていくつもりだ。
この数年ネアンを中心にカモフ全体の人口が増加しているのは皆感じている事だろう。事実、かつては五〇〇〇名を超える兵力を集める事すら汲々としていた我らが、現在は常駐兵と合わせて八〇〇〇名、動員によっては一〇〇〇〇を超える兵力を動員する事も可能となった。
もちろん大隊と銘打った手前、漸くそれだけしか用意できずに申し訳ないと思っている。ただし実際に遠征に向かうまでは一年の猶予がある。それまでギリギリまで兵力を増やしていくつもりだ。大変だとは思うが諸卿らには新兵たちを戦えるレベルまで鍛えてやってくれ!」
兵力増強の算段が付いているのだろう、トゥーレは確定しているかのようにそう告げた。
ドーグラスとの戦いでは、激戦地を任せられたユーリらに与えられた兵力は僅かに三〇〇〇名だ。それは他の兵力をギリギリまで削った結果、どうにか三〇〇〇という兵力を掻き集めたのだ。それでも全兵力の約半数だ。当時はそれが限界だった。
今は今言った主力部隊とは別に、トゥーレ直轄として親衛隊も新たに新設されている。さらに戦闘力には期待できないが、梟隊もトゥーレの直轄部隊だ。軍団外となるそれらを合わせれば現時点でも万を超える兵力が集っていたのだ。
またこの年、ウンダル亡命政府が承認された事によって、エリアスに対立しウンダル各地でゲリラ戦をおこなっていた兵が続々とカモフに集結しつつあった。
亡命政府軍はそれまで一〇〇〇名に満たない兵力しかなかったが、それにより今では三〇〇〇名を数えるまで急増し、軍勢の体面を保てるまでになっていた。
「トゥーレ様を初め皆様だけにご負担をかけるわけには参りません。
先ほどクラウス様がらあったように王政府から正式に亡命政府が承認されました。今はまだ小さな戦力しか用意できませんが、各地に散っていたウンダルの兵が続々と我々の元に帰参しております。またウンダル領内でも志願を希望する声が多数あると聞いております。
今はまだ編成を発表できる段階にはありませんが、出陣の際には皆様と肩を並べるのに恥ずかしくない軍勢を用意すると約束しましょう。
また来るその日には、わたくしも皆様と共に轡を並べて戦う事を約束します!
共に逆賊エリアスを倒しましょう!」
『わあぁぁぁぁ!』
リーディアがそう宣言すると広間が大きく沸くのだった。
大広間は先日レオポルドが謁見の間として使用していた場所だ。
その時にあった王族用の豪華な椅子は撤去されており代わりに執務机が二台設置され、上座に向けて整然と五〇脚ほどの椅子が並べられていた。広間を飾り立てていた装飾や敷物も普段の物へと取り替えられていたが、騎士たちは緊張感を浮かべた表情でそれぞれ腰を下ろしていた。
最後方には先日トゥーレに仕える事が決定したデモルバの姿も見える。彼は先日まで生やしていた無精髭を剃り、頭髪もきちんと整えてスッキリした表情で、会議の開会を今か今かと待っていた。
『領主トゥーレ様、ウンダル亡命政府代表リーディア様が入室されます!』
広間の前方右手にある大きな扉を守っていた衛兵が声を張り上げた。
直後、扉が音もなくゆっくりと開きトゥーレとリーディアの二人が順番に入場して来る。
向かって左側の執務机にトゥーレが、右側にリーディアが腰を下ろした。
「では、先日のレオポルド殿下との会談の報告と軍団再編についての通達をおこなう!」
二人が席に着いたことを確認するとクラウスが立ち上がり、会議の開会を宣言した。
「まずはレオポルド殿下との会談の報告からだ。
既に聞いた者もいるだろうが、トゥーレ様の婚約者であるリーディア様が代表を務めるウンダル亡命政府が王朝より正式に認められる事となった。それにより現在ウンダルを実効支配しているエリアスは逆賊となり、トゥーレ様にアルテミラ王朝よりエリアス討伐の勅命が下った!
この命によって我々はエリアス討伐へと動く事になった!」
そのクラウスの言葉は既に広く知れ渡っているためか、特に目立った反応はなかったが、高揚する気持ちがあるのだろう。広間の気温が数度跳ね上がったように感じる。
その言葉を引き継ぐようにリーディアが立ち上がり言葉を続けた。
「わたくしからも改めてお願い申し上げます!
本来であれば我々のみで逆賊エリアスを打ち倒さなければいけない所ではございますが、わたくしどもの力が足りないばかりに、こうして皆様のお手をお借りする事になり申し訳なく存じます。
それでもここは恥を忍んで頼らせていただきたい!
我が祖国奪還のため皆々様のお力が必要です。どうかお力をお貸し下さいませ!」
『おう!』
言葉は短かったがリーディアの願いは十分伝わったのだろう、すぐに了承を示す叫び声が広間を埋め尽くした。
「ありがとう・・・・存じます」
彼女はその熱量に感極まったかのように瞳に涙を浮かべながら、口元を抑えて腰を下ろす。
エリアスはウンダル亡命政府だけでなく、カモフにとってもザオラルを討たれた怨敵となる相手だ。
ザオラルの死から四年が経ち、ドーグラスに荒らされた領内も漸く落ち着きを取り戻してきた。ネアンはまだ復興の途中だったが、領内をギルド支配から解放できた事によって以前よりも国力は高まっている。
勅命が下った事はただのきっかけに過ぎず、何もせずとも遅かれ早かれエリアス討伐の機運は醸成されていたに違いない。
居並ぶ騎士たちの声が静まるのを待って、再びクラウスが口を開いた。
「勅命が下ったとはいえ、敵はウンダル全体を実効支配しており我々よりも強大だ。言葉は乱暴だがこのまま何の対策も立てずに向かえば勝ち目など到底望むことなどできないだろう!
そこでだ、この一年をかけて兵の増強を図っていくと同時に、今後を見据えた軍団の再編をおこなう事となった!
来る戦いに向けてこの一年はそれぞれの練度を上げていく大事な一年になるだろう。皆心して訓練に励んで欲しい」
ドーグラスとの戦いの時のように国力が絶望的に開いている訳ではないが、それでも大領地であるウンダルと辺境の小領地でしかないカモフでは、比べる事も烏滸がましい程の大きな差があるのも事実だ。彼が言うまでもなく、無策で臨めば返り討ちに遭う事になるだろう。
クラウスが腰を下ろすと今度はヘルベルトが立ち上がり、鼓舞するように身振りを交えて熱弁を振るう。
「先の戦いでは我々には全軍合わせても僅か六〇〇〇の将兵しかいなかった。
しかしネアンの解放から三年が経ちカモフへの移民が増えている事と相まって、今では一〇〇〇〇名近くの兵力を動員できるようになっている!
だが兵力が多くなるという事は、それだけ多くの命を預かるという事だ。諸卿らはその命の重さを努々忘れる事なく戦いに臨んで欲しい!
次の戦いは今までと違い野戦や遭遇戦が主になる。
また守りに徹し待ち構えていれば良かった今までの戦いと異なり、今度は我々が初めて敵地へと侵攻する立場へと変わる。
良いか、これからの戦いは我らにとって地の利のない場所での戦いとなる!
そのためこれまで以上に迅速な状況判断と行軍速度、刻々と変わる戦況への柔軟な対応が必要となるだろう。これまでの固定観念を捨て去るつもりで訓練に取り組んで貰いたい」
ヘルベルトの言葉に騎士たちから高揚感が消え、張り詰めたような緊張感が高まった。
衣擦れや咳ひとつ聞こえず、広間に痛い程の静けさが広がる。
「それでは今後の編成について発表する!」
トゥーレが立ち上がり諸将をゆっくりと見渡す。
誰もが一言一句聞き漏らすまいと真剣な表情でトゥーレを見つめていた。
「皆も知っての通りこのカモフは小領地であり、岩塩以外に目立った特産もない土地だ!
