暗殺者からの成り上がり 

ケン・G

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王都治安維持部隊

過去5

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目が覚めると自宅に寝ていた。
喉の渇きと不快感。俺は完全に二日酔いになっていた。
昨晩の事はよく覚えていない。ガムと飲みに行き、はじめは覚えているがニ軒目からの記憶はない。
体を起こし側に置いてあったタバコを加え火を付けた。
頭を巡るのは昨日の襲撃だ。
もしガムの話が嘘じゃあなければ奴らは西方地区の難民という事になる。
奴らの境遇を考え少し同情するがどうしようもない。

「腹減ったなぁ」

腹と背中がくっつくとよく言うが本当にそんな感覚だ。
俺はそのまま立ち上がると家を出た。
外に出ると夕焼けが差し込んでいた。
真っ赤な夕焼けをみて、昨日、ガムが刺した男の血を連想してしまう。
俺は一体何沈んでいるんだ。自分がやったわけでもないのに馬鹿らしい。
頭を振り足を動かした。

自宅から飲食店がひしめく大通りに向かう路地を進む。暗く人通りは少ない。

「おい、てめぇ」

誰かに声を掛けられた。この街ではよくある事だ。

「ああ?お前、俺が誰だ……」

振り返るとスキンヘッドの男が立っていた。
男には見覚えがあった。昨日、襲撃した中のひとりだった。

「おい、昨日はよくもやってくれたなぁ?」

男はニヤついていた。
後ろには数人の男が立っている。

「逃げても無駄だぜ?その路地の先にも仲間がいる」

男の言葉が嘘か本当かはわからない。
しかし迂闊には動けない。
そのうちに男はゆっくりと近づいてくる。
まともに喧嘩をしても勝てるとは思えない。逃げたとして奴の言葉が本当だった場合、捕まる。
捕まったらどうなるのか、おそらく俺は拷問にかけられてギャングのありとあらゆる情報を喋らされ殺される、奴らに馬鹿なガキと笑われながら。
どうするのが正解なのか。
脳裏に浮かんだのは昨日のガムと血を流す男の光景。
ポケットには昨日トカイにもらったナイフが入ったままだ。
戦わなければ、生き残れない。
ポケットに手を入れ、中のナイフのカバーを手探りで外す。幸い男はゆっくり近づいている。
目を見開き眉をひそめる。ビビってるふりをするのだ。少しでも油断させるために。

「怯えちゃってよぉ、すぐに殺してやるからなぁ」

男はそう言っていっそうニヤつきながら近づく。距離としては男の手が届く範囲。
しかしまだ早い。確実に仕留められる距離でなくてはダメだ。
俺はその時をナイフを握りながら待っていた。
そして男の手が俺の肩に乗っけられた。
今だ。
ポケットからナイフを取り出し、男の首に突き刺した。

「うああああああああああ」

男の悲鳴と生暖かい赤い液体、ざわつく後ろの男達。
ナイフを抜くとそこから血が吹き出した。
男を蹴り倒し正面を見る。
先程まで余裕が見られた男達は驚いたような顔をしていた。
逃げるなら今がチャンスだ。
そう悟った俺は真正面にいる男に向かって切り掛かった。
男は手でガードをしたがいきなりの攻撃に恐怖を感じているようで後退りした。
そうして空いた隙間から逃げ、走り出した。
走ってしばらくすると後ろから怒号が聞こえてきたがもはや追いつける距離ではなかった。
しばらく逃げ回った後立ち止まる。
奴らは待ち構えていた。自宅から大通りまでのルートに。
これはすなわち自宅が割れている可能性が高い事を表していた。
家には帰れなかった。服が血を浴びている為やたらにうろつく事も出来ない。
まだ握りしめていたナイフを見る。血のついたナイフは俺が人を殺したという証拠だった。人を殺した感想、それはああ、こんなもんか、それくらいだった。
ガムは泣いていた。しかし、俺は泣けなかった。

