5 / 5
5. 迷子のお知らせです。
しおりを挟む「やばい、迷った」
放課後。
結局、ぼっちから抜け出す事の出来なかった私は一人で学園内を散策していた。
食堂に図書室、体育館にガーデンテラス、庭園
あらかた回り終えて、さぁ帰るかと思った所でハッと気が付く。
あれ、そういえば校門ってどこだっけ。と。
私が通うことになった鬼まにの舞台でもあるこの学園『私立鬼ヶ島学園』はその名の通り学園の敷地は鬼の顔の形になっており、部位の位置に学園の施設が設置されている。
例えば現在地である庭園だが、ここは鬼の部位で表すと左角辺りに位置している。学園の出入り口になる校門は鬼の首辺りに位置するのでここから少し歩くことになるのだが。
「どっちの方角に進めばいいんだっけ……」
この学園、かなり敷地が広い。
更に、この庭園は私の背を悠々と超える高い草花の壁が入り組んでいる造りになっているので不用意に立ち入れば何年も学園にいる先生でも迷うという話を聞いていた。
乙女ゲームのシナリオ的な問題なのか?
広大すぎる学園内や出口の見えない庭園で迷子になったヒロインを颯爽と助けるイケメン。二人の恋はそこから始まる。……みたいな感じだろうか。
悪役が迷ってどうすんだ。
くっそ。こんなんになるなら道がわかんなくなる前に切り上げとくんだった。ちょっと回るだけなら大丈夫だろうと慢心したせいで校内マップは教室の机の中だ。
この庭園だって軽く見て回るだけの筈が、珍しい花や面白い花が多くてつい見入ってしまい、気が付けば完全に方向感覚を失ってしまった。
暖かい春の風に吹かれて揺れる色取り取りの草花達が美しい庭園も今の私にはただのカラフルな植物の迷宮にしか思えない。
どうしよう。携帯で学園の事務に電話して救助要請する?と思ったが、そもそも私学園の電話番号知らなかった。こうなったらわかる所に出るまでとことん歩き回ってーー。
グォォォ……グォォォォ……
静寂を裂くように豪快ないびきの音が庭園に響き渡った。
もしかして、向こうに誰か居る!?
藁にも縋るような思いで花の壁の向こう側を覗くと丁度私がいる反対側にベンチが置いてあり、その上で誰かがお昼寝をしていた。
男子生徒だろう。顔を制服のブレザーで覆っているから見えないけれど、履いているのがズボンだ。
気持ち良くお昼寝しているところを起こすのは非常に心苦しいけどこっちも緊急事態だ。ホント、申し訳ないです。
「あの、すいません」
寝ている相手の肩を軽く揺さぶって声を掛ける。
けれど、相手はピクリとも動かない。声が小さかったかもしれない、もう一回ーー。
ガシッ
「うわっ!?」
もう一度伸ばした私の手首をいきなり思い切り掴まれる。反射的に手を引っ込めようとしたが、掴まれたままの手首を逆に強く引かれて、私の身体は寝ていた男子生徒に覆い被さるように傾いた。
「あ"ぁ?……誰だ、お前」
不機嫌そうな台詞共にブレザーがパサリと地面に落ちて、目の前に見覚えのありまくる美男子の顔が現れた。
「酒呑 咲夜……」
一瞬にして頬が引きつる。
鬼まにの攻略対象にしてタイトル画面のセンターを飾る超メインキャラクター。
その性格は非常に血の気が多く、好戦的で俺様というガッツリ破天荒キャラ。
嫌な予感がする。いや、嫌な予感しかしない。
「折角クソ面倒くせぇ授業サボってここまで来たってのにもう人が来やがったのかよ。……まぁいいや。お前、ちょっと相手しろよ」
「丁重にお断りしまっきゃあっ!?」
まだ喋ってる途中なのに、彼は立ち上がり様に掴んでいた私の手を引き上げて無理矢理立たせた後、その手を私の背後で固定して、更に開いた方の手で私の顎を掴んでクイっと上に上げる。
私は自分の首筋を彼に突き出しているような形で止められて動けない。
「……ふーん。まぁ、匂いは悪くなさそうだな」
えっ。何これ、なんのプレイ!?
というか、これ私じゃなくて、彼女のイベントじゃなーー。
ーーガブッ
「いっ!?」
刹那、首筋に激痛が走る。
噛まれた。首筋を。酒呑に。
痛さとショックで目の両端から一粒涙が溢れ落ちる。
「や……めてっ!」
捕まっていない方の手で彼の胸を押し返すがビクともしない。そうしている間にも、彼の牙が皮膚を突き破って首筋の奥の方へと沈んでいく。そして、そこから流れ出す血液を舌先で舐めとるようにして飲んでいるみたいだ。
「味もまぁまぁ悪くねぇ。なんか変わった味だが」
しかも普通に味わってるし。
なんで。と思ったけど、そういえば鬼まにで鬼は人間の生き血が好物だって言ってたのを思い出した。
……つまり、私今捕食されてるって事!?
「んっ……っ!」
さっきから全力で拒絶してるのに、なおもしつこく傷口を舐め続けるこいつに段々と苛立ちが募り始めた。
「やめろって……」
「あ?」
「言ってんでしょーがぁぁぁぁ!!」
バシンッッッッッッ
私の生きてきた十八年間で、恐らく今日ほど本気でやった事ないだろうと思うくらいの平手打ちが、盛大な音と共に相手の右頬に綺麗にクリーンヒットした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。
aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。
ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・
4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。
それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、
生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり
どんどんヤンデレ男になっていき・・・・
ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡
何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。
なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。
超ご都合主義のハッピーエンド。
誰も不幸にならない大団円です。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
小説家になろう様でも投稿しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる