大義

俣彦

文字の大きさ
1 / 4

天正10年6月2日本能寺

しおりを挟む
天正10年6月2日早朝。明智光秀の謀反により包囲された織田信長は、宿泊先である京都の本能寺に火を放ち非業の最期を遂げ。同じく京の妙覚寺滞在中の嫡男信忠も退いた二条城に火を放ち自害。中枢を為す2人を同時に失った織田家が支配する畿内は一転。権力の空白地帯となるのでありました。そんな中、信長信忠親子を自害に追い込んだ光秀は……。



明智光秀(以下光秀)「こうするよりほかになかった……。」

斎藤利三(以下利三)「よくぞ決断されました。」

光秀「利三か……。」

利三「殿の決断が無ければ我が妹と甥の命は……。」



斎藤利三の妹。正しくは義理の妹の嫁ぎ先は四国の長宗我部元親。その甥にあたるのが元親の嫡男である信親。信親の「信」は織田信長の「信」。織田と長宗我部は長年友好関係にあり、それがもとで実現したのが斎藤利三の妹と長宗我部との縁組。これら一連の出来事を仲介したのが明智光秀。



光秀「殿(信長)の方針転換が無ければ……。」



美濃を平定し、畿内を目指す織田信長。その畿内を支配するのが三好家。その三好家の拠点であったのが四国の東部に位置する讃岐と阿波。当時、これら2つの国への進出を目論んでいたのが土佐を平定した長宗我部元親。三好攻略の点で両者の思惑は一致。織田は畿内。長宗我部は讃岐・阿波へと兵を進めるのでありました。



利三「理想的な同盟関係でありましたが……。」



その後、三好は衰退。織田にとって脅威で無くなった三好は降伏の証として名物茶器を信長に献上。これに喜んだ信長は一転。三好を家臣とするのでありました。



光秀「……そうなると長宗我部の四国での行動が。」

利三「……織田家に対する敵対行動となってしまった。と……。」



これに困った信長は調停に乗り出し、長宗我部が攻略した土地の内、土佐一国と阿波の南部を認めるのと引き換えに、その他の土地は放棄するよう要請するのでありましたが……。



光秀「そんな仲介案。元親が呑むわけないわな……。」



交渉は決裂。それを受け信長は、三男信孝を総大将に長宗我部征伐へ向け、四国へ渡海する準備を進めるのでありました。その渡海する日が



利三「今日6月2日でありました。」

光秀「……こうするしかなかったのだ……。」



自分に言い聞かせる明智光秀。

こうして四国征伐を指揮する信長が居なくなったことにより、長宗我部滅亡の危機を回避することに成功したのでありましたが。一転ピンチに陥ることになったのが。



光秀「……こっちなんだよな……。」



明智光秀は畿内全域を管轄する立場。とは言えそれを裏書きしていたのは、今目の前で亡き者にした織田信長があってこそのこと。その信長を。自らの手で討ち取ってしまった。と言うことはつまり……。



利三「我々はこれまで味方であった織田家の家臣全てを敵に回すことになってしまった。」



畿内には光秀直属の部隊のほか。細川や筒井など部下となる武将が存在しているとは言え。



光秀「あくまでそれは信長の命があって初めて成立するもの。このままではいづれ各地に散らばった信長の部下たちに包囲されることになってしまう。その前に今回の件を正当化することの出来る裏書きとなる人物を確保しなければ……。」



当時、中央政権不在の戦国時代。各地で下剋上が繰り広げられていたと言われていたが。実際は、その時々の中央の権力者となった人物と繋がりを得たものが、そうで無いものを討つことが繰り返された時代。それは光秀も同じこと。織田信長の後ろ盾があってこその光秀であった。と……。



利三「……信長にとって代わることの出来るだけのネームバリューのある人物となりますと……。」

光秀「……奴になるのか……。奴にまた頭を下げなければならないのか……。」

利三「でもほかにあてに出来る人物はおりませぬぞ……。」

光秀「わかっておる。わかってはおるのだが……。奴に頭下げるぐらいなら、信長を討つべきでは無かった……。でもそうしなければ長宗我部が亡き者となってしまった……。しかし、それよりも……。あぁあんな奴に頭を下げなければならないのか……。」



その人物とは……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

マルチバース豊臣家の人々

かまぼこのもと
歴史・時代
1600年9月 後に天下人となる予定だった徳川家康は焦っていた。 ーーこんなはずちゃうやろ? それもそのはず、ある人物が生きていたことで時代は大きく変わるのであった。 果たして、この世界でも家康の天下となるのか!?  そして、豊臣家は生き残ることができるのか!?

日露戦争の真実

蔵屋
歴史・時代
 私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。 日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。  日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。  帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。  日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。 ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。  ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。  深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。  この物語の始まりです。 『神知りて 人の幸せ 祈るのみ 神の伝えし 愛善の道』 この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。 作家 蔵屋日唱

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小日本帝国

ypaaaaaaa
歴史・時代
日露戦争で判定勝ちを得た日本は韓国などを併合することなく独立させ経済的な植民地とした。これは直接的な併合を主張した大日本主義の対局であるから小日本主義と呼称された。 大日本帝国ならぬ小日本帝国はこうして経済を盤石としてさらなる高みを目指していく… 戦線拡大が甚だしいですが、何卒!

処理中です...