旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

俣彦

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プロローグ4

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 ……待てよ。真田幸隆が村上義清の家臣。と言うことはつまり今私がいるこの世界は必ずしも史実が反映されているわけでは無い。あの『上田命』であり『上野の国命』でもある土着の念が著しい。その権益を少しでも脅かそうとする存在が近づいてきたその瞬間に、それまで良好だった関係を全て断ち切ることになっても構わない。後先を考えることも無く突き進んでいったあの真田一族のもととなったあの真田幸隆が私。村上義清の家臣となっている。この私に庇護を求めている。……と言うことは今。村上義清の勢力圏は相当なものとなっている。だから真田幸隆が私の前で跪いている。武田晴信などものともしない。北信濃に大版図を。いや隣国越後。もしかすると日本全国が我が村上義清の領土になっていてもおかしくない。そして今私は京の都で各地から集まる名産品並びに勘合貿易で入って来る舶来品に囲まれる生活を送っているに違いない。なぜならそうでもなければあの真田幸隆が頭を下げるわけが無い。そうだ。そうに違いない。今私は征夷大将軍となり、天皇の人事権をも握る人物になっているはずである。



私(村上義清)「幸隆よ。」

真田幸隆「はっ!!」

私(村上義清)「1つ尋ねたいことがある。」

真田幸隆「なんでありましょうか?」

私(村上義清)「ここはどこである?」

真田幸隆「はっ!?」

私(村上義清)「いやいや私は今どこにおるのか尋ねているのであるが。」

真田幸隆「はぁ……。殿は今居られる場所は殿の居城であります葛尾城にございます。」



 京では無いのか……。と言うことは天下を掌握しているわけでは無い。……いやいやたとえ世界を代表する企業になっても本社を東京に移さず。株主総会の会場では、近郊に暮らす昔からの小口の株主である農家のかたがたを最も重要な顧客と位置付ける。そんな地元の事を忘れない志を村上義清は持っていた。……いや待てよ。京は8世紀から既に都であったことを考えると、当時のエネルギー源である木材資源が枯渇している。勿論植林を行ってはいるが追いついていない。一方、義清の居る信濃を始め東日本には膨大な木材資源が手付かずの状態で残されている。石油石炭が登場していないこの時代。今後の政権運営を行うにあたり、信濃の可能性を熟知していた。だから葛尾城を動かなった。そうだ。そうに違いない。



私(村上義清)「幸隆よ。」

真田幸隆「はっ!!」

私(村上義清)「もう1つ尋ねたいことがある。」

真田幸隆「なんでありましょうか?」

私(村上義清)「関白を呼んで参れ。」

真田幸隆「はい!?」

私(村上義清)「帝と話したいことがある。」

真田幸隆「どういうことでしょうか?」

私(村上義清)「最近、明以外の国からも船が来航していると聞く。」

真田幸隆「……信濃に。でありまするか?」

私(村上義清)「いや。私が申しておるのは国全体の事である。」

真田幸隆「……はぁ。」

私(村上義清)「今後、様々な要求がされることになるかもしれぬ。もしかすると軍が派遣されることになるかもしれぬ。その時になって右往左往することになっては遅すぎる。まだ平穏な今のうちに朝廷との意思疎通を図ろうと考えておる。だから関白を呼んで参れ。」

真田幸隆「……ここには居りませぬが……。」

私(村上義清)「ワシの了解も取らず。どこぞで油を売っているのと言うのか。」

真田幸隆「……たぶん京の都にいるかと思われますが……。」

私(村上義清)「……京が都?」

真田幸隆「はい。都は京に御座いまするが……。」

私(村上義清)「葛尾が都では無いのか?」

真田幸隆「……まぁ戦国の世でありますので、各勢力の中心地が都。と言えば都になるかもしれませぬが、世間一般的には都は京でありまする。」



 襖を開け外を見る私。そこにはとても都とは呼ぶことの出来ない農村の風景と、水の勢いそのまま。自由気ままにその流れを変える千曲川が目に飛び込んで来たのでありました。
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