85 / 625
レッテル
しおりを挟む
私(村上義清)「武田が志賀城に乗り込んで来たら……。」
真田幸隆「諏訪から甲斐に乱入するまでです。」
私(村上義清)「強気だね。」
真田幸隆「向こうが停戦違反をしたのであれば容赦する必要はありません。あの時とは状況が違いますので。」
私(村上義清)「負けないと。」
真田幸隆「はい。諏訪と善光寺平を手に入れたことにより、以前ほどの国力差はありませんし、こう言う事態も想定しまして、帰国を希望した武田の捕虜を甲斐に戻したのでありますから。」
私(村上義清)「……もしかしてここに残って俺の下についているのも?」
真田幸隆「まぁ答えないでおきましょう。」
私(村上義清)「……わかった。ただ長野業正が北条方になったことを考えると、武田と北条が共闘して来ることも……。」
真田幸隆「北条が(通り道となる)長野を降す条件が何であったのかによりますね。」
私(村上義清)「そう言えば業正は武蔵や東上野と違って北条と一度もいくさをしていないな……。」
真田幸隆「西上野は無傷であります。」
私(村上義清)「氏康が山内上杉を追い出すために業正を最恵国待遇で以て自陣に引き入れた。」
真田幸隆「少なくとも長野を信濃侵攻の先兵に使われることは無いでしょう。それに仮に山内上杉を追い出すことが出来たとしても関東には多くの反北条を掲げた勢力がいます。そんな状況でわざわざ補給路を確保することが出来ていない碓氷峠を越えて来ることは無いと思います。もし来たのであれば小荷駄隊を襲って飢えさせるだけのことであります。」
私(村上義清)「……しかし業正が憲政を見限って北条に。か……。」
真田幸隆「最も大事なことは今持っている自分の権益を守ること。長野にとってのそれは西上野。」
私(村上義清)「このまま憲政について北条といくさを続けたところで……。」
真田幸隆「明るい未来は見えませぬな。」
私(村上義清)「幸か不幸か西上野は関東公方の権益外であったことと、業正が強かったこともあって……氏康から誘いが来た……。」
武士階級に朱子学が重んじられるようになったのは江戸時代に入ってから。なぜ採り入れられることなったのか。と言えば……。
真田幸隆「自分だけが頼りですから。そしてこれは脅しでも何でもありません。私も同じです。」
私(村上義清)「……そうだな……。でも業正はこの後どうしていくのだろうか。」
真田幸隆「……と仰られますと。」
私(村上義清)「氏康の側から見れば東上野が片付いた段階で業正は用済みになるんだからさ。勢力があるとは言え、氏康と戦えるだけの規模では当然無い。なら『信濃進出の先兵として』とは氏康が考えていない。氏康に(信濃進出の)興味が無いのだから。そうなった時だよな……。『裏切り者』の刻印が業正の重しとなってのしかかって来ることになるのは……。」
真田幸隆「最初の約束が徐々に……。」
私(村上義清)「まぁ選んだのはあいつ(業正)だから知ったことでは無いがな。」
真田幸隆「諏訪から甲斐に乱入するまでです。」
私(村上義清)「強気だね。」
真田幸隆「向こうが停戦違反をしたのであれば容赦する必要はありません。あの時とは状況が違いますので。」
私(村上義清)「負けないと。」
真田幸隆「はい。諏訪と善光寺平を手に入れたことにより、以前ほどの国力差はありませんし、こう言う事態も想定しまして、帰国を希望した武田の捕虜を甲斐に戻したのでありますから。」
私(村上義清)「……もしかしてここに残って俺の下についているのも?」
真田幸隆「まぁ答えないでおきましょう。」
私(村上義清)「……わかった。ただ長野業正が北条方になったことを考えると、武田と北条が共闘して来ることも……。」
真田幸隆「北条が(通り道となる)長野を降す条件が何であったのかによりますね。」
私(村上義清)「そう言えば業正は武蔵や東上野と違って北条と一度もいくさをしていないな……。」
真田幸隆「西上野は無傷であります。」
私(村上義清)「氏康が山内上杉を追い出すために業正を最恵国待遇で以て自陣に引き入れた。」
真田幸隆「少なくとも長野を信濃侵攻の先兵に使われることは無いでしょう。それに仮に山内上杉を追い出すことが出来たとしても関東には多くの反北条を掲げた勢力がいます。そんな状況でわざわざ補給路を確保することが出来ていない碓氷峠を越えて来ることは無いと思います。もし来たのであれば小荷駄隊を襲って飢えさせるだけのことであります。」
私(村上義清)「……しかし業正が憲政を見限って北条に。か……。」
真田幸隆「最も大事なことは今持っている自分の権益を守ること。長野にとってのそれは西上野。」
私(村上義清)「このまま憲政について北条といくさを続けたところで……。」
真田幸隆「明るい未来は見えませぬな。」
私(村上義清)「幸か不幸か西上野は関東公方の権益外であったことと、業正が強かったこともあって……氏康から誘いが来た……。」
武士階級に朱子学が重んじられるようになったのは江戸時代に入ってから。なぜ採り入れられることなったのか。と言えば……。
真田幸隆「自分だけが頼りですから。そしてこれは脅しでも何でもありません。私も同じです。」
私(村上義清)「……そうだな……。でも業正はこの後どうしていくのだろうか。」
真田幸隆「……と仰られますと。」
私(村上義清)「氏康の側から見れば東上野が片付いた段階で業正は用済みになるんだからさ。勢力があるとは言え、氏康と戦えるだけの規模では当然無い。なら『信濃進出の先兵として』とは氏康が考えていない。氏康に(信濃進出の)興味が無いのだから。そうなった時だよな……。『裏切り者』の刻印が業正の重しとなってのしかかって来ることになるのは……。」
真田幸隆「最初の約束が徐々に……。」
私(村上義清)「まぁ選んだのはあいつ(業正)だから知ったことでは無いがな。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!
克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる