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プロローグ ミッドガルド乱2020
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時は令和の名前に馴染んだころ
所は北関東の山の中
乱馬は一人、蛇尾川の上流を歩いていた
まだ夕暮れには早い時間だが、焚き木を集め、河原に降りてきたところだ
山の夕暮れは、あっという間に闇に落ちる
その前に、火を起こす
乱馬は、恋人の仇の狼牙を追っていた
恋人の晴香は、生きたまま腹を裂かれ、肝臓を喰われて死んだ
乱馬が晴香の元に駆け寄った時、狼牙は顔中を赤く染めて
「おまえの女は美味かったぞ」
と笑ってみせた
激昂した乱馬が攻撃を仕掛けるが、狼牙はその全てを受け流し闇に消えていった
そのまま狼牙の足取りを追って、この大佐飛山地に足を踏み入れたのだ
仇を討つまで、帰るつもりはなかった
狼牙の気配を見失って2日後、山中で乱馬にまとわりつく何者かの気配を感じた
人ではない
精霊だろうか
探しても見つからない
無視しても着いてくる
ならば呼んでみるか
蛇尾川の水面を気で叩き、気絶したヤマメを6尾捕まえた
そして、串に刺し火で炙った
周囲が闇に落ちる代わりに、ヤマメはいい具合に焼けてきた
焚き火の炎が周囲の闇の色をさらに濃くしていく
チロチロと皮膚をくすぐる人外の気配がある
その者たちの気配は、乱馬よりも焼けたヤマメに注がれているようだ
「いい具合に焼けた頃だ
一緒に食わないか?」
誰にともなく乱馬が声を掛ける
近くの草が折れる音が聞こえる
乱馬がそちらに意識を向けた瞬間
「あちっ」
ヤマメにかぶりつく異形がいた
目玉はひとつ
身長は3メートルくらい
ザンバラな髪
動物の皮の腰巻き
なんて声を掛ければいいかと乱馬が迷う僅かな時間に
「おれもいただこう」
「焼き魚は久しぶりだな」
5本の腕が伸び、それぞれがヤマメを口に運んだ
目の数はひとつ、ふたつ、みっつの者もいる
身長は3メートルを優に越える者も多い
あっという間に食べ終わった
ヤマメの骨の鰭も残らない
かろうじて、串だけは残った
「骨は残した方が行儀良かったか?」
異形のとぼけた質問に、乱馬は歪んだ笑顔で答えた
「俺のヤマメは残らないんだな....」
所は北関東の山の中
乱馬は一人、蛇尾川の上流を歩いていた
まだ夕暮れには早い時間だが、焚き木を集め、河原に降りてきたところだ
山の夕暮れは、あっという間に闇に落ちる
その前に、火を起こす
乱馬は、恋人の仇の狼牙を追っていた
恋人の晴香は、生きたまま腹を裂かれ、肝臓を喰われて死んだ
乱馬が晴香の元に駆け寄った時、狼牙は顔中を赤く染めて
「おまえの女は美味かったぞ」
と笑ってみせた
激昂した乱馬が攻撃を仕掛けるが、狼牙はその全てを受け流し闇に消えていった
そのまま狼牙の足取りを追って、この大佐飛山地に足を踏み入れたのだ
仇を討つまで、帰るつもりはなかった
狼牙の気配を見失って2日後、山中で乱馬にまとわりつく何者かの気配を感じた
人ではない
精霊だろうか
探しても見つからない
無視しても着いてくる
ならば呼んでみるか
蛇尾川の水面を気で叩き、気絶したヤマメを6尾捕まえた
そして、串に刺し火で炙った
周囲が闇に落ちる代わりに、ヤマメはいい具合に焼けてきた
焚き火の炎が周囲の闇の色をさらに濃くしていく
チロチロと皮膚をくすぐる人外の気配がある
その者たちの気配は、乱馬よりも焼けたヤマメに注がれているようだ
「いい具合に焼けた頃だ
一緒に食わないか?」
誰にともなく乱馬が声を掛ける
近くの草が折れる音が聞こえる
乱馬がそちらに意識を向けた瞬間
「あちっ」
ヤマメにかぶりつく異形がいた
目玉はひとつ
身長は3メートルくらい
ザンバラな髪
動物の皮の腰巻き
なんて声を掛ければいいかと乱馬が迷う僅かな時間に
「おれもいただこう」
「焼き魚は久しぶりだな」
5本の腕が伸び、それぞれがヤマメを口に運んだ
目の数はひとつ、ふたつ、みっつの者もいる
身長は3メートルを優に越える者も多い
あっという間に食べ終わった
ヤマメの骨の鰭も残らない
かろうじて、串だけは残った
「骨は残した方が行儀良かったか?」
異形のとぼけた質問に、乱馬は歪んだ笑顔で答えた
「俺のヤマメは残らないんだな....」
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