上 下
5 / 12

10月(欠けた一人)

しおりを挟む
初めて、キャンプにZが来なかった。今まで遅れることはあっても、誰もが、もれなく参加してきたのに…口にしなくとも、どことなくみんな少し寂しさを感じてた。
Zは他の友達と旅行らしい。お目当ての男性もいるのだ。友達のままの関係、恋する関係、同世代が集まれば複雑にもなってゆく。
ずっと重なっていた7人の時間が少しずつズレ始めた。

お酒が入るとよく出世話になる。
「誰々が一番、良いとこまで出世しそう」
「いずれはどこの部長になりたい」
「色んな部署をずっと転々としそう」
「こんなプロジェクトでリーダーやりたい」
様々な夢を持つ中で、
Zは「私は、社長になる!社長夫人じゃない、女社長だ。」と酔うといつも叫んでいた。
そして最後は誰かが
「誰が一番でも恨みっこ無しだ。」と締め括られるのがお決まりだった。
しおりを挟む

処理中です...