今川義元から無慈悲な要求をされた戸田康光。よくよく聞いてみると悪い話では無い。ならばこれを活かし、少しだけ歴史を動かして見せます。

俣彦

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判物

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 長沢城を接収した太原雪斎は駿河に帰国。2ヶ月後……。

「雪斎に御座います。」
今川義元「和尚。如何為された?」
太原雪斎「如何も何もありませぬ。殿が何をやったのか。自覚されているのでありますか?」
今川義元「どの件である?」
太原雪斎「惚けないで下さい。長沢の事であります。山田源助と松平三助に長沢の内100貫文の所領を認めた事であります。あの土地は牧野の物である事。殿も知っての事でありましょう。何故そのような真似を働いたのでありますか?」

 事件は長沢城に入っていた山田源助と松平三助が長沢内の土地100貫文を我が物にしようと、駿府の今川義元に直談判。この訴えを義元は独断で認めたのでありました。

今川義元「山田は和尚の了承を得ていると言っておったが。」
太原雪斎「認めるわけが無いでしょう。もし私が認めたのでありましたら必ず書面に残し、写しを殿に送ります。私は長沢から帰ってからずっとここ駿府にいます。行き違いなどありませぬ。」
今川義元「山田が其方の所を訪ねてなかったか?」
太原雪斎「確かに山田は来ました。来ましたが、この件について山田は一切話していません。この事を知ったのは、山田と松平の振る舞いに驚いた牧野保成の使い(牧野)定成が飛んで来たからであります。」
今川義元「……うむ。」
太原雪斎「我らの三河進出に牧野がどれだけ貢献したか。殿も御存知の事でありましょう。」
今川義元「和尚の報告で承知している。」
太原雪斎「それにも関わらず他の国人との兼ね合いもあり、彼らが求めているものの一部しか与える事は出来ませんでした。牧野保成に思う所があるのは想像に難くありません。ありませんが、これを受け入れていただく事が出来ました。」
今川義元「……。」
太原雪斎「その牧野が最も大事にしている長沢の土地を……殿は勝手に他者に渡してしまった。何を考えて山田、松平に判物を与えたのでありますか?ただでさえ我らは牧野から長沢城を奪ったのであります。このままでは牧野からの信用を失う事態になり兼ねません。」
今川義元「軽率であった。申し訳ない。」
太原雪斎「大至急牧野が被った損失の穴埋めをしなければなりません。山田、松平に与えた土地を返還させるのが筋ではあります。ありますがそれでは殿の判物の価値を下げる事になってしまいます。故にそこに手を付ける事は出来ません。私の扶持から捻出します。
 殿。二度とこのような事が無いように。来た話は全て私を通すようお願い申し上げます。」
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