39 / 625
板垣信方は風火雷の人
しおりを挟む
真田幸隆「……の必要もなさそうかな……。」
脇目も振らず。一心不乱に自分の方へと突進して来る板垣信方隊を見た真田幸隆は
真田幸隆「今の距離を保つこととする。」
と下知。尼ヶ淵の要害へと下がっていくのでありました。
山本勘助「(真田は)逃げていきますな。」
武田晴信「奴も信方の怖さを傍で見ていたからな……。」
山本勘助「板垣様は『こう!!』と決めたら殿が言っても聞きませぬからな。」
武田晴信「そうならないように、こっちが負けたフリをしながら誘導したり収めたりするのだが……。」
山本勘助「今の板垣様に一番やってはいけないことを奴はやってしまいましたね。」
武田晴信「……ならよいのであるが……。」
山本勘助「何か気になることでも?」
武田晴信「信方は進撃する時は問題ないのであるが……。」
山本勘助「風のように速く。火のように勢いよく。」
武田晴信「そして雷のように激しく。」
山本勘助「孫子の教えを地で行くようなかたでありますね。板垣様は……。」
武田晴信「ただ信方がおろそかにしてしまっているところもある。」
山本勘助「林のように静かにその時を待ち。何があっても山のように動じず。」
武田晴信「そして情報の漏洩には細心の注意を払う……。」
山本勘助「確かに。」
武田晴信「真田は最近まで信方の横にいた。信方の人となりを知っておる。そんな奴が村上のところに奔ってしまった以上。情報漏洩については仕方がない。こちらの手の内を相手は知っていると思わなければならない。」
山本勘助「御意。」
武田晴信「その芽を摘みに行く信方の行動自体に問題はないと思ってもおる。ただ気になるのが……。」
山本勘助「何故真田が我が陣近くにまでやって来たのか。」
武田晴信「なんの考えもなしに奴が動くとは……。」
さしたる抵抗も見せず。ただひたすらに尼ヶ淵へ向かう真田幸隆とそれを追う板垣信方。
山本勘助「迎え撃つわけでもなければ、横を突くこともありませぬ。」
武田晴信「挑発して動くのが信方であることを知っている奴が……わからぬ。」
尼ヶ淵近くまで退く真田幸隆。
山本勘助「我が陣と板垣様までの距離が少し離れ過ぎておりまする。」
武田晴信が本陣を置く国分寺跡から尼ヶ淵までの距離は約4キロ。
武田晴信「信方が城攻めをしている間に挟み撃ちにしようとでも思っているのか……。」
山本勘助「可能性はありまする。」
武田晴信「それだけ堅固に作られているのか?」
山本勘助「西や南に対してはそうでありますが、正直(攻めている)東は……。」
武田晴信「ただ用心に越したことはない。」
山本勘助「はい。」
武田晴信「急ぎ信方に使いを出せ。そして間延びした戦線の間に甘利を移動させよ。」
山本勘助「御意。」
脇目も振らず。一心不乱に自分の方へと突進して来る板垣信方隊を見た真田幸隆は
真田幸隆「今の距離を保つこととする。」
と下知。尼ヶ淵の要害へと下がっていくのでありました。
山本勘助「(真田は)逃げていきますな。」
武田晴信「奴も信方の怖さを傍で見ていたからな……。」
山本勘助「板垣様は『こう!!』と決めたら殿が言っても聞きませぬからな。」
武田晴信「そうならないように、こっちが負けたフリをしながら誘導したり収めたりするのだが……。」
山本勘助「今の板垣様に一番やってはいけないことを奴はやってしまいましたね。」
武田晴信「……ならよいのであるが……。」
山本勘助「何か気になることでも?」
武田晴信「信方は進撃する時は問題ないのであるが……。」
山本勘助「風のように速く。火のように勢いよく。」
武田晴信「そして雷のように激しく。」
山本勘助「孫子の教えを地で行くようなかたでありますね。板垣様は……。」
武田晴信「ただ信方がおろそかにしてしまっているところもある。」
山本勘助「林のように静かにその時を待ち。何があっても山のように動じず。」
武田晴信「そして情報の漏洩には細心の注意を払う……。」
山本勘助「確かに。」
武田晴信「真田は最近まで信方の横にいた。信方の人となりを知っておる。そんな奴が村上のところに奔ってしまった以上。情報漏洩については仕方がない。こちらの手の内を相手は知っていると思わなければならない。」
山本勘助「御意。」
武田晴信「その芽を摘みに行く信方の行動自体に問題はないと思ってもおる。ただ気になるのが……。」
山本勘助「何故真田が我が陣近くにまでやって来たのか。」
武田晴信「なんの考えもなしに奴が動くとは……。」
さしたる抵抗も見せず。ただひたすらに尼ヶ淵へ向かう真田幸隆とそれを追う板垣信方。
山本勘助「迎え撃つわけでもなければ、横を突くこともありませぬ。」
武田晴信「挑発して動くのが信方であることを知っている奴が……わからぬ。」
尼ヶ淵近くまで退く真田幸隆。
山本勘助「我が陣と板垣様までの距離が少し離れ過ぎておりまする。」
武田晴信が本陣を置く国分寺跡から尼ヶ淵までの距離は約4キロ。
武田晴信「信方が城攻めをしている間に挟み撃ちにしようとでも思っているのか……。」
山本勘助「可能性はありまする。」
武田晴信「それだけ堅固に作られているのか?」
山本勘助「西や南に対してはそうでありますが、正直(攻めている)東は……。」
武田晴信「ただ用心に越したことはない。」
山本勘助「はい。」
武田晴信「急ぎ信方に使いを出せ。そして間延びした戦線の間に甘利を移動させよ。」
山本勘助「御意。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!
克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる