石橋を叩いて渡れ、冒険者人生

tosa

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監獄の獣は野に放たれ、皇帝の剣を継ぐ者は帰還を求められる

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 その地下牢は古びた城の最下層にあった。いつ終わるとも知れない階段を降りていく度に、埃やカビの匂いが強くなった。

 奇声を上げ何かが足元を通り過ぎていく。こんな環境でもネズミ達には快適な居場所らしい。

 階段を降りきると鉄格子が見えた。普通の鉄格子の三倍はある太さだ。それが四重に張り巡らされている。

「······誰だ? 俺の眠りを妨げるのは」

 厳重過ぎる鉄格子の中から、低い声が重く響く。声を発したのは久しぶりだったのだろう。その声はかすれていた。

「まだ生きていたようだな。元魔王。いや、流血王ゴドレア」

 男はかつて人間と魔族からそう呼ばれ、恐れられていた。身長は二メートルを超え、褐色の顔と身体には無数の刀傷が刻まれていた。

 左腕に比べ右腕が異常に太かった。これは、魔族の中でも怪力で名高いドガル一族の証だった。

 だが、伸び放題の白髪から覗かせる顔には、深いしわと無気力な紅い目が横たわっていた。遠い昔の栄光の名を呼ばれても、ゴドレアは興味が無いかのように眉一つ動かさなかった。

「ネグリット議長が亡くなられた」

 その名を耳にし、ゴドレアの表情が変わった。その変化を新議長になったアルバは見逃さなかった。

「······そうか。ネグリットが逝ったか」

 ゴドレアは小さく呟いた。かつてネグリットは人間と魔族を含む、全世界の半分を支配する魔王だった。

 その偉業は称えられ、千年前全世界を統一した伝説の皇帝の再来とまでと言われた。

 青と魔の賢人達に説得され、ネグリットは魔王の座を降り組織に入った。魔王の玉座は空位になった。

 若きゴドレアは一兵卒から文字通り腕一本で新魔王にまで登りつめた。ゴドレアは前魔王のネグリットに挑戦した。

 ゴドレアはネグリットと七度戦い、七度敗れた。完全に戦意喪失したゴドレアをネグリットは牢に繋いだ。

 戦う気力を失ったとは言え、この危険な男を放置出来なかったからだ。以来、四十年も長きに渡ってゴドレアは牢屋の主となった。 

「ゴドレア。貴方の武勇伝はネグリット議長からよく聞かされた」

「······小僧。お前が生まれる前の話だ。今の俺は只の老いぼれだ」

 ゴドレアの言葉は老いた自分を冷笑するかのようだった。

「ネグリット議長の遺言を伝える。貴方に魔族の国々を統一してもらいたい」

「······なんだと?」

 人間と魔族の人口比は三対一。この差を埋める為に人間達を減らさなくてはならない。その為には魔族の力を一つに集める必要がある。

 その為に比類ない強力な王が必要だった。その役目にネグリットはゴドレアを指名したとアルバは語った。無論、これは全てアルバの作り話だった。

「······ふん。調和と均衡。お前等組織のお題目か」

 ゴドレアの吐き捨てるような言い様に、アルバは冷然と答える。

「ゴドレアよ。この薄暗い牢の中で朽ちるか。もう一度歴史にその名を残すか。好きな方を選べ」

 沈黙はそう長く続かなかった。ゴドレアがゆっくりと立ち上がった。先程まで気力の無かった紅い両目が、鋭さを持ってアルバを見下ろす。

「良かろう。ネグリットには借りがある。奴は俺を最後まで殺さなかった。俺が殺せと叫んでもな。残りの命を奴の遺言を果たす為に使うとしよう」

 ゴドレアの身体が白銀色に輝きだした。それは、治癒の魔法だった。

「俺が使える呪文はこの治癒だけだ。治癒とは身体を傷つく前の状態に戻すものだ。言いかえれば、それは時間を戻すと言う事でもある」

 ゴドレアを包む白銀色は、耀きを増していく。ゴドレアの白髪が艷やかな黒髪に変わって行く。顔の深いしわが消え、張りがある若々しい肌になっていく。

 古代呪文「時間遡及治癒」アルバもこの呪文を見るのは初めてだった。ゴドレアは一瞬で若い身体を取り戻した。

「······素晴らしい呪文だ。これで貴方は全盛期の力を取り戻した訳だ。ある意味これは永遠の命を手にする呪文と言っていいかもしれん」

 アルバは感嘆した。これは演技では無く、本心からの言葉たった。

「そんな都合の良い呪文など無い。この呪文は代償もとてつもなく大きい。見た目は昔に戻っても寿命を大きく削る。そうさな。俺の命は持ってあと三年と言う所だ」

 ゴドレアは一年前の事を思い出していた。自分が繋がれた牢屋に突如男女二人が現れた事を。一人はゴドレアの古い知己の老人。もう一人は灰色の髪の美しい女だった。

 古い知己は灰色の髪の女の転移の呪文で牢屋に潜り込んだと言った。ゴドレアは求められるままに友人にこの時間遡及治癒の呪文をかけた。

 友人に一緒に外に出る事を勧められたが、ゴドレアは断った。若返った友人は女と共に去って行った。

 ······あの友人はまだ生きているのだろうか。ゴドレアは友人と共に若かった日々を一瞬だけ思い返していた。

「充分だ。流血王ゴドレア。貴方をこの牢屋から釈放する」

 アルバの声でゴドレアは意識を現在に戻した。

 ゴドレアは四十年振りに地上に姿を現した。地下と異なり外の空気は肺が洗われるように新鮮だった。

「なぜこのような目隠しをする?」

 ゴドレアの両目にはアルバの手によって黒色の薄い布が巻かれていた。

「陽の光に四十年も当たって無いのだ。目が潰れる。暫くはその布をつけてくれ」

「······ふん。面倒なものだな。視界が薄暗く見える」

 だがその言葉とは裏腹に、ゴドレアは死に至るまでこの黒い布を両目から外さなかった。

 この布を気に入ったのか。それとも、この暗い視界が自分がいた牢屋を想起させ落ち着いたからか。いずれも他者には伺いしれなかった。

 アルバは風の呪文を唱え、ゴドレアと共に飛び立った。

 二人はある山の麓に降り立った。岩肌から見下ろすと、ある魔族の集団が火を炊き食事を採っていた。

「なんだ? あの連中は」

 ゴドレアは太さの違う逞しい両腕を組みながらアルバに問う。

「盗賊で食っている連中だ。数は二百人。貴方の覇業はここから始めるといい」

 自分の兵として使うのだから殺し過ぎるな。アルバはゴドレアにそう忠告した。ゴドレアは善処しようと静かに返答した。

 アルバは内心驚いていた。かつてネグリットから聞いた話とはあまりに違った。

 ネグリットは言った。ゴドレアを言葉で表現すると狂気としか言いようが無いと。しかし、アルバの目の前の大男は大人し過ぎた。

 長い牢屋での日々が獣を野ウサギに変えたのか。魔族の国々の統一は時間がかかるかもしれない。真紅の髪の青年は落胆を隠せなかった。

 ゴドレアの身体に異変が生じたのは、その時だった。異常に太い右腕がさらにその太さを増していく。全身の筋肉が隆起し、その口元はつり上がり笑みを浮かべていた。

 アルバはつい先程までの考えを一瞬で改めた。やはり獣はどこまでも獣だと。その牙は僅か程も損なわれていなかった。

 アルバが魔法石で出来た杖をゴドレアに渡す。それは、魔王のみが操れる漆黒の鞭を発動させる為に必要な杖だった。

 青と魔の賢人の組織が生まれてから、魔王の任命は組織が行ってきた。この魔法石の杖は魔王に選ばれた証でもあった。

「······小僧。お前の名は?」

「アルバだ。ネグリット議長に代わり組織の長になった」

「また会おう」ゴドレアはそう良い残し、山賊の群れに向かって歩いて行った。魔族の国々はゴドレアがまとめ上げるだろう。アルバはそう確信した。あとは人間の国々が問題だった。

 アルバはなぜかコドレアの言葉が頭をよぎった。

「若さを取り戻した代償か······」
 
 アルバは次の仕事に取りかかる為に、風の呪文を使い飛び去った。
 

 

 ······黄金の宮殿。バタフシャーン一族の住む豪華な建物は見る人にそう呼ばれていた。その宮殿にある無数の部屋の一つで、一族の幹部達の会議は開かれていた。

 黄色い髪の若者は、同じく黄色い髪の青年から報告を受けていた。

「······ネグリットが死に、あのアルバとやらが新しい議長になったか」

「まだ続きがあります。お爺様······いえ、頭目」

 べロットは祖父の姿にまだ慣れなかった。一年程前に突然若返ったその姿を。べロットは報告を続ける。

 青と魔の賢人を合計五名殺害した四兄弟。その四兄弟を支援した罪により、バタフシャーン一族を討伐する。それは、アルバが突きつけた宣戦布告だった。

「青と魔の賢人達が攻めて来るだと!?」

「無理だ! 奴らに勝てる筈が無い!」

 大理石の円卓を囲む幹部達から、途端に悲鳴の声が上がる。これが自然な反応だろう。べロットも内心は同感だった。しかし、若い姿となった頭目は不敵な面構えを崩さない。

「表向きな話は不要だ。本題は何じゃべロット? アルバとの連絡網を既に作ったのじゃろ?」

 好きで作ったのでは無かったが、べロットは頷き話を続ける。賢人達に犠牲者が出た以上、バダフシャーン一族と一戦しないと他の賢人達が納得しない。

 双方に大きな被害が出ない内に鉾を収め、手頃な和平案を結ぶ。それがアルバからべロット個人への連絡だった。

「アルバ議長から開戦の時期と場所が指定されています。今から一ヶ月後。場所は先日、実験体の魔物を送り込んだ街の周辺です」

 ベロットの報告に、頭目は白い歯を見せ一笑する。

「あの辺境の街か。つくづく運の無い住人達じゃな。我らと賢人達がぶつかれば、間違いなくそんな街など消し飛ぶぞ」

 アルバから最後の一言をべロットは頭目に伝える。その言葉を聞いた時、頭目のふてぶてしい顔が一瞬歪んだ。

「総兵力で来い」アルバは最後にそう言ったと言う。それは小競り合いで済む戦いには到底なりそうも無い言葉だった。
 
 会議は終わり、血の気の失せた幹部達は退席して行った。一人残ったべロットは、思い切って頭目に質問した。

「なぜ危険な「時間遡及治癒」を使って若さを取り戻したかじゃと?」

 頭目は孫に語った。老いとは悲惨なものだと。それ迄信じていた人生を自分で否定してしまう程に。

「年を取ると金の計算が鈍くなる」

 べロットは絶句した。嘘か真かその為だけに命をかけて時間遡及治癒を我が身に施したのかと。

 この祖父は骨の髄まで一族の慣習に染まっている。べロットは改めて思った。一族の利益が全てに優先すると言う慣習に。

 頭目には生き続ける勝算もあった。一族がその技術の粋を結集して作った秘薬を飲んでいたからだ。

「若返った代償として本来なら儂の命数はあと一年足らずじゃろう。だが、秘薬の効き目があるかどうか一年後分かる。儂の命を使ってな」

 そこまで若さに拘る理由を青年のベロアには理解出来なかった。そもそも祖父を若返らせたのは一体誰なのか。

「······かつて流血王と呼ばれた古い友人じゃ。べロット。お前が生まれる前の時のな」

 そう言い終えると頭目は黙り込んだ。この戦いで一族の利益をどう大きくするか。そう考えてるに違いない。べロットには確信に近いものがあった。

 
 

 ······オルギス教総本山カリフェース。その国は魔族の国々と人間の国々の中間地点に在った。

 国は教団が治めており、教団の長大司教が頂点に君臨していた。かつて全世界を統治した皇帝オルギス。

 その皇帝は神に祀られ、信者は人間、魔族にも数多くいた。その為カリフェースの都市には人間と魔族が共存していた。それは、この大陸に於いて稀有な国だった。

 教団の掲げる教典には、皇帝は再び甦るとあった。それは皇帝本人か生き返る事では無く、皇帝の剣を持つ者の事を指していた。

 だが、埃の溜まったそんな言い伝えを教団の幹部達は小指の先程も信じていなかった。彼等が信じているのは金と権力だった。

 教団内には賄賂が横行していた。賄賂の金額によって教団での地位が決まった。その汚れた金の行き着く先が大司教の懐だった。

 オルギス教は腐敗しきっていた。昔の理念と理想をドブ川に捨て去り、教団の幹部達は賄賂の金額とそれによって手に入る権力を手にする事に血眼になっていた。

 その教団の腐敗を憂い、正そうとする集団がいた。オルギス教聖騎士団。彼等は大司教達をもう見限っていた。

 大司教達に必要なのは説得の言葉では無く、有無を言わさない武力だった。大司教達も聖騎士団を敵視し、二つの勢力は一触即発の緊張状態にあった。

 そんな折、教団に驚天動地の報せが入った。皇帝の剣を持つ者を発見したと。

「使いの話では信者シリスなる者が発見したそうです」

 緊急会議で報告を受け、大司教は不快な表情になる。オルギス教は遥か昔から世界中に信者達を派遣していた。皇帝の剣を発見する為だ。

 大司教以下、幹部達はそんな事に興味は無かった。しかし清新さを失っていない信者達は日々真面目に探索を続けていた。

 ······シリスと言う小娘が余計な事をしてくれた。腐敗に浸かりきった幹部達は皆同じ事を考えていた。

 大司教派閥の向かいの席に座る聖騎士団の面々は、水を得た魚のように活気づき聖騎士団長が発言する。

「報告によれば、ウェンデルなる青年は偶然街に通りかかった騎士団を率い、魔物の群れを全滅させたそうですな」

 統率力。人望。用兵巧者。このカリフェースの王に迎える資質として申し分ない。聖騎士団長はこの青年を至急招待する事を強く求めた。

「そう性急に事を運ぶ必要もあるまい。まずはその青年について詳しく調べる必要がある」

 大司教のその言葉は、騎士団長にとって只の逃げ口上だった。騎士団長は自ら辺境の街に赴き、その青年に面会すると宣言した。

 会議室から廊下に出た騎士団長は、歩きながら副官に命令を伝える。

「き、騎士団全兵力を動かし、その街に行かれるのですか?」

「出発の準備を急がせろ。事は急を要する」

 騎士団長は皇帝の剣を持つ青年を迎え、その青年を先頭に大司教達を討つと決めた。これは腐敗しきった教団を正す千載一遇の機会だった。

 騎士団長は執務室に戻ると、自分の机の椅子に座る人物に気づく。その人物は行儀悪く両足を机の上に投げ出していた。

「くだらん会議は終わったか? ヨハス騎士団長様」

「また昼間から酒を飲んでいるのか? ボネット」

 ヨハスの返答に、ボネットと呼ばれた男は酒瓶を片手に持っていた。黒い短髪に逞しい身体。年齢は四十前後と思われた。尖った耳が彼を魔族と証明していた。

 ボネットと同年代の騎士団長ヨハスは、白い長髪を揺らし苦笑した。かつてボネットは青と魔の賢人の組織に在席していた。

 しかし、ボネットは組織を辞め世界中を放浪した。このカリフェースに訪れたのは十年前。ここでヨハスと知り合い、魔族と人間の二人は意気投合し友となった。

 それ以来、ボネットはヨハス家の居候となりカリフェースに留まり続けた。

「皇帝の剣が見つかったそうだな。いよいよきな臭くなりそうか?」

 ボネットの言葉は、大司教達との戦いが近い事を指していた。

