旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

俣彦

文字の大きさ
286 / 625

七島

しおりを挟む
春日虎綱「津島の南に七島と言うところがあります。」



 七島は尾張と伊勢を分ける木曾長良揖斐の三河川が集まる河口付近に作られた輪中地帯で、伊勢桑名郡と言うものも居れば、尾張河内郡と称するものも居る境のはっきりしない場所。要は土砂が堆積し、新しく拓かれた場所。その土地を切り開いたのが……。



春日虎綱「願証寺。一向宗であります。」



 最初、8代宗主蓮如の六男蓮淳が住職となり、豊かな経済力を背景に地元の国人領主層に布教すると同時に傘下へ収めることにも成功。その勢いは衰えを知らず尾張伊勢の対岸にも進出。付近には数十にも及ぶ寺院並びに道場が建てられ、信徒は尾張美濃伊勢におよそ10万人。経済規模も実高10万石を誇る勢力に発展したのでありました。その間わずか60年。



春日虎綱「うちには今。空誓がいます。」



 空誓は三河における一向宗の根拠地であった本證寺の元住職で蓮如の曾孫。



春日虎綱「今は三河の物資の行き来を担っていただいているのでありますが、(一向宗と対立した)家康の手前。表立って行動をすることは出来ません。助言の域に留まっています。」

私(村上義清)「家康の影響が及ばない別の場所で、相手が一向宗ならば空誓と彼について来た門徒の力を発揮することが出来るようになる。と言う事か。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「そのためにも津島。更には七島に出入るすることが出来るようにしたい。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「七島ともやりとりが出来るようになれば、松平に織田。そして一向宗と3つの異なる出入り口を確保することが出来るようになる。と……。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「そうなると気になるのが……。」



 織田と願証寺の関係。



春日虎綱「これにつきましては難しいところがあります。先年。信長が今川義元を斃した時、一向宗は今川側についています。幸い短期間でいくさが終結したこともありましたので未遂に終わっています。もし織田と願証寺が事を構えてしまった場合、我々がどちらが側についたとしましても津島と七島の流域が同じであり、かつ我らの権益がその上流に位置している以上。使うことが出来なくなってしまうことは否定することは出来ません。」

私(村上義清)「その時のためにも熱田を使えるようにしておかないといけないな。」

春日虎綱「御意。」

私(村上義清)「もしそうなったら俺らの去就は難しくなるぞ。物の流れを止めないことを考えれば織田と松平に付かなければならなくなる。一方、そうすると空誓の顔を潰すことになってしまうし、うちの門徒の連中が七島に加勢してしまう恐れもある。今は問題になっては居ないが、両者の立地を見る限り、老舗の津島に挑む新興の七島。商売敵以外の何ものでもない。空誓のため、空誓について来た者ためと思う気持ちはわかるが、これまで通り助言に留めておいたほうが良いと思う。」

春日虎綱「そうですね。」

私(村上義清)「(七島と接触することについて)信長の理解は得られているのか?」

春日虎綱「(津島から七島へは)通り道になりますので、接触することについて禁止されることはありませんでした。」

私(村上義清)「あまり良い顔はしていないな?」

春日虎綱「否定することは出来ません。」

私(村上義清)「信長が勢力の拡大を目指している。それも武を以てとなれば、当然周りとの軋轢が生まれることになる。その種になりかねない場所に七島がある以上、今回は織田との繋がりを持つことが出来た。で善しにしてくれ。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

転生 上杉謙信の弟 兄に殺されたくないので全力を尽くします!

克全
ファンタジー
上杉謙信の弟に転生したウェブ仮想戦記作家は、四兄の上杉謙信や長兄の長尾晴景に殺されないように動く。特に黒滝城主の黒田秀忠の叛乱によって次兄や三兄と一緒に殺されないように知恵を絞る。一切の自重をせすに前世の知識を使って農業改革に産業改革、軍事改革を行って日本を統一にまい進する。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...