旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

俣彦

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プロローグ2

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 翌朝。

「……あれから記憶が無いぞ……。」

無事であることを確認した私。

「……にしても寒いな……。空調って無いのかな……。」

リモコンを探す私。

「畳敷きの布団に寝るのって久しぶりだな……。て言うか俺。ホテルに泊まったハズだよな……。」

辺りを見回す私。

「畳が敷いてあるのはここだけ……。」

あとは板敷き。

「広いは広いがこれでは……。」

寒いだけ。

「着ているこれって……。」

和服。

「ここはいったいどこなんだ……。フロントに繋がる電話もなければ緊急用のボタンもない。そしてなにより。」

カギが無い。

「私物は何処に行ったのだ……。」

状況の変化に戸惑う私に。



「殿。お目覚めにござりまするか。」

の声。このホテルは宿泊者のことを「殿」と呼ぶらしい。そこで私は

「エアコンをつけてはくれないか。」

と声の主に依頼したところ。

「……エアコン?」

そういやこの部屋にはエアコンが無い。

私「部屋を暖かくするものがあればお願いします。」

「……部屋を……。でありまするか……。」

しばらくして持って来たのが

私「火鉢……。昔、お爺さんの家で見たことがあったな……。確かに暖かいは暖かいが……。」

その火鉢を持って来たものを見た私。その出で立ちは……どう見ても侍。

私「ここは時代劇をモチーフにしたホテルなのでありますか?」

予約サイトにそんなことは1ミリも書かれてはいない。

「ホテルとは?」

あぁそう言う設定なのか。全て日本語で言わなければならないのか。

私「旅館の売りが時代絵巻なのですね。」

「いえ。ここは旅館ではありませぬ。」

どういうこと?

「ここはあなた様の屋敷ではございませぬか。」

あぁ……そういう設定なのか。なら乗ってみることにするか。

私「では問う。」

「はい。」

私「私は誰である?」

「はっ!?」

私「いやいや私はお前の殿であろう。」

「はい。」

私「なら私の名前がわかるであろう。」

「……えぇ……。はい。」

私「だから教えて下され。」

「はい。殿は村上義清様にございます。」

また中途半端な武将の名前を出して来たな。

私「村上義清とは信濃の武将であるな。」

「もちろんであります。」

私「武田晴信と激戦を繰り広げた。」

「……いづれそうなるのでありましょうね。」

私「なんだそなたは歴史を知らずに申しておるのか。」

「……いえ。殿はまだ武田晴信と直接相対してはおりませぬ。」

私「上田原において武田晴信の重鎮板垣信方と甘利虎泰を討ち取った……。」

「……いえ。上田原で武田と合戦は行っておりませぬ。」

私「どういうことだ。」

「現状。武田が我が領内に侵入して来てはおりませぬ。」

どういうこと?

私「ちょっと整理させてくれ。」

「はい。」

私「ここは旅館では?」

「いえ。違います。」

私「そなたは?」

「殿の家臣であります。」

私「今は何年?」

「天文10年にございます。」

私「俺は?」

「村上義清様であります。」

私「……鏡ある?」

「はい。」

……出で立ちを確認。どうやら私は婿投げ体験の後、村上義清本人に……。

と言うことは、あの武田信玄に私が……。

……どうしよう……。

それに……。

目の前に居るあいつは誰なんだ?
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