「その青年を王に迎え大司教達を討つ。戦いは避けられんな」

 ボネットは酒瓶を口につけながら考えていた。友人ヨハスの長年の悲願がついに行動に移されるのかと。

「ボネット。お前はどうする? 一緒に我々と共に来るか?」

 ヨハスも思い返していた。ボネットと出会った頃の事を。あの時の自分は、まだこの教団を正攻法で変えられると思っていた。

 だがそれは失望と徒労に終わった。この教団を変える道は最早武力しか残されていなかった。

「······そうだな。俺もその皇帝の剣とやらを拝みに行くかな」

 ボネットは頭の中で地図を開いた。目的地の辺境の街までの道程を地図でなぞらえる。その途中、かつて自分が居た古びた城があった。

 それは、青と魔の賢人の本拠地だった。かつての師ネグリットはまだ健在だろうか。袂を分かった師の事をボネットは一瞬考えた。

『······不詳の弟子の事などとうに忘れているか』
 
 一時の郷愁をボネットは頭から払い去った。

 ボネットには想像すら出来なかった。昔の師ネグリットが死亡し、その左腕を自分に届けようとしていた少年が居た事など。


 
 ······少年モンブラは、自分の家である城を出てからの日々に戸惑っていた。早々に盗賊団に襲われ、命を落とす寸前で四人の男女に命を救われた。

 その四人はどうやら兄弟のようだった。そしてなぜか、モンブラは彼等四人と行動を共にしていた。

 モンブラは長男である隻眼の男に目的地を話すと、一緒に来いと言われた。四兄弟はカリフェースの近くまで行く用があるらしい。

 隻腕の次男は自分と変わらないような幼い声でモンブラにそうしろと勧めた。

 眼鏡をかけた義足の三男は足手まといにはなるなとモンブラに冷たく言い捨てた。

 灰色の髪の綺麗な末っ子は、どうやら声を出せないらしい。彼女は紙に文字を書きモンブラに見せた。

 その紙には「一人旅は危険だからそうなさい」と書かれていた。末っ子は優しくモンブラに微笑んでくれた。

 四兄弟は風の呪文で移動していた。行く先々で何か仕事があるらしい。だが移動先で四兄弟はなぜか怪訝な表情を見せる。

「······どう言う事だ? 情報ではこの都市に賢人は滞在していた筈だ」

 隻眼の男は集めた資料と思われる紙を両手で破って捨てる。

「ザンドラ兄さんの言う通り三度続くと妙ですね。組織で何か緊急事態が起きたのかもしれませんね」

 眼鏡をかけた義足の男は、その鋭い両目で床に落ちた資料を睨みつける。

「ラフトの意見は可能性があるな。だがターラはバダフシャーン一族の頭目について行き本拠地の城に行った事があるのだろう? いっそ攻め込んだらいい」

 筋骨逞しい大男は、子供のような幼い声で大胆な提案をする。

「落ち着けモグルフ。今まで奴等を狩れたのはこちらに数的有利があったからだ。本拠地では数が圧倒的に違う」

 最後にザンドラが次男を諌める。少年モンブラは思案する。四兄弟の断片的な話を総合すると、どうやら彼等四人は誰かを探し狙っているようだった。

 それは、盗賊団を殲滅した四兄弟の強さを持ってしても難敵らしい。

 モンブラは四兄弟から離れる事も考えたが、命を救ってもらった恩もある。しかも目的地の近くまで同行してもらえる。

 少なくてもモンブラには、四兄弟は頼りになる恩人だった。少々遠回りではあるが、カリフェースには確実に歩を進めている。

 少年モンブラはネグリットの遺言を果たす日が近づいている事に希望を膨らませていた。その残されたネグリットの左手首を届けると言う遺言を。

 少年モンブラは想像出来なかった。この左手首を渡す相手が、カリフェースから離れようとしている事など。 

 

 

 

 
 

 


 
 
 




 

 

 

 

 

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