先年のストール軍との戦いには生き残る事ができたが、戦力で圧倒した訳ではなく紙一重の勝利だった事は皆も承知している事だと思う。今のままでは今後再び他領からの侵攻があるかも知れず、次もまた我々が勝利を収めるという事が楽観的だという考えは理解してくれているだろう。
先年の戦いから四年。
ネアンの復興はまだまだ半ばであるものの、人口が増え活気もかつてないほど高まっている。王家から逆賊エリアス討伐を命じられた今、二度とこのカモフを踏みにじられないためにも戦力の再編をおこなうことに決めた。今後我が軍勢はこれより読み上げる軍団を基本として敵に当たる事になる。心して聴いてくれ。
では発表する!」
そう前置きをしてからトゥーレは羊皮紙を広げ、大きく息を吸った。
「まずは右翼大隊。
この大隊は機動力と統制された行軍により相手を打ち破る我が軍の主力部隊だ。現時点で編成する部隊は五つになる。
それぞれの部隊長は、
一番隊隊長 クラウス・ミルド
二番隊隊長 ヘルベルト・ニグス
三番隊隊長 ケビ・バーレク
四番隊隊長 アダルベルト・オウン
五番隊隊長 デモルバ・オグビス
以上の五名だ!」
トゥーレが最後にデモルバの名を呼んだ瞬間、広間にざわめきが広がった。
トゥーレは気にした様子を見せずにざわめきが収まるのを待って言葉を続ける。
「五名は軍勢を率いる部隊長として、我が軍を勝利に導く者たちだ。なおクラウスは全軍の総司令を兼任、ヘルベルトは副司令を兼任とする」
クラウスやヘルベルトについては今更説明の必要がないくらいだ。ザオラルの時代から重用されていて実績も飛び抜けている。部隊長はともかく総司令を賜る事にも異論など出る筈もなかった。
ケビやアダルベルトは二人とも実績や実力ではクラウスらには劣るものの、機を読んだ進退をおこなう事で知られて、部隊を率いた際の用兵については誰もが一目置くような人物だった。
デモルバは先のカントの戦いで捕虜となり、サザンの旧領主邸にある離れで長い間療養生活を送っていた。
そのデモルバが傘下に加わったのはつい先日の事だ。その直後におこなわれた合同訓練から参加し、目を見張る動きを見せていたのを覚えている者も多かった。
一隊を率いる能力に問題ない事を見せつけたデモルバだったが、その直後の大抜擢にどよめきが起こったのだった。
「続いて左翼大隊を発表する。
こちらは鉄砲の火力による打撃力が売りとなる部隊だ。主に遊撃や支援を担当する事になるが敵拠点への攻撃などこれからの活躍を見込んでいる。
また今後は相手もおそらく鉄砲など火力を装備してくる事が増えてくる筈だ。それらに対しても優位性を維持する事を目的とした実験的な部隊でもある。
それでは部隊長を発表する。
一番隊隊長 ユーリ・ロウダ
二番隊隊長 ルーベルト・ミルド
三番隊隊長 ピエタリ・ドルスン
以上の三名となる。
なおユーリはヘルベルトと共に全軍の副司令を兼任する。
現在のところ部隊長は三名と右翼よりも少ないが定員は三名という訳ではない。またそれは右翼大隊についても同様だ。活躍次第でどんどん末席に加えていくつもりだ。
この左右両翼の部隊が今後カモフを外敵から守り、逆賊エリアスを討つための部隊となる。
では、今名を呼んだ者は前へ出てくれ!」
名を呼ばれた八名が席を立ち、前方に出てトゥーレの前に整列していく。
トゥーレは任命書を読み上げると、ひとり一人に言葉を添えて手渡していった。
「クラウスが言ったようにこの一年は兵力の増強も随時おこなっていくつもりだ。
この数年ネアンを中心にカモフ全体の人口が増加しているのは皆感じている事だろう。事実、かつては五〇〇〇名を超える兵力を集める事すら汲々としていた我らが、現在は常駐兵と合わせて八〇〇〇名、動員によっては一〇〇〇〇を超える兵力を動員する事も可能となった。
もちろん大隊と銘打った手前、漸くそれだけしか用意できずに申し訳ないと思っている。ただし実際に遠征に向かうまでは一年の猶予がある。それまでギリギリまで兵力を増やしていくつもりだ。大変だとは思うが諸卿らには新兵たちを戦えるレベルまで鍛えてやってくれ!」
兵力増強の算段が付いているのだろう、トゥーレは確定しているかのようにそう告げた。
ドーグラスとの戦いでは、激戦地を任せられたユーリらに与えられた兵力は僅かに三〇〇〇名だ。それは他の兵力をギリギリまで削った結果、どうにか三〇〇〇という兵力を掻き集めたのだ。それでも全兵力の約半数だ。当時はそれが限界だった。
今は今言った主力部隊とは別に、トゥーレ直轄として親衛隊も新たに新設されている。さらに戦闘力には期待できないが、梟隊もトゥーレの直轄部隊だ。軍団外となるそれらを合わせれば現時点でも万を超える兵力が集っていたのだ。
またこの年、ウンダル亡命政府が承認された事によって、エリアスに対立しウンダル各地でゲリラ戦をおこなっていた兵が続々とカモフに集結しつつあった。
亡命政府軍はそれまで一〇〇〇名に満たない兵力しかなかったが、それにより今では三〇〇〇名を数えるまで急増し、軍勢の体面を保てるまでになっていた。
「トゥーレ様を初め皆様だけにご負担をかけるわけには参りません。
先ほどクラウス様がらあったように王政府から正式に亡命政府が承認されました。今はまだ小さな戦力しか用意できませんが、各地に散っていたウンダルの兵が続々と我々の元に帰参しております。またウンダル領内でも志願を希望する声が多数あると聞いております。
今はまだ編成を発表できる段階にはありませんが、出陣の際には皆様と肩を並べるのに恥ずかしくない軍勢を用意すると約束しましょう。
また来るその日には、わたくしも皆様と共に轡を並べて戦う事を約束します!
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