「よし」

俺は溜まり場のバーへと向かった。




「どうしたんだよ、クガン」

バーの店内はトカイと数人の男達がいた。
中に入った俺を見るや全員が驚いていた。それもそうだ、なんせ血塗れの男が入ってきたのだから。

「奴らです、待ち伏せされてました」

「本当だな?」

トカイの問いに無言で頷く。
それからトカイは立ち上がりギャングのメンバーに何か指示を出した後、戻ってきた。

「よし、とりあえずお前はしばらくハットのとこにいろ」

「わかりました」

その後着替えた俺は護衛をつけられてハットの解体場まで向かった。
ギャングメンバーの一人がハットに事情を話し俺は中に入れられた。

「おう、大変だったみてぇだな」

「はい……しばらく世話になります」

「まあ、あれだな……やったのか?」

やった、おそらく殺しの事だろう。

「はい……」

「平気…そうだな、まあ、お前はキモ座ってるからな」

「まあ、どうなんですかね」

笑いながら話すハットに俺は笑顔を返した。

「まあ、良いか悪いかは別としてお前には殺しの才能がある」

ハットは俺の顔をまじまじと見ながらそう言った。

「なんすか?それ」

「普通人を殺すとな、少なからず落ち込む、けどお前はびっくりするぐらい普通だ……それはどんな努力をしようが得られるものじゃない、まあ、慣れる事はできるがな」

それは暗に欠落していると言われてるようなものだと思ったが口には出さなかった。



それから奴らの残党狩りがギャングと博徒などの他の裏社会の者たちによって行われたらしい。
俺が殺した男は奴らの中では上の立場だったらしく大金とそれなりの評価を受けた。

「やっぱお前すげぇなクガン」

いつもの酒場。
そこで俺とガムは昼間から酒を飲んでいた。

「まあな、けど、流石に死ぬかと思ったよ」

「ははは」

他愛もない話をした後俺たちは店を出て解散した。
暑い日光を眩しく思いながらも足を進める。

「おい、邪魔だよ」

前から歩いてきた若い男にそう言われた。
見るからに田舎者の男、この街を何も知らないのだろう。

「お前、俺が誰だかわかってんのか?」

「は、しらねぇよバカ」

俺は咄嗟に男を殴っていた。
男はよろけたがすぐにこちらを睨む。

「てめぇ、いきなり何すんだ、あぁ?」

「うるせぇよ」

更に男の顔面を殴る。
この一撃は効いたらしく男は倒れた。しかしまだこちらを睨んでいる。
その態度に無性に苛つく。俺は馬乗りになり男を殴った。

「おい、何やってんだ」

騒ぎを聞きつけた憲兵が二人、後ろに立っていた。
見下した視線に苛ついた俺は憲兵に殴りかかった。
いつしか俺は捕まっていた。



一年後。

「お迎えもねぇのかよ」

一年間刑務所に入っていた俺はベツィアに戻ってきた。
街は一見あまり変わっていない。
久しぶりにみんなに会いたい。ギャングはどうなっているのか、ガムとヌマエラは仲良くやっているのか。
溜まり場のバーへ向かうと店は無くなっていた。

「おい、お前、クガンか?」

とある男に声を掛けられた。
男はギャングのメンバーで俺の護衛をしてくれた男だった。

「ああ、久しぶりです、溜まり場、変わったんですか?」

「あ?…ああ、まあ、な」

歯切れが悪く何故かよそよそしい。

「ついてこいよ、新しい溜まり場に」

「わ、かりました」

男について行くと小さな酒場の前に止まった。

「ここだ」

「はい」

中に入ると客はおらずカウンターに一人バーテンダーが立っているだけだった。
そのバーテンダーに目をやるとそれはトカイだった。

「いらっしゃ……え?、ああ、もうそんなか」

「……お久しぶりです、トカイ、さん?」

俺の頭は混乱していた。
ギャングの溜まり場は小さくなりトカイがバーテンダーとして働いているという衝撃。
何が何だかわからなかった。

「まあ、座れよ」

とりあえずカウンターに座る。

「まあ、なんだ、ここが今現在のギャングの本部だ」

「はい、そう、なんですね」

「それに、今俺達は博徒の傘下に入っている」

「えぇ?」

トカイの言葉に驚きが隠せなかった。
ギャングと博徒は互いに干渉しない筈だった。

「実はボスが病気で死んでな……俺じゃあまとめきれなかった」

悲しそうな顔のトカイに俺は何も言えなかった。

「ガムは、ガムはどうしてるんです?」

「ああ、あいつな……消えたよ」

トカイは気まずそうに答えた。
何かあったのだろうか。

「ヌマエラと、ですか?」

「ヌマエラ?……ああ、あの女か……あの女は死んだよ、超薬の過剰摂取でな」

「そう、ですか」

別に驚く事では無かった。
事実ヌマエラは度々ガムの元から消えていた。

「それとな……お前には言わないでおこうと思ったんだが、ガムはな、度々超薬を買っていた、あいつが使うわけじゃない、意味、わかるよな?」





「おう、久しぶりじゃねぇか、クガン」

「お久しぶりですねハットさん、商売の方はどうですか?」

ハットの解体場は一年前と変わっていなかった。

「ああ?まあ、ぼちぼちだな、お前んとこが落ちぶれてから裏は取られちまったよ」

「そうですか」

解体場は普通の猪と鹿が吊るさっていた。

「まだ、続けんのか?ギャング」

「迷ってます」

「そうか……お前、王都にいかないか?